ゆっくりいじめ系2777 副工場長れいむの末路4(後編)

前編から)

「ゆ゛っ・・・!れいむが食べたあまあまに名前はなかったよ!!」

副工場長れいむに与えていたのは洋菓子、
それを売っていた店は完全会員制の老舗で、商品には名前が無く。
その名無しの洋菓子を一種類ずつ木箱に詰めたものだけを販売していた。
確かにこれは本物の副工場長れいむでないとわからない事である。
いとも容易く副工場れいむの特定に成功した工場長は声を上げて喜ぶ。

「やったぞ!お前がれいむだな!すぐにこの掃き溜めから出してや」

しかし、工場長はその声の主であるゆっくりを見て愕然とした。

「な、なんだこれは!?」

そのゆっくりは顔の左半分がれいむで右半分がまりさだった。

顔のいたる所、特に顔を中心に一文字に痛々しい傷跡がついており、皮を継ぎはぎをされたような崩れた顔面。
その頭には薄汚い帽子が乗っている。何故こんな汚い帽子を被っているのかと思ったが、それも直ぐに合点がいった。
そのゆっくりの頭髪は殆ど抜け落ちていたのでそれを隠す為だった。
歯も殆ど残っておらず無駄に目はカッと見開かれている。焦点は合っていない。
瞳孔が小刻みに振動して何処見ているかわからない。ひたすらに挙動不審なゆっくりがそこにいた。

「こ、こここっ、これが・・・れいむ??」
「ゆ゛っ!ぞうだよ!れ゛い゛む゛がれ゛い゛む゛だよ゛!ばや゛ぐだじでね!ゆ゛っぐり゛ざぜであ゛げる゛よ゛!」

ついに工場長に自分を見つけてもらい嬉しそうな笑みを浮かべる副工場長れいむ。
ボロボロの歯が剥き出しになり工場長は顔をしかめた。

どこに出しても恥ずかしくない美ゆっくりであったれいむの面影は微塵も無い。
醜い泥饅頭が工場長に媚びた笑みを浮かべて尻を振っている。
これは・・・?こんなのが本当にれいむか・・・?しかし・・・洋菓子の名無しを知っていた・・・だが・・・!

「もう1分を切った。どうする?」

冷たく響く男の声。
ガラスの壁から目を落として頭を抱えてしゃがみこむ工場長。
答えはもうでている。しかし目の前のれいむをれいむと認めることができないでいた。
再びガラスの壁に視線を戻す。醜い笑みで工場を見つめる泥饅頭。
その周りには自分が副工場長れいむであると言い張るゆっくりの群れ。

「「「「「だずげでね!だずげでね!だずげでね!」」」」」

暫しガラスの壁を見つめていた工場長が男を見る。

「・・・・さっさとれいむをつれて来い」
「あのゴミみたいなゆっくりでいいんだな?」

男のその台詞で工場長がほくそ笑む。

「何を言っている?お前が連れてくるのは向こうのれいむだ!」
「ゆ゛っ!?ゆ゛う゛っ!?な゛、な゛に゛い゛っでる゛の゛!?」

工場長が指を刺した先には無数のゆっくりたちの影に隠れて殆ど見えないが、
口を糸で縫われ、喋る事ができずにもがいているゆっくりれいむが居た。
自分が指名されることを確信していた傷だらけのゆっくりは
目が飛び出さんばかりに驚きの表情を浮かべた。

「お見通しだ!大方れいむから色々と情報を聞き出してそのゴミに覚えさせたんだろ!
俺にこの泥饅頭を掴ませるつもりだったんだろうが、そうはいかんぞ!」

工場長は男を指差して捲し立てた。

「そもそもゆっくり達への質問を許可するのがおかしい!
質問に答えられるあの泥饅頭に行き着くのは時間の問題だ!」

「そして何故、あんな目立たない所に喋れないように口を縫われたれいむが居る?
いくら管理がずさんでも口を縫われたゆっくりを職員が放置するのはおかしい!」

「真相はこうだ!貴様はわざとらしくカードキーをちらつかせて、今受け取った事を印象付けようとしていたが
実際はカードを受け取ったのは私と合流する前!、
先にここへ入り私の副工場長れいむの口を縫いつけて喋れなくしてここへ放り込んだ!」

「どうしてそれがわかるか?
タグだ!ここに居るゆっくりには飾りに捕獲された場所と日付が書いてある名札がついている!
しかしだ!口を縫われたれいむにはそれがついていない!
それが貴様が私のれいむをここに放り込んだという決定的な理由だ!」

