Fate/EXTRA

【ふぇいと えくすとら】

ジャンル 対戦型ダンジョンRPG

対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 マーベラスエンターテイメント
開発元 TYPE-MOON
イメージエポック
発売日 2010年7月22日
定価 通常版:6,279円
タイプムーンボックス:10,479円
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
廉価版 PSP the Best:2012年1月12日/2,940円
判定 なし
ポイント 王道JRPG流のFate
ゲームとしては荒削りながらオーソドックスな出来
別世界聖杯戦争、キャラ人気は変わらず高い
ラスボスが色んな意味で危ない
Fateシリーズ関連作品リンク


概要

『月姫』等で知られる元同人サークルの企業TYPE-MOON*1によるビジュアルノベルのヒット作『Fate/stay night』より連なるシリーズの傍系として展開されたRPG。
シナリオ担当の奈須きのこ氏曰く“まったく新しい、RPGとしての型月伝奇”、『FateシリーズにおけるGガンダム、FateであってFateでないEXTRA*2』と言う奇妙な位置づけのもとに、本作はジャンルを変えて打ち出された。

ゲームとしては、章ごとに『校舎(従来RPGにおけるシティ)やアリーナ(ダンジョン)を探索しつつ情報収集及びレベル上昇を行い、それを6回分繰り返した後に敵サーヴァント(ボス)の打倒に挑む』と言う流れを繰り返す章仕立ての構成を取っている。

主人公(プレイヤー)は男女の選択、名前、愛称の入力が可能である*3
パートナーであり戦闘を担当するサーヴァントは、セイバー(剣を携えた男装*4の少女)・アーチャー(赤い外套に身を包んだ武人)・キャスター(妖艶な半獣の女性)から選べる。難易度は述べた順に上がるとされる。
コミカライズやドラマCDなどの公式展開では『 岸波白野 』というデフォルトネームが男女共有で与えられている。またユーザーからの愛称として『ザビ男』『ザビ子』というものも使われる*5

テーマソングはALI PROJECTの「亂世(らんせ)エロイカ」。


ストーリー

西暦2032年。月面に人類のあらゆる叡智を超える物体が発見された。「ムーンセル・オートマトン」と呼ばれるその物体は、あらゆる事象をコントロールすることが可能な力を持つことが後に判明する。
意思ある者が持てば世界さえも掌握できる万能の願望機「聖杯」に等しいこの物体を手に入れるため、世界各地の組織・勢力が「ムーンセル・オートマトン」の作り出す霊子虚構世界『SE.RA.PH』にアクセスし、「ムーンセル・オートマトン」が自身に相応しい担い手を選別するために行う「聖杯戦争」へと参戦する。

999名による予選をなんとか勝ち抜いた主人公だが、彼(彼女)には不可解な事象が起きていた。予選の時点で剥奪され、勝ち抜くことで元に戻される筈の当人の現実での記憶が返却されなかったのである。
自分が何者なのか。何故聖杯戦争に参加したのか。それを知ろうとするが、そうするには戦争を勝ち残るしかなかった。
何故ならこの戦争ただ一人の勝者しか、現実には生きて帰れないのだから…。

+ メインキャラクター簡易紹介
主人公
私立月海原学園2年A組に在籍する高校生。
セイバー
最優のサーヴァントと言われるクラス、剣士のサーヴァント。通常攻撃を主体として戦うシンプルな戦いを重視した性能で、ゲーム入門にはうってつけ。態度はまさに唯我独尊。
アーチャー
弓兵のサーヴァント。若干成長しづらい基本能力をスキルや宝具で補う中級者向け。皮肉屋で徹底した現実主義者。シリーズ過去作とのつながりを意識させるキャラ。
キャスター
魔力/スキルと宝具に特化したクラス、魔術師のサーヴァント。基本ステータス面ではサーヴァント中最弱と言われており、カバー要素がない初周プレイには推奨されない上級者向け。主人公に心からの忠誠を誓い、その勝利に自らの全てを捧げる。
遠坂凛
私立月海原学園に在籍し学園内では文武両道の優等生。攻撃的で突き放すような口調が目立つが、実は面倒見がいい。
ラニ=VIII(エイト)
私立月海原学園に在籍。その澄んだ瞳は、寡黙に周囲を見つめている。
+ Fate/EXTRAシリーズにおける世界観について
  • 舞台は2030年代の近未来世界。「西欧財閥」と呼ばれる巨大組織により、大規模な戦争後の荒廃した地上を安定させる目的で世界財力・武力を用いた世界規模の資源管理が徹底されているため、地球上における技術及び人類の進歩が停滞している。
    • ただし、本作はTYPE-MOON作品の多くが共有する世界観の1980年代から大きく設定を変えて派生したパラレルワールドであるとされており、単純に月姫やFate/stay nightシリーズなどの未来というわけではない。
    • EXTRA世界では1970年代に起こったとある大事件を発端に世界各地の大源の魔力(マナ)が急速に枯渇し始め、2030年代には完全に途絶えた。
      そのためTYPE-MOON伝奇作品に共通した「魔術」や「魔術師」はそのほとんどが廃れ、魔術協会も西欧財閥による弾圧などの末に元から魔力にあまり頼らない研究を続けていた「アトラス院」が残るのみという、事実上独立した設定が敷かれている。
    • このため、一部用語は月姫やFateなどでの既存の用語とは若干異なった意味や呼び方を持っていることがある。

