ゆっくりいじめ系3042 幸せな肉便器

※注意※
さなえしか出てきません。
文章が単調な気がします。
直接的な虐待描写はありません。
タイトルに肉便器とありますが性描写はありません。



幸せな肉便器*




近くの高架を列車が走るたびにその部屋はカタカタと揺れた。
部屋には窓がひとつしかなく、その上その窓はスモークガラスで外の様子を伺うことはできない。
だが、外から漏れて来る楽しげな音楽や呼子の声からここが繁華街であることは容易に想像できる。
ビジネスホテルのような内装。その中で存在感を際立たせているのは白で統一され嫌に清潔感を放っているベッドだ。
男はベッドのそばのいすに前後逆さにすわり、背もたれの上に腕を組みながら白いベッドに横たわる一匹のゆっくりを眺めていた。
不意に男は立ち上がりその部屋を後にする。
静かに扉を閉めると外にいる若い女に声をかけた。
「……このサービスの調子はどうだい?」
「いたって好評です。マネージャー」
「そうか。グレーっちゃグレーだけど今のところお咎めは無いからね」
「ええ。する側、される側、両者とも同意の上ですから」
廊下の突き当たりにあるエレベーターの前に立つ。相変わらず外は騒がしい。
「同意の上、ね。まあ確かにそうだよな」
そういうと男は後ろを振り返る。
どこか遠くを見るような目で先ほどの部屋の扉を見つめた。
「そんなことしても、あの子の気持ちは分かりませんよ」
女の言葉に決まり悪そうに視線をエレベーターのボタンに移すも、男のその視線は泳いでいた。
「そりゃあそうなんだけどね」
男は背負ったものを降ろすように肩を下げため息をついた。
「きっと幸せですよ、あの子は」
「だといいんだけど」
男は逃げるように足早にエレベーターに乗り込んだ。
その背中を心配するような、あきれたような、細い目で眺めながら女もその後を追い、閉まる扉の向こう側へと姿を消した。







ゆっくりさなえはある夕立の激しい午後に、ゆっくり専門のペットショップで生まれた。
生まれたのは3匹のゆっくりさなえ、そのうちの末っ子としてそれは生まれた。
血統書(といっても、ゆっくりに血などないが)が付いた所謂「高級希少」なゆっくりとして、比較的幸せな星の元に生まれたといえるだろう。
すぐさま職員が泣き喚く母親から強引に赤ゆっくりを奪い、生まれた子供たちをそれぞれ別のケージに隔離する。
3匹それぞれが別の職員の手によって丁寧に育てられてゆく。
そのさなえを担当したのは研修が取れたばかりの新人の職員。
毎日毎日規則的に体を洗い、食事を与え、やさしく語りかけるその姿はまるで母親の様であった。

ある日を境に度々ゲージの外へと出られるようになった。
狭いが静かで快適なゲージと比べ、外はすこし寒くてうるさかったが、今まで見たことのない広い世界に目を輝かせるさなえ。
ゲージを出されてすぐに、さなえは「ごはんのとりかた」を教わった。
手取り足取り丁寧に教えてくれる「母親」の期待にこたえようと、さなえはがんばって手ではなく道具を使うことを覚えた。

「さすがはさなえ、いい子ね」
「血統書付きだけのことはあるな」
「母親によく似て飲み込みの早い子だ」

みんなに褒められた。「母親」に似ていると言ってなでてもらえた。
嬉しそうに周りに頭を下げる「母親」の姿に、さなえも思わずほころんだ。
やさしく諭すように教えてくれる「母親」にさなえはとてもあこがれていた。
さなえは飲み込みが早く、新しいことを覚えてぐんぐんと前に進む度に、「母親」はさなえを良い子だと言って褒めた。
暖かい寝床があり、おいしいご飯があり、やさしい「母親」がいた。
さなえにとって世界はそれが全てだった。
やがて品評会で第一級品の印を押されたさなえは、すぐにある老夫婦に引き取られることが決まった。
だがさなえはどこに行ってもゆっくりできる事を確信していた。
自分の「母親」が教えてくれたこと、それさえ守っていれば思う存分ゆっくりできる事を知っていたからだ。
だからもう、「母親」に頼らなくても、一人でも大丈夫だと思った。
「この世界」で生きていけると信じていた。
ペットショップを去るその日まで、彼女は「自分のいる世界」を知ることはなかった。