「もし私が今日ここへ来れなかったら殺処分が行われてしまう!
こんな馬鹿げた問答をやる為にお前は直前まで私のれいむを手元に置いておく必要があった!
泥饅頭には代わりがいるんだろ?しかし私のれいむは1人しかいない!」

「そして貴様の泥饅頭を私に握らせようとする態度、もはや疑いようが無い。
その口を縫われたれいむが私のれいむだ!何をアホ面を浮かべて突っ立ってるんだ!
とっとと、そのれいむを連れてこい!ノロマのグズが!」

男は工場長から無言で顔を逸らすとガラスの壁の脇にある装置にカードを滑らす。
電子音の後にカチリと音がし、水槽の壁面の小窓が開いた。
男は小窓に手を入れ、口を縫われたれいむを呼ぶ。

副工場長れいむは目を血走らせながら小窓へ駆け寄ろうと床を蹴る。
しかし小窓へ殺到する他のゆっくり達の行列に巻き込まれて顔面を踏みつけられ悶絶した。

「れ゛い゛む゛をふまな゛い゛でね゛っ!!クズゆ゛っぐり゛はみ゛ち゛をあ゛げでね゛っ!」
「れいむはそこでゆっくり死んでね!れいむはお外でゆっくりするよ♪」

縫われいむはそう副工場長れいむに吐き捨てると目を輝かせて男の腕にしがみついた。
他のゆっくり達がこのチャンスを逃すものか、と男の腕に絡み付いてくる。
それを無言で叩き潰した。それでもゆっくり達は諦めない。これが本当に最後のチャンスだった。

「づれでいげぇぇぇ!ばでぃざもづれでいげぇぇぇ!」
「れいむだけゆっぐりずるなんでどがいばじゃないばあああ!」
「ぞの゛れいむ゛よりれ゛い゛むのぼうがおうだがじょうずだよ!ゆ゛っ!ゆ゛ゆ゛っ!ね゛っ!ぎいでよぉぉぉ!」

必死の形相で男の腕にすがり付くゆっくり達の健闘も空しく、
縫われいむを小窓から出した瞬間に小窓は閉められた。

一匹のゆっくりが小窓に挟まれて、上半分と下半分で真っ二つになる。
上の部分が小窓から外に出て床を転がり、脱出に失敗した下の部分が「おそとにでられたよ!」と叫んだ後、絶命した。
一瞬にして餡子の塊になったゆっくりを見て、一斉に恐怖の声をあげるゆっくり達。
ガラスの壁の中は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。全てのゆっくりがガラスの壁にへばりついて泣き叫んだ。

男は縫われいむを無言で工場長の下へ投げ捨てる。
「ゆべっ」と床を転がる縫われいむ。
男のその姿に工場長はこれが本物のれいむであることを確信した。

「ハハッ!無能の浅はかな知恵などこんなもんだ!残念だったな!」

勝ち誇った笑みを浮かべて工場長はれいむを抱きかかえ口を塞いでいる糸を抜き取る。
れいむはガラスの壁の中から生還できた事に心底安堵し、フルフルと身を震わせて涙を流している。

「ゆっ!こうじょうちょうさん!ゆっくりありがとう!」
「れいむ、お前がれいむでいいんだな?」
「そうだよ!れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!すーり!すーり!」

縫われいむは体をプリプリと振るわせながら工場長に頬擦りした。
工場長は縫われいむの体を優しくささえて頭を撫でながら語りかけた。

「れいむ、お昼は名無しの洋菓子だが、夜は何を食べていたか当然わかるよな?」
「・・・・ゆっ?」

縫われいむは質問には答えない。もみあげをピコピコと動かして媚びるだけである。
工場長の手が止まる。両手で縫われいむを引き離して顔の前に持っていく。
何やら人間の様子がおかしい。工場長の唯ならぬ雰囲気に縫われいむの顔色が変わる。

「ゆ、ゆっくりしていってね!」

精一杯の明るい声でひねり出された「ゆっくりしていってね」だったが
そんなものでは状況を打開できない。縫われいむにひと筋の汗が光る。
工場長の顔が徐々に赤みを増してワナワナと震え始めた。

