ゆっくりいじめ系2776 副工場長れいむの末路4(前編)

副工場長れいむの末路4(終)








「ゆ゛・・・・」

れいむは薄暗いアパートの一室で目を覚ました。
ひんやりとした堅い床の感触が伝わってくる。れいむは上体を反らして辺りを見回した。
男の姿は見当たらない。また何処かへ出かけたのだろうか?
先日の一件の後、気がついた時には真ん中から裂けたれいむの体は何故か元に戻っていた。
しかし、一命は取り留めたものの、もはやれいむの体は以前のように自由に動く事はできなくなっていた。
動けば体中に激痛が走り、うんうんやしーしーは自分の意思とは関係なく勝手に体内から排出された。

「ゆ゛っ・・・・!ゆ゛っ・・・・!」

芋虫が這うように床を進む、以前のように自由に飛び跳ねる事はもうできない。
そしてゴミのように打ち捨てられているしょぼくれたまりさの残骸に寄り添ってそれを喰らう。

「む゛ーじゃ・・・む゛ーじゃ・・・」

もう同属のゆっくりを食する事への嫌悪感は無くなっていた。
歯が殆ど抜け落ちた為に、ロクに噛み砕くこともできない。口に入れて無理やり流し込む。
口を動かすたびに体中がビキビキと悲鳴をあげる。この薄暗い部屋でどれくらいの時間を過ごしただろうか?もはやわからない。
そんな状況でもれいむは死んでしまいたいとは微塵も思わなかった。ゆっくりさせろ。ゆっくりさせろ。
目をギラつかせながら、一心不乱に真っ二つに裂けたまりさの残骸に噛り付く。
腐りかけたまりさを腹に収める事で一時の「ゆっくり」を得ようと必死にまりさの餡子を口に入れる。
ただひたすらに「ゆっくり」を渇望した。

「じあ゛わ゛ぜ・・・じあ゛わ゛ぜ・・・じあ゛わ゛ぜぇぇ」

不幸のどん底のような顔で幸せと呟くれいむ。
どうしてこうなった?どうしてこうなった?れいむの餡子脳内に様々な思いがよぎる。

工場長がれいむを副工場長なんかにしたからだ。
更にれいむを助ける事ができずにアホ面を浮かべて部屋からでていった。
死ね!帰ったられいむが真っ先にあの馬鹿を殺してやる!
ゆっくり死ね!ゆっくり死ね!そう呟きながらひたすら腐りかけたまりさを腹に流し込む。

その時、部屋の照明が光を放つ。久しぶりの光に目を細めるれいむ。
ドアが開き、ゆっくりできないあの男が部屋に入ってきた。
相変わらずの無表情、こいつの顔を見ただけで息が切れる。絶望的にゆっくりできなくなる。
れいむは「ゆひゅーゆひゅー」と苦しそうに呼吸をしながら何とか声を絞り出した。

「ゆ゛っ・・・・に゛ん゛げん゛・・・!」

眉間にしわを寄せてただただ男を睨む。
男はつまらさそうな顔でれいむを見ている。

「クソ袋、お別れだ」
「ゆ゛っ!!!」

久しぶりに口を開く男。
お別れとはどういう事だ?まさか・・・まさか殺すのか?かわいいれいむを殺すのか??
れいむは激痛が走る事も構わずに部屋の隅まで素早く後ずさった。

「じね゛!!じね゛!!ぐるな゛!!じっ・・・・ゆ゛ッ!ゆげっ!げげげっ!」

まりさの残骸がこみ上げて口から排出された。
それにも構わず部屋の隅にギュッ!と体を押し付けて、涙を浮かべてガタガタと震える。
男に対して何をしても無駄だという事は完全に理解した。れいむはせめて可能な限り男から距離を取ろうと壁に密着する。
断続的にこみ上げてくる吐き気、知らないうちに垂れ流したうんうん。体に走る激痛。
全ての現象がれいむに敵対し、牙を剥いている。そんな錯覚に陥る。

(ゆっくりしてないれいむだけど、まりさがゆっくりさせてやるのぜ)
「ゆ゛ぐっ・・・!ま゛っ!ま゛でぃずぁぁぁぁ・・・・までぃざぁぁぁぁ・・・・」

れいむがマヌケ面のまりさの名前を一心不乱に叫びだした。
冷蔵庫の中で一晩だけ一緒に過ごしたマヌケ面のまりさが日に日にれいむの中で大きな存在になっていた。
このゆっくりできない部屋で唯一ゆっくりできた思い出にすがるれいむ。
もはやマヌケ面のまりさが死んだ事すら覚えていないのかも知れない。