ポイント

Fateという作品の新境地

  • 本編の時間軸とは大小が異なるパラレルワールドの未来を舞台にするという、TYPE-MOONの作品群としては大きな冒険をしながらも、そのシナリオやキャラクター達は確かな深さや魅力を独自に構築している。
    • 主人公の謎とそれを裏付ける結末、敵味方問わないキャラクター達の確固たる背景や戦う理由の描写、聖杯戦争が再び地上のものを模して開催された理由等はとても作り込まれている。
    • 加えて男性主人公・女性主人公で微妙に話が違う。この為、ギャルゲー・乙女ゲー・百合ゲー・BLゲーと網羅したと評価された。
    • 選んだサーヴェントによって微妙にシナリオが違うので、同じ敵や展開でも飽きが来ないようになっている。
    • 加えて、選択によって敵が変更する部分もあり、何週もするゲームでこの配慮は嬉しい。
      • 特にキャラクターに関しては、敵役、ヒロインはもちろんの事、脇役からモブに至るまで個性的かつ魅力的。何より主人公のパートナーとなるサーヴァント、特にセイバーとキャスターに関してはTYPE-MOON作品でもトップクラスと言えるほどの人気を獲得した。
    • stay night初出キャラクターも多めに登場する。だが世界観の変更やサーヴァントの設定により、厳密には別人物であることが多い。キャラクター設定も一部~場合によっては大幅に改ざんされている。
    • 一部施設には、Fate/stay nightと世界観を同一とする『月姫』や『空の境界』*6からのゲストが登場している。さらに、後半になると(ネタバレなので詳細は省くが)よりゲームに関わる形でのゲストも登場する。
  • 基本的に本作からFateを手に取る人も問題なく楽しめ、原作を知っている人としてはその差、または逆であるデジャヴュや小ネタにニヤリと出来る実にマイルドな構造。

Fateの魅力を継いでいる

  • 新たな境地を開いた一方で、「Fate」と「聖杯戦争」の魅力は引き継いでいる。燃えとグロが混ざり合う凄惨な殺し合い。女性キャラと恋愛描写。サーヴァントの真名を予想する推理要素など本編の長所は引き継いでいる。

ダンジョン探索・戦闘

  • アリーナはマス目で構築された迷路状のダンジョン。難易度は「イージー」と「ノーマル」があり、前者では各フロアのスタート地点近く&後半地点に一つずつ回復ポイントが用意されているが、ノーマル時はゲーム最初のマップ「一の月想海 第一層」にしか回復ポイントが無い。
    • 尚、イージーを選ぶことで何らかのデメリットや、ノーマルでのプレイによる特典等は存在しないため、実質「ノーマル」と「ハード」と読み替えても良いかもしれない。
    • アリーナ内ではセーブ不可。基本的にセーブが出来るのは後述の猶予期間(モラトリアム)パートのみである。
  • 敵はシンボルエンカウント方式。レベルが対象の内部Lvより低いか、敵情報量が完全網羅されていない限りはある程度接近すると襲ってくる。基本的に逃げることは不可な速度。
    • バトルは【アタック<ガード<ブレイク<アタック】のようなシンプルな三すくみ方式を、一ターン6コマンドで重ねていく。うち三回連続で読み勝つ/読み負けると、強力な追加攻撃を繰り出すEXTRA Turnが発生する。
    • 相手の行動は、6コマンドのうち最低でも1つは開示されている。同じモブ敵との戦闘を繰り返すと、さらに複数のコマンドが開示されるようになる。
      • 相手の行動はある程度パターンが決まっているので、戦闘を積み重ねて相手の行動パターンを把握し、開示されたコマンドや経験から他のコマンドを推測するのが、戦闘の基本となる。
    • サーヴァントはSPを消費する特殊攻撃スキルも存在し、相手の通常攻撃に対して一方的に大ダメージや状態異常付与を狙うことが出来る。
    • 主人公のMPを消費する回復/補助スキル「コードキャスト」とアイテム等は、基本的に主人公(と敵マスター)が一ターン一回ずつ使用可能(サーヴァントの行動とは別個)。主人公の装備品(スロットは二枠)で使えるコードキャストが変化する。

