ゆっくりいじめ系3033 黒い箱1

黒い箱











「暑いな、これは暑い」

焼け付くような日差しを薄目で睨みつけながら男は1人呟いた。
夏の炎天下は容赦なく男に降り注いで、その肌をジリジリと焼いていく。
あまり外に出ない男の白い肌は、強い日差しによって既に赤く腫れあがりつつあった。
そしてその手には一本のスコップ。それを握り締めて淡々と小高い丘を登っていく。

「たしかこの辺りの筈だったが・・・・」

男はぽつんと聳え立つ杉木の前で立ち止まると、それに手を当てながら地面を見回した。
この辺りの草は冬でも枯れる事の無い多年草である。
男は周りよりも若干生い茂った草の背丈が低い場所を見つけると、そこで膝を折り曲げて中腰になった。

男はここに2匹のゆっくりを埋めた。

興味本位で別に好きでもないゆっくりを飼う事にしたが、
ある理由で餌を与える所か、顔を見るのも嫌になってしまった。
しかし、正統な手順を踏んで手放す手続きをするのも億劫だった。
だからゆっくりを「四角い透明な箱」に閉じ込めてここに埋めたのだ。

では何故、そんなゆっくりを今になってわざわざ掘り返そうとしているのだろうか?
それには街ごとに違うゆっくりに対する取り扱いの規則が関係していた。
男が住むこの街の決まり事では、ゆっくりは見つけ次第、保健所によって「保護」され期間を置かずに処分されていた。

それは、人里離れた山中での生態系に混じる事を拒否して街へ下りてきたゆっくり達の一部に
人間の幼児の心の成長に悪影響を及ぼしかねない行動を行う個体が少なからず居たからである。

人間に対して無謀な挑発行為を繰り返して駆除される個体。
自分本位の身勝手な行動で大衆の面前で勝手に壮絶な死を遂げる個体。
民家に侵入して食料の強奪を行う個体。場所を考えずに生殖行為に及ぶ個体。
一部の悪質なゆっくりが行ったそれらの行為を見た人間の幼児の中に
心的外傷の兆候が各地で見られた為に、それは大きな社会問題になった。

中には・・・いや、大部分のゆっくり達は温和な性格の持ち主であり、
人間に対して敵対行動を取る個体はごく僅かであったと当時を語る人間は決して少なくない。
しかし大事の前の小事として全てのゆっくりは有害な存在であるとして例外なく処分された。

その後、ペット用として正規の教育を施されたゆっくり以外は徹底的に街から排除され、
そのペット用の飼いゆっくりも個体数を完全に把握する為に、完全登録制となったのだった。
そして、ゆっくりを飼う人間として不適切であると審査によって判断された場合はゆっくりを飼う資格を得る事ができなかった。

それがこの街で適用された「飼いゆっくりバッジ登録制」である。
登録された飼いゆっくりにはバッジを与えられ、それを持たないゆっくりは有無を言わさず「保護」の対象となった。
そして飼いゆっくりが死亡した場合はその報告としてバッジを返却しなければ再びゆっくりを購入することができないのだった。

ザクッ!

鈍い音と共にスコップが地面を抉る。
ここにゆっくりを埋めたのが5年前、それだけの期間が過ぎれば土の固さは他の場所とあまり変わりは無かった。
長丁場になることを予感した男が苛立たしそうに額の汗を拭った。
男の目的は言うまでも無く、再びゆっくりを購入する為に、
ここに埋めたゆっくりが身に着けていたバッジを回収する事だった。

何故、今になってこんな所に埋めて放置する程に無関心だったゆっくりを再び飼う気になったのか?
別に大した理由ではない。
男が好意を寄せる女性がゆっくりを飼っているというだけだった。
話しかけるきっかけになればと、そんな軽い気持ちで男はこの行動に出た。
土を掘り返して箱の中の干からびたゆっくりからバッジを毟り取るだけの簡単な作業と思っていた。

しかしそれは間違いであった。

僅かに先端だけ顔を除かせた5年前に埋めた箱。
それは黒く濁ったような色をしていた。
初めは周りにこびり付いた土かと思ったが、その汚れは指で拭っても落ちない。
この黒いものは外側では無く、内側のものであると男は思った。

「・・・なんだ?・・・これは?」

土を掘り返す作業を続けながら、男が怪訝な表情を浮かべて呟いた。
よくやく半分ほど姿を現した真っ黒になった箱を手でそっと撫でる。
真四角だった筈の箱は外側に膨張してパンパンに膨れ上がっている。
男が不思議に思って首をかしげたその時、僅かではあるが、箱が振動してその感触が男の手に伝わった。

「・・・・!」

その奇妙な現象に男は作業の手を止めて、箱から距離を取るべく体を仰け反らせた。
どういう事だろう?ここにこの箱を埋めたのは5年前。
餌を与えなければ、下手をすれば数時間で餓死に至るゆっくりである。
5年という月日が経過した現在、未だに生存しているという事など絶対にありえない。
しかし、この奇妙な光景。内側から胎動するような箱の不可解な感触。