「それに比べてお前はなんだ」
「どうしてあの子のようにできないの」
「お前はそれでも姉なのか」
「悪い子!きっと父親に似たのね」
さなえがゲージの中にいる間、どんな言葉が飛び交っていたかを彼女に知る由は無い。.
姉達がどんな目で自分のケージを眺めていたかなど、知る由は無い。

さなえはひとつ、大きな間違いを犯していた。
そしてさなえは気づかない。その世界の根底を覆す大きな誤りに。



「母親」の言いつけを守ったさなえは、ますますゆっくりした日々を送っていた。
老夫婦は礼儀正しいさなえをとてもかわいがった。
広い屋敷を自由に歩き回り、起きている間はずっと老夫婦が遊んでくれた。
老婦人が作るご飯はとてもおいしいものだった。
さなえが絵を描けば、老夫婦は上手上手と褒めてくれた。
さなえが踊りを踊れば、手拍子して一緒に楽しんでくれた。
さなえが家事を手伝えば、偉い偉いとなでてくれた。
何一つ不自由は無かった。
子供が独り立ちし、田舎に二人暮らしとなった老夫婦にとってさなえは「孫」そのものであった。
さびしい思いをしていないかと心配した息子が老夫婦にゆっくりを買うことを勧めたのだ。
さなえの世界は全く変わらなかった。
「母親」という存在が、老夫婦という存在にかわっただけであった。

まださなえは気づかない。その世界の根底を覆す大きな誤りに。



ある日、老夫人が亡くなった。
夫がいなくなり、管理に負えなくなった老婦人はその家を明け渡すことにした。
老婦人は都会の息子家族の元へと行った。
だが、息子家族が住んでいた集合住宅にペットを持ち込むことはできなかった。
老婦人はさなえを手放すことに気を揉んだがどうすることもできなかった。
これから居候する身である。無理を言って息子夫婦に迷惑を掛けることはできなかった。
だが、さなえを飼う事を勧めたのも息子だった。
息子は仕方が無いよと老婦人を諭し、ある若い男にさなえを託すことにしたのである。
彼はその男に強い信頼を置いていたし、その男の人柄を良く知っていた。
決して悪いようにしないでくれ、と強く念を押し、彼はさなえをその男に渡した。
若い男はゆっくり喫茶というゆっくりにウェイトレスをさせるカフェレストランを取り仕切っていた。
かわいい、心を癒されると若い世代にとどまらず、中年層でも話題になっているちょっとした有名店だった。
ゆっくりにストレスの無い様に職場を調整していた彼は、さなえもここに加えてみてはどうかと考えたのだ。
さなえは人間慣れしている上に、きちんと躾をされており、尚且つ希少種であった。
きっとさなえも寂しい思いをせずにすむだろう、と彼はそのままさなえの配属を決めた。

だが、彼はここで気づいてしまった。さなえの世界の大きな誤りに。
さなえはまだ気づきたくなかった。その世界の根底を覆す大きな誤りに。



ウェイトレスとしての船出はきわめて順調だった。
さなえはすぐにその愛らしさから店の人気者となり、ほかのゆっくりとも難なく打ち解けた。
やさしいマネージャーがさなえに店のルールや配膳の仕方を教えていた。
さなえはショップに居た頃を取り戻したような、懐かしい気分になっていた。
だが同時に、さなえはある事に不安を覚え始めていた。
それを肯定する事は「自分の世界」を否定する事を、さなえはもしかしたら知っていたのかもしれない。
一方の男は安心していた。まださなえは「自分の世界」に居たからだ。
だが男は気が気でしょうがない。
もし、さなえが「本当の世界」を知ってしまったら。
「さなえの世界」と「本当の世界」は180度の違いを持っていた。
きっとさなえは本当の世界を受け入れることはできないだろう。
それは余りにも残酷だった。
きっとさなえは壊れてしまう。
悪いようにはしない、といった以上、彼女の世界を守ってやらなくてはならない。
男が悪いわけではない。だが、男はさなえの痛々しいほどの愛嬌に、胸を締め付けられる思いだった。


だが、男の恐れる事態は程なくして現実のものとなる。
それはたった一言の簡単な言葉。
「きみのような礼儀正しいゆっくりをはじめて見たよ」
……なにをいってるんだろう?
さなえは不思議そうに首をかしげた。
「はは、やっぱりゆっくりはかわいいなぁ」
そういって、客はさなえの頭をなでた。
……ちがうよ。さなえはそんなんじゃないよ。
「謙遜しちゃってさ、あー、俺も飼いたいなぁ、ゆっくり」
……だからちがうっていってるでしょ。