その時、部屋の隅に備え付けられてあるスピーカーから音楽が流れ始めた。
それはまるでデパートの閉店時に流れるような、焦燥感を煽り、無駄に虚しさがこみ上げる音楽。

<これヨり、ゆっクリたちの処ぶンがおこなわれます
水槽にハ手を触れずに、白線より内側へおサがりください>

何度も繰り返し再生されたのであろう間延びしたアナウンスが部屋に響く。
それを聞いて工場長は狼狽した。
縫われいむを握りつぶさんばかりの剣幕で押さえつけて叫ぶ。

「貴様!さっさと答えろ!踏み潰すぞ!」
「い、いたいよ!やべでね!れいむはれいむだよっ!ゆっくりさせてねっ!」

こうじょうちょうさんはれいむを探していたのだから
何もおかしいことは無い。自分はれいむである。そうだ、何もおかしいところは無い。
何が気に入らないんだろう?ゆっくりが足りないのか?そうか、ゆっくりだ!
自信を取り戻しにこっ♪と満面の笑顔を浮かべて元気に工場長に叫んだ。

「かわいくてごめんね♪」

パァン!

工場長はれいむを懇親の力を込めて床にたたき付けた。
鈍く乾いた音と共に縫われいむがコンクリートを跳ねる。

「ゆ゛っ・・・・ぐっ!れ゛る゛ぃ!」

その衝撃で片目が露出し、何が起こったかわからないといった表情で痙攣する縫われいむ。
それを黙って見ていた男がポケットから一枚の紙切れを出して工場長にちらつかせた。

<れいむ種 ○月○日(火曜)繁華街西通り>

「貴方が今、探していたのは本物の副工場長れいむでは無く、
本物が醜いクソ袋より見た目が幾分マシなれいむという「理由」です」

縫われいむの飾りを良く見ると隅の方が僅かに破れていた。名札を引きちぎった跡だ。
この糞饅頭は男が直前に檻へ放り込んだものでない。という事は・・・という事は!
工場長は瞬きもせずにゆっくりと男の方へ振り返った。

「事前に俺がここに入ったのは正解、
わざとらしく振舞ったので気がついて当然ですがね。
しかし中でやったのは適当なれいむの口を縫って、名札をもぎ取っただけ
それだけで貴方は勝手に憶測に憶測を重ねて偽者に飛びついた」

本物、偽者、どちらを選んでも男に問題は無かった。
仮に工場長が副工場長れいむを選んでも虐待によってボロ雑巾のようになり自分で排泄もできない
欠陥をかかえたゆっくりを養わなければならないのだから。
そして工場長が今日来られなくても別に問題は無かった。
口も聞けないほどに痛みつけたゆっくりれいむを用意すればいいだけの話。

「わざわざまりさ種の皮で継ぎはぎしたれいむ種に
あなたのれいむの情報を覚えこませて、それを大量にストックしていた?大した推理ですね」

男の嘲笑を目の前にして工場長は今更ながらに気がついた。
叫んでいた時は利に適っていたように感じたが、今思い起こせば穴だらけの酷い憶測。
傷だらけの泥饅頭が本物だと認めたくないばかりに無意識に捻じ曲げられてできた結論だった。

「それよりいいんですか?俺と話なんかしていて?最後の時だというのに」
「最・・・う!れいむ!れいむぅ!!」

工場長はガラスの壁の小窓に駆け寄ると手をかけ、無理やりこじ開けようとするが扉はビクともしない。
部屋には作動音が響き、床が微かに振動している。

<ドうか目をそラさずにゴ覧くダさい。月に3000匹もノゆっくりがこの殺施設で処分さレています
命に責任ヲ持つという当タり前の考エが昨今、希薄になってイます>

間延びしたアナウンスと共にゆっくり側の壁面がどんどんガラスに向かって狭まっていく。
このままゆっくり達を圧死させるのだ。
年々爆発的にゆっくり保健所へ送られてくるゆっくりの数が増大した事もあり、
人件費を抑える為、ゆっくりの処分は完全オートメーションで行われていた。

「ゆ゛っ!かべさん!ゆっくりしてね!ゆっくり向こうへいってね!」
「な゛に゛ごれ゛!?ゆっくりできない!」
「ゆ゛ぅぅぅん゛!がえ゛る゛ぅぅう!お゛う゛ぢがえ゛る゛ぅぅぅう!!」
「じねぇぇぇ!ゆっくりできない壁は!ゆ゛っぐり゛じねぇぇぇ!」

