ゆっくりいじめ系1214 【餡れいざー】

【餡れいざー】

ゆっくりとした森の奥深く、木の洞の中に一匹のれいむが住んでいた。

このれいむには宝物がある。
いなくなった母れいむの遺していった立方体の箱。
全ての面に幾何学的な紋様の刻まれている綺麗な箱だ。

この箱、見ているだけでゆっくり出来る代物なのだが、
ゆっくりポイントは、そこだけではなかった。

「ゆっゆっ、箱さん、ゆっくりうごいてね!」

楽しげな声を響かせながら、れいむがそっと箱に舌を這わせる。
すると時計のような音をたてながら、一つの紋様がゆっくりと移動を開始した。

まるで箱から飛び出すように、垂直に競りあがっていく紋様。
紋様はある程度競り上がると移動を停止し、今度は元の位置へと戻っていく。

そう、れいむの言葉通り、この箱は動くのだ。
正確には箱の紋様が移動する。
どういう理屈なのかは、箱を持ってるれいむにも解らない。
ただ、母がいなくなる前に、こんな話をしてくれたのを覚えている。

「かわいいれいむ、よーくきいてね!
 この箱さんを開けるとね、ゆっくりしあわせ~になれるんだよ!
 いなくなったまりさがそう言ってたよ!」

「ゆゆっ! れいむも、しあわせ~になりたいよ!
 おかーさん、どうすれば、はこさんはあくの?」

「お母さんもわからないけど、しってるよ!
 きっと、いっぱいさわれば開くんだよ!」

「ゆっくりりかいしたよ!」

開ければ、しあわせ~になれる箱。
母が消えてから、れいむは毎日この箱でゆっくりしていた。
舌で舐めまわし、箱の動くのを見てきた。
だが箱の開いた事は一度もない。

れいむはもう一度、紋様を舌で触れてみた。
紋様は再び移動を始める。
薄暗い木の洞に反響する機械音。

ああ、なんとゆっくりしているのだろう。
開けばもっとゆっくり出来るに違いない。
それにしても…中にはいったい何が入っているのだろう?
れいむは考えた。

綺麗なお花だろうか?
美味しい虫さんだろうか?
それとも甘い木の実だろうか?

紋様が停止する。
また舌で触れる。
移動を始める。

何にせよ、素晴らしい物が入ってるに違いない。
こんなにゆっくり動く箱なのだ。
そうに違いない。そうに違いない。
自分は、しあわせ~になれるのだ。

紋様は、まだ移動を続けている。
小刻みな機械音に合わせて、ゆっくりとゆっくりと。

その音を聞いてると、れいむ自身も、ゆっくりと瞼が重くなってきた。

ああ、もう寝る時間だ。
今日も箱を見ながら眠ろう。

れいむはゆっくりと目を瞑った。


カチッ!


その時、紋様の動きが止まった。
普段とは違う音の残滓で洞を満たしながら。
箱の機能が停止した。

「ゆゆっ!? はこさん、どうしたの!?」

驚いて目を覚ましたれいむが、心配そうに箱へ声をかける。
しかし箱はれいむの声に応えない。

中央にある円形の紋様から広がる何本もの幾何学の線、
その線に沿って箱が二つに割れていく。
等分された片方を残し、もう片方が地面と垂直に競りあがっていく。

「ゆっ! おそらをとんでるみたーい!」

持ち上げられた断片が上空で回転し、今度は別の溝に沿って下降する。
再び一つに戻った箱は形を変え、幾何学の花を咲かせていた。

「すごーい! おはなさんみたーい♪」

何故かご機嫌のれいむだが、箱の機能はまだ停止していない。
青白い光を放ちながら、ゆっくりと移動を再開する。
どうやら今度は元の形に戻るようだ。

そんな箱の姿を見ながら、れいむは思った。
ひょっとすると、箱が開くのではないだろうか?
しあわせ~になれるのではないだろうか?
やったよ、おかあさん! れいむはゆっくり人生のしょうしゃだよ!