猶予期間(モラトリアム)

  • 所謂謎解きや特殊なイベント、キャラクター達との会話やレベルアップに伴うサーヴァント強化等を月海原学園内で行うパート。毎章ごとに一週間を費やし、アリーナに入ることで一日が終わるため、期間は1章6日分。
    • 敵サーヴァントの情報収集、藤村大河によるおつかいイベント「タイガークエスト」、アイテム・装備品の購入、魂の改竄(サーヴァント強化)等が行える。
      • 情報収集やイベント、手に入るアイテムはその一日限りのものや、数日に跨ぎ連動するものもあるので細かい探索が必要とされる。と言ってもこの辺では難易度は高くなく、毎日のイベントを指示通りきちんとこなし、欠かさずアリーナに通って探索をすれば問題ない。
  • うっかりレベル的に決戦で勝てない、イベントのフラグを立て忘れた状態でセーブしてしまった際等の救済措置によるものか、「RESET(その章の初日からやり直す)」の機能がある。無論、上げたレベルや手に入れたアイテムはその初日の状態まで戻る。

決戦

  • 猶予期間7日目に行われる敵サーヴァントとの戦闘試合。決戦場にて一対一で行われる、いわゆる章ボス戦である。
    • 尚、相手によっては猶予期間中に(アリーナで)戦闘を仕掛けてくるものもいる為油断ならない。中にはその襲撃でその日のアリーナ探索が満足に出来なくなってしまうイベントも多い。
    • 敵サーヴァントには当然主人公同様マスターも付属する為、サーヴァントへの補助を主人公同様行ってくる。
      • サーヴァント戦は雑魚戦とは異なり、猶予期間中にどれだけ情報収集を行えたかどうかで開示されるコマンド数が決まる。基本的に3つのイベントを完遂することで、最大で6コマンド中3~4コマンドまで開示される。

賛否両論点

本編との差異

  • Fateシリーズの新章を上手く開拓出来たという点では概ね高評価であるが、やはり過去キャラクターの改竄や独自の世界観、TYPE-MOONではおなじみの武内崇氏によるものではなくワダアルコ氏を起用したことによるキャラクターデザイン(原案は武内氏が務めている)等は発売前後で変化したとはいえ賛否両論であった。
    • 主人公のサーヴァントとして選択できるセイバーとアーチャー。この二名はstay nightに登場する同名キャラクターによく似ているものの大なり小なり相違点がある。
      • セイバーとstay nightのセイバーは容姿がよく似ているが全くの別人である。声優も川澄綾子氏ではなく丹下桜氏に変更、身体つきや性格が違う等の差がある(完全に別のキャラクターである為当然であるが)。
      • アーチャーは容姿も設定も一見変化はなく、声優も諏訪部順一氏が引き続き行っているが、実はシナリオを進めていく上で厳密には別人と分かる(後年公開された設定資料集曰く「同一存在ではあるが同一人物ではない」)。stay nightではヒロインを食うほどの人気を獲得した彼だが、EXTRA系統では逆に他2体のサーヴァントの人気に食われ気味。
    • 一方キャスターはstay nightからの要素を一切引き摺らない完全新規キャラクターとなっている*7。こちらはこちらで好評を成したが、いささか「萌え」要素が過剰で悪く言えば「媚びた」ようなキャラであったり、ギャグ・メタ発言等が多くシリアスなシーンでは一応決める上記二名と違い終始ほぼおちゃらけであったりと、ストイックなシナリオの中のシリアスブレイキングな面は発表当初物議を醸した。
    • また、遠坂凛を始めとするサブキャラクターたちも一見、本編と同一人物のように見えるが、実際は別人である事が明言されている。