「どうぞ、こちらです」

男に誘導されて部屋に入ってきたのは簡素な作業服に身を包んだ人間が2人。
その2人がれいむを見るなり驚いたような表情を浮かべた。

「これはひどい、れいむ種ですか?このゆっくりは」
「そうです。酷い虐待を受けたようで、繁華街に捨てられていた所をかわいそうに思って拾ったんですが
言う事は聞かないし、日がな暴れるので手を焼いてしまって」

部屋が明るくなって気がついたが作業台の上に整然と並んでいた小物の数々が床に散らばっている。
男がやったのだろうか?意図はわからないが、ゆっくりできない予感しかしない。
男は手のひらでしょぼくれたまりさの残骸を指差して話を続ける。

「挙句、一緒に拾ったまりさまで食い殺してしまったんです」
「これはひどい・・・」
「ゆ゛っ!」
「自分の知識不足でこんなことになってしまって・・・すみませんが、処分の方をよろしくお願いします」
「野良ゆっくりの飼育は難しいですからね。前の飼い主が贅沢を覚えさせてしまうと手に負えないんですよ」

男が縊り殺したしょぼくれたまりさが、いつのまにかれいむが殺した事になっている。
れいむはすぐにでも反論しようと思ったが、それよりもあの変な服を着ている2人組・・・
何処かで見た事がある。
れいむの餡子脳がウズウズと刺激される。
虐待によって更に朧気になってしまった記憶、それでも脳裏に焼きついて居るという事は・・・



あれは3日よりもっと前のゆっくりとした昔の事。

工場長に抱きかかられて繁華街を歩いて居た時の事だ。
片目を露出させながらフラフラと呪詛のように「ゆっくりできない」と呟きながら
歩いていたありすが突然棒で小突かれてあいつらに連れ去られていった。
工場長はあいつらを「ほけんじょ」の人間だと言った。

「馬鹿な人間に飼われたゆっくりはああなるんだぞ、れいむ」
「ゆっ!ゆっくりりかいしたよ!おぉ、ぶざまぶざま!」



そうか!馬鹿な28番にさらわれて飼われた為に保健所の奴等が来たのだ!
片目をぶら下げながらボーッと死んだ魚の様な目でれいむを見ていたありす。
れいむもああなるのか?あのクソのようなありすの様にれいむは連れ去られて死ぬのか?

「がえ゛れ゛ぇぇぇぇ!ぼげんじょはい゛ま゛ずぐじね゛ぇぇぇぇ!!!」

れいむは軋む体に鞭をうって、ありったけの力を振り絞って叫んだ。
作業員達が困ったような顔で乾いた笑い声をあげる。
れいむと作業員達の間に割ってはいる男。しゃがみこんでれいむの頭を優しく撫でる。
男が唐突に接近してきた為に、れいむの顔が見る見る青ざめた。

「ゆ゛ぎぃっ!ざわ゛ら゛な゛でぐだざい゛っ!」
「ごめんな、れいむ、最後にこれをやるよ」

男がれいむの口を無理やりこじ開け、口に何かを放り込んだ。

「ゆ゛っ?」

コロコロとした舌触り、その物体から僅かに染み出す甘い味。
無意識にそれを噛み潰す。
口の中に広がる甘酸っぱい味覚・・・この味・・・これは・・・

赤ゆっくりの死体だった。

「ゆ゛ううううう!!!」

顔が焼けるように熱い。れいむの顔面の傷が疼く。
赤ゆっくりの味が記憶に無理やり蓋をして考えないようにしていたまりさの最後を思い出させる。



腹をパンパンに膨らませながら、
マリモのようになったれいむの左半分に必死の形相で体を擦り付けるまりさ。
頬はすりきれ餡子を垂れ流しながらそれでもすっきりを止めない。
止めたら死ぬのだ。止めれる筈が無い。

「すっ!すっ!すっ!すっ!すっ!ずっ!!ずぅ!!びゅ!!・・・・ヴゅ!!!」

突然まりさの体がピタリと止まり、
パン!という乾いた音が部屋に鳴り響いた瞬間、まりさの腹から餡子がビュルビュルと噴出した。
それと同時にまりさの口から大量の吐瀉物。
それは未消化の数百もの赤ゆっくり、その全てがまりさを睨み付けて絶命していた。
それを見たまりさは更に大量の餡子を吐き出した後、数秒で動かなくなって・・・死んだ。