先程のむせ返るような暑さが嘘の様に男の背筋に寒いものが駆け巡った。
男を通り抜ける生暖かい夏の風が、汗を吸い込んですっかり重くなった男のシャツを撫でる。
男は意を決して黒い箱にそっと耳をよせて、その中を睨みつける。
箱の黒い汚れは良く見ると汚れではなく液体の様だった。それが僅かだが蠢いている様にも見える。

「・・・・・ゅ」

確かに聞こえた中からの声に男は目を見開くと、咄嗟に身を飛び上がらせて後ずさった。
男はその微かに聞こえたか細い声に、つい最近まで忘却の彼方へと追いやっていた記憶。
ここに埋めたゆっくり「まりさ」の事を思い出していた。



5年前



「ゆっくりしていってねっ!そしてとっととまりさにあまあまをよこすんだぜっ!」
「よ、よこすんだぜ・・・っ!ま、まりさ達は強いんだからねっ!抵抗しないでねっ!」

用事を済ませた帰り道、深夜という事もあって人通りの無い閑散とした繁華街の路地を
淡々と進んでいた男の進行方向に立ちふさがった2匹のゆっくりまりさ。
片方は「ゆふん!」と胸を張って踏ん反り返りながらニタニタと醜い笑みを浮かべて男を睨みつけている。
もう片方は若干戸惑った表情を浮かべながらも「ぷくぅ!」と頬を膨らませて必死に男を威嚇をしていた。

「はぁ」

そんな2匹の様子を見ただけで、大体の事情が飲み込めてしまった男がため息をついた。
恐らく踏ん反り返ってるバカの方が人間から食べ物の強奪を提案したのだろう。
そしてそれを危険な事だと薄々感づきながらも、背に腹は変えられずに虚勢を張る後ろのオドオドしている方。
そんな感じであろう。

「ゆっ!きいてねっ!むししないでねっ!」
「し、しないでねっ!」

無表情でこれと言った反応を示さない様子の男に腹を立てたのか、
バカの方のまりさが「じたん!じたん!」と地団駄を踏むような動きで大口を開けて男に叫んだ。

「ゆっ!じじい!きいてるのかぜっ!」

昔はよくゆっくりと「楽しく遊んでいた」男だったが、そういった大人気ない行いも最近はなりを潜めて、
近頃はスルーを決め込むのが定石となっていたが、今日に限って男の虫の居所は悪かった。
その原因は深夜にまで及んでしまった「用事」である。
誰が悪いという事でも無かったので、その怒りと憤りの行き所を持て余していた男だったが、
金もかからず、後腐れも無くそれを発散できる獲物が目の前に居る事に気がついて、思わずほくそ笑んだ。

静かに視線を泳がせて辺りを見回しながら、自分の他に通行人が居ない事を確認する。
辺りには人影は見当たらない。電信柱の明かりに吸い寄せられる虫の羽音だけが静かに鳴っているだけだ。

「聞いてるよ」
「ならさっさとだすんだぜ!まりさはきがみじか・・・っ」

男は威勢のいい方のまりさに向かって返事をすると、
しゃがみこんでまりさの頬に「むにょん」と右手の人差し指をめりこませた。
会話を断ち切られてアヒルの様に口を尖らせたまりさが、思いがけない男の行動にキョトンとしている。

「ゆっ!じじい!なにしてるん・・・」

まりさが言い終わる前に、男は左手でまりさの頭を押さえつけて固定すると、
右手の指をまりさの体内に「ズボッ!」と突き刺して、
内部に指を潜り込ませて頬の皮を握り締めると一気に口の方向へ引き裂いた。

「だっ!・・・ぜぇぇぇぇぇ!?」

反対側の頬の辺りまで引き剥がされたまりさの顔面の皮。
捲れた皮の下でむき出しになった歯がギリギリと音を鳴らしている。

「なにじだの!?ばでぃざになにじだのぉぉ!?」

その突然の行為に現在の自分がどういう状態になっているのか理解できないまりさが悲痛な叫び声をあげる。
男はちぎった皮を握ったまま、まりさの口の中に腕を突っ込んで舌を握り締めるとそのまま壁に叩きつける。

「ぐみゅっ!?」

握った拳に「むにゅ!」とした餡子が拉げる感触が伝わって来る。
皮を剥ぎ取られて剥き出しになった歯が軋んでヒビが寄った。
人によっては可愛らしい顔に見えるらしいその表情の面影はもはや微塵も無い。

「ん゛っ!!ん゛ぎぎぎぎっ!?」

まりさは吐瀉物を撒き散らすのを我慢した肥満児を連想させる醜い表情を浮かべながら、
壁に叩きつけられた衝撃に耐えていたが、その圧力には勝てずに右の眼球が
「ぷりゅん!」とビックリ箱の様に飛び出して地面を転がった。
一瞬にして致命傷を負ったまりさを更に高く掲げて地面に叩きつける。

パァン!

