Cardinal Syn

【かーでぃなる しん】

ジャンル 対戦格闘

対応機種 プレイステーション
発売元 Sony Computer Entertainment America
989 Studios
開発元 Kronos Digital Entertainment
発売日 1998年6月30日
備考 日本未発売
判定 なし


概要

PS/SSの『クリティコム』、その続編にあたるN64の『Dark Rift(邦題:『スペーツダイナマイツ』)』に続く、今は亡きクロノス・デジタルエンタテインメントの3D武器格闘ゲーム。
前2作品はそれぞれ日本でも販売されていた。『ソウルキャリバー』の影響を色濃く受けている。全キャラクターが武器を持ち、360度自由に動き回る事ができる。
ステージにアイテムが落ちていたり、罠がしかけられていたりと言った要素もある。


ストーリー

様々な種族が住むブラッドランド。彼らは絶えず争いを繰り広げてきたが、ある時謎の人物が姿を現し、知識の書を読んで平和の大切さを説いた。
全種族は初めて武器を持たずに集まり、平和のシンボルとしてアミュレットを掲げ、争いの日々に終止符を打った。それからどれだけの日々がたっただろう。
謎の人物は「役目が来た」と言葉を残し、知識の書を巻物にして各種族に配った。謎の人物が姿を消すと、誓いは破られ再び争いの日々が訪れる。
そんなさなか、アミュレットを掲げて1人の女が知識の書を収集した。その女の名前はSyn。種族たちは再び平和な日々が訪れることを信じていた。
だが、彼女は知識の書を三本の剣に変え、その内容を剣に刻み、「全種族から最高の戦士を選出しろ。優勝者はブラッドランドを統治し、知識の書の秘密を知ることができるだろう。」と言った。
Synの言葉で各種族はそれぞれの最高の闘士を選抜し、再び争いを繰り広げた。
このトーナメントによって7人の闘士が戦死し、1人の闘士が生き残ったが、彼もまたSynの魔力によって滅ぼされてしまう。
未だ種族同士の殺戮、Synのトーナメントは続いている。知識の剣を手に入れるため、各種族は再び最高の闘士を捧げた。


システム

  • 斜め見下ろし視点の360度3D格闘ゲーム。
    • 全体的に『ソウルエッジ』を劣化させたような内容だが、大きく異なるのは体力でキャラクターに付く血痕の量が変化したり、後述するFatalityコンボがあったりと「モータルコンバット」のような残虐要素があること、ステージ上にアイテムや罠などギミックがあること。
    • ステップ移動のほか、ステージ上を自由に走り回る操作もある。
  • 使用可能キャラクターは8人の標準キャラクターと、それぞれのキャラに中ボス的なコンパチキャラ、ラスボス2種類を加えて16人。
    • コンパチキャラは基本的に元キャラクターの技コマンドを少し入れ替えたような程度だが、必殺技については差別化がなされている。
  • ステージに応じてトラップやアイテムが出現。接触する事でダメージを受けたり、特別な効果を発揮したりする。
    • ステージ上にランダムに配置される宝箱にアイテムが入っている。後述するマジックアタックのストックが増える「青い薬瓶」と、体力を回復する「黄い薬瓶」に加え、一時的に攻撃力が1.5倍になる「マジックソード」があるが、ダメージを食らう爆弾が入っていることもあるので注意。
  • タイミングよく入力することでコンボを弾くスタンブロック、攻撃を受け流すスタンスローなど従来の格闘ゲームに見られるようなシステムもある。
    • ガードをしすぎるとクラッシュするという、これまたよくあるシステムも導入されており、タイミングよくスタンブロック(スロー)を決めていく戦略となる。
    • ちなみに、スタンブロックもスタンスローも、説明書には操作表に申し訳なく書いてある程度で、その使い方すら載っていない…。
  • 各キャラクターにFatalityコンボが用意されている。
    • 端的に言えばモータルコンバットシリーズにおける「究極神拳」のように、相手にとどめをさして殺害する技のこと。メーカーが技の公開を自粛していたため公式的な呼び方は不明だが、当ページでは便宜上Fatalityコンボと呼ぶことにする。
    • 「次に自分が勝つラウンド」または「最終ラウンド」で、特定のコンボルートの最後の一撃が当たると相手を即死させる技が発動する。この際、相手の首を飛ばしたり四肢をバラバラにしたりといった残虐演出があり、決めた瞬間に試合が終了する。Fatalityコンボの発生条件には残り体力(半分以下)も関わっているようだが、基本的に最後の一撃が当たると発生する。
    • 最終ラウンド以外でも決めることで大ダメージを与えられる強力なFatalityコンボだが、いかんせんスキが大きくコンボルートも固定されているため見切られやすいという欠点もある。
    • チートを使用することで最終ラウンド以外でも即死させることができる。その場合次ラウンドで死んだキャラが復活している。