「お別れは済ませましたか?そろそろ出発しますので」
「ゆ゛っ!!」

保健所の職員の声で我に帰るれいむ。
職員の1人が傍らに抱えていた箱が開かれる。
れいむにはまるで全てを飲み込む悪鬼が口を開けたように見えた。

「びっ!ひびぃ!や゛べでね゛っ!れ゛い゛む゛はどっでもえ゛ら゛い゛ん゛だよ゛っ!」

必死に部屋の隅から隅へ移動しようとしたれいむだが
職員の手は淀みなく動き、れいむの頭を押さえつけた。
そして悪鬼の口へれいむを放り込む。

「やだっ!ぼげんじょいやだぁぁぁぁ!」

すぐに箱から脱出しようと顔を出して尻を振って身を乗り出そうとしたが、
箱の中に充満した臭いに全身が硬直する。
それはゆっくりにしかわからないゆっくりの死臭だった。

「ゆ゛あ゛っ!ぐざい゛!ぐざい゛ぃぃぃぃ!」

箱の中で涙を流しながら叫ぶれいむ。
徐々にしまってゆく悪鬼の口。やるせない顔の職員。眠たそうな顔の職員。そして・・・
あいも変わらず無表情な男の顔、それらを映していた視界が細く狭くなっていく。

「ま゛り゛ざっ!!ま゛り゛ざっ!!ま゛り゛ざっ!!ま゛っっ!!」

飼育箱の蓋が閉められるとその声はピタリと聞こえなくなった。



数日後



繁華街の中央に聳え立つ警察署、そこから工場長は出てきた。
梅雨明け前だというのに夏と勘違いするほどの激しい日差しを憎々げに睨みつける。

男のアパートから帰ってから数日後、工場長は警察に呼び出されて出頭した。
あの男、28番が被害届けを出したのだ。
家に入り込み暴れただけなればここまで大事にはならなかったらしいが
男に金を渡して隠蔽を図ろうとしたのがまずかった。

すぐに示談が成立したものの、こうして丸一日厳重注意を受けることとなった。
工場長が警察の呼び出しを受けたという報せは、早くもゆっくり製菓本社にまで届き、
すぐにでも本社へ赴いて釈明をしなければならなかった。
本社はゆっくりゼリーの販売数が落ちる一方である自分の工場をできれば閉鎖したいと考えている。
この一件が○○工場を切り捨てる引き金になりかねない。工場長は深くため息をついた。

その時、工場長の携帯が鳴る。
懐から携帯を取り出して人ごみの中という事にも気をかけずに怒鳴り声をあげる。

「うるさいぞ!今帰るところだ!」
「す、すみません。例の件に関することなら何時電話してもいいと伺っておりましたので」
「なに!?れいむが見つかったのか!?」
「その件につきまして、元社員の○○様から連絡がありましたのでお繋ぎ致します」

電話に出た元社員の○○は工場長をこんな目にあわせた男、28番だった。

「誰かと思えばお前か!・・・よくもこんな真似をしてくれたな!」
「通報したのは自分ですが、情状酌量を訴えたのも自分ですよ?すぐ帰れたでしょう?」

「だったら初めから通報するな!馬鹿なのか!?死ぬのか!?お前は!!」
「済んだ事をどうこう言っても何もはじまりませんよ、それよりも」
「そうだ!れいむは何処にいるんだ!さっさと答えろ!クズが!」
「そうです。貴方の飼いゆっくりを見つけたので電話をさせて頂きました」



数時間後、男と工場長は落ち合って二人で繁華街の通りを歩いていた。
たどり着いた先は男のアパートとは逆方向の繁華街の外れにあるゆっくり保健所。
簡素な施設内には受付に1人従業員が居るだけで後は誰も居なかった。

小さく会釈をして従業員と会話をする男、
工場長はそれを横目で見ながら苛立たしそうに体を揺すって舌打ちした。

「おい、早くしろ!私は忙しいんだ!」

男は工場長を一瞥すると無視して話を続けた。
工場長は寂しくなつつある頭髪をガリガリと掻き毟った。
28番のせいで今まで警察署に拘束され、この後は本社への釈明と奔走しなければならない。
工場長の苛立ちは頂点に達していた。

