総括所見:モンゴル(第3~4回・2010年)


CRC/C/MNG/CO/3-4(2010年3月3日)
原文:英語(平野裕二仮訳) ※先行未編集版のまま配布

1.委員会は、2010年1月12日および13日に開かれた第1456回、第1458回および第1460回会合(CRC/C/SR.1456、CRC/C/SR.1458およびCRC/C/SR.1460参照)においてモンゴルの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/MNG/3-4)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/MNG/Q/3-4 and CRC/C/MNG/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、締約国の子どもの状況に関する理解の向上を可能にしてくれた、締約国のハイレベルな代表団との建設的対話を評価する。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2010年1月29日に採択された、子どもの権利条約の2つの選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/MNG/CO/1およびCRC/C/OPAC/MNG/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

4.委員会は、以下の法律の制定を含め、条約の実施を目的として多くの立法上その他の措置がとられたことを歓迎する。
  • (a) ヨウ素添加塩によるヨウ素欠乏症予防法(2003年)。
  • (b) HIV/AIDS予防法(2004年)。
  • (c) 母乳代替品法(2005年)。
  • (d) 障害のある市民法(2005年)。
  • (e) 子どもおよび家族に対する金銭援助法(2006年)。
5.委員会はまた、以下の法律の改正にも留意するものである。
  • (a) 社会福祉法(2005年)。
  • (b) 教育法(2006年)。
  • (c) 刑事訴訟法(2007年)。
6.委員会は、締約国が障害のある人の権利に関する条約に加入し(2009年)、かつ経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書に署名したこと(2009年)に、評価の意とともに留意する。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
7.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.32、2005年)の検討後に行なわれたいくつかの懸念表明および勧告について対応が行なわれてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、他の懸念および勧告については不十分なまたは部分的な対応しか行なわれていないことを遺憾に思うものである。
8. 委員会は、締約国に対し、とくに立法、データ収集、差別の禁止、体罰、養子縁組、虐待、ネグレクト、不当な取扱いおよび暴力、生活水準ならびにストリートチルドレンの状況との関連で、これまでの総括所見の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告の十分なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
立法
9.国内法と条約との調整を図るために締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、一部の法規定が条約の原則および規定と全面的に一致しておらず、かつ法律の実施が遅いことを依然として懸念する。
10.委員会は、締約国が引き続き法律を条約の原則および規定と調和させ、かつ国内法の実施を強化するべきであるという勧告を、あらためて繰り返す。委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する包括的法律を策定しかつ実施するよう奨励するものである。
調整
11.委員会は、子どもの問題に対応する3つの機関の存在に表れている、子どもの権利に対処しようとする政治的意思に留意する。しかしながら委員会は、あらゆるレベルで、かつとくに地方レベルでこれらの機関間の調整が不十分であることを懸念するとともに、子どもの権利を実施するための機構を明確にする必要性をあらためて指摘するものである。委員会はさらに、国家子ども評議会がその予定表にしたがって定期的会合および運営活動を行なってきていないことに留意するものである。
12.委員会は、締約国が以下のことに努めるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) 政策立案および子どもの権利の積極的実施を担当する国の機関および地方の国家機関の体制を見直すこと。
  • (b) 調整機関としての国家子ども局の権限を強化するとともに、同局に対し、活動を遂行するための十分な財源および人的資源を提供すること。
国家的行動計画
13.2002~2010年の期間を対象とする「子どもの保護および発達のための国家行動計画」には留意しながらも、委員会は、その実施、監視および評価のための機構に関する情報、ならびに、2007年〔ママ〕以降、子どもの権利に関する後継行動計画が存在するのか否かに関する情報が存在しないことを遺憾に思う。さらに、委員会は、子どもの権利を実施かつ促進するための包括的な国家的行動計画が存在しないことを遺憾に思うものである。
14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 2002~2010年の期間を対象とする国家行動計画を評価しかつ監視すること。
  • (b) 市民社会を含むすべての関連のパートナーと協議しかつ協力しながら、2010年以降の期間を対象とする新たな国家行動計画を策定し、採択しかつ実施すること。当該計画には、人的資源および財源を十分に配分するとともに、その実施において達成された進展を定期的に評価し、かつ存在しうる欠陥を明らかにするフォローアップおよび評価のための機構を組みこむものとする。
独立の監視
15.委員会は、国家人権委員会(NHRC)が行なっている活動、および、3名の委員のうち1名が子どもの問題に対応する権限を与えられていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、子ども自身が苦情を申し立てられないことに、懸念とともに留意するものである。
16.委員会は、締約国に対し、NHRCが、アクセスしやすくかつ子どもにやさしい苦情申立て機構を通じて子ども自身からの苦情を受理する権限および能力ならびに権利侵害に対する救済措置を求める能力および権威を有することを確保するため、 子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、必要な措置をとるよう奨励する。
資源配分
17.委員会は、社会予算、とくに国家予算の20%に達する教育予算を増額するために締約国が行なっている努力を認識する。にもかかわらず、委員会は、経済危機およびインフレならびに汚職が子どもの権利に対する持続可能な投資に悪影響を及ぼしてきたこと、ならびに、子どもの基本的権利の享受のための資源が後退しかつ存在しなくなるおそれが根強く残っていることを、懸念するものである。委員会は、広大な領域を有する国における地域間ならびに農村部および都市部間の格差、ならびに、著しく不利な立場に置かれた家族および子どもによる既存の支援プログラムへのアクセスの困難に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、子ども現金手当プログラムを中止するという政府の決定を遺憾に思うものである。
18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 採鉱活動から得られた資源を管理する人間開発基金に基づくものも含む子どものための資源を増加させること。
  • (b) 国家予算の一環としての子ども予算(教育、保健、暴力の防止、レクリエーション)を、内外のいかなる経済的衝撃または自然災害からも保護すること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、必要に応じて国際協力も求めながら、子ども時代への効果的投資額をはっきりと明らかにする国家予算指標追跡システムを活用するよう、奨励する。
  • (c) 以下の手法を導入すること。
    • 子どもの人間開発に対する真の効果を保障するための、成果ベースの予算策定。
    • 農村部および都市部間の不均衡ならびに地域間格差を縮小し、かつ、具体的目標(特定地域における飲料水の供給、および教育インフラの構築など)を達成することを目的とした、戦略的予算策定。
  • (d) 子ども予算の動向の透明かつ定期的な測定値を明らかにすることを志向した、利用者にやさしい指標システムを構築すること。
  • (e) 子どものための資源を侵食する汚職行為を防止しかつ調査するため、最近設置された国家汚職対策局を強化すること。
  • (f) ドナー活動を支える見返り資金を提供するとともに、可能なかぎり海外援助への依存を少なくすること。
データ収集
19.委員会は、政府機関のウェブポータルサイトを通じた国家情報センターの設置および現在進められている諸事業のような、子どもに関する統計データの収集のために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下の点について懸念を表明するものである。
  • (a) 国家統計局とその他の政府機関との間で、子どもに関連する統計の収集、分析および報告に関する調整が行なわれていないこと。
  • (b) 困難な状況で生活している子どもに関する全国的データの蓄積および分析が不十分であること、ならびに、子ども保護システムが地方分権化されておりかつ未発達であることを理由として、子どもの保護に関する全国的統計が入手できないこと。
  • (c) 信頼できる統計データの収集、処理および取得に関する困難が根強く残っていること。
20.委員会は、締約国に対し、国家統計局が、具体的には調整との関連でその任務を遂行するのに十分な人的資源、技術的資源および財源を有することを確保するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、18歳未満のすべての子どもに関するデータを収集し、既存のデータおよび新たなデータを分析し、かつ、公共政策および積極的差別是正プログラムの策定のために実証的証拠を活用するよう、勧告するものである。
普及、研修および意識啓発
21.委員会は、専門家の研修、公衆意識啓発キャンペーンならびにモンゴル語およびカザフ語で入手可能な条約についての資料を通じ、子どもの権利に関する情報の普及を向上させるために締約国が行なった努力を認知する。にもかかわらず、委員会は、とくに農村部および遠隔地において、関連の専門家集団、コミュニティ、親および子どもたち自身の間で条約に関する意識が不十分であることに、懸念とともに留意するものである。
22.委員会は、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(法執行官、議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員およびメディアを含む)を対象とする、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および感受性強化措置を通じて、とくに子ども、親および子どもとともに働く専門家の間で条約を普及しかつその原則および規定についての公衆の意識を高めるための努力を増強しかつ強化するよう、勧告する。その際、住民の言語上のニーズを考慮に入れるものとする。
市民社会との協力
23.委員会は、締約国報告書作成のための協議のプロセスに非政府組織(NGO)および子ども代表が参加したことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、政策の立案および監視ならびに条約を実施するための戦略の策定へのNGOの参加が限定的であることに留意するものである。
24.委員会は、条約の規定の実施において市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、子どもの権利の促進および実施ならびに委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成における、NGOおよび子ども団体を含む市民社会との協力および調整(政策の策定および協力事業への市民社会の参加を含む)を強化するよう勧告する。

