ファミスタ'89 開幕版!!

【ふぁみすたはちじゅうきゅう かいまくばん】

ジャンル SPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1M+512KbitROMカートリッジ
発売・開発元 ナムコ
発売日 1989年7月28日
定価 4,900円
プレイ人数 1~2人
判定 なし
ポイント 隠しチーム2球団登場
ファミスタシリーズ


概要

1989年7月にナムコより発売された人気野球ゲーム第4弾。
これまで『ファミリースタジアム』と銘打って来たが、本作より略称である『ファミスタ』がそのままゲームタイトルに使用され正式名称となっている。
奇しくも「平成」という新しい時代に合わせて正式名称にモデルチェンジしたような形になった。

ただ内容的には『プロ野球ファミリースタジアム'88年度版』のデータを変更したマイナーチェンジ版ソフト。
その為、各項に於ける記述は相違点に留める。ゲーム評価の詳細は該当記事を参照。

ゲーム内容

  • 前作14球団に隠しチーム(後述)が加わり全16球団となった。球場選択・打順変更・好調選手・ひいきなどのシステムに変更は無いが、1Pモードに於けるパスワードが復活し、電源を切っても続きから再開できるようになった。前作同様、最初に対戦するチームと球場を任意で選択でき、以降の対戦相手と球場は自動的に決められるが、パスワードコンティニューで始めた場合は球場のみ選択が可能。
  • 13チームに勝ち抜くと、PCE版『プロ野球ワールドスタジアム』に登場した隠しチーム2球団が登場。投打の能力値の高さは勿論、守備時の野手の移動速度や塁タッチがこちらよりも速いうえ、全員素早い送球をしてくるなど、攻走守に全く隙がない万能チームとなっている。ともにCOM専用のチームとなっておりプレイヤーが操作することはできない。
    プロスターズ
    13番目の対戦相手として登場
    PCE版では「オールドスターズ」(Oチーム)と名乗っていたが、オリエンツと頭文字が重複するため、チーム名が変更となった。
    王・長島・張本など昭和時代の名選手が集結した強豪チーム。前作を最後に現役引退した山田が早速こちらに移籍している。
    強いことは強いが、通常のチーム同様、変化球攻めで三振は奪える。
    オールドリームス
    最後の対戦相手として登場
    野球漫画・アニメのヒーローが集結したドリームチーム。『緑山高校』の二階堂がなぜか右投げとなっている。
    全員がチート級の能力。バットを振ればヒットになる。投手以外に安心して対戦できる打者がいない。
    プロスターズと違い、誰がどんな球を投げようとも三振を奪うことができない。フォークボールも無効化する。
    ピッチャーの「ほし」は高確率で消える魔球を投げてくる。
    普通にやったら勝てない、やっぱりPCE版同様にズルするしかない。
  • チームエディットのシステムが大幅に変わり、作成した選手を任意の球団の選手と入れ替える形で使用することができる。前作のエディットと異なり全体パラメータの合計値が無いため、能力値を最大値まで引き上げた選手を量産することも可能である。ただしバックアップシステムを搭載していないため、前作同様リセットしても選手データは消えないが、電源を切るとエディットした選手は消えてしまう。
+ 画像

左から/デフォルト画面・左端の「と」で入れ替えが可能・入れ替わった選手達

  • 試合の結果報告は引き続き「NAMCOT SPORTS NEWS」が担当。1Pモードのパスワードもここに表示される。球場別にキャスターが異なるという点に関してはそのままだが、優勝時に登場する「アチャ」を除く全キャスターが交代となった。

評価点

  • 横への動きが緩慢だったCOMの守備が賢くなり、内野ゴロの処理能力が上昇。
    • 従来作にて頻繁に見られた「セカンドゴロ・ショートゴロが三塁打・ランニングホームランになる」といったケースは減少した。
  • パスワード機能の復帰
    • 前作はパスワード廃止したことで長時間プレイを強制されたが、パスワードシステムに戻った事で遊びやすくなった。