やがて話を終えた男が踵を返して「ついてこい」と目で合図する。
男の手には金属製のカードのようなものが握られている。
工場長の視線に気がついた男は目を細めるとその金属製のカードをポケットにしまった。

男に案内されて地下へ進む階段を下りていく。
工場長は先程から人を小馬鹿にした様な態度を取る男の後頭部に叫んだ。

「この下に保護されているのか?おい!ここにれいむが居るんだな!」
「普通ペットが居なくなったらこういう所から探すものだと思いますが」
「急に居なくなったのでな」
「居なくなったら盗まれたと思い込むのは小学生の思考ですよ」
「なんだと!貴様、さっきから無礼じゃないか!」

工場長が憎々しげに男を睨みつける。それに反応することなく男は階段を下りる。
その先の大きな空間はガラスの壁面で真ん中から仕切られており、一見すると水族館の様だった。
その分厚いガラスの向こう側に無数のゆっくり達が所狭しと蠢いている。
ゆっくり達が階段を下りてきた2人に気がついて一斉に振り向いた。

「ゆ゛っ!人間ざん゛!だずげでね゛っ!ま゛り゛ざをごごがら出じでね゛っ!」
「ここはゆっくりできないわ!おねがい!ありすを出して!」
「ちぇんを助けにきてくれたんだねー!わかるよー!わかるよぉぉぉ!」
「ゆ゛わ゛ぁぁぁん゛!どぼじでれいむがごんな゛め゛に゛ぃぃぃl」

元飼いゆっくりや街へ下りてきた野生のゆっくりの終着駅であるゆっくり保健所。
昔は食用として育てられたゆっくり以外もゆっくり加工所へ連れて行かれ様々な加工が行われていたが、
今は衛生面を考慮し、街に住みつき引き取り手の無いゆっくりはこのゆっくり保健所へ送られる。

ゆっくり達はこの場所の只ならぬ雰囲気に本能的に身の危険を感じていた。
あまあまは天井から降ってくるが、ここはゆっくりできない気がする。一刻も早くでたい。
元飼いゆっくりの中には飼い主からここがどんな所か聞かされているゆっくりも居た。
ここから出るには飼い主の気が変わるか、新しい飼い主に拾われるしかない。
ゆっくり達にはもう後がない。我先に自分をアピールする。この先に待っているのはゆっくりできない「処分」だ。

「れいむ!どこだ!?迎えに来たぞ!」

工場長はガラスの壁を見渡して副工場長れいむを探す。
しかし必死の形相で助けを請うゆっくり達の群の中に
ピンクと白の横縞の服を着た副工場長れいむの姿は見当たらない。

「居ないじゃないか!どうなっているんだ!」
「・・・・・・」

男は工場長の問いかけには答えずに
ガラスの壁によりかかり、ゆっくり達を見渡して語りかけた。

「お前たち「こうじょうちょう」さんはれいむを探してるらしいぞ?知らないか?」

この言葉・・・!

工場長はつい先日の男の部屋での光景を思い出す。
まさか・・・まさか・・・やはりあの部屋にれいむは居たのか!?
だというのに私はこのクズに媚びへつらった挙句、通報されて工場の閉鎖の危機に立たされている。
やってくれたな・・・!番号作業員ごときが・・・!クズ!クズが!!

「やはりお前がやったのか!!」
「だったらなんだって言うんです?」

信じられないといった表情で男を睨みつける工場長
あらゆる罵詈雑言が男に叩きつけられたが、男はそれを聞き流す。
男はジッと工場長の表情を見ていた。
目を見開き、顔を真っ赤に硬直させ、身を震わせながら喚く油の塊。まるでゆっくりだ。
思わず笑いがこみ上げそうになるが堪える。我慢だ、もっと面白いものがこれから見れる。