女性化サーヴァント

  • 本作でサーヴァント本作で登場する一部のサーヴァントは女性化されている。「SN」でも真名隠しに使う手法であったが、前作のセイバーは一応理由付けされていたが、本作のサーヴァントは女性化は理由付けが薄い。
  • その為、無理やり女性化して女性サーヴァントを増やしたと共揶揄される。また、そんなことしなくても女性サーヴァントや女性説の逸話がある英霊を登場して欲しいという声ある。また、真名当てが醍醐味であるのに、安易に女性化すると当てるのが難しくなり、アンフェアという声も出てきた。
  • 残念ながら理由なき女性化サーヴァントは後継作でも登場することが多くなった。

戦闘に関して

  • 戦闘システム自体はシンプルながらも読み合いが熱くプレイヤーからの評価は悪くないものの、演出面はやや薄味で不満点の一つに挙げるプレイヤーもいる。特に味方サーヴァントの必殺技は全体的にモーションの流用が多く、技に関しても地味目なものが多いことが問題視されがち。
    • 例えばセイバーの、最終盤で習得できる最強の必殺技「童女謳う華の帝政」は、なんと最初期に習得できる必殺技「花散る天幕」とモーションがほとんど同じ。一応演出は豪華になっているのだが、モーション自体は殆ど「花散る天幕」と変わっていない。
    • また「様々な剣を召喚して武器にする」という能力を持つアーチャーに関しても必殺技で使用する武器は今までのFateシリーズで彼が使用したポピュラーな武器(剣)のみ*8で、しかもその内の一つ「赤原猟犬」に至っては同じモーションで能力の違うスキルが二種類ある。「干将・莫耶オーバーエッジ」「是・射殺す百頭」「無限の剣舞」等の他技や、能力の上ではこれ以外にも様々な武器を召喚・使用できるはずであり、外伝ということで本編に登場した武器以外にも様々な武器を召喚して戦えるかも、と妄想していたファンからは「期待はずれ」と言われることもあった。
      • また、戦闘では「攻撃がヒットする度に相手のダメージ時のボイスが流れる」という不具合がある。特に何度も命中の演出があるアーチャーの「鶴翼三連」やセイバーの「喝采は万雷の如く」で顕著で、ゲームプレイに支障はないもののクドさを感じる。
    • 攻撃モーションはスキップ出来ない。これは2周目以降の作業感を大幅に増している。

CERO:Bの理由

  • 中盤にて主人公のサーヴァントが瀕死の状態となり、それを助けるイベントが存在するのだが…。
    • そこは大元たるStay nightが18禁ゲームであった頃の、或いはTYPE-MOON世界共通の根幹設定が影響し、PSPゲームとCEROの限界に挑んだと言われたイベントがある。
    • 色々あって主人公の味方となったキャラクターとサーヴァントの助け合いのイベントなのだが、これは今でも英断とも不適切とも言われる激論の的である。
    • これは場合によっては恋愛ゲームでもある本作で、主人公がないがしろになってしまうという大きな欠点でもあった。
      • アーチャーと遠坂凛等、特定の組み合わせでの状況は一部のFateファンからすれば実にニヤリと出来るイベントでもあるが、そういうのを抜きでサーヴァント(助けてくれるキャラクター側とも)と恋愛関係を楽しみたかった人にとっては複雑なものである。
    • こうした賛否両論の声があったからか、リメイクの際に抜本的に変更すると プロデューサーのTwitterにて名指しで指摘されてしまった。

ヤバいラスボス

  • ラスボスも所謂サーヴァントであり最後はそれと戦うことになるのだが、こっちは宗教的な意味で色々と危ない。それこそFateシリーズ・TYPE-MOONシリーズでもトップクラスに取り扱いづらい三大存在の一つであるいっていいかもしれない。
    • この人物をサーヴァントとして出したTYPE-MOONは恐れを知らない、と言われても当然である。或いは宗教観の緩い日本だから出来た事と言うべきか。
      • 同格を張れそうな英霊候補は他にもあと二名ほどいるが、他が宗教的にうるさい過去事例もある為ある意味一番無難な人物ともいえる。
    • さすがに配慮したのか、その真名はゲーム中はおろか、関連書籍でも一切口にされない。一方、見た目をはじめとしてあらゆる点で一目瞭然であり、あからさまに示唆するようなスタッフの発言*9もあるが。
      • というか危なさという点では同じく影響を受けていたとされるこれこれに匹敵するレベルである。*10
    • ちなみにこのサーヴァント、絶対即死の特殊スキルはあるもののターンが長引かないと使わない上、ステータス値はお世辞にも高いとは言えないため、その点を踏まえてプレイすればその前の決勝戦の相手のほうが強いということにもなってしまう。何れにせよ速攻で勝負をつけることになるため印象に残りづらく、「え?これで終わり?」と思ったプレイヤーが続出した。*11