壁に身を寄せてすすり泣いていたゆっくり達が再びパニックに陥る。
しかし狭いガラスの檻の何処へ行こうと逃げ場は無い。
白目をむいて仰向けに倒れていた副工場長れいむが、この喧騒で目を覚ます。

「ゆ゛っ?・・・・ゆ゛ううう!!どけ!クズども!れいむは!れいむは副工場長なんだよぉぉぉ!」

激しく体を動かせば激痛が走るという事ももはや忘れてしまったのだろうか、
足場が狭まり次々と折り重なっていくゆっくり達を掻き分け、上へ上へと登っていくれいむ。
しかし上りきったところで頂上に出口があるわけではない。
ガラスの壁面に顔を押し付けて泣き叫ぶしかなかった。

「ゆ゛っ!ゆ゛う゛う゛!!ゆ゛っぐり゛!!ゆ゛っぐり゛!!ゆ゛っぐり゛ぃぃぃぃぃ!!」

ガラスに顔を押し付けれいむが狂ったように「ゆっくり」を連呼する。
その側にすがりつき工場長も叫び声をあげた。

「れいむ!れいむうううう!すまなかった!わからなかったんだ!本当にわからなかったんだよ!!」
「ごの゛クズ工場長!!い゛ま゛ざら゛何い゛っでい゛る゛ぅぅぅぅ!!
なんでれ゛い゛む゛をえらばな゛がっだ!!ゲスはじねぇぇ!おまえは今すぐじねぇぇぇ!!」

れいむに罵倒され唖然とした表情を浮かべて動けない工場長。
ふがいないクソ人間!れいむをゆっくりさせないで何をそんな所でアホ面ぶら下げているんだ!
助けろ!さっさと助けろ!なんの為にお前はいるんだ!れいむをゆっくりさせる為だろ!
前もアホ面で帰ったのに!今日もそんな所でアホ面を浮かべている!ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!
ガラスに残り少なくなった歯をガリガリと押し付ける。

「だせ!!ごごがらだぜええええ!!だぜ!じね!じね!だぜぇぇ!あげろ!じね!あげろおおお!」

れいむの必死の形相とは不釣り合いな間延びした暢気な音楽。
その変なギャップがこの光景をより一層狂気じみた場に変貌させた。
工場長の背筋に怖気が走る。

<安楽死の殺処分ニは多額の費用がかかる為、ユっくり達はコのような凄惨な方法で処分さレます
こノ光景を見た後、学校や職場デ是非、命の重サについて皆さンでお話をしテくださイ>

「ゆ゛っ!?・・・・ゆ゛わ゛わ゛わ゛わ゛わ゛っ!!!」

れいむの背中に冷たい壁の感触。
狭まった壁がついにガラスにへばりつくれいむの元までたどり着いた。
意思とは関係なく垂れ流されるれいむのうんうんとしーしー、
下に居るゆっくり達が「ぜま゛い゛ぐざい゛」と悶絶した。

「「「「「「「ゆ゛っ!ゆ゛っ!ゆ゛っ!ゆ゛っ!ゆ゛っ!ゆ゛っ!」」」」」」」

高さ3メートル弱のガラスの壁面全体が迫り来る壁に押し付けられて、
思い思いの形相を浮かべる膨大な量のゆっくり達で埋め尽くされた。
目を見開き、歯をくいしばって苦悶の表情を浮かべるゆっくり。
あと数秒で終わる生涯に涙を垂れ流しながら悲観の表情を浮かべるゆっくり。
狂ったような笑い顔を浮かべてこの状況から逃避するゆっくり。

「いやだ!!じにだぐない!ゆっぐりじだい!だぜ!だじで!だじでぐだざいぃぃぃぃっ!!!」

副工場長れいむの顔面、まりさとの接合部に亀裂が走る。

「ゆ゛っ!!い゛や゛ぁぁぁぁ!!!ゆ゛ん゛や゛ぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

断末魔の叫び声をあげる中、れいむは男の視線に気がつく。
しかしその熱っぽい眼差しは今までような無表情のものではない。

満面の笑顔、一点の曇りの無い満面の笑顔。
安堵感、幸福感、充実感に満ちた安らぎの笑顔。
死の淵、人生最大のゆっくりできない状況でのこの男の表情。
れいむが狂いそうなほどに求めて渇望したものが目の前にあった。

ひどい、ひどすぎる。れいむはこんなにもゆっくりしていないのに、
あの人間はあんなにもゆっくりしている。うらやましい・・・・うらやましい・・・・うらやましい・・・・うらや
その笑顔の男が副工場長れいむを見て吐き捨てるように言った。