2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
25.委員会は、脆弱な立場に置かれた子どもを差別から保護するための措置が原則としてはとられてきたことに留意する。しかしながら委員会は、ジェンダーに基づく差別が男子および女子の双方に影響を与えていること、および、実際には、子どもが、とくに子どもの民族集団、障害、生活水準もしくは子どもの家族の生活集団を理由としてまたは子どもの居住地によって不平等な取扱い(alag uzdeg)を経験していることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、西部地域の住民ならびにカザフ系マイノリティその他のマイノリティの間に存在する不平等についても懸念を覚える。
26.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を監視しかつ確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、社会のすべての部門における子どもへの差別の事案に対して効果的対応がなされることを確保するよう促すとともに、このような具体的情報が、2009年のダーバン・レビュー会議をフォローアップするためにとられた措置に関する情報とともに、次回の定期報告書で提供されることを要請する。
子どもの最善の利益
27.委員会は、子どもの最善の利益を第一次的に考慮する現行国内法が豊かに存在することに留意する。にもかかわらず、委員会は、実際には規定が十分に執行されていないことを遺憾に思うものである。
28.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の一般原則がすべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に編入されることを確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。
生命、生存および発達に対する権利
29.委員会は、すべての子どもに対して安全な、安心できる、かつ暴力のない環境を確保するための機構を洗練させる目的でとられた締約国の措置、および子どもを保護する法律の存在を評価する。にもかかわらず、委員会は、子どもがますます事故(交通事故および馬その他の家畜に乗っているときの事故を含む)の被害を受けており、かつ、2005年の副首相令の実施および執行が不十分であることをひとつの理由として、子どもの騎手の負傷および死亡が引き続き起きていることを、遺憾に思うものである。
30.条約第6条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 締約国のすべての子どもの生命に対する権利の保護を強化するため、あらゆる努力を行なうこと。
  • (b) 事故防止に関する意識を高め、かつ事故防止に関する公衆情報キャンペーンを行なうための努力を強化しかつ継続すること。
  • (c) 現行の国家怪我予防計画の医療志向を補完する、より幅広い対策を策定すること。
子どもの意見の尊重
31.委員会は、締約国が子どもの意見の尊重の原則を関連法制に編入したことに留意しながらも、実際には、現行規定の執行が不十分なことを理由として、この原則が実施されていないことを遺憾に思う。さらに、委員会は、子どもの参加に関する国家政策案(2005年)がまだ議会承認を得ていないことを遺憾に思うものである。
32.委員会は、締約国の第2回報告書に関わる前回の勧告(2005,CRC/C/15/Add.264、パラ26)を想起しつつ、締約国が、子どもの意見の尊重の原則をさらに促進し、推進しかつ実施するとともに、家庭、学校、コミュニティレベル、施設ならびに司法上および行政上の手続における、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を促進するよう、勧告する。委員会はまた、議会が子どもの参加に関する国家政策案を承認し、かつ条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮することも勧告するものである。

3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a))

出生登録
33.委員会は、2006年以降、締約国で出生証明書が無償で発行されていることに留意する。しかしながら委員会は、出生登録率が高いにも関わらず、とくに国内移住、出生登録所の遠さ、および、出生登録の重要性に関する牧民家族の意識の欠如を理由として、出生の10%近くが登録されていないことを懸念するものである。
34.委員会は、締約国が、遠隔地および牧民家族の子どもにとくに焦点を当てながら、すべての子どもを登録するための努力(期限後の登録を無償で行なえる機会の提供も含む)を継続しかつ強化するよう、勧告する。
適切な情報へのアクセス
35.子どもによる情報技術へのアクセスが改善された旨の情報、および国民的マイノリティを対象とする公共テレビ・ラジオ番組に対する締約国の支援は歓迎しながらも、委員会は、一部の番組について、子どもの発達上および教育上のニーズを満たし、かつ内容および情報が年齢相応のものであることを確保するための改定が必要であることに、懸念とともに留意する。
36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) すべての子ども、とくに遠隔地および農村部に住んでいる子どもに対し、その年齢およびニーズに一致する適切な情報への公平なアクセスを全面的に保障するための努力を強化すること。
  • (b) 子どもが適切な情報にアクセスできることを全面的に保障しつつ、子どもを有害な情報から保護するための適切な指針を策定すること。委員会はさらに、締約国が、「子どもとメディア」に関する一般的討議から生まれた委員会の勧告(1996年、CRC/C/57、パラ242-257)を考慮するよう、勧告する。
体罰
37.委員会は、しつけおよび規律のための措置の関係で行なわれる子どもの体罰に対処するために行なわれた努力には留意するものの、子どもが生活するあらゆる場面において体罰が広範に観測されているという懸念をあらためて表明する。
38.委員会は、締約国に対し、あらゆる場面(家庭および代替的養護制度を含む)における、しつけおよび規律の手段としてのあらゆる形態の子どもの体罰を防止しかつ終わらせるための法律を導入しかつ執行するよう、促す。さらに、委員会は、締約国が、体罰に関する公衆の態度を変革し、かつ、代替的形態のしつけおよび規律が、子どもの人間の尊厳と一致する方法でおよび条約(特に第28条2項)にしたがって、ならびに体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/GC/2006/8)を考慮しながら行なわれることを確保する目的で、子どもの関与を得ながら公衆教育、意識啓発および社会的動員のためのキャンペーンを実施するよう、勧告するものである。
子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ
39.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに対する暴力に関する東アジア・太平洋地域協議(バンコク、2005年6月14~16日)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連の独立専門家報告書に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 以下の勧告に特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力を撤廃するための関わる同研究の勧告の実施を優先させること。
    • 子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。
    • 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。
    • 子どもに対する暴力のジェンダーに関わる側面に対応すること。
  • (c) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的、精神的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。
  • (d) 次回の定期報告書において、子どもに対する暴力に関する研究の勧告を締約国がどのように実施したかに関する情報を提供すること。
  • (e) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)に対し、前掲の目的のための技術的援助を求めること。