小気味のいい乾いた音が辺りに響いた。
時折、傷口から餡子を小刻みに噴出させながら、地面に体をめり込ませて苦悶の表情を浮かべるまりさ。
声も出せずにビクン!ビクン!身を痙攣させている。

男はまりさの転がる目玉を踏み潰すと、更に反対の足でうつ伏せに倒れたまりさを踏みつける。
踏まれた部分にあった餡子が移動してまりさの顔がパンパンに膨らむ。
「んぎゅっ!」と小さく声を漏らしながら、顔を真っ赤にするまりさ。
そんなまりさに男が静かに声をかけた。

「で?何が欲しいって?」

徐々に踏みつける力を強くしていくと、まりさの膨らんだ顔にじっとりと汗が浮んだ。
つい数秒前までの威勢のいい表情から一転、涙を目に一杯溜め込んだ情け無い顔で男を見上げると、
ようやく自分の置かれた状況に気がついたまりさは、カラカラに乾いた喉を一度「ゴクリ」と鳴らして

「・・・ごべんなざい」

と、苦痛に顔を歪ませながら力なく呟いた。
男はまりさが謝罪の言葉を吐き出したその瞬間に足を浮かせて圧力から開放してやる。
足をどけると少し楽になったのか、まりさが「ゆふぅ!ゆふぅ!」と苦しそうな呼吸を始めた。

そんなまりさから帽子を奪って電柱の明かりにかざす。
惨めな野良生活でもお飾りだけは小奇麗にしているらしい。
その鈍い光沢を放つまりさの帽子を使って、男は自分の汚れた靴を丹念に磨き始めた。

「ゆ゛っ・・・!ゆぅぅ・・・!」

自分の帽子が男の手によって、汚れていく様子を地面にへばりつきながら悲しげな顔で見つめるまりさ。
男がそんなまりさの方を睨みつけると「ゆぐぅ」と眉毛をハの字にまげて涙を溜め込んだ目をそらした。
靴を磨き終えると、まりさの視線で釘付けの汚れた帽子をクシャクシャに握りつぶして下水に投げ入れる。

「ゆぅぅ・・・・ま゛りざの・・・ぎれいなお帽子がぁぁぁ・・・」

帽子は暫くプカプカと浮いていたが、汚水を染み込ませて黒く濁った川底へと徐々に沈んでいく。
まりさのおさげを握って持ち上げて、その光景を良く見えるようにしてやる。
残った片方の目からボタボタと涙を流しながら「ぷりんぷりん」と身を揺らして暴れるまりさ。

「どっでぎでぇぇ!まりさのだいじなお帽子どってぎでよぉぉぉ!」
「自分でやれよ」

放物線を描きながらまりさが宙を舞う。
ポカンと口を半開きにして男の顔を見つめながら水面へと吸い込まれていくまりさ。
「とぷん!」と音を立てて汚水に沈んだまりさは一度だけ水面から顔を出して
バシャバシャと黒く濁った水を掻き分けながら、必死に身を揺り動かして
「だずげでね!」と元気良く叫んだが、ボロ雑巾のようになった体には、
帽子を回収する所か自分の身を水面から這い上がらせる力も残っている訳も無く、
泡ぶくを残して濁った汚水の中に消えていった。

「ゆわわ・・・ゆわわ・・・」

頼りにしていた仲間が成す術無く、蹂躙されていく姿を凝視していた「後ろの方で膨らんでいたまりさ」が
壁に背中を擦りつけながら、ガチガチと歯を鳴らして震えている。
あまりの恐怖に逃げる事も出来なかった様だ。
男の視線が自分の方へ移った事に気がつくと、ビクン!と体を振るわせて小さく飛び上がると
涙をポタポタと垂れ流しながら、首をイヤイヤと振り回して口を開いた。

「ぷひゅるるるっ!まってねっ!きいてねっ!ばでぃ・・・・ッ!!」

空気を吐いて何かを言おうとしたまりさの口元に蹴りを入れる。
空気は逃げ場を失って、頬を限界以上に膨らませると「パン!」という乾いた音と共に頬を破って外に噴出した。
壁を背にしていたために、衝撃は他へ逃げる事無く全てまりさに伝わった。
飛び出さんばかりに目を見開いて「ぴきゅぅ!」と妙な声を漏らしてまりさの体がブルンブルン!と震える。

どうせ「おちびちゃんがなんたらで仕方なかったんです」とか
「お腹が空いてなんたらなんたら」とかそういう言い訳だろう。聞くまでもない。
と、いうかそれ以外の理由を聞いたことが無い。

食い込んだつま足をまりさから引き抜くと、蹴った時の衝撃で上の方へよった餡子がプルンと下腹部へ戻る
それと同時にチョロチョロと申し訳なさそうにしーしーが流れ出た。

「ひゅっ!ひゅっう!・・・ゆべえっ!」

足でまりさを横に倒して今度は下腹部を捻るように踏みつける。
力なく排出されていたしーしーは踏み付けられる事でその勢いを増して、横一直線に飛んで壁を濡らす。
まりさは男の足から逃れようと「モルンモルン」と身を躍らせながら、泣き叫んで男を見上げて懇願した。