問題点

やりこみの物足りなさ

  • 入り込みやすさの為にかあまり複雑には作られておらずお手軽といえるが、あまりアリーナ探索と戦闘は深くないともいえる。この面はTYPE-MOONでは初のRPG作品であったこともあり、実験的な新作だったともいえるか。
    • 二周目以降が条件となる隠しボスの登場、資金、装備品の引き継ぎ等あるが、隠しボスはともかく資金は回復アイテム購入位でしか使い道がなくなり、装備品も二周目で普通にまた手に入るのであまり続行意欲に繋がるとはいえない。
      • 後述するが、ルート分岐も2つしかない上に差異が少ないため余計にやり甲斐がない。
    • また、雑魚戦におけるコマンド開示状況も引き継がれる。確かに戦闘は楽になるのだが、実際には頭を使う戦闘が作業になるだけ。サーヴァント戦は装備品以外変わらない(最終的には装備品もほぼ変わらなくなる)ので結局レベル上げも必要となり、作業戦闘を延々と強いられる。
    • チュートリアルも一周目、二周目以降問わず強制。特に二周目以降のチュートリアルは非常にかったるい。

シナリオの粗

  • シナリオは全体的に見れば質が高いが、粗や不満点が多い。
    • 冒頭で触れた通り愛称を入力する機会があるものの、入力した愛称の出番はほぼ無い。
    • 途中のイベントで令呪を1つ使用せず残しておく事ができるが、結局最後まで使えない。
    • 全体のルート分岐も2ルート存在するが、起こるイベントは同じで、キャラクターの配役が入れ替わるだけ。もちろんキャラが違えば会話内容や戦う敵は異なる*12が、やっている事はほとんど同一である。それ以外の分岐は特に無い。
      • 全く異なる性格のキャラクターが全く同じ行動を取るのは、1周目では気にならなくとも、2周目では違和感を感じるかもしれない。
      • また、サーヴァントは3人いるのにルートは2周。全員をひと通りプレイしようとすると、3周目はすでにプレイしたルートをプレイしなくてはならない。前述したように周回プレイは作業感が強いので、いろいろと厳しい。
    • サーヴァント達とはマイルームでの会話イベント等が充実しており、それによって能力強化や特殊アイテムの入手、また親密な態度になっていく等があるが、それは結局シナリオの本筋ともエンディングやルート分岐とも何ら関わりがない。
    • 女主人公は実質男主人公の流用といったところで、文章での一人称が「俺」から「私」、一部キャラクターの呼び方が「坊や」→「お嬢ちゃん」、「お兄ちゃん」→「お姉ちゃん」になる程度である。一部の台詞も「中性的」というよりはやけに「男らしい」もののままだったり(アーチャーとキャスターのマイルームイベントのみ、一部で性別による差異がある)。
      • 更には女主人公・キャスターの組み合わせの場合、終盤でとある人物が女主人公を差して「」と思いっきり言ってしまっている。差し替え見落としか。
    • 全体的にも、人によっては救いがない鬱シナリオと感じられるシナリオとなっている。
      • 大きなネタバレなので詳しくは書けないが、特にエンディングは「納得いかない」の声も多い。後述の『Fate/EXTRA CCC』に登場するあるキャラクターの行動原理が今作のエンディングへのアンチテーゼともとれる事から、公式としても納得いかなかった部分があったのかもしれない。
  • 実績のある奈須氏が全文シナリオを書いているので全体的に見れば質は非常に高く、これらの不満点は些細な粗ではある。しかし一つ一つは些細でも量が多いため、それがどうしても目立ってしまう。
    • そもそもシナリオは、元々奈須氏が監修、他のライターが執筆と言う形だったのだが、何らかの事情で奈須氏が全文を書きなおす事になった。そのため、すでに出来ている素材の関係による制約が大きく、奈須氏自身もいろいろと不満だったようである。

