ゆっくりいじめ系289 詰め替えゆっくり

「「ゆっくりしていってね!」」
「……」
 男は、無言でゆっくり二匹を抱えて道を急ぐ。
 いきなり捕まえられたゆっくりは、口々に「ゆっくりやめてね!」「ゆっくりはなしてね!」などと言うが、男はゆっくりの言う事など聞かない。
 それ以前に、これらのゆっくりがどのゆっくりかにすら興味がない男にとっては、ゆっくりが何を言おうと気にもならないのである。
――ゆっくりれいむとかまりさとかみょんとかちぇんとか、帽子とかリボンとか、そんな個体識別はいらない。ゆっくりはゆっくりで良い。
 この男の持論である。
 男は、全く融通が利かない上に頑固という、友人の少ないタイプの人間だった。
 余談はさておき、男は急ぐ事もゆっくりする事もなく、普通の足取りで自分の家に入った。





 『詰め替えゆっくり』





「ユックリシテイッテネ! ユユ! コノユックリタチハユックリデキルコ!?」
(ゆっくりしていってね! ゆゆ! このゆっくりたちはゆっくりできるこ?)
 男が玄関口で靴を脱いでいると、ブレて見えるほどのスピードのゆっくりが現れた。
「なにこのこwww ぜんぜんゆっくりしてないよw」
「ゆくりちていてねだってーw なにじんよ(pgr」
 二匹にとって、異常なまでのスピードのゆっくりは嘲笑の対象らしく、好き勝手な事を言う。
「ユユ! マリサヲバカニスルコハユックリシネ! シネ! シネ!」
(ゆゆ! まりさをばかにするこはゆっくりしね! しね!)
「ちねだってさ」
「おお、したたらずしたたらず」
 あまりに高速で飛び跳ねているために空中に浮いている様に見えるゆっくりを見ても、全く動じないどころかうざい対応をとるゆっくり二匹。
「ヘンナコトヲイウバカナユックリタチハユックリシネ!!」
(へんなことをいうばかなゆっくりたちはゆっくりしね!!)
「ゆぎゅ!? きもいよ! ぎもいよぉぉぉ!!!」
「きもいこはどっかいけ! ごっぢぐるなぁぁぁ!!!」
 弾丸の様な速度で二匹のゆっくりに突っ込んでいくゆっくり。
 このままぶつかれば、普通のゆっくり達は顔面からアンコを放出させて死ぬ事になるだろう。
 普通のゆっくり達は、うざい顔を泣き顔に変えた。
「……」
 その時、靴を脱ぎ終わった男が突然素早いゆっくりを踏んだ。
 足には絶妙な力加減がかかっているらしく、素早いゆっくりは潰れてはいないものの動けずにもがいている。
「ユギュウッ!? オジザンナニズルノォォォ!?」
(ゆぎゅうっ!? おじざんなにずるのぉぉぉ!?)
「まりさたちをいじめようとしたけっかがこれだよwww」
「きもいこはそこでおとなしくしててね~www」
「「ばーかばーか♪」」
 泣いたゆっくりがもう笑ったとでも言えば良いのだろうか。
 普通のゆっくり達は反撃できない相手に対して暴言を吐き、素早いゆっくりはその言葉を聞いて男の足から逃れようと必死にうごめく。
 目は血走り、口の端からアンコまみれの泡を吹いて凄まじい抵抗をする素早いゆっくり。完全に頭に血が上っている。
「オジザンユッグリバナジデネ! ゴイヅラユッグリデギナグジデヤルガラユッグリバナジデネ!!! ユギュッ!?」
(おじざんゆっぐりばなじでね! ごいづらゆっぐりでぎなぐじでやるがらゆっぐりばなじでね!!! ゆぎゅっ!?)
「うるさい」
 もう止められないと判断したらしく、男はため息をついてそのまま素早いゆっくりを踏み潰した。
「ゆ……ゆっぐりじだがっだよ……」
 素早かったゆっくりは、最期だけははっきり分かる言葉を呟いた。
「ばーかばーか、きもいこはゆっ!?」
「ゆっくりしたけっかがこれだよぉ!?」
 死んだゆっくりへ罵声を浴びせている途中、男がゆっくり二匹を持ち上げた。
 中途半端なところで強制的に口をふさがれた形になった二匹は、男に文句を言おうとするが何も出来ず、そのまま奥へ持って行かれる。


