ゆっくりいじめ系1028 盲導ゆっくり(前編)

「盲導ゆっくり」(前編)








「ゆ!!まりさはこっちだよ!!ゆっくりついてきてね!!」
「あぁ、そっちだね。わかったよ」

目を瞑ったままのお兄さんが、黒い帽子をかぶった金髪のゆっくり―――ゆっくりまりさについていく。
その足取りはスムーズではあるが、どこか普通とは違う。そんな違和感を感じさせるものだった。
草原に近い道を抜け、小さな門をくぐり、庭の中央を抜けて、まりさとお兄さんは立ち止まる。

「おうちについたよ!!ゆっくりかぎをあけてね!!」
「ちょっと待ってくれな」

まりさが家の玄関にたどり着いたことを告げると、お兄さんは既に手の中に握っていた鍵で解錠し、扉を開いた。
その後も、まりさの先導に従って家の中にあがりこむ。
ここまでくればもうまりさの案内は必要ない。かれこれ10年も暮らしている家だから。

「おつかれさま!!ゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりするよ。あ、ちょっと待ってな。お前に食べ物をもってくるからね」
「ゆ!!おにーさんありがとう!!ゆっくりまってるね!!」

まりさに繋がった紐を手放すと、お兄さんはゆっくりと台所へ向かう。
お兄さんの目線と同じ高さにある戸棚の扉を開けると、手探りで何かを探し始めた。
目当てのものを探り当てると、それをもってまりさのいる部屋へと戻り、手馴れた動作で袋を破ってその中身をまりさに与えた。

「ほら、お食べ」
「ゆっ!!くっきーだね!!ゆっくりいただきます!!」

はふはふと、獣のようにクッキーを貪り食うまりさ。
とてもゆっくりした、とても幸せそうな表情だが―――

「むーしゃむーしゃ♪しあわせー♪」

―――その表情は、お兄さんには見えていない。






お兄さんは、いつも真っ暗な世界の中にいた。
朝目覚めてから、夜眠るまで。一日中、何をする時も、彼は暗黒の世界の中にいた。
目の前に誰がいて、誰がいなくて、何があって、何がないのか。彼は視覚以外の情報でそれを探るしかない。

いつからこうなったのかは、良く覚えている。
その日までは、普通に全てが見えていたのだから。
しかし、ある日突然……彼は、光の届かない世界で生活することになった。

そんな彼の補助をするのが、盲導ゆっくりであるゆっくりまりさだ。
盲導ゆっくりは、盲導犬と同じように視覚障害者を安全に快適に誘導するものである。
利点や欠点はいろいろあるのだが、一番の利点は言葉が通じること。
犬以上に意思疎通が容易であり、訓練次第では盲導犬以上のレベルの高い補助が期待できる。
その分訓練には時間を要するのだが、それは今後の研究で改善されるだろう。





「ゆーん♪ゆっくりおいしいよ!!」
「美味しいか。それはよかった」

お兄さんはクッキーを頬張るまりさの帽子を脱がし、頭を撫でてやる。
まりさは嫌がる素振りは見せず、お兄さんに撫でられながらクッキーを食べ続けた。

「おにいさん!!まりさはおにーさんのおかげでとてもゆっくりできるよ!!
 これからもゆっくりしていってね!!まりさがゆっくりさせてあげるからね!!」
「あぁ、ありがとう。ゆっくりさせてもらうよ」

盲導ゆっくりと付き合っていくコツは、とにかくゆっくりさせてやることだ。
家に帰ったら食べ物を与え、ゆっくりさせる。夜には風呂に入れてやり、清潔にしてやることも必要だ。
面倒に思えることだが、こうした毎日の積み重ねによって更に忠実な盲導ゆっくりとなる。
盲導ゆっくりは、自分をゆっくりさせてくれる人を全力でゆっくりさせようとするのだ。







そんなお兄さんとまりさの微笑ましいやり取りを、2匹のゆっくりが丘の上から眺めている。
盲導ゆっくりとは別のゆっくりまりさと、ゆっくりぱちゅりーだ。
窓ガラス越しに見る家の中の様子は、とても見づらい。
だが、家の中のまりさがとてもゆっくりしていることだけはわかったようで、まりさは地団太を踏みながら叫んだ。
美味しい食べ物を与えられ、頭を撫でられ、快適な室内でゆっくりしているのが羨ましいのだろう。