「やっ、やべでっ!だじゅげでぇっ!」

どんなに力を込めて体を動かしても男の足の下からはピクリとも逃れる事ができない。
それでも顔を真っ赤にしながら、一心不乱に体を捩るまりさの動きに、
男は物心つく前から実家にあるフラワーロックを連想した。

「良く聞こえないね」

無視して一気にまりさの下腹部を踏み抜いた。「むりゅっ!」と奇妙な感覚が足に伝わった瞬間、
しーしーの穴の周辺の皮が一気に膨張すると、水を入れすぎた風船の様に「ぱしゅんっ!」と
餡子の混じった黒い液体が霧吹きの様に噴出して水分の放出は止まった。

「ん゛びぃっ!・・・・ゆ゛あ゛ぁぁぁぁ・・・・」

頬から「ひゅーひゅー」と空気を漏らしながら破裂した自分のしーしーの穴を見て
この世の終わりの様な表情を浮かべて、小さく呻き声を漏らすまりさ。
更に、まりさを足で転がして無理矢理うつ伏せにさせると、今度はあにゃるに思い切り蹴りを入れる。
「ぎゅむっ!」と男の足は踝の辺りまでまりさのあにゃるに挿入された。

「ん゛ん゛ん゛・・・・・っ!?」

一瞬だけ悩ましげな表情を浮かべたまりさが、推進剤の様に餡子を放出させて地面を弾んで行き、
ゴミ捨て場に積んであった生ゴミの山に突き刺さった。
男は地面に落ちたまりさの帽子を拾い上げて、ゆっくりとした動きでまりさの後を追う。

「ゆっぐりじでいっでねっ!ゆっぐりじでいっざぜでぐだじあ゛っ!」

生ゴミの山から、グズグズにささくれたしーしーの穴とあにゃるだけを除かせて
尻を振るように底の部分の皮をプリンプリンと振りながら、涙交じりの叫び声をあげるまりさ。
それを周囲のゴミ袋ごと路地に蹴り出してやると、生ゴミ撒き散らしながら勢い良く飛び出して地面を滑る。
頭の上に卵の殻と麺を乗せながら痙攣するまりさ。
それを払いのける力も無く、仰向けでボロボロと涙やら、よくわからない液体やらを滴らせながら呟いた。

「もっ・・・もうやべで・・・いだいのやべでぇぇぇ」

どうみても戦意喪失。・・・いや、初めからこんな感じだったか?
頭に乗った卵の殻と麺はそのままにして、拾った帽子をやさしくまりさの頭に被せてやると、
男は何も答えずに踵を返して来た道を戻って行った。

荒い呼吸を繰り返しながら、男が遠ざかっていく様子を横目で確認するまりさ。
男の暴力が終わったと思ったまりさは、その苦痛に歪んだ顔を少しだけ緩めると
「ギリッ」と歯を食いしばって、何とか立ち上がり「ぴちとん!ぴちとん!」と身を弾ませて逃走を開始した。

「ゆっ!ゆっ!ゆっ!」
「おい」
「ゆ゛っ!」

背中に刺さる男の声にビクン!と身を震わせてまりさが振り返ると、
そこにはおさげを捕まれて、汚水から引きずり出された「威勢の良かった方のまりさ」の姿があった。
汚水をポタポタと滴らせながら、だらりと舌を伸ばして真っ青な顔をしている。
ふやけてブヨブヨになった体には既に弾力が無く、不自然な程に体が伸びきっていた。

「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・」

しかしまだ生きていた。
残された片方の目はまりさをジッと見つめて一心不乱に助けを求めている様だった。
変わり果てた仲間の姿に引きつった表情を浮かべているまりさに男の言葉が刺さる。

「助けないの?」
「じっ!じらないよぉぉぉ!も゛う゛おうちがえるぅぅぅぅ!」

男の声を振り切ってまりさが力なく「ぴちとん、ぴちとん」と地面を蹴って逃走を再開した。
そそのかされた結果がこれなのだから、見捨てられるのも無理はない。
徐々に小さくなるまりさのシルエットを凝視していた真っ青なまりさだが、
男の冷ややかな視線に気がついてカタカタと顔を男の方へ向けて弱々しく口を開く。

「ばっ・・・ばでぃさを」
「ゆっくりしていってね」

まりさの言葉を断ち切っておさげから手を放す男。
何かを言い切る前にまりさは「とぷん!」と音を立てて再び汚水に沈んだ。
男の方へ悲しげな表情を浮かべながら再び汚水の中へと沈んでいくまりさ。
暫くの苦痛の後に永遠にゆっくりするであろう。それを見届けるものは誰一人として居ない。