「ゆっくり死ね!」

ゆっくりが敵対した相手を見下し、自分の方がゆっくりしている事をアピールする罵倒の言葉。
この単純な言葉が副工場長れいむの心を粉々に砕いてどんな虐待よりも生きる意志を踏み潰した。

「も゛っ!!も゛っ!!ゆ゛っ!!ゆ゛ぐっ!!い゛っ!!あ゛っ!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

男の発した声が合図であるかのように顔面の傷口かられいむが崩壊して爆ぜ、
その次の瞬間一斉に全てのゆっくり達が爆ぜた。
れいむが蔑んで見下していた男によって
れいむが蔑んで見下してた野良ゆっくり達と一緒に粉々に吹き飛んだ。

これが副工場長れいむの末路だった。

爆発音にも似た轟音が鳴り響いた瞬間、ガラスの壁面が真っ黒になった。全てが餡子で覆われた。

<殺処分サれたゆっクりはコの後、飼料とシて再利用さレます
皆さんも社会ノ役に立つ生き方を模索してクださい。このユっくりできなかったゆっクりの分マで>

「ユっくりシていってね」
「ゆっクりしてイってね」
「ゆッくりしテいってネ」

スピーカーから流れるゆっくり達の間延びした音声と共に、少しずつ壁がガラスから離れていく
ボタボタと音をたてて床に落ちていくゆっくり達の残骸。
そして大量の餡子に混じって脱ぎ捨てたマスクのようなゆっくり達の顔、顔、顔、

「ユっくりシていってね」
「ゆっクりしてイってね」
「ゆッくりしテいってネ」

その全ての皮が苦悶の表情を浮べてゆっくりできなかった無念さを訴えてきた。
もうどれが副工場長れいむであるかは分からない。
壁が元の位置に戻ったところで四隅の装置から大量の水が噴出して部屋を洗浄しはじめた。
数分もしないうちに餡子も皮も全て混ざり合って洗い流され排水溝に消えていった。

男はその光景を満足そうに眺めていた。

そう、これこそがゆっくりだ。
ゆっくり、ゆっくり、と連呼しながらも
その生涯でゆっくりする事なくただの一度も無く、ゴミを喰らい、無限に存在する外敵に怯え、
逃避するように無計画に繁殖し、宝物のように子供をかわいがる一方で
自分に危機がせまればそれをあっさりゴミの様に捨てる。そしてまたゴミを食べる。

これこそがゆっくりだ。今日び人間だってゆっくりできない。ゆっくりごときがゆっく・・・・

グシャッ!

男は後頭部に衝撃を受け、床に崩れ落ちた。
その後ろには部屋の隅に転がっていた錆びたスコップを握り締める工場長。

「・・・ここには誰も来ることは無いと言ったのはお前だ」

男の頬を何かが伝う。
手でそれを拭って見る。血だった。
先程、満面の笑顔を浮かべた以外は能面の様だった男の顔が醜く歪んだ。
立ち上がろうと腰を上げる。しかし腰に力が入らないのか直ぐにまた倒れて床を舐める。
工場長はスコップを男の背中に振り下ろす。鈍い音、男が顔をしかめる。

「い゛っ!」

男の顔が更に歪む。背中を押さえて床を転がる。
無抵抗で力の弱いゆっくりと同じような振る舞いを人間にした結果がこれだ。
スコップを握り締めながら工場長は汚い笑みをこぼす。

「や゛っ!や゛め゛っ!やめろ゛っ!」

スカした顔で能書きを垂れてた28番が涙を流しながら命乞いをしている。
相手がどんなに理論で武装してつけ入る隙を見せなくても
全てを無効にし、有無を言わさずひれ伏せさせる手段。
男がゆっくり達に行ったのと同じ行為。暴力だ。

ゆっくりを嬲り殺すだけで満足していればよかったのだ。
同じ立場の生き物にそれをしようとした途端この体たらく。
所詮は番号で呼ばれるクズ、少しこずけばこんなものだ。