問題点

  • 発売時期が年末であったために、当年度のNPB成績をゲームデータに反映できたファミスタであったが、本作は後述の事情から7月という中途半端な時期に発売された。そのため近鉄のハーマン・リベラや西武のオレステス・デストラーデのようにシーズン途中に入団した選手に対応できなかったほか、実際の成績と大きく乖離してしまった選手も見受けられるという作品となってしまった。
+ 詳細
選手名(ゲーム中) 現実('89) ゲーム 現実('88)
ブライアント(ぶらいあ) .283 49 129試合 .294 34 .307 34 74試合
ドッドソン(どつと) .313 0 6試合 .250 16 .178 0 17試合
ブーマー(ぶうまん) .322 40 130試合 .310 26 .289 14 88試合
バークレオ(ほえれお) .210 6 37試合 .268 30 .268 38 118試合
バナザード(ばなな) .271 34 122試合 .302 20 .315 20 111試合
ディアズ(らんぼう)*1 .301 39 130試合 .260 20 .235 3 87試合
クロマティ(くろます) .378 15 124試合 .310 28 .333 8 49試合
呂明賜(るる) .282 2 18試合 .256 20 .255 16 79試合
ロードン(ろんどん) .300 22 123試合 .260 14 .100 0 20試合
フィルダー(おひるだ) .302 38 106試合 .260 28 .230 9 74試合
ポンセ(ぽんち) .264 24 130試合 .302 34 .292 33 130試合
パリッシュ(ぱあやん) .267 42 130試合 .280 28 .217 14 120試合

※このシーズンから日本球界に参戦した、ドッドソオン(近鉄)、ディアズ(ロッテ)、パリッシュ(ヤクルト)、フィルダー(阪神)、ロードン(広島)の'88年成績はメジャーでのもの。

  • 1987年以前も日本球界に在籍していた選手は、それを加味した数値になっており1988年から参戦した選手は前年のみを参考にされている。
    • 特に格差が如実なのがバークレオ(西武)*2で、この年は変化球への如実な弱さが露呈していたため極度に成績を落とした。
      現実では6月に上述の通りデストラーデが加入し、その穴を埋める活躍をした。そのためゲームでは「バークレオ=デストラーデ」のような格好に収まっており、クリーンナップの打力は現実とあまりかわらないものになっている。
  • パリッシュやフィルダーは開幕前からその強打を見せつけていたこともあってスラッガーとして元々高いものになっていたが、実際はそれをはるかに上回った。
  • ドッドソンはホームランよりもヒット量産のアベレージタイプの打者だったが、注目度が低かったためあまりその実情が知れ渡らず前年限りで退団した強打者ベエンジャミン・オグリビーの後釜として獲得した経緯や、前年のメジャー成績に光るものがなかったため低打率の中距離程度になっている。

総評

基本的には『プロ野球ファミリースタジアム'88年度版』のマイナーチェンジ版である。
実際の選手データとのずれの問題はあるものの、CPUの動きが良くなったり、パスワード機能を復帰させたりと確実に遊びやすくはなっている。