「こっ!こっちこないでねっ!あっちいってねっ!」

一定の距離を保ちながら後をつけてくる男に涙を撒き散らしながら叫ぶまりさ。
まりさ的には完全に男を振り切って逃げ遂せたと勝手に思っていたが、
実際の距離にして十数メートルしか男との距離は離れていなかった。
しーしーの穴とあにゃる崩壊という絶望的な重症を負ったまりさにとってこの逃走は拷問でしかなかった。
弾んだ体が地面に着く度に身を切るような激痛が走る。しかしそれでもまりさは歩みを止めるわけには行かない。

「ゆ゛っ!ゆ゛っ!ゆ゛っ!」

あの人間に捕まったら永遠にゆっくりできなくなる。
こんな所で死ぬわけには行かない。まりさの巣には、まりさの帰りを待っているゆっくり達が居る。
早く、何としてでもまりさのゆっくりプレイスに帰られなければ・・・!なんとしてでも!なんとし・・・ゆ?ゆゆっ??

その時、力なく路地を進んでいたまりさがピタリと立ち止まり、横道の裏路地への通路と男を交互にチラチラと見ている。
暫くこの動作を繰り返していたが突然「ゆわわ」と呟いて全身から汗を噴出し始めた。
そしてこちらを見ながら前進を再開するとわざとらしく
「こっちへはねるよ!」だの「おってき・・・こないでね!」等、不自然な事を言い始めた。
今になってようやくこのままでは、まりさのゆっくりプレイスに男を招きいれてしまうという事に気がついた様だ。

当然まりさは無視して裏路地へ進む。
まりさは「どぼじで!」と言わんばかりの顔でクワッ!と形相を浮かべて男の後を追った。
言うまでも無い、こっちに何か大事なものがあるのだろう。

「ゆっ!人間さん?ここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!」

袋小路になっている裏路地の奥には建物の室外機の側にビールケースを倒して作られた簡素な巣と他のゆっくりまりさの姿があった。
そのまりさの下腹部はぽっこりと膨らんでいる。どうやら身重の様だ。
それにしてもまりさ尽しである。
ゆっくりの中では比較的身体能力の高いとされているまりさ種で無ければこの過酷な環境で生き延びる事は難しいのかも知れない。

「まってねぇぇぇ!ちょっとまってねぇぇぇ!」

血相を変えて必死に地面を弾む「あにゃるが崩壊した方のまりさ」の姿が薄っすらと見えてくる。
こっちへ向かってくるまりさの必死の形相に気がつかずに暢気な笑顔をこちらに浮かべて
身をクネクネ揺らして何故か誇らしげに眉毛をキリッ!とさせている身重のまりさ。

「人間さんっ!何もないけどゆっくりし」

そんな「身重のまりさ」の口の中を目掛けて懇親の力を込めて蹴りを叩き込んだ。
まりさの上あごから上の部分が一瞬ではち切れて吹き飛ぶと、壁にへばりついて湿った音を立てた。
鹿の首のオブジェの様になった「身重のまりさ」その両目は不規則にギョロギョロと動き回って辺りの様子を伺っている。
やがてその両目はズルリと垂れ下がり、柱時計の錘の様にゆらゆらと悲しげに揺れ出した。

「ふしゅっ!ふっしゅ!ふしゅしゅ!」

残された上あごから下の部分。
びっしりと並んだ下の歯とビクンビクンと狂ったように動き回る舌ベロ。
喉の奥の空洞からは時折、声とも空気ともつかない音が噴出している。
きっと自分の身に何が起こったのかもわからないだろう。これでもまだ生きているのならばの話だが・・・

その時、一定のリズムで痙攣していた身重のまりさの動きが突然激しくなり、
飛び跳ねるように身を躍らせると勝手にその場に倒れこんだ。
ミチミチと音を立てながら徐々に広がっていくまりさのまむまむ。
どうやら、母体の緊急事態に本能的に赤ゆっくりが産まれようとしている様だ。
まりさのまむまむから流れ出る謎の液体が地面を濡らす。

「ゅ・・・・ぐぃ・・・・」

しかし、生々しい粘着音と共にだらりと這い出て産まれた赤ゆっくりはゆっくりの形を成しておらず、
髪もお飾りもついていない丸い物体が、言葉も喋れずに地面を苦しそうにのたうっている。
どうやらまだ産まれるには体が育ちきっていなかった様だ。

「まりさぁぁぁぁ!にげでええええ!ゆっぐりにげっ・・・・」

やっとの事で我が家に到着した「あにゃるが崩壊した方のまりさ」が声を荒げながら登場した。
しかし壁にこびり付いた上半分と丸い物体をズルズルと垂れ流している下半分を見てまりさは顔を歪めた。

「ゆ゛っ?なにこの汚いのはっ!?まりさはどこっ!?まりさのまりさはここだよっ!」

どうやらまりさには壁にこびり付いた染みと地面で痙攣する塊が自分の番だと認識できないようだ。
「まりさ?まりさ?」とキョロキョロ辺りを見回しながら、必死に自分と同じ名前の番を探している。
そんなまりさは放置して地面を苦しそうにズルズルと這い回る禿饅頭を指で突付く。
皮は脆弱なゆっくりと比べても更に薄く、少し強く押しただけで皮を貫通して中身が零れだした。

