ゆっくりいじめ系2103 いつもより長い冬

※飛行できるゆっくりが登場します
※原作キャラが登場します










今、一匹のゆっくりれいむが冬篭りを終えて巣から出ようとしている。
このれいむは一匹暮らしであったが、ゆっくりの中では比較的賢く、今回の冬篭りのエサも調節して食べていくことが出来た。
それでも集めたエサが多かったのか、溜めていたエサを全部食べようと、本来の冬篭りよりも長く巣に篭ってしまった。
今頃はもう桜が咲いている頃だろう。

「ゆっくりふゆをこえたよっ!」

れいむは巣を塞いでいたバリケードを破って元気一杯外に出た。
長く寒い冬を越え、もう既に春が始まっている。

はずなのだが、

「どぼじでまだふゆざんなの゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!?」


辺りはまだ雪降る冬だった。


















今年の冬は誰が見ても異常に長い。例年ならば既に桜が咲く頃だというのに、桜吹雪は雪の吹雪に取って代わっていた。
これによって一番困るのは、ゆっくりであった。
妖怪は長引く妖怪に少しも困ることなくこれを愉しんでいる。人間は冬が長くて困りこそするものの、すぐさま生死に関わることはない。
だがことゆっくりにとっては、死活問題である。

何も寒さで凍え死ぬわけではない。餡子が失われなければ死なないゆっくりは寒さで死ぬことはない。
死因は餓死である。冬になるとゆっくりが食べられる物の殆どがとれなくなる。
ゆっくりが冬の前に多くのエサを巣に溜め込むのはエサが取れなくなる冬の間の食料のため。
また、入り口を塞いで巣に篭るのは、ただ〝寒いのが嫌〟なだけである。

「ふゆざんゆっくりどっがいっでよ゛ぉぉぉぉぉ!!」

今雪の中を一匹のゆっくりまりさが彷徨っている。寒さで死ぬことこそないものの、寒さでガチガチを歯を鳴らし、いかにも辛そうである。
このまりさは野生の体内時計でもう既に今が冬になっているはずだと信じて巣を出た。
だが、出てみれば一面銀世界である。あまりの寒さに再び巣に篭ろうとしたが、もう既に貯蓄したエサは無かった。
だから仕方なく、だめもとでエサは無いかと探しに外に出たが、寒くてもはやそれどころではなかった。

「ざむ゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!! ゆっぐりでぎないよ゛ぉぉぉぉ!!」

ゆっくりの精神力は弱い。この寒さにまりさの頭の中には最早エサを探すということは消えていた。
ただ一刻も早くこの寒さから逃れたいという一心だけがあった。

その願いは叶う。

「ゆっ!?」

己が命を散らすことによって。

「ゆべっ!?」

「あーっ、チルノちゃん雪の中にゆっくり詰めたでしょ!」

緑の髪の大妖精が、服の腹のあたりに少量の雪とへばりついたゆっくりの死体をつけて憤慨している。
その大妖精が怒っている相手は、妖精の中でも最強クラス、妖怪に近い強さを誇る氷の妖精であった。
この二人は今、雪合戦の真っ最中だった。

「だってうまく丸にならないんだもん!」
「チルノちゃん、こう握るのっ、こう!」
「こう?」
「そうそう」
「むむむ~…………あっ、紅白だ!」
「ちょっとチルノちゃん!」

氷の妖精の方が上空に飛ぶ何者かを見つけ、そちらへと飛翔して雪合戦は唐突に終わった。
その雪合戦の中で唐突に生涯を終えたゆっくりを気にするものは誰も居なかった。









「ゆゆ~、おそらはゆっくりできるよ~♪」
「ゆっくち~♪」
「ぽきゃぽきゃ~♪」

幻想郷の上空を、ゆっくれいれいむの一家が飛行していた。
このれいむ達は俗称『パタれいむ』とも呼ばれる、可翔型のゆっくり種であった。
ゆっくりれいむの特長であるリボンを羽のようにパタパタさせることによって空を飛んでいるのである。
そんな物で空が飛べるのかという疑問は、羽も翼も無く空を飛んでいる者が大勢いる幻想郷においては無粋である。

このゆっくり達は他のゆっくり達と同様、既に春のはずなのに冬であることに疑問を覚えつつも巣の外に出た一家であった。
だが寒さに耐え切れず、地面にいると雪が冷たくてゆっくり出来ないという理由から空を飛んだ。
するとどうだろうか、上に行けば行くほど暖かく、まるで春に近づいているようではないか。
ようやく見つけた春にパタれいむ達は喜びを全身で示した。