総評

シナリオ、アリーナ、戦闘、それぞれが手放しで褒めるにはひと味足りないものの、よくまとまった出来。新たなFateシリーズの一作として確かな出来となっている。
その中でも特にキャラクター達の魅力と人気は確かなもので、本作デビューの主人公のキャスターは公式人気投票で女性キャラ部門3位を獲得し、第二回ではセイバーも9位へランクインするなど、着実にTYPE-MOON作品の中でも大きな存在感を発揮していった。


その後の展開

  • 本作の外伝的続編である『Fate/EXTRA CCC』が2013年3月28日に発売された。
    • ただしそのCCCは、当初の2012年春発売予定から冬、と思ったら2013年2月、かと思えばさらに3月28日とほぼ一年延びてしまった*13
  • 2016年11月10日に世界観やキャラを引き継いだ新作『Fate/EXTELLA』が発売された。
  • 2017年に、『EXTRA』を原作としたアニメ『Fate/EXTRA Last Encore』が発表され、2018年に放送された。
    • 事前情報から、『Fate/EXTELLA』の前日譚にあたる『EXTELLA/Zero』になるのではないかとも予想されていたが、実際は完全な別物だった。
    • しかもその内容ときたら奈須氏自身が大幅にアレンジを加えた結果、『EXTRA』でラスボスに負けた後の後日譚とも言える完全な独自ルートの内容で、原作ファンからすら賛否分かれている。
      • 『EXTRA』とも全くの別物、かつそれ自体に触れていないと分かりづらい事が多い点等もあり、評価している側の人からも「他のアニメ化のように、『EXTRA』をそのままアニメ化した方が良かったのでは…」と言われている。
  • 2020年に現行機向けリメイク『Fate/EXTRA Record』が発表された。

余談

  • 本作のシナリオは本編同様、奈須氏ではあるが氏は当初は監修でありシナリオを直接執筆していた訳ではなかった。*14
    しかし、いつの間にかシナリオ全体を執筆するようになっており、これの影響で本作は発売日を当初の春から夏へと延期してしまっている。
    • 当初のシナリオ担当者は『ルミナスアーク』『スーパーロボット大戦K』のシナリオを担当した小峰徳司氏であったとの噂がまことしやかに広まっているがこれは根拠のない憶測に過ぎず、前任者についての情報は明かされていない。
  • ちなみに『EXTRA CCC』は発表当初から奈須氏がシナリオを担当することが決まっていた。
+ タグ編集
  • タグ:
  • RPG
  • マーベラスエンターテイメント
  • TYPE-MOON
  • イメージエポック
  • Fate

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年12月12日 13:56

*1 有限会社ノーツのアダルトゲームブランド。

*2 竹箒日記 : 2013/08(http://www.typemoon.org/bbb/diary/log/201308.html)より。

*3 …ただし、制作過程の都合なのか、愛称は本編ではまったく使われず、セーブデータで確認出来るのみである

*4 明らかに男装ではないどころか、女性としてもかなりセクシーな衣装なのだが、一応本人は男装と主張している。

*5 「名前を忘れさせる固有結界」を使用する敵サーヴァントに対して、自分自身を『フランシスコ・ザビエル』と呼びかける選択肢から

*6 シナリオ担当の奈須氏の小説。

*7 正確に言うならその生い立ちや戦う理由はstay nightのキャスターと似ていなくもない。また月姫のとあるキャラクターとよく似ているという意見がファンからも公式からもある。

*8 彼の愛刀である干将・莫耶に加え、赤原猟犬、熾天覆う七つの円環、偽・螺旋剣が使える。

*9 キャラクター原案でTYPE-MOON代表の武内氏は「手塚治虫の○○○を買ってきて一気読みした」と言っている

*10 こちらは名前がハッキリ出ている。発売された時代の違いか。

*11 この事からファンの間で、「ラスボスの名にふさわしい実力を持っているとは言い難いキャラ=ラスボス(笑)」という蔑称が付けられてしまった。

*12 4回戦、6回戦のみ。5回戦・決勝戦・ラスボスに関しては、敵は全く同じで、ヒロインが絡まない部分は会話もイベントも完全に同じ。

*13 TYPE-MOONがこの手の発売延期を繰り返すのはいつものことなのだが。

*14 前述したように、すでに完成していた素材の関係上、結末に関しては修正することが出来ずその結末の評判が今一つなこともあり、何とかしたかった旨をインタビューで語っている。