「ゅ゛・・・!!!」

ピュッ!とサラサラの餡子を垂らすと呆気なく一匹の赤ゆっくりは死んだ。
産まれて数秒で永遠にゆっくりした姉妹を見て他の赤ゆっくりは
「ゅ゛・・・!ゅ゛・・・!」と小さな顔を醜く歪めて恐怖の表情を浮かべた。
体の方は完成していなかったが、自我の方はあるようで危険な生き物と認識した男から
できるだけ距離を取ろうと「のたのた」と我先に目を血走らせながら地面に体を擦り付けて男との距離を取り出した。

そんな赤ゆっくり達に指をつき立ててまりさの方へ振り返る。
男の視線の先にはようやく番が何処に居るのか?この禿饅頭が何なのか?を理解したまりさの凍りついた形相があった。

「助けないの?」
「やべでええええええ」

ギュッ!と目を瞑ってボロボロと涙を垂れ流しながら、その場で何度も飛び上がって男に懇願するまりさ。
しかし飛び掛ってくる事はなかった。一定の距離を保ちつつ泣き叫ぶだけである。
つまり意識してかしないでか、まりさは赤ゆっくり達を既に見捨てていた。
男は立ち上がって一歩まりさに近づいてみる。
まりさはビクッ!と体を振るわせてから後ろに跳ねて男との距離を絶対に縮めようとしない。

「また見捨てるのか」

男はまりさ達の素敵なゆっくりプレイスである倒したビールケースを片手で拾い上げると
取っ手を両手で持ち、必死にこの場から逃げようと「もそもそ」と芋虫のように這いずり回る
赤ゆっくり達の頭上からゆっくりとそれをあてがった。

「「「ぃ゛・・・!!!ぃ゛・・・!!!」」」
「なにじでるのぉぉぉ!!おちびちゃん達は痛がってるよぉぉぉ!!」

赤ゆっくり達は膨らんだ餅の様に「ぷくっ!」と
網目状のケースの隙間から顔や体をはみ出しながら消え入りそうな苦悶の声をあげる。
暫くそれを無言で見つめていた男だったが、少し微笑むとケースから両手を離した。

「「「ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」」」
「やべであげでねっ!!やべであげでねっ!!」

男の支えがなくなった事により、赤ゆっくり達へのしかかる圧力が更に増す。
グルンと白目を剥いて、歯を食いしばり、涎を撒き散らしながらその苦痛に耐える。

そんな赤ゆっくり達の形相を見て、全身から涙やら汗やら例によってよくわからない液体やらを撒き散らしながら、
まりさがオヨヨヨと泣き叫ぶ。しかし男との距離は一定に保ち、絶対に近づこうとしない。
このまりさ、意外にも頭がいいのかも知れない。
この出来損ないの赤ゆっくりを助け出した所で養う事は不可能と理解しているのだろうか?
男の挑発行為に乗せられて無謀な攻撃を仕掛けてこないまりさを見つめながら、男はふとそんな事を思った。

「ケースをどかして欲しいの?」
「すぐにどがじでぐだざいぃぃぃ!!」
「はい、どかしたよ」

男はそういうとビールケースを足で押さえると軽く蹴る。

「「「・・・・・ゅ゛っっ!!!!」」」

ビールケースが砂を撒き散らしながら地面を滑る。
赤ゆっくり達にとっては重厚な鉄輪ローラーにも等しいビールケースが、
赤ゆっくり達を巻き込んで容赦なく飲み込んで行った。

「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

一瞬にしてミンチに変わる赤ゆっくり達を見てまりさが耳を劈くような叫び声をあげる。
ケースが通った後の地面には、ちくわの様に細く丸められた赤ゆっくり達の変わり果てた姿が残った。
見る影も無く細長く押し潰された赤ゆっくり達は、痙攣しながら死んだ魚の様な目で天を仰いでいる。

親ゆっくりの腹の中で親達と一緒にゆっくり過ごす事を思い浮かべながら生れ落ちる時を待っていたのだろう。
結果は産みの親の顔など拝む事は無く、父親にも実質見捨てられるというごらんの有様だった。
例え今日男に出会う事無く、無事赤ゆっくりを出産できたとしても、
野良ゆっくりは見つけ次第「保護」される決まりのこの街では、同じような目に合うのは時間の問題だった。
最初から詰んでいたのだ。どう転がろうと、この赤ゆっくり達が「ゆっくり」できる事など無かったのだ。

「もっ!もうがえっでぇぇ!がえっでぐだざいぃぃ!」

えぐえぐと嗚咽しながらひたすら男に懇願を繰り返すまりさ。
番も死んで子も見捨てているのなら、ここにとどまる必要は無い筈である。
とっとと先程の様に逃走すればいいだけの話だ。逃げ切れるかは別としてだが。