れいむの考えは正しかった。


箱は開かれのだ。




「ゆゆっ!? 知らないところにいるよ!?」

おかしい…気づいたら違う場所にいた。
ここはどこだろう?
さっきまで巣の中にいたはずなのに、今いる場所はただ広いだけだ。
目の前に転がってる止まった箱以外には何もない。

…いや、違う。れいむの上を黒い影が覆っている。

「ゆっ!? ゆっくりしていってね!」

反射的に挨拶をするれいむ。
いつの間にか目の前に人間が立っていた。
この人間はどこから来たのだろう?
まばたきもしていないのに…

「お…おじさんは、ゆっくりできる人なの?」
「ああ、ゆっくり出来るよ。非常にね。後、おじさんじゃなくて、セノバイトお兄さんだよ」

良かった。どうやら、ゆっくり出来る人間らしい。
言われてみれば、森でたまに見かける人間とは、ちょっと雰囲気が違う。
不思議な艶のある服を着ているし、その上、何故か顔中にピン…
ではなく、五寸釘が刺さっている。

こんな状態でゆっくり出来るなんて、なんてすごいゆっくり具合なんだろう。
れいむは素直に感心していた。

「箱を開けたのは君だね?」
「うんっ、れいむがはこをあけたんだよ! だから、しあわせ~になるんだよ!」

自信満々に答えるれいむを、人間は笑いながら見つめている。
かわいいれいむを見て嬉しい気持ちは解るけど、何かがおかしい。
どうしてだろう? 背中の餡が冷たくなってきた。

「ね、ねぇ、おじさ」
「お兄さん!」
「おにいさん! れいむは、しあわせ~になるんだよね?」
「観念の果て、快楽の探求者…お兄さんがゆっくり幸せにしてあげるよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!」

本当はよく理解してないが、どうやらこのお兄さんが幸せにしてくれるらしい。
箱が空っぽだったのは残念だが、このお兄さんがくれるなら問題ない。

美味しいごはんでもくれるのだろうか?
それとも甘いお菓子でもくれるのだろうか?

一度、森で会った人間に、お菓子を貰った事がある。
体中の餡をとろけさせるような甘さ…あれはすごく美味しかった。

そんな事を考えたせいか、思わず口の端から涎が垂れてしまう。
いや、それだけじゃない。どこからか甘い匂いまでしてきた。

「ゆゆっ! おにいさん、あまいにおいがしてきたよ!」
「れいむは鼻がいいんだね。後ろを見てみるといいよ」

お兄さんの指差す方を振り向くと、そこには黒い物体が転がっていた。
あれは…餡子だ! 餡子はよく知っている!

「ゆっゆっ! あんこがあるよ! れいむがひとりでたべるね!」

返事は聞いてない。
見知った食べ物なら毒でもない。
餡子に駆け寄り、ガツガツと食べ始める。

「うっめ! めっちゃうっめこれ!」

餡子は想像してたより、ずっとずっと美味しかった。
何だかすごく懐かしい味のする不思議な餡子。
一度口にすると止まらない。
あっという間に、餡子は欠片も残さず無くなってしまった。

「もっと欲しいかい?」
「ゆゆっ!? おにいさん、さっさともってきてね!」

ゆっという音と同時に、上からどさりと追加の餡子が降ってくる。
先ほどの倍はある餡子を目にし、れいむは瞳を輝かせた。

すごい! こんなに餡子があるなんて!
やっぱりお母さんの言った通りだ。
箱を開けたから、れいむはしあわせ~になれたんだ!

「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪」

美味しい美味しい、すごく美味しい。
これなら、まだまだ食べられる。
もっともっと食べて、いっぱいゆっくりしあわせ~になろう。
おなかがいっぱいになったら、少しはお兄さんにも分けてあげよう。

れいむは身体の中に餡子を詰め込んでいく。
れいむの租借する音が、真っ白な空間を満たしていく。

それにしても…ふと、れいむの餡子脳に疑問が過ぎった。
どうして上から餡子が降ってくるのだろうか?
ひょっとして、上にもっと餡子があるのだろうか?