 奥の部屋では、一般的にはゆっくりれいむ・まりさと呼ばれる種類のゆっくり数匹が動き回っていた。
「「ゆぎゅぅっ!?」」
 二匹のゆっくりはいきなり手を離されたため、無防備なまま床に叩きつけられる。
 すぐさま起き上がろうとするも、顔面から硬い床に落とされたのだ。二匹は、痛みを訴える様に泣き出した。
「「いだいよぉぉぉ!!!」」
「……」
 泣き叫ぶ二匹を無表情で見ながら、男は飾りに何かの印を付け、部屋を後にした。
 パタンとドアを閉めた音と同時に、突然二匹は起き上がり、ドアに向かってツバを吐きかける。
「れいむたちがないてるのにぜんぜんこっちみてなかったよ! ばかなじじいだね!」
「ほんとだね! まりさはこんなにかわいいのに、みるめがないじじいだね! しんじゃえばいいよ!」
 そう言ってゲラゲラと笑う二匹。ウソ泣きだった様で、その顔は男への嘲笑に満ち溢れている。

 ひとしきり男への文句を言い合ってから、改めて二匹は辺りを見渡した。
「たくさんゆっくりがいるね!」
「いち、に……かぞえきれないよ!」
 実際は10に満たない数しかいないが、ゆっくりの頭では多数いる様に見えるのだろう。
 二匹は、ここに閉じ込められている事すら忘れてしまったように、ゆっくりゆっくりと楽しそうに仲間のいる方に飛び跳ねた。

「「ゆっくりしていってね!」」
 二匹はちょうど近くに来たゆっくりに声をかける。相手のゆっくりは、時間をかけて振り返った。
「ゆ~っ~く~り~し~て~……」
(ゆっくりしていってね! こんにちは、あなたたちはゆっくりできるゆっくり?)
「ゆぅ!? すごくゆっくりしてるゆっくりだよ!」
「いいなー、うらやましいなー、いっしょにゆっくりしたいよ!」
 やたら素早いゆっくりは嘲笑の対象だったが、遅いゆっくりは尊敬の対象らしく、二匹は目をキラキラさせて擦り寄っていく。
 だが、スローゆっくりはたっぷりと時間をかけて嘲りを含んだ顔へと変わっていく。
「ゆ~っ~く~り~や~め~……」
(ゆっくりやめて! ちかよらないでね! ふたりともぜんぜんゆっくりできてないからきもいよ!)
 普通のゆっくりにとっては素早いゆっくりが気持ち悪く思う様に、遅いゆっくりにとっては普通のゆっくりが嫌悪感を催すものらしい。
 スローゆっくりは、触りたくないとでも言う様にじりじりと後ずさっていく。
 追うゆっくりと、避けようとするゆっくり。
 先ほどの素早いゆっくりとの一件を、かなり速度を遅くして繰り返している様な状況。
 スローゆっくりが嫌がっている事を知ってか知らずか、二匹の前に別のゆっくりが飛び込んできた。
「8zhldwezw,! 3uqqa,8zhlw@gjrt?」
(ゆっくりしていってね! あなたたち、ゆっくりできますか?)
「なにこのゆっくり! ゆっくりわかることばしゃべってね!」
「ふつうのことばしゃべってね! にほんごでおけ!」
「uibk8zhl! 0toue,bsf@0toue9!」
(なにこのゆっくり! わからない、ことばわからないよ!)
 ゆっくりなのにゆっくりの言葉をしゃべらないゆっくり。
 これは、単純に通じないだけなので、別に好悪どちらにも当てはまらないらしい。
 最終的には、身振りだけであるていどの会話らしきものをしていた。
 無言で伸び縮みを繰り返すゆっくりにはかなりの気持ち悪さがあるが、男には気にならないらしい。
 言葉を忘れてしまった様に伸びているゆっくり二匹を抱えて、別の部屋へと歩いていった。



 その部屋には、甘い匂いが染みこんでいた。
 先ほどの部屋と同じ形でゆっくりが数匹いる事も同じだが、その部屋にいるゆっくり達は、全てが丈夫な縄で押さえつけられ、頭頂部がぱっくりと開いていた。
「ゆ……ゆぅ、ごろじで、もう……ごろじで……」
「ゆふあははははははははははは」
「ぐぞじじい! れいむのあんごがえぜ! まりざのもがえぜ! み”ん”な”を”も”どに”も”どぜぇぇぇぇぇ!!!」
 頭に黒い穴が開いた様にぽっかりとアンコが取り出されたゆっくりが、早く楽になりたいと呟く。
 奇妙な色の何かを詰められているゆっくりは、壊れたテープレコーダーの様に、平坦な笑い声をあげ続けている。
 ほとんど取られていないゆっくりは、目で表情で声で、憎悪を男にぶつけている。