「さなえは……さなえはゆっくりじゃないもん!」


そう叫ぶとさなえは持っていたトレーを男性客に投げつけた。
「うわっぶ!」
男の白いシャツが炭酸飲料水で薄黒く染まる。
それはまるで早苗の真っ白な世界に、一気に広がってゆく深い雨雲のようで。
その黒い雲はとどまることなく、その面積を広げていく。
騒ぎを聞きつけた男が飛んできた頃には、もうさなえは壊れてしまっていた。
さなえは「自分の世界」から「自分の居る世界」に引き戻されてしまった。



――本当はきっとどこかで分かっていた。
   自分がゆっくりであり、人間ではないことを。
   でも、自分は人間に育てられてきた。
   人間を母親とし、人間に囲まれて、人間の為に生きてきた。
   だから当然、自分も人間であるに違いないと思ってしまった。

   でも、考えてみればおかしいことばかり。
   どうしてゲージに入れられていたのだろう?
   どうして同じご飯を食べられなかったのだろう?
   どうして他人の家に引き取られていったのだろう?
   どうして自分だけ、連れて行ってもらえなかったんだろう?
   どうしてまわりにゆっくりしかいないんだろう?
   どうして……わたしと良く似た姿をした子がこんなにたくさん居るんだろう?
   どうしてわたしは――人間として生まれてこれなかったのだろう?


「ちがうもん!ざなえはゆっぐりじゃないもん!ぢゃんどじだにんげんだもん!ほんどぉだもん!」


暴れるさなえを抱きかかえると、男はバックヤードへ飛んでいった。
教育係だった女性が男性客に頭を下げている。
「いやぁツンデレ?あぁヤンデレかな?いいねぇ、斬新でゾクゾクしたよ」
男性客はいいよいいよとあっけらかんと笑っていた。
きっと彼に悪気は無い。いや、きっと彼が言わなくともさなえはが悟る日はそう遠くなかったはずだ。


その後、さなえは仕事に戻ろうとはしなかった。
あのカフェが「ゆっくり喫茶」であることが分かっている以上、さなえはあの仕事を二度としようとは思わないだろう。
たださなえのプライドだけが、自分が人間であるとしてさなえを支えていた。
さなえの世界は正しい世界に戻った。
だが、さなえは正しい姿に戻ることはできなかった。
生まれてきてずっと信じていたことを否定されて、ホイと投げ出せるわけが無かった。
男の姿を見ると、さなえは駆け寄りこういうのだった。
「にんげんのしごとがしたい、にんげんのしごとがしたい、にんげんのしごとがしたい……」
輝きの無い瞳でそうくりかえすさなえに、男は押しつぶされそうになっていた。
だが、人間の仕事がそう簡単にゆっくりにできるわけが無かった。
どこに行ってもかならずゆっくりとしての扱いを受ける。

そんな折、彼は上層部から新しい企画がある事を聞いた。
最初こそ反対していたものの、彼はその企画に救いを見出した。
それは、救いと呼べるとは到底思えない余りにも酷い商売。
だが、さなえがそれで満足してくれるのであれば……




10号室は現在1番人気の部屋だ。
従順で可愛らしい「彼女」に魅入られたリピーターと、口コミを聞いてやってくる客。
10号室にはある特別ルールがあったが、それさえ守ればあとは何をしても構わない。
従順な彼女は、頼まれたことは何でもやってくれるだろう。
そのうえ希少種胴付きである。マニアから言わせれば所謂「生唾もの」らしい。


ゆっくりヘルス「TIE」、10号室はさなえの為に設けられた特別室。
特別ルールは「ゆっくり」という単語を口にしないこと。
その部屋からは、今日もまた甘い声が聞こえてくる。
「彼女」は今日も腰を振る。
その場でのみ、彼女は人間との対等な関係を許されていた。
彼女が「人間」で居られる場所。「彼女の世界」そのもの。
それが例え「性の対象」という意味でも、彼女はきっと幸せなのだろう。



彼女の世界は小さくなってしまった。
でも、彼女はその世界で生きていけた。


「人間として」生きていけた。









    • あとがき--
大富豪の御題作品。
さなえがクセが無くて一番書きやすそうだったのでさなえで書かせてもらいました。
さなえ好きなヒトごめんなさい。



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最終更新:2024年02月23日 14:19
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