つまりここには、まだまりさが守るべき何かがあるという事だ。まぁ大体予想はできる。
というか大きく分けて2種類しかない。食料か他の子ゆっくりだ。
まりさの目を凝視する。急に男と視線の合ったまりさがダラダラと汗を垂れ流しながらフルフルと身を震わせているが
次の瞬間、チラリと狭い通路の脇に並ぶ粗大ゴミの中の木箱に視線が移る。

どうやらそこに何かあるらしい。男は粗大ゴミの山へと移動する。
まりさは「ゆ゛びぇっ!!」と目を飛び出しながら絶叫した。
あんな行動をしておいて、何故大事なものの位置が気づかれたのかわからないらしい。

「やめてねっ!そこにはなにも・・・」

ようやく飛び跳ねて男の手の届く距離に入ったまりさのおさげを掴むと頭上で回転させた

「ひゅっ!ひゅるるるるっ!おっ!おぞらをっ!」
「そうだね飛んでるね」

こいつにもう用は無い。そのまま壁に頭だけ僅かに掠るように振りぬいた。
帽子を吹き飛ばしながらまりさの頭が壁に擦れる。

「え゛じゅっ・・・!!!」

小さく呻き声を漏らしてまりさの側頭部が綺麗に削れてなくなった。
おさげが「ブチン」切れて男の手を離れてまりさが地面を滑る。
うねうね!と男の手の中で痙攣するおさげを投げ捨てると男は横になった木箱を立て直す。

「これは・・・!」

その中に入っていた意外なものに男は少し驚いたような声を上げる。
中に入っていたのは「すーや!すーや!」と寝息を立てる一匹の子れいむだった。
普段なら別に驚くような事では無かったが今回は事情が違った。
その子れいむの飾りには金色に輝くバッジがついていたからだ。

「金バッジ」それはそのゆっくりが他のゆっくりとは違う選ばれた優秀な個体という証である。
飼いゆっくりとして登録された時に自動的に配布される「飼いゆっくり証明バッジ」とは違い、
様々な適正試験を受けて、それに一定の成績を修めたゆっくりは特殊なバッジを与えられる。

その成績に応じて「銅」、「銀」、「金」とランク分けされ、金バッジともなれば
全てのゆっくり用施設の無料利用と一部公共施設への人間との利用が許可され、
もし人間が金バッジ付きのゆっくりに危害を与えれば、それなりの罰則を受ける事になる。

他の一山いくらのゴミクズとは違い、金バッジのゆっくりには財産としての価値があった。
人の言葉を理解して礼節を重んじるペットとなればそれも当然であろう。
ペットショップなどで血統のいいゆっくりに教育を施しても金バッジを取得できる可能性はかなり低い
それも子ゆっくりの時点での金バッジともなれば、その市場価格はジャパニーズ・ボブテイルの雄よりも高価で取引される。

そんな宝石にも等しい宝物が男の目の前で「すーや!すーや!」と寝息を立てていた。
ここまでしておいて何だが、別にゆっくりが嫌いな訳ではなかった。
男は価値のある金バッジならば飼ってみるのも悪くないと思った。

男は腰を上げるとまりさの元へ向かう。
男の手によって投げ捨てられたまりさは小さく呻き声を漏らして歯を食いしばりながら
ギュッ!ギュッ!と必死に自分の側頭部を地面に押さえつけていた。

手が無いので側頭部から物凄い勢いで噴出す餡子を自分で抑えられないのでこうするしかなかった。
男は地面に転がるまりさの帽子に視線を移す。
良く見ると帽子には不自然に開いた丸い穴が見受けられる。

男はポケットからハンカチを取り出すと、まりさの頭を縛って止血ならぬ止餡をする。
そして帽子を被せてやって優しく頬を撫でた。
男の変わりようにまりさは頬を引きつらせて複雑な笑みを浮かべている。

「お前は元飼いゆっくりだな?飾りにバッジがついていた跡がある」
「ゆ゛っ!・・・ぞ、ぞうです!ばでぃざは・・・」
「お前の事はいい。そこの金バッチのゆっくりは一体どうした?すぐに教えろ」
「ゆゆっ!わがりばじだっ!ゆっくりとはなしばずっ!」
「すぐに話てね」

男に対する恐怖で何度も言葉に詰まりながらも、まりさは自分の生い立ちを話し始めた。

まりさが産まれた場所は「不思議な家」だった。
赤ゆっくりは親ゆっくりから「ゆっくりうまれる」事が無く。運ばれてきた小さな箱の中から産まれた。
そして、その赤ゆっくりの教育は親ゆっくりでは無く人間が行った。
まりさはその人間の手伝いをしたり、赤ゆっくり達のご飯を運ぶ仕事をして暮らしていた。
やがて赤ゆっくりは金のバッジを貰って他の人間に連れて行かれるか、知らない間に居なくなった。

今思い起こせば不思議な家であったというだけで、、
そこで産まれた当時のまりさにはそこが他と違っているという事など分かる訳が無い。
何の疑問も持たずに毎日せっせと赤ゆっくり達の教育と世話に明け暮れた。