 そんな、ゆっくりにとっての地獄絵図を、抱えられたゆっくり達は無言で見つめていた。
 先ほどの部屋でボディランゲージに慣れたためではなく、恐怖によって言葉が出ないのである。
 男は、怯えるゆっくり達を、他のものと同じ様に縄でくくりつけた。
 あまりの恐怖に動く事すらできない二匹は、無抵抗のまま縛り上げられる。
「かっこいいおにいさん、れいむをたすけてください。おねがいします」
「すごくゆっくりしたおにいさん、まりさもたすけてください。おねがい……」
 ガチガチと歯を鳴らし、涙を流しながら助けを求める二匹。
 人間で言えばあごの下にあたる部分から黒い液体を漏らしている。アンコを失禁している様だ。
 だが、男は無言で見つめている。当然、許すつもりはない。
 なぜなら、それがこの男の仕事だからだ。
 じっと見つめている内にあまりのプレッシャーからか白目をむいて気絶した二匹を眺めつつ、男は仕事を始めた日の事を思い出していた。



「そこの貴方、ちょっと良いかしら」
 ある日、男は赤と青の交差した服を着た女に声をかけられた。
 男は、ちょっと周囲を眺めてから自分だと気付き、端的に用件を聞く。
 男のあまりの無愛想さに苦笑しつつも、女は細い指をちょいちょい、と動かした。
「ちょっとお話があるのだけど……少し時間空けられるかしら?」
 女は、笑顔で男を誘う。男は、無表情のまま女に付いていった。
 美人だけれど服のセンスは最悪の女。
 男の女……八意永琳への第一印象は、その程度のものだった。

「実験?」
「そう、実験に協力して欲しいのよ」
 人間の里唯一の喫茶店で、風景にそぐわない怪しい会話をする男女。
 二人の前に置かれたコーヒーは、手付かずのままでそこにあった。もう湯気は立っていない。
 永琳はまずそうにコーヒーを一口飲み、淡々と話を続ける。
 男にある実験の手伝いをして欲しいという事。
 実験の内容は、ゆっくりの中身を入れ替えるとどんな変化が起こるのかについてという事。
 報酬は、家と金と実験を終えたゆっくりは好きな様にして良い事。
「……ゆっくりの提供はするし、貴方自身が捕まえても良いわ。その代わり、定期的な報告と、新種を作る事に成功したら直接見せて欲しいのよ」
 お願いできる? と、胸の前で手を合わせる永琳。
 男は、ほとんど間を置かずに承諾した。

 それからしばらく、男は送られてくるゆっくりの中身を様々な物に詰め替え続けた。
 送られてくるゆっくりは様々な種族だったが、男は特に関心を持たなかった。ゆっくりはゆっくりでしかないからだ。
 固体・液体・気体……食材だけではなく、ありとあらゆる物を試し続けた。
 時には、わざと腐らせたものも入れてみたが、大体は数分生き延びるかどうかといった所だった。
 たまに永琳が様子を見に来たが、順調だという所を見せると僅かに輝く視線を向け「この調子でお願いします」とだけ言って去っていった。
 春が来て夏が過ぎ秋を越えて冬が終わり、一年が瞬く間に過ぎていった。
 この頃には、一日の半分近くはゆっくりの中身を入れ替えて過ごす事が、男の日課となっていた。


 ふと顔を上げると、ゆっくり二匹は口の端から黒い泡を吹き「ゆっ……ゆっ……」とうめくだけの存在に成り果てている。
 男はそんなゆっくりを放置し、自分の部屋に戻る。
 棚には大量の帳面が置いてあり、中には多数の中身を詰め替えたゆっくりの報告がまとめられている。
 河童製だという、ゆっくりのアンコの核部分のみを残して全て抜き取る機械は、既に5台目に突入しているが、それもアンコまみれで酷い状況だ。
 6代目への取替えはもうすぐだろう。
 詰め替える物置き場は、男にしか分からないほどに雑然としている。
 部屋の中は人間の内面を表すと言われているが、それが本当なら、男は相当に混沌とした性格をしているのだろう。

――さて、あいつらの中は何にするかな。

 男は、未だに白目をむいているだろうゆっくり二匹を思い浮かべ、これまでずっと表情のなかった顔に、初めて笑みを浮かべた。








 饅頭生命体のゆっくりは中身に左右されるのではないかという考えから発展した結果、こうなりました。
 最初は中身を入れ替えるだけの単純な話だったんですが……なぜこうなったんだろう。
 感想フォームについてですが、捨てアド用意しましたので何かありましたらこちらにお願いします。最初から用意しておけば良かった……。


 by319

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最終更新:2008年09月14日 05:14
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