評価点

  • ストーリーやキャラ設定など、独特な中世の雰囲気が色濃く出ている。
    • とくにオーケストラ調の壮大なBGMは優秀で、本作を象徴する要素と言っても過言ではない。
    • キャラクターには人間タイプの正統派もいれば妖精や狂人ピエロ、2人の男女が継ぎ接ぎされた人間や骨だけで出来た怪物など個性的な面々が揃う。知識の書を平和のために手に入れようとするキャラもいれば自身の欲のためにトーナメントに参加するキャラもいたり、特定の種族同士の争いに決着をつけるために戦うキャラもいる。
    • 本作の持つ残虐要素も相まって、全体的にダークファンタジーのような世界観をかもしだしている。
  • ラスボス、Kronのインパクト。
    • Synが進化したドラゴンのようなキャラクターだが、他のキャラよりも遥かに巨大であり、火を吐いたり空を飛んでステージ上を飛び回ったりなどラスボスとしてのインパクトが非常に高い。
    • 見晴らしのいいステージとBGMの完成度がマッチして、最終決戦にふさわしい内容になっている。
    • 巨大で強力ながら、隠しキャラでプレイヤーとして使用可能。操作に制約もなく、Fatalityコンボもお手軽なので対人戦ではチート級の強さを誇る。
  • 北米産ながら、PS1用格闘ゲームとしての体裁は丁寧。
    • 鉄拳2のプラクティスモードにある「10連コンボ練習」そのまんまのコンボ練習が備わったトレーニングモード、バリエーションとしてチームバトルやサバイバルなどを搭載し、家庭用オリジナルながらコンシューマ格闘ゲームとして最低限のモードを備えている。隠し要素もあり、オートセーブやオートロード機能も搭載している。スタート+セレクトのソフトリセットまである。
      • これらは当時の日本のPS1格闘ゲームでは至極当たり前のことだが、北米産のPS1格闘ゲームは基本的にアーケードからのベタ移植作品で、家庭用として必要最低限のモードしか無かったり、隠し要素がほとんどなかったり、メモリーカードに対応していない作品が多かった。本作はPS1オリジナルの格闘ゲームであり、前年に販売された『モータルコンバット4』や同時期に出た『Bio F.R.E.A.K.S』と比較してもそこそこ充実した内容となっている。
      • 同年発売予定だったと思われる『Thrill Kill』も同じように体裁だけが良かったが、内容が不謹慎要素だらけだったため発禁になっている。*1