4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
40.委員会は、基礎的な社会サービスを提供し、子育てスキルに関する自習教材を開発し、かつ子どもの養育に関する専門家による援助を親に提供するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、家族法改正に関する決定が2006年以来まったく行なわれていないことに懸念を表明するとともに、シングルマザーが世帯主である家族が増加していること、および、親のケアを受けていない子どもの新たな集団(親の出稼ぎにより取り残された子どもおよび一時的に家族の世帯主となっている子どもを含む)が形成されていることに留意するものである。
41.委員会は、困窮している親および家族に対して可能なかぎり必要な支援を提供すること(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ34)ならびに非暴力的な、積極的なしつけおよび規律の手法を促進するプログラムおよび教育プログラムを発展させること(パラ30)を求めた締約国への勧告を、あらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) ホロー(小地区)およびソム(郡)のレベルに家族支援センターを設置するとともに、これらのセンターに十分な専門的資源(子どもの権利に対応する訓練を受けたソーシャルワーカーを含む)を提供すること。
  • (b) 家族法改正を採択すること。
  • (c) 受益者が養育手当にアクセスできることを確保すること。
  • (d) 子どもの権利に関する専門のソーシャルワークサービスを導入し、子どもおよびその家族のためのこれらのサービスが効果的に実施されるようにするための法的環境および体制を向上させ、かつ、実績モニタリングのための手続を設けること。
家庭環境を奪われた子ども
42.委員会は、家族から分離された子どものための代替的養護サービスを導入し、子どもを養護する施設および職員を対象とした養護および質に関する最低基準を整備し、かつ、親族養護および里親養護プログラムを優先するためにとられた措置を認知する。しかしながら委員会は、養護施設の体系的な監督および管理が行なわれていないこと、子どもが養護施設に送致される際に措置の再審査またはケースマネジメント・サービスが行なわれていないこと、および、施設措置に代わる手段を提供しうる体系的かつ全国的な児童福祉体制が整えられていないことを、懸念するものである。
43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) もっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供し、かつ意識啓発キャンペーンを実施する等の手段によって入所型養護センターへの子どもの措置を防止することに焦点を当てたプログラムおよび政策を発展させること。
  • (b) 入所型養護センターの子どもが家族と再統合できるようにするため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (c) 基準規範を定めるとともに、とくに必要な人的資源および財源の供給を確保することにより、条約第25条にしたがい、施設に措置された子どもについて定期的再審査を行なう包括的機構を設置すること。
  • (d) 2009年11月20日に採択された国連総会決議A/RES/64/142に掲げられた、子どもの代替的養護に関する国連指針〔PDF〕を考慮すること。
養子縁組
44.国内および国際の養子縁組を規制するためのさまざまな立法措置には留意しながらも、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の実施担当機関に関する情報がないこと、養子を受け入れようとする家族のための支援サービスが存在しないこと、養子縁組を審査し、監視しかつフォローアップする機構が存在しないこと、里親養護および養子縁組に関する統計がないこと、ならびに、国内養子縁組の手続全体を通じた子どもの意見〔の尊重〕に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はさらに、国際養子縁組の手続が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に全面的に一致していないことを懸念するものである。
45.委員会は、委員会の前回の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ36)を繰り返しつつ、締約国に対し、里親養護および養子縁組(スクリーニングを含む)を規律する包括的な国家的政策および指針ならびにこの点に関する中央監視機構を確立するよう促す。委員会はまた、締約国が、国内および国際の養子縁組を規律する手続が子どもの最善の利益にしたがって、かつ条約第21条および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の原則および規定に全面的に一致される形で進められることを確保するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、関連の制度的基盤を確立するとともに、とくに、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の実施に対応する権限および能力を備えた国家機関を設置するよう、提案する。
虐待およびネグレクト
46.子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うために行なわれてきた活動は認知しながらも、委員会は、子どもの虐待およびネグレクトが根強く生じており、とくに女子に影響を与えていること、および、子どもの保護のための包括的戦略が存在しないことを懸念する。さらに、委員会は、強姦および近親姦を禁じた現行法の規定が十分に執行されていないこと、男子に対する犯罪への制裁および女子に対する犯罪への制裁が平等でないこと、ならびに、強姦を含む性的虐待の被害を受けた子どもがしばしば十分な保護および(または)回復のための援助を受けておらず、犯罪の加害者として扱われる可能性さえあることに、懸念を表明するものである。さらに、委員会は、家庭における性的虐待が国内刑法に基づいて訴追されまたは処罰される割合が低いことを遺憾に思う。
47.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭におけるあらゆる形態の子どもの虐待および暴力を禁止し、かつ強姦および近親姦の禁止規定を執行すること。
  • (b) 子どもの虐待の原因を明らかにしかつこれに対処し、危害を防止し、かつ子どもに対する暴力および有形力の行使ならびに子どもに関わるネグレクトに対応する目的で全国レベルの基礎研究を実施するとともに、その知見に基づき、虐待の被害を受けた子どもの保護および回復のための全国的システムを発展させること。
  • (c) 家庭および施設における暴力、性的虐待およびネグレクトの事案数ならびに規模を監視するための機構を強化し、かつ、これらの機関間の調整を向上させること。
  • (d) 子どもの虐待に関する通報機構を確立すること。
  • (e) 子どもとともに働く専門家が、子どもに影響を及ぼす家族間暴力が疑われる事案を通報しかつ適切な行動をとる自己の義務について研修を受けることを確保すること。
  • (f) とくに子どもの虐待およびネグレクトを防止する目的で、意識啓発キャンペーンを強化し、かつ情報、親に対する指導およびカウンセリングを提供すること。
  • (g) 虐待およびネグレクトの被害を受けた男女の子どもが十分な支援を受け、かつ回復、カウンセリングその他の形態のリハビリテーションのためのサービスに平等にアクセスできることを確保すること(子どもおよびその家族に対して無償の心理カウンセリングを行なうセンターをすべてのアイマグ(県)に設置することも含む)。