「バッチのついてないクソ袋が生意気な口を聞いたのでここへ放り込んだまでです」

そう吐き捨てると、ポケットから小さなピンクと白の横縞の服を取り出し床に捨てる。
それを見て驚きの声を上げる工場長、それは間違いなくれいむが着ていた服だった。

「これはれいむの・・・くそ!このクズが!貴様一体、私に何の」
「今回も見落とすつもりですか?」

工場長の話を断ち切り、
男はポケットから一枚のカードキーを取り出して
ガラスの壁面の隅についている閉じられた小窓をコンコンと軽くノックするように叩いた。

「俺はこの小窓を開く事ができるカードをもっています。
貴方が指名したゆっくりを一匹だけ連れてきてあげますよ」

工場長は暫く男の手に握られているカードを見つめていたが、
口の端を釣り上げて鼻を鳴らしながら笑い出した。

「馬鹿か?お前は?そんな板切れかかげて神様気取りか?
私も手続きして借りてこれば良いだけの話だ!無学のクズが!そこで踏ん反り返ってろ!」

踵を返して歩き出し、階段に足をかける工場長。

「わかってないな」
「何?」
「ゆっくりの処理が行われるのが毎週月曜の22時、
そしてカードの貸し出しの手続きにかかる時間は大体20分」

今日は月曜日

工場長は腕時計を見る。今の時間は21時56分
これから階段を上り、一階にある受付でカードキーを借りる手続きをしていたらとても間に合わない。
さっき上で無駄話をしていたのは時間を調節する為だったのか!時間はあと4分しかない!
工場長は横目で泣き叫ぶゆっくり達を見る。
これっぽっちの時間であの無数のゆっくりの中から私のれいむを見つけることなど・・・

「く、くそ!それをよこせ!」

工場長が床を蹴って駆け出し、男に掴みかかる。
男はそれを難なく振りほどいて工場長の足を引っ掛ける。
バランスを崩して床に滑り込む工場長、小さくうめき声を上げて床に這いつくばる。
別に男の力が強いわけではない、工場長の力が弱すぎるのだ。
息を切らせながらなんとか立ち上がる工場長。
再び飛び掛ってくる事は無かったが、その目は怒りに震えている。

「こんな事が許されると思っているのか!このクズ!クソクズが!」
「おぉ、こわいこわい」

工場長は身を振るわせて地面に足を叩きつける。

「おい!誰か!誰か居ないのか!なにをやってる!税金泥棒が!」
「いくら騒いでも今日びゆっくりの掃き溜めなんかには誰も来ませんよ」

男は念入りにこの保健所の事を調べていた。
職員ですらこの部屋までは来ずに天井の開閉式の穴から通じている地上のゴミ箱から
餌や連れてきたゆっくりを投下していた。ここまで訪れる人間は年に数える程しか居なかった。

ガラスの壁の奥で投棄された時に潰れて死亡しているゆっくりが居る事や
床のアスファルトを破って草が繁殖している事、
土砂を取り除くためのスコップがさび付いて床に転がっている事もそれを物語っていた。
助けなど来ない。ゆっくりとそれを理解した工場長はガラスの壁面に顔を押し付けて叫んだ。

「れいむ!何処に居るんだ!返事をしてくれ!」
「「「「れいむはここだよ!はやくたすけてね!かわいいれいむが困ってるよ!!」」」」

ガラスの壁の向こうに居る全てのゆっくりが工場長に返事をした。
駄目だ。わかるはずが無い。
汗を垂れ流し、呼吸が荒い工場長とは対称に男は涼しい顔で時計を見ている。

「あと3分」
「だまれクズが!」
「それしか言えないんですか?」
「くそっ!くそっ!どれだ!こんなのわかるわけ・・・」

いやまて。

無数に居るゆっくり達の中から副工場長れいむを見つけ出すのは一見すると不可能に思える。
しかし少し考えればそんなことは無い。他のゆっくり達が知らないれいむの情報、
それをゆっくり達に質問すれば難なく副工場長れいむを特定できる事に気がついた。

「れいむ!私の家でお前は毎日何を食べていた!答えてくれ!」

「ゆ゛っ!ゆゆっ!れいむはいつもあまあまをたーくさんむーしゃ!むーしゃ!じだよ゛っ!」
「きれいな芋虫さんをお腹一杯食べたのぜぇぇぇ!」
「とかいはなゆ゛っぐりフードよぉぉぉ!」
「おうどんだべだぁぁぁぁいぃぃぃ!!」

野良のゆっくりは今までに食べた食べ物中で一番ゆっくりできたものを
元飼いゆっくりは飼い主から聞かされた菓子の銘柄を叫んだ。
それらは全て正解ではなかった。しかしその中の一匹のゆっくりが叫んだ言葉に工場長は目を見開いた。

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最終更新:2009年06月13日 19:57
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