問題点

  • ゲームバランスは良くない。
    • 攻撃の速いキャラと遅いキャラで格差が開いてしまっている。それぞれのキャラが持つコンボも、振りの遅いキャラは見抜かれやすく途中でガードやスタンブロック出来てしまうという崩壊っぷり。
    • CPUも強めで、最弱設定でも3キャラ目あたりからガンガンスタンブロックを使ってくるようになる。
    • ラスボスのKron戦は時間制限がなく、長丁場になりがち。
  • 不要なマジックアタック。
    • マジックアタックとは、戦闘中に青い薬瓶を拾うことで使えるようになる魔法攻撃のこと。ほとんど性能が悪く、初期モーションが大きい上に相手が回避しやすいため使い物にならない。
    • マジックアタックのストックを最初から1つ持っているキャラもいれば、マジックアタック自体がないキャラなど、微妙なところで差がでてしまっている。もっともあろうがなかろうがほとんど変わらないのが救いでもある。
  • 一部ステージの戦いにくさが尋常ではない。
    • 代表的なものがMongoroの洞窟ステージ。半月状の構成で内側にはトゲがあり、しかも至る所にマグマの流れる場所があり触れるとダメージを受けて倒れてしまう。全体的に狭く暗い炭鉱でトロッコが走るMckriegのステージも戦いにくい。サーカスの回転床で戦うHecklarのステージについては視覚的に酔いやすい。
  • 救われないストーリーのキャラがいる。
    • エンディングもキャラによってハッピーエンドだったりバッドエンドだったりする。シンを倒し自身の平和を取り戻した救われる展開もあれば、知識の書(剣)が災いして報われなかったキャラクターも。
  • 謎の人物について。
    • ブラッドランドを治め、プレイキャラクターではないが重要な役割を果たした彼の行動にも謎が多く、巻物をばら撒いた後に姿を消した理由も明確にわかっていない。Synが征服していた時には姿を現さないが死んでいたわけではなく、とあるキャラクターのエンディングに登場していたりする。
    • Synを倒しただけの力を持つキャラを軽々と吹っ飛ばすほどの力を見せつけるが、Synが現れてから今までなぜ黙り込んでいたのか?
  • 必ずついてまわる残虐要素。
    • 残虐要素はオプションである程度規制出来ても完全にオフにすることは不可能。挿入されるムービーもキャラクターによって残酷な表現を含んでいるものがあり、避けるにはムービーをスキップするしかない。

総評

中世風の雰囲気とそれにマッチしたBGMの完成度など、ダークファンタジーのような世界観が構築されているのが評価できる作品。 正直ゲームバランスが悪く、本格的な格闘ツールとしては期待できるものではない。
しかし、アクの強いキャラクターやB級感漂うストーリーなど当時の洋ゲーらしい独特な雰囲気を味わえるという点もあり、マニアックなバイオレンス格闘ゲームを楽しみたいプレイヤーにはおすすめできる作品である。


余談

当時スパイクによって国内販売が画策されており、東京ゲームショウに出品した事もある。

  • 国内では『カーディナル・シィン ~原罪のシギルルム~』というサブタイトル付きでリリースされる予定だった。
  • しかし、ローカライズにあたり斬首・四肢切断・血しぶき・血の色といった残虐要素をプログラム上カット・変更することができず、最終的にはSCEのチェックを通せず発売中止となった。
  • 当時の販売担当がゲーム業界には明るくなく、加えて本国ではSCEA(Sony Computer Entertainment America)並びに傘下会社の989 Studiosが販売を担当していたため、日本のSCEでも当然許可が下りるものと考えていたらしい。
  • デベロッパーであるクロノス・デジタルエンタテインメントはその後、EidosからPSにてセルシェーディンググラフィックを多用したアクション・アドベンチャーである『Fear Effect』とその続編である『Fear Effect 2: Retro Helix』をそれぞれ2000年、2001年にリリースしたが*2、2002年に会社組織を解散している。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2021年11月27日 20:20

*1 尤もこっちはアメリカのヒップホップグループ「Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)」をフィーチャーした3D格闘ゲーム、『Wu-Tang: Shaolin Style』にシステムを流用した上で作り変えたことで日の目を見ている

*2 ちなみに日本ではなぜか2作目である『Fear Effect 2:Retro Helix』が『フェリックス フィアエフェクト』のタイトルで2001年11月にリリースされた。