見上げずにはいられない。
視線をそっと上に向ける。

だが、そこに餡子は無かった。
代わりに在ったのは一つの饅頭だった。

天井から垂れ下がる、何本ものフック付きワイヤー。
その内のいくつかが、饅頭を貫き、絡め捕り、天井から饅頭をブラ下げていた。

破れた饅頭の皮から、餡子がポタポタと漏れ出している。
餡子が漏れるたび、饅頭からゆっゆっという声も漏れ出している。

真っ白な皮。
真っ黒な髪。
真っ赤なリボン。
餡子の詰まったお饅頭…

「…えっ?」
「もっと欲しいかい?」

鈍く光るフックの先端が、柔らかな饅頭の皮を切り裂く。
真新しい傷口から、餡子がぼとぼとと落ちてくる。
それに反応し、ゆっゆっと声を出す饅頭──

違うあれは──

「お、おかあさん…?」
「ゆ゛っ…れ、れいむ…?」
「と゛、と゛ほ゛し゛て゛こ゛こ゛にいるのおおぉぉおお!?」
「に゛…に゛け゛て゛、れ゛い゛ふ゛う゛う゛ぅぅうう!!」

感動の親子対面である。
いなくなった母の姿がそこにあった。

「良かったね、れいむ! お母さんに会えて良かったね! しあわせ~かい?」

「こ゛ん゛な゛の゛、し゛あ゛わ゛せ゛じ゛ゃな゛い゛いぃぃいいい!
 お゛に゛い゛さ゛ん゛がや゛ったのおおぉおお!?」

「仮にそうだとして、だから何だ?」

「ゆ゛があ゛ぁぁああ゛あ!? どぼじで、こ゛ん゛な゛こ゛と゛するのおおぉお!?
 ゆっくりしないでね!? さっさとおかあさんを、おろしてねぇええ!?」

「だが断る」

生命を持っているかのように、スルスルとブラ下がったワイヤーが降りてくる。
先端のフックが獲物を狙う蛇のように叫ぶれいむに狙いを定め──貫いた。

「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛ああぁああああ!!」

1本、2本、3本、ワイヤーが伸び、フックがれいむを貫いていく。
皮を裂き、頬を抉り、返しを引っ掛け、しっかりと固定する。
れいむは何とか逃げようと走り出すが、ワイヤーは非情にもれいむを空中へと吊り上げ始めた。
足が地面に届かない。走れない。

「ゆ゛ぎぎぎぎぎ、さ゛っさ゛とおろしてね゛ぇえええ!?」
「何を言ってるんだい? そこは、おそらをとんでるみた~いだろう?」

流石のれいむも、こんな形でお空は飛びたくない。
何とか抜け出ようと身体をくねらせるが、もがけばもがくほど、フックは身体に食い込んでいく。

「うっ、うぅ…れ、れいむぅ…」
「お、おかあさぁん…」

ワイヤーは母れいむの真横までれいむを引き上げると、ピタリとその動きを止めた。

久方ぶりに間近で見る母の顔。
サラサラだった髪は餡子がこびり付きパサパサだ。
ふかふかのすりすりをしてくれた頬は、出餡多量により痩せ細っている。
優しかったあの目は、今では涙と苦痛で溢れている…

ああ、どうしてこんな事になってしまったんだろう?
あの箱を開ければ、しあわせ~になれるんじゃなかったのか?
どうして今、自分は母とこんな目にあってるんだろう?
どうして? どうして?

「どぼぢで…どぼぢで、ごんなごどずるの…?」
「簡単だよ、れいむ。それは君が箱を開けちゃったからさ」
「ぞ、ぞんな…じあわぜ~になれるって、おがぁざんが…」
「ごめんね…ごめんね、れいむぅ…」

壊れたスピーカーのように謝罪の言葉を吐き続ける母れいむ。
その口からは、ついでに餡子も吐き続けられている。

今さら謝られても、もう遅い。
頬に刺さったフックが痛い。
身体の中でワイヤーがモゾモゾ動いている。
激痛が奔る度、口の端から餡子が漏れ出る。

どうして、母はしあわせ~になれるなんて言ったんだろう?
どうして、こんな酷い嘘をついたのだろう?

母が嘘をつかなければ、自分はこんな目になど遭わなかったのだ。
毎日毎日、しあわせ~になれると信じて、あの箱とゆっくりしてたのに…
こんなの全然しあわせ~じゃない。
母を信じてた自分が馬鹿みたいだ。馬鹿なの? 死ぬの?
れいむは…死んじゃうの…?