「れいむ・・・だずげでっ・・・だずげでぐだざい!」

全身を強打して痙攣している縫われいむを抱え上げてすがりつく男。

「工場長さんはれいむが好きだから・・・だから俺をだずげるようにいっでぐだざ」
「い゛ッ!?」

スコップの先で頬を殴られ壁にぶつかって崩れ落ちる。
壁には男の血がこびり付いていた。
工場長は足元で痙攣しているれいむを一瞥すると、

「ゆっくり死ね!」

スコップを振り下ろした。
「ぴきゅう!」と音とも声とも取れる妙な断末魔をあげて縫われいむは破裂した。
床一面に餡子の華を咲かせて粉々に砕けた。縫われいむの眼球が男の足元に転がる。

「お前の頼みの綱はこんなことになってるぞ?」
「ひっ!ひぃぃぃっ!」

頬を押さえてうずくまる男。
その姿はまるで土下座をしているかのように惨めで滑稽だった。
男に向かってゆっくりと歩みを進める工場長。
初めてゆっくりを手にかけたが罪悪感など全く無かった。
逆に胸は高鳴り、今までに感じた事の無い精神の高揚を覚えた。

馬鹿で滑稽な饅頭を手元に置いて相対的に高みにあがる自分を感じていたいだけだったのだ。
男によってそれを気づかされたのは癪に障ったが、
目の前で土下座のようなポーズを取っているそれを見下ろす事でその屈辱感は見る見る消えていった。
このまま誰も来ないガラスの向こうへ放り込んでやろうか?
こんなクズが居なくなっても誰も気づかない、誰も気にも留めない。すぐに誰も思い出さなくなる。
狂気じみた笑みを浮かべる工場長。

「れいむの次はお前だ!俺をゆっくりさせないお前はゆっくりしね!」

男の顔面目掛けてスコップを振りかぶる工場長・・・

カチッ

「れいむの次はお前だ!俺をゆっくりさせないお前はゆっくりしね!」
「・・・!?」

カチッ

「れいむの次はお前だ!俺をゆっくりさせないお前はゆっくりしね!」
「こ、ここここ・・・・!?」

膝を折り曲げてうずくまる男の手がスルリと伸びて工場長の前に突き出された。
その手に握られているのはボイスレコーダー。
工場長の手が止まり、スコップがするりと手を離れ床に落ちた。鳴り響く金属音。
男は壁に手をかけてフラフラと立ち上がる。

「工場長さんにかけられた疑いを晴らしたくて毎日れいむを探していたんですけど、
今日ついに立ち寄った保健所でれいむを見つけて工場長さんに連絡したんです」

ブツブツと呟きながら床に落ちているピンクと白の横縞の服を
手に取ってヒラヒラと手を振りながら歩く。
そしてそれを縫われいむの残骸の上にフワリと落とした。

「でも工場長さんは僕が通報した事を凄く怒っていて、
自分のれいむを床にたたき付けて殺した後にスコップで僕を殴ってこういったんです」

カチッ

「れいむの次はお前だ!俺をゆっくりさせないお前はゆっくりしね!」

腹を抱えて笑う男、
工場長を指差し、涙、涎、鼻水を垂れ流しながら
楽しそうに、ただただ楽しそうに外で遊ぶ無邪気な子供の様に笑った。

工場長は知らないうちに床に尻をつけていた。
あれほど自分を高ぶらせてくれた高揚感も今は全く感じられなかった。
いつの間にかかいていた大量の汗がじっとりと自分を濡らしている事に気がつく。
景色が歪む。全身がスーッと冷たくなっていく。喉がありえない程に乾燥している。
工場長のズボンが盛り上がり、床に水溜りができた。

「ゆ゛っ!」

ゆっくりの様なうめき声をあげる工場長。
今回だけならば28番の妄言で片付くかもしれない。片付けられるかもしれない。
工場長にはそれを実行できるだけの地位も名声もあった。
しかし、一度通報されて厳重注意をうけたその日にこんな事をした・・・事にされた自分は・・・?
どうなる?どうなる?一体どうなる?ゆっくり?ゆっくりできる?いや、ゆっくりできない。

男はその滴る油の塊を見てニヤニヤと汚い笑みを浮かべて上から見下ろす。




「工場長さん!ゆっくり路頭にまよってね!」









おしまい






※あとがき

一大テーマパークみたいな保健所だけど、何もおかしいところはありませんね。

今まで書いたもの
  • ゆっくり見せしめ
  • ゆっくり電柱
  • ゆっくり脳内補完
  • 副工場長れいむの末路
  • 副工場長れいむの末路2
  • 副工場長れいむの末路3
  • 副工場長れいむの末路4

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最終更新:2009年06月13日 19:57
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