5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項))

障害のある子ども
48.締約国が行なった努力は認知しながらも、委員会は、障害のある子どもが直面している多数の問題について依然として懸念を覚える。とくに、委員会は、障害者の法的定義が広すぎること、および、法律上の規定の矛盾が障害者に悪影響を与えていることを懸念するものである。さらに、委員会は、インフラが適切に整備されていないことならびに教育、社会福祉および保健サービスに障害児がアクセスできないことによる障害児の社会的排除について、著しい懸念を覚える。委員会は、全般的に、障害のある子どもが「尊厳を確保し、自立を促進し、かつ地域社会への積極的な参加を助長する条件の下で、十分かつ人間に値する生活」を享受するうえで直面している困難に留意するものである。
49.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を引き続き強化し、かつ、とくに以下の目的のために条約第23条および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮するよう、勧告する。
  • (a) 障害のある子どもに関する正確なかつ細分化されたデータを国および地方のレベルで収集するとともに、障害のある子どもに関するデータベースを設置すること。
  • (b) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を策定すること。
  • (c) 障害のある子どもが教育(職業訓練を含む)に対する権利を可能なかぎり最大限に行使することを確保すること。
  • (d) とくに地方レベルで必要な専門的資源(たとえば障害に関する専門家)および財源を利用可能とし、ならびにコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親支援グループ、および専門家の研修を含む)を促進しおよび拡大するため、いっそうの努力を行なうこと。
  • (e) 家族支援およびコミュニティの関与にとくに焦点を当てながら、障害のある乳児および未就学児を対象とした早期発見・早期介入サービスを発展させること。
  • (f) 障害のある子どもに対する積極的かつ差別のない理解および見方を奨励するため、子ども、親、家族、養育者およびコミュニティの間で公衆の意識啓発のための取り組みを行なうこと。
健康および保健サービス
50.保健分野で締約国がとったさまざまな措置を歓迎し、かつ乳幼児死亡率の低下に留意しながらも、委員会は、微量栄養素の欠乏および慢性的栄養不良を反映して、とくに5歳未満の男子の間で発育阻害およびくる病が根強く生じていることを懸念する。委員会はさらに、保健予算の減少傾向について懸念を覚えるとともに、予算のほとんどがインフラおよび身体的健康のために配分されており、情緒的健康および社会的支援(薬物およびアルコールを使用する子どもを対象とするものも含む)が軽視されていることに留意するものである。
51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) プライマリーケア・サービスにとくに注意を払い、もっとも脆弱な立場に置かれた家族のニーズに対応し、かつ、子どもの健康の社会的決定要因に十分に対応するための現代的公衆衛生アプローチを適用しながら、すべての子どもに最高水準の健康が提供されることを確保する保健ケア制度を引き続き発展させること。
  • (b) 母子の保健ケアおよび発達を担当する政府機関の、国および地方のレベルにおける設置を検討すること。
  • (c) 条約第24条(c)に照らし、安全な飲料水へのアクセスおよび衛生的な慣行を向上させるための措置を強化すること。
  • (d) 母性保護に関するILO第183号条約(2000年)を批准すること。
52.さらに、委員会は、締約国が、高い栄養不良率に緊急に対応するとともに、子どもの基礎的な健康および栄養、母乳育児ならびにビタミンAおよび亜鉛による強化または補完の利点、個人衛生および環境衛生ならびにリプロダクティブヘルスについての情報を親および養育者に対して提供するための、コミュニティを基盤とするプログラム、意識啓発キャンペーンおよび微量栄養素キャンペーンを発展させるよう、勧告する。
思春期の健康
53.委員会は、アイマグ(県)の中心部およびウランバートルの諸地区において青少年にやさしい保健サービスのモデルを発展させようとする努力に留意し、かつ、全国AIDS委員会が再設置されたことに評価の意図ともに留意する。しかしながら委員会は、思春期の健康に関する情報(思春期の健康問題に関する細分化されたデータ、リプロダクティブヘルス問題についての情報および既存の思春期保健サービスに関する情報を含む)が不十分であることを遺憾に思うものである。
54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 思春期の健康問題の性質および規模を理解する目的で、青少年の全面的参加を得ながら包括的研究を行なうとともに、思春期の健康に関する政策およびプログラムを立案する基盤としてこれを活用すること。
  • (b) 条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年、CRC/GC/2003/4)を正当に考慮しながら、すべての青少年を対象とするリプロダクティブヘルス・サービス(学校における性教育およびリプロダクティブヘルス教育ならびに若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよび保健ケアのサービスを含む)を促進し、かつこれへのアクセスを確保すること。
精神保健
55.委員会は、子どもの精神保健問題に対応するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、抑うつ、ストレス、タバコおよび薬物への依存ならびに行動障害の影響を受けやすくなっている子どもがとくに都市部の子どもの間で増えており、かつ、これらの公衆衛生上の問題に積極的に対処する効果的な予防介入策がとられていないことに、強い懸念を表明するものである。委員会は、締約国における子ども、とくに女子の自殺について非常に懸念を覚える。
56.委員会は、締約国が、WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、重度の精神保健上の問題を有する子どもおよび青少年を対象とした外来および入院による精神保健サービスを含む)を備えた包括的かつ全国的な子どもの精神保健政策を、影響を受けている子どもにスティグマを付与することのないような形で策定するよう勧告する。委員会はまた、初等学校および寄宿学校に初めて出席する子どもが、その認知t系、社会的および情緒的発達上のニーズを支えるための援助を利用できるようにすることも勧告するものである。
生活水準
57.委員会は、同国において広範な貧困が根強く残っていることに懸念とともに留意し、かつ、生活水準に関する地域格差が大きいことに懸念を表明する。委員会は、都市部と農村部の環境に大きな不平等があることをもっとも懸念するものである。さらに、委員会は、所得関連の指標ならびに食料、住居、教育、安全な水、十分な衛生設備および安全な衛生慣行へのアクセスによって数値的に明らかにされているように、多くの子どもの全般的生活水準がきわめて低いことを懸念する。委員会はまた、都市スラム地域で生活している子どもの状況、および、ゲルで瀝青炭を燃やして暖をとることによる健康上の影響にも、懸念とともに留意するものである。
58.委員会は、締約国が、食料を入手しやすくし、かつ水および衛生設備ならびに個人衛生、住居および教育の質を向上させることに特段の注意を向けながら、子どもの生活水準を向上させるための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、地域的格差を縮小するための措置をとり、かつゲルの暖房のための代替的措置の発見に努めるよう、勧告するものである。