余談

  • ライセンス契約更新の難航
    • この年の夏に任天堂・ナムコ間に於けるライセンス契約更新の交渉が難航し*3、最悪の場合、ファミコン市場からナムコが撤退する可能性も否定できないとゲーム業界メディアで報じられたため*4、本作はライセンスの期限切れを間近に控えた駆け込み発売となった経緯がある。
      • シリーズではじめてテレビCMがされなかったのも、このゴタゴタの影響によるものと思われる*5
      • その後、この問題は解決の運びとなり、これまで通りナムコはファミコンソフトを発売し続けたが、この年の暮れにも『ファミスタ'90』(実質的な『'89』にあたる)が発売されたため、以後は発売年度とゲームタイトル年度が1年ずつずれることとなった。
        次作以降、実際の年度とタイトルに冠した年度が1年ずつズレることになるのだが徳間書店の『ファミリーコンピュータMagazine(ファミマガ)』の年度は前年12月~本年11月をもって「年度」となるため、異例の夏季発売となった本作は1989年度、同年12月発売となった次作は1990年度となりこちらとは以後合致することになる*6
      • また、この問題からナムコは任天堂との決裂こそしなかったものの、遺恨を残したことには変わりなく後の第5世代で独自のハード開発を画策。結果的にそれは頓挫したものの、任天堂にとってはライバルとなるプレイステーション(SCE)草創期に、ローンチの『リッジレーサー』をはじめ積極的に参入しソフト面の土壌がないSCEとしては喉から手が出るほど欲しいキラーソフトの数々を供給して後の飛躍に繋がる土台を築き上げた。
  • 本作からナムコスターズに姉妹作『プロ野球ワールドスタジアム』モデルの選手「わあすた」が抑え投手として登場する。因みに本シリーズそのものにあたる選手「ふぁみすた」が登場するのはスーパーファミコンでの初作品『スーパーファミスタ』(1992年3月発売)なので実に3年近くも先んじている。
    • だが能力自体は大して目立ったものはなく「ナムコスターズ投手陣の中なら高い」というわけでもないという微妙な扱い。
      • 以後も本シリーズで登場するが、奮起するどころかジワジワ弱体化していってしまう。
    • 後に登場する上記「ふぁみすた」は打者だが、これもまったく見るべきところのない選手でやっぱり主役は「ぴの」と「ぱっくまん」である。
  • 本作のオールドリームスは頭文字アイコンが紫でユニフォームが黒一色に変更され、打席時の専用ジングルも不気味さを感じさせる曲調にアレンジされる等、チーム名やコンセプトとは裏腹に悪役チームじみた雰囲気を醸し出している。
    • もっとも、PCE版に輪をかけて反則レベルで超強力な選手達が最後に立ちはだかる姿は、確かに凶悪かつ恐怖のラスボスと呼ぶに相応しいとも言えるが…。
    • 人肌部分(顔と両手)を除く全身が単色化しているその描写は、PCE版のシルエットチームのイメージを残したものとも解釈できる*7
    • 次作でアニメスターズと改称されてからは帽子・アンダーシャツ・ストッキング・スパイクの色がグレーに変更された。
  • 守備ルーチンの上達は当時のゲームライターからも好評を博し「より人間的になったコンピューター」と評されている。一方で86年度版から87年度版へのバージョンアップがそうであったように、本作もまた88年度版のデータを変更しただけのものに過ぎず、「単なるマイナーチェンジ」と厳しい評価を下す声もあった*8
  • それまで『ファミスタ(初代ファミスタ・ファミスタ'86)』『ファミスタ'87』『ファミスタ'88』と、このような略称表記が日常的に使われており、勿論その正式なタイトルは『プロ野球ファミリースタジアム』(無印・'87年度版・'88年度版)であることは暗黙の了解だった風潮が2年半も続いたせいか、まだ「『ファミスタ』はあくまでも略称」という名残が強く「『ファミスタ』が正式名称になった」という認識が薄かったこともあってか攻略書籍では『プロ野球ファミリースタジアム'89年度版』という誤用が多々あった。
  • 上記の通り、複雑な大人の事情に加えてゲームそのものもマイナーチェンジ同然と、あまり良くないイメージが付きまとっているが1989年のファミコンソフト売上は1位『スーパーマリオブラザーズ3』(任天堂)、2位『テトリス』(BPS)、3位『ファミコンジャンプ 英雄列伝』で、本作はそれに次ぐ4位だった。
    • 上記3作品はいずれもクレジットは1988年なので1989年クレジットを冠したファミコンソフトでは最高の売上本数を記録したことになる。ただ、それでもシリーズで初めてミリオンに届かなかった。

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最終更新:2024年01月02日 14:46

*1 シルベスター・スタローンの演じたキャラ「ランボー」に風貌が似ているためこの愛称で呼ばれた。実は登録名を「ランボー」とする案も実際あったようだが、権利関係の問題で実現しなかった。

*2 1987年シーズンに来日したが1年目はジョージ・ブコビッチの影に隠れて出番がなく、2年目(実質1年目)の1988年に強打者として頭角を現した。

*3 前年11月、NESでの自社ソフト発売に絡む契約問題でナムコは任天堂を提訴したものの、この年の3月に敗訴。ファミコンでの契約更改に関しては、それまで受けられていた優遇条件を製造以外一切打ち切るというものでナムコとしてはすんなり受け入れられるものではなかった。

*4 ファミコン通信1989年7月(日にち不明)号より。

*5 因みにテレビCMはその後ゲームボーイやスーパーファミコン作品でも行われファミコンナンバリングではCMが制作されなかったのは本作以外ではファミコン自体が最末期で注目度が極めて低かった時期に発売された最終作の『'94』(1993年12月発売)のみである。

*6 これに関しては今まで当年を冠して12月発売だったためファミマガの年度では『無印』(1986年12月発売)が1987年度、『'87』(1987年12月発売)が1988年度『'88』(1988年12月発売)が1989年度と反対に1年ずつズレていた

*7 実際、黒チームと赤チームは性能もオールドリームスのコンパチであった(白チームは当時のロッテオリオンズを元にした性能)。

*8 いずれの寸評もファミコン通信ゲームカタログ1991より。