しかしある日、問題が起きた。
金のバッジを貰って次の日に不思議な家からゆっくりと旅にでる筈だったれいむの姿が見当たらない。
理由はすぐにゆっくりと理解した。まりさがれいむの巣の扉の鍵を閉め忘れたからだった。
れいむは自分の巣を抜け出して、外へ出かけてしまったのだった。

まりさは人間にこの事が知られる前にれいむを連れ戻そうと、初めて不思議な家から外に出た。
幸いれいむはすぐに外の草むらで「ゆわーい」と遊んでいる所を見つけたのだが、
初めて見る沢山の人間、ゆっくりできない大きなスィー、うなり声を上げる四足の化け物から
逃げ回っている内に帰り道がわからなくなってしまった。

不思議な家の人間に「外に居る人間はゆっくりできない」と聞かされていたまりさは
人通りの多いところから逃げるようにしてこの裏路地に流れ着き、不思議な家の人間が来るのを待った。
しかし待てど暮らせど人間は現れず、空腹を満たすために仕方なくまりさは危険な狩りに出る事を余儀なくされる。

何とか2匹で細々と暮らしていたが、知らないうちにこの裏路地に住み着いた野良のまりさ。
その思考は単純で浅はかであったが、何故か一緒に居るとゆっくりできた。
不思議な家の人間から「すっきりはゆっくりできない」とすっきりを行う事を固く禁じられていたが、
何時になっても現れない不思議な家の人間への苛立ちと、日々命をすり減らす狩りの疲れもあって、
ついその言いつけを破ってしまった。

その結果、身重になった野良のまりさはそれを理由に狩りに出る事を拒否してまりさの仕事量は倍増した。
はじめから野良のまりさの狙いはこれだったのだろう。身重になって安全に食料を手に入れるのが目的だったようだ。

気がついた時にはもう遅い。
夜が明けてから日が暮れるまでまりさは餌集めに没頭せざるを得なかった。
安易に人目の付く所で生ゴミに手を出して人間に連れ去られる他の野良と違い、
必死に培ってきた知識をフル活用してきたまりさだったが、比較的安全な場所にある餌は取りつくしてしまった。
いよいよ、危険な表通りの餌場に繰り出す事を決意したまりさだったが、
そこで、同じまりさ種なのにやたらと強そうな野良まりさに出会う。

強そうな野良まりさが提案したのが、人間から食べ物を奪うことだった。
思い起こせば勝算の無い、ゆっくりしていない無謀な計画であった。
しかし、連日の狩りの疲労と巣で待つ2匹の事もあってまりさには正常な判断を下す事ができなかった。
そしてまりさ達は街を散策して1人で夜道をうろつく頭の悪そうな人間に狙いを絞・・・・

「もういい、沢山だ」
「んぎゅっ!!」

頭に巻いたハンカチを強く縛ってまりさを黙らせる。
ひょうたんの様な体系になったまりさが、顔を青くして地面にコロリと転がって黙り込んだ。

どうやらこのまりさが産まれたのはペットショップで間違いないようだ。
しかもバッジを取れなかったゆっくりは知らない内に居なくなると言っていた。
バッジの試験に落ちたゆっくりを処分していたとすると、
バッジ持ちだけを扱う高級ペットショップに間違いない。男が口の端を吊り上げてほくそ笑んだ。

「このれいむの世話をするなら俺がお前を飼ってやってもいいぞ」
「ゆっ!・・・で、でも」

ひょうたんのまりさが、汗を流しながら言葉に詰まる。
食べ物を要求して襲い掛かったのはまりさの方だったが、
会うなり半殺しにされた人間のいう事など信用するに足りないのは当然だろう。

イヤなら別にいい。

まりさがペットショップへ帰る為に、必死に守って育ててきた金バッジはどちらにせよ連れ帰るし、
その傷を抱えながら保健所に「保護」されるまで精々、数日か数週間を1人で楽しくゆっくりしたらいい。
そう伝えるとまりさは俯きながら、まためそめそと嗚咽を始めた。

こいつの答えなど聞くまでも無い。
仲間と番を殺されても逆上して襲いかかって来ないで、金バッジを守る事を第一に行動して居た。
こいつは根本の所で自分を野良のゆっくりとは別の存在だと思っている。
飼いゆっくりに戻れる唯一の可能性である金バッジを手放す事があるワケが無い。
答えはYES。それ以外はありえない。

まりさは顔を上げると目に一杯の涙を溜めて静かに首を縦に振った。
その瞬間、キラキラと輝く丸い粒がポロポロと地面に落ちて砕け散った。













※ありえないミスにボクは泣いた。



今まで書いたもの
  • ゆっくり見せしめ
  • ゆっくり電柱
  • ゆっくり脳内補完
  • 副工場長れいむの末路
  • ゲスの見た夢
  • 元野良れいむの里帰り
  • ゆっくりできない四畳半

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最終更新:2011年07月30日 02:10
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