6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
59.委員会は、無償義務教育を提供し、かつ寮費を負担するために締約国が行なった投資を歓迎する。委員会はまた、学校を「子どもにやさしい」ものにするために行なわれた努力にも留意するものである。さらに、委員会は、子どものためのサービスの提供においてソーシャルワーカーが重要な役割を果たしていること、および、教育現場で働くソーシャルワーカーの職務記述書に子どもの保護の役割が含まれていることにも留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭における男子の役割についての文化的態度によって中退率がいっそう高められていることを理由として、教育を受ける男子の割合が深刻に少ないことに、懸念を表明するものである。委員会は、教育施設において体罰または心理的圧力が根強く用いられていることに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、遠隔地にあり人口密度が低い農村部に住む牧民家族の子ども、首都に移住した家族の子どもおよびインフォーマルな採鉱活動に従事しているコミュニティの子どもを含む子どもによる教育サービスへのアクセスが、とくに就学前段階で限られていることを懸念するものである。委員会はまた、学校、幼稚園の学級および物理的便益(備品、トイレおよび警備設備など)が不足していることにも、懸念とともに留意する。牧民コミュニティのニーズに寮が応えていることには留意しながらも、委員会は、子どもによる家族との接触が必ずしも保障されていないことを懸念するものである。
60.条約第28条その他の関連規定に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 教育におけるジェンダー格差および地域格差に対応するとともに、学校を中退した子どもまたは学業と仕事(家庭における無給の仕事を含む)のバランスをとらなければならない子どもを対象とする、認証を受けた非公式教育プログラムを発展させることを検討すること。
  • (b) 可能なときは常に子どもの文化および子どもが家族との接触を維持する必要性を考慮に入れながら、牧民コミュニティの子どもの教育および生活のための便益(寮および寄宿学校を含む)の利用可能性および質を引き続き向上させること。
  • (c) 子どもにやさしい学校の基準が策定され、かつ学校および教員の実績評価で活用されることを確保すること。
  • (d) 移動学校およびインターネットへのアクセスの普及のような革新的手段を通じて教育を提供するための努力を引き続き行なうこと。
  • (e) ソーシャルワーカーに対し、コミュニティを基盤とするサービスを拡大する目的で子どもおよび家族に注意を向けられるようにすべく、その新たな責任を遂行するための十分な研修、資源および支援を配分するとともに、予防、回復およびカウンセリングに子どもとの活動を含めること。
  • (f) 子どもとともに働く専門家、親、子どもおよび一般公衆の間で子どもの権利に関する理解を強化するとともに、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を奨励し、子どもとともに働く専門家(とくに教員)の子どもに対する積極的態度を醸成し、かつ情緒的暴力に反対する意識を高めるような教育手法を促進すること。
  • (g) 学校カリキュラムに人権教育(条約その他の子どもに関わる関連の人権文書を含む)を編入するとともに、国連の全加盟国が2005年7月14日に採択した「人権教育のための世界プログラム」第1段階行動計画(総会決議59/113B)を実施するための措置をとること。
余暇、レクリエーションおよび文化的活動
61.委員会は、子どもがスポーツ、芸術その他のレクリエーション活動に従事できる場所が存在しないこと、ならびに、子どもおよび青少年が会議および集まりを持ち、かつ余暇時間の活動に参加できる場所が乏しいことに、懸念とともに留意する。
62.委員会は、締約国に対し、子どもにやさしい場所を設置するともに、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 地域コミュニティ、学校、子ども施設その他の地域資源とともに、コミュニティの遊び場およびユースセンターを設置すること。
  • (b) 家族がともに自由時間を過ごせる場所の数を増やすこと。