「ゆゆ~、ゆっくり~、ゆ~♪」
『ゆゆゆ~♪』

喜色満面。リボンはパタパタ。
そんなれいむ達の陽気な声に合わせて一人の妖精も春のように陽気だった

「春ですよ~♪」

「ゆゆっ、はるさんだよ! ゆっくりできるよ!」
「ぽきゃぽきゃだ────」

パタれいむ達の笑顔が吹き飛んだ。
春の妖精、リリーホワイトが春を見つけた喜びを周りに伝えようと辺りにバラ撒いた弾幕によって吹き飛ばされたのである。
原型を殆ど残さず消し飛んだれいむ達の残骸は、ゆっくりとまだ冬の地面へと落下していった。

「春ですよ~♪」

目の前にいる紅白の人間にも春を伝えようとするリリーホワイトも、その弾幕を避ける人間も、パタれいむ達が死んだことに全く気付かなかった。








「ゆゆ~…………このさきにはるさんがあるよ……」

三匹のゆっくり集団が冬の地面をじりじりと歩いていた。
れいむ、まりさ、ありす。仲良し三匹の友人であるこのゆっくり達もまた、巣に閉じこもらず外にエサと春を探しに出たクチである。
最初は辺り一面冬で途方に暮れていたが、れいむがなんと桜の花びらが飛んでくるのを見つけて三匹は希望を見つけた。

桜──すなわち春の風物詩。桜があるということは春がある。
そう信じたゆっくり三匹は、桜が飛んできた方向──風上に向かって進み始めた。
その推測は当たっていた。今この三匹が進んでいる方向にこそ、幻想郷中の春が集まっているのである。

だが、それがどうしたと言わんばかりに、三匹の希望は砕かれる。

「ゆぶっ!?」
「ゆべっ!」
「どぼじでさぎにずずめないの゛ぉぉぉぉ!!」

三匹の行く末は、結界によって阻まれた。
冥界との境である結界。容易に生者を入れさせぬ結界が、三匹の侵入を拒んだ。

「い゛や゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!! でいぶだぢもゆっぐりじだい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」
「ばりざもぽかぽかぢだい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛」
「はるをひとりじめずるなんでとかいはじゃないわ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

三匹は泣き喚きながら、全力で結界に体当たりをしたが、スキマ妖怪謹製の結界がそんなことで破れるはずもなく。
ゆっくり達は結局、春が来るまで寒さの中泣いて、叫んで、体当たりをし続けた。













博麗の巫女が出動した以上、この冬も長くてあとニ、三日で終わるだろう。
余裕のあるものは雪と桜が混ざった一風変わった景色をゆっくり愉しむのも一興であろう。
もっとも、『ゆっくり』の名を冠する当人達はそんな余裕はないだろうが。

『ざむい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!』





おわり


──────────────────────

あとがきのようなもの

巣から出ずに冬が明けるのを待つことを選んだ連中は例の如く餓死、か無事春を迎えられたものだけですので、描写を省かせてもらいました



これまでに書いたもの





ゆッカー
ゆっくり求聞史紀
ゆっくり腹話術(前)
ゆっくり腹話術(後)
ゆっくりの飼い方 私の場合
虐待お兄さんVSゆっくりんピース
普通に虐待
普通に虐待2~以下無限ループ~
二つの計画
ある復讐の結末(前)
ある復讐の結末(中)
ある復讐の結末(後-1)
ある復讐の結末(後-2)
ある復讐の結末(後-3)
ゆっくりに育てられた子
ゆっくりに心囚われた男
晒し首
チャリンコ
コシアンルーレット前編
コシアンルーレット後編
いろいろと小ネタ ごった煮
庇護
庇護─選択の結果─
不幸なゆっくりまりさ
終わらないはねゆーん 前編
終わらないはねゆーん 中編
終わらないはねゆーん 後編
おデブゆっくりのダイエット計画
ノーマルに虐待
大家族とゆっくりプレイス
都会派ありすの憂鬱
都会派ありす、の飼い主の暴走
都会派ありすの溜息
都会派ありすの消失
まりさの浮気物!
ゆっくりべりおん
家庭餡園
ありふれた喜劇と惨劇
あるクリスマスの出来事とオマケ
踏みにじられたシアワセ
都会派ありすの驚愕
都会派ありす トゥルーエンド
都会派ありす ノーマルエンド
大蛇
それでも


byキノコ馬

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最終更新:2009年02月24日 18:32
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