「うっ…ぅ…そつき…おかぁさんの、うそつき…」
「ごめんね…ごめんねぇ…」
「うそつき! うそつき! このうそつきゆっくりめ!
 おまえなんか、れいむのおかあさんじゃないよ!
 ゆ゛っく゛り゛し゛ね゛ぇ゛え゛ええええええ!!」
「こ゛め゛ん゛ね゛え゛ぇ゛え゛ぇ゛え゛え゛え゛!?」

母をなじる娘。言い訳もせずそれを受け入れる母。
そんなありふれた光景を見つめながら、男が楽しそうに話しかけてきた。

「やれやれ、酷いれいむだなぁ。お母さんは嘘なんてついてないよ」
「なにいってるのおおぉお!? おにいさんはばかなのぉおおお!?」
「良いかい、れいむ? 苦痛は最高の快楽なんだよ。だから幸せだろ?」
「し゛あ゛わ゛せ゛な゛ん゛か゛じゃ…ゆ゛へ゛え゛え゛え゛ぇえええ!?」

れいむの叫びに応えるかのように、れいむの中のワイヤーが暴れる。
身体中を内側から掻き回され、口と目からドボドボと餡子が溢れ出した。

「ほらほら、落ち着いてね。涙はよくないよ。苦痛を流し去るからね」

お兄さんは優しくそう言い、まるで子供をあやすかのように、
額から抜いた五寸釘をれいむの眉間に突き立てる。

「ゆぎゃああああああああああ!!」

真っ白な空間に響き渡るれいむの絶叫。
抜いては刺されていく五寸釘。
額に、こめかみに、下顎のいたるところに、五寸釘が突き立てられる。
傷口から染み出した餡子が地面を黒く濡らしていく。

「うんうん、良い面構えになったね。でも釘は後で返してね? 大切だからね」
「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…」
「ごめんねぇ…ごめんねぇ…ごめんねぇ…」

ああ、もう声を出すことも出来ない…
隣でうそつきゆっくりが何か言っている…
こいつのせいで…こいつのせいで…
でも、もう声を出すことも出来ない…
黙らせてやりたいのに…それすら出来ない…

「ゆ゛っ…ゆ゛っぐり゛…ゆ゛っ…じね゛ぇ…」
「おやおや? 元気と餡子がなくなっちゃったのかな? それなら、これを食べるといいよ」

お兄さんは何を言ってるのだろう?
べりべりと皮の剥がれる音がする。
ああ、お兄さんが、べりべりと皮を剥がしている。
真っ赤な血を流しながら、厚く厚く皮を剥がしている。
すっきり~した顔をしながら、
れいむの皮ではなく、自分の胸の皮を…

「これは我が肉、我が血なり─なんてね。さぁ、遠慮しないで」
「ゆ゛っ…べっ…ぐっ…べぇ…」

指と一緒に、れいむの喉の奥深くへと、血を滴らせた皮が詰め込まれる。
指が引き抜かれた瞬間、何とかソレを吐き出そうとするも、すでに吸収された物は外へ出す事は出来ない。
身体の外へと出るのは、惨めなほど少量の餡子だけ。

その時、れいむは自分の身体の異変に気が付いた。
失ったはずの餡子が戻っている。身体に力が戻っている。

アレを食べてしまったから?
お兄さんのお肉を食べてしまったから?

開いていた傷口が、まるでれみりゃのように閉じていく。
突き立てられた五寸釘はそのままに…皮が以前より艶やかになっていく。

あれぇ? おかしいなぁ?
元気になって嬉しいはずなのに、どうしてこんなに哀しいんだろう?
こんなのしあわせ~でも、ゆっくりでもないよ。
目から涙が溢れてくる。刺さったままの五寸釘が濡れていく。

「さてと、そろそろ行こうか? 快楽の世界へ案内してあげるよ」

「ゆ゛き゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁああああ゛!!」

反響する音だけを残し、真っ白な空間から全てが消え去った。
あの箱の姿も、そこには残っていなかった。





「「ゆっくりしていってね!」」

「ゆゆっ!? ここはだれもすんでないみたいなんだぜ!」
「むきゅ! みて、まりさ! きれいなはこがあるわ!」
「すごくきれいなはこなんだぜ! ここをまりさたちのおうちにするんだぜ!」
「むっきゅう! さすがまりさだわ! いいかんがえね!」

ゆっくりとした森の奥深く、木の洞の中にゆっくりの声が響き渡る。
箱だけが静かに佇んでいた。





■ヘルレイザーのリメイク楽しみだね!

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最終更新:2008年10月23日 01:45
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