7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条)

子どもの庇護希望者および難民
63.委員会は、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)に加入しようとする締約国の意思には留意するものの、そのためにとられた措置が遅々としていることを懸念する。委員会は、移住者、難民および庇護希望者の子どもに関してまったく情報が入手できないことを遺憾に思うものである。
64.委員会は、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)を批准するよう求めた締約国への勧告(CRC/C/15/Add.264、2005年、パラ57)をあらためて繰り返す。さらに、委員会は、締約国が、条約第22条その他の関連規定を考慮し、締約国にいる子どもの庇護希望者および難民に対して全面的な保護およびケアならびに保健サービス、社会サービスおよび教育へのアクセスを確保するためあらゆる実行可能な措置をとるよう、勧告するものである。さらに、委員会は、子どもの庇護希望者および難民に関する細分化されたデータを入手し、かつ包括的政策の指針とするためのデータベースの設置を勧告する。委員会はまた、締約国に対し、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准することも勧告するものである。
児童労働を含む経済的搾取
65.委員会は、法律の一部の規定、とくに義務教育および就労の最低年齢に関する国内法が相互に矛盾しているという、前回の総括所見の懸念(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ9)をあらためて表明する。委員会はさらに、児童労働、とくに危険な労働に従事する子どもの割合が上昇していることを示す報告について懸念を覚えるものである。さらに、委員会は、学校を中退してとくに採鉱コミュニティ、サーカスおよび農業で働く子どもが多いこと、ならびに、このような子どもが、社会サービスに限られた形でしかアクセスできておらず、かつ最悪の形態の児童労働、金の処理に用いられる化学物質による中毒および業務上または慣習的その他の災害にさらされていることに、懸念とともに留意する。
66.委員会は、締約国が、とくに以下の手段によって児童労働の悪影響を監視しかつこれに対応するため、緊急の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 最悪の形態の児童労働と闘うこと。
  • (b) 条約および関連のILO条約を指針として、相互に矛盾する法律の調和を確保するために必要な改正を行なうこと。
  • (c) 児童労働の悪影響に関する意識を高めるためのキャンペーンを立案しかつ実施すること。
  • (d) 低年齢の働く子どもに対して非公式教育の授業を、かつより年長の子どもに対して技能訓練を提供すること。
  • (e) ILOおよびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。
路上の状況にある子ども
67.委員会は、子どもが路上で生活することを防止するために締約国が行なった努力には留意しながらも、都市部および郊外の居住区ならびに新たに形成されたスラムでストリートチルドレンの人数が増えていることを、依然として非常に懸念する。委員会はさらに、子どもが路上で生活するようになる原因についての情報が入手できないことおよび信頼できる統計データがないことを懸念するものである。委員会は、子どもを路上から追い払うために警察が行なっている迫害についての情報を遺憾に思う。
68.委員会は、締約国に対し、子どもを路上に駆り立てる根本的原因を理解し、かつこれらの原因に対応するための状況分析を実施するとともに、脆弱性および保護を必要とする子どもの迅速評価を行ない、かつストリートチルドレンのニーズに対応する既存のプログラムおよびプロジェクトのマッピングを実施するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 路上の状況にある子どもの意見を聴かれる権利を保障し、かつ路上の状況にある子どもの権利(警察による収容に代わる措置、子どものリハビリテーションおよび再統合を含む)を充足する、権利を基盤とする包括的な政策を立案すること。
  • (b) 路上の状況にある子どもについての意識啓発を図ること。
  • (c) ストリートチルドレンに対応するすべての専門家(警察官、ソーシャルワーカー、メディアの構成員および社会一般の構成員を含む)の能力構築を図ること。
  • (d) 子どもの権利および子どもの保護について警察に研修を行なうこと。
性的搾取および虐待
69.委員会は、子どもの性的搾取を防止しかつこれと闘うための包括的な国家的政策を策定するために中央および地方の政府機関が実施した措置(子どもを危険な状況に置く根本的原因および要因に関する調査研究および記録を含む)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、性的搾取の被害者の多く(とくに女子)が犯罪者として扱われており、かつ十分な保護サービスを提供されていないことに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、加害者の捜査および訴追が行なわれていないことを懸念する。
70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子ども、とくに女子の性的搾取の防止措置を強化すること。
  • (b) 被害者を保護し、回復および社会的再統合のための十分なサービスおよびプログラムを提供し、かつ、被害者が犯罪者として扱われないことを確保すること。
  • (c) 家庭における性暴力の被害者に関する意識啓発を強化するとともに、秘密保持を尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ調査する方法についての、法執行官、ソーシャルワーカー、裁判官および検察官を対象とする能力構築研修を強化すること。
  • (d) データ収集および諸機関間の情報共有を向上させること。
  • (e) 回復のための援助を優先的に行ない、かつ、教育および訓練ならびに心理的援助およびカウンセリングが被害者に提供されることを確保すること。
  • (f) 性的搾取および虐待の事件が通報された場合に捜査が迅速に実施され、かつ加害者に対して制裁が科されることを確保すること。
売買、取引および誘拐
71.子どもの人身取引と闘うために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、性的その他の搾取(採鉱労働など)を目的とする人身取引が締約国でいまなお問題となっていることを懸念する。委員会はさらに、人身取引の規模に関する信頼できる情報が存在しないことを懸念するとともに、人身取引の防止ならびに被害者の保護および援助のために現在実施されている措置およびプログラムの多くが、国家財源による支援をほとんどまたはまったく受けることなく、NGOおよび国際機関によって行なわれていることを遺憾に思うものである。
72.委員会は、前回の総括所見の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ65)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 国際的および国内的な取引および売買からの子どもの保護を確保するため、あらゆる措置をとること。
  • (b) 売買および取引の根本的原因(ジェンダーに基づく差別および貧困を含む)に対応するための努力を強化すること。
  • (c) 売買および取引の被害を受けた子どもに対し、その回復および社会的再統合のための包括的な社会的および心理的援助を提供する目的で、この分野の政策およびプログラムに対して十分な資源(人的資源および財源)を配分すること。
  • (d) 子どもの売買および取引に関するデータを収集しかつ細分化するためのシステムを確立すること。
  • (e) 関連のパートナーと連携しながら、防止および意識啓発のための活動を行なうこと。
ヘルプライン
73.委員会は、現在、多くのNGOが並行して子どものためのヘルプライン事業を行なっていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、国際的基準にしたがった、全国的に利用可能な、フリーダイヤルの、十分に機能するチャイルド・ヘルプラインが締約国で利用可能となっていないことに、懸念とともに留意するものである。
74.委員会は、締約国が、ヘルプラインを確保し、かつとくに以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 締約国のすべてのソム(県の下の行政区画〔郡〕)およびバグ(ソムの下の行政区画〔村〕)で毎日24時間アクセス可能な、24時間開設されている〔重複はママ〕3ケタのフリーダイヤル番号を割り当てること。
  • (b) 意識啓発活動、研修および能力構築のために十分な資金を配分すること。
  • (c) 子どもを援助するためのヘルプライン・サービスが十分に機能するための資源を確保すること。
少年司法の運営
75.委員会は、法的に認められる子どもの未決勾留期間の制限、初犯者に対して義務的に科される最低刑の軽減ならびに「少年委員会」および「ゲル・フレー・センター」に対する支援等により、子どもの権利の保護を確保する法的枠組みを向上させるために締約国が行なった努力に留意する。にもかかわらず、委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。
  • (a) 子どもが未決勾留センターで不十分な環境に直面していること。とくに、勾留中の自白の強要および警察による暴力の苦情が増えていること、ならびに、警察の勾留場で子どもがしばしば成人から分離されていないこと。
  • (b) 締約国の多くの地域で専門の少年裁判所および訓練を受けた少年裁判官が存在しないこと。
  • (c) 締約国が犯罪を行なった者の制裁に焦点を当てた懲罰的アプローチをとっており、拘禁された子どもに対して再統合の機会または援助もいかなる教育も提供されていないこと。
76.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)と全面的に一致させるべきであるという前回の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ68)を、あらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 未決勾留中の子どもの権利を保護するとともに、子どもが勾留中に自白の強要および警察による暴力にさらされず、かつ警察の勾留場で成人から分離されることを確保すること。
  • (b) 締約国のすべての地域で専門の少年裁判所を設置し、かつ訓練を受けた少年裁判官を任命すること。
  • (c) 少年司法制度に関与するすべての専門家が、子どもにやさしい関連の国際基準に関する研修を受けることを確保すること。
  • (d) 自由を奪われた子どもの権利を保護するとともに、子どもの拘禁環境を監視し、かつ、少年司法制度の対象とされている間、子どもが家族との定期的接触を維持することを確保すること。
  • (e) 少年犯罪問題への対応について条約で唱道されているホリスティックなアプローチをとる(たとえば根底にある社会的要因に対処すること)とともに、可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕活動または刑の執行停止のような、拘禁に代わる措置を活用すること。
  • (f) 子どもに対し、手続の早い段階で法的援助その他の援助を提供すること。
  • (g) 子どもに対して基礎的サービスが提供されることを確保すること。
  • (h) 子どもによる苦情を受け付けかつ処理するための、独立した、子どもにやさしく、かつアクセスしやすいシステムを設置するとともに、法執行官および看守が行なった人権侵害の事案を捜査し、訴追しかつ処罰すること。
  • (i) 少年司法に関する国連機関横断パネルに対し、少年司法および警察の研修の分野におけるさらなる技術的援助を要請すること。
  • (j) 拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いと闘うために適当な措置をとるとともに、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(1984年)の批准を検討すること。
犯罪の証人および被害者の保護
77.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。

8.国際人権文書の批准

78.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書(とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書)を批准するよう勧告する。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
79.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を最高人民会議(議会)、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
80.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

81.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2014年10月20日までに提出するよう慫慂する。この次回報告書は120ページを超えるべきではなく(CRC/C/118(2002年)参照)、かつ子どもの権利条約の2つの選択議定書の実施に関する情報も記載されるべきである。
82.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関間会合で承認された「国際人権条約に基づく報告に関する調和化指針(共通コアドキュメントおよび条約別の文書に関する指針を含む)」(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
最終更新:2012年10月20日 08:57