「ゆっ!!あいつだけずるいよ!!まりさもゆっくりしたいのに!!にんげんのたべものがたべたいよ!!」

まりさは、人間の食べ物が普段食べている雑草とは比べ物にならないくらい美味しいということを知っていた。
一度だけ道端に落ちていた煎餅を食べた事があり、そのときの衝撃は今でも餡子脳に焼きついたままだ。

「むきゅ!!でもにんげんのいえにはいるのはきけんよ!!ゆっくりできないわ!!」

ぱちゅりーの忠告はもっともなものだ。
事実、まりさの仲間も人間の家を襲撃した事があったが、一家根絶やしにされ二度と帰ってこなかった。
だからまりさは慎重になる。策なしに飛び込むのは、人間に殺されるために行くようなものだから。

「でもいいほうほうがあるわ!!むきゅん!!」
「ゆっ!?ほんとう!?ゆっくりおしえてね!!」

胸を張るぱちゅりーに、まりさは詰め寄る。
ぱちゅりーはにやっと微笑みながら、自慢げに説明を続けた。

「むこうのまりさといっしょにいるニンゲンは、じつはめがみえないのよ!!まちがいないわ!!」
「ゆっ!!そうなの!?」

ぱちゅりーは、先ほどまでのお兄さんとまりさの様子から、お兄さんの視力が殆どないことを察知していたのだ。
それに気づいていなかったまりさは、意外な事実に驚きの声を上げる。

「だからむこうのまりさといれかわっても、ニンゲンはきづかないわ!!」
「ゆっ!!すごいよ!!さすがぱちゅりーだね!!」
「むきゅきゅん!!むきゅん!!」

まりさは、これ以上ない名案だと思った。
あの人間の目が見えないのであれば、向こうのまりさと入れ替わっても気づくわけがない。
見たところ、向こうのまりさは弱そうだ。ひとりで外に出てきたときにやっつけて、そのまりさになりすませば……
人間にまったく気づかれることなく入れ替わり、毎日思う存分ゆっくりする事が出来る。

今、幸せそうにゆっくりしている“あの”まりさが、自分になるのだ!

「ゆっへっへ!!それならゆっくりできるね!!あいつだけゆっくりするなんてずるいもんね!!」

まりさは、その家へと跳びはねていく。早速、例のまりさを待ち伏せするのだろう。
そんなまりさを、ぱちゅりーは無言で見送った。



植木の陰に隠れて、まりさは盲導まりさが家から出てくるのを待っている。
葉と葉の隙間からじっと玄関の扉を凝視し始めてから、かれこれ30分が経過した。

「ゆっ!!はやくでてきてね!!ゆっくりしすぎだよ!!ぷんぷん!!」

すぐに姿を現すだろうと思い込んでいたまりさにとって、この待ち時間は苦痛でしかなかった。
その苦痛の原因を、家から出てこない盲導まりさに押し付ける自己中心的な思考は、ゆっくりの典型である。

「もうおこったよ!!さっさとでてきてね!!」

お兄さんの家に怒鳴り込もうと、草の陰から飛び出した……その時。

玄関の扉の下。そこのゆっくり用出入り口から、盲導まりさが出てきた。

「ゆっくりいってきます!!」

どうやらお兄さんに買い物を頼まれたらしく、単独での外出のようだ。
頭に紐がつながれておらず、その代わりに飼いゆっくり最高ランクであるゴールドバッジと、盲導ゆっくりであることを示すプレートが帽子に固定してある。
プレートが斜めにくっついているのは、お兄さんの目が見えていない証拠だろうか。

盲導まりさはゆっゆっ♪と歌いながら、里の市場へと向かい始めた。
が、そんなビッグチャンスをまりさが逃すわけがない。

「ゆっ!!ゆっくりとまってね!!」
「ゆゆ?ゆっくりしていってね!!まりさはゆっくりできるひと?」

突然の呼びかけに、盲導まりさは立ち止まってゆっくり流の挨拶をする。
まりさは挨拶を返すことなく、大きな口を開けて盲導まりさに飛び掛った。

「おまえはいままでゆっくりしすぎたよ!!こんどはまりさがゆっくりするばんだよ!!」
「ゆゆっ!?なにをするの!?ゆっくりやめてね!!」

まりさは、盲導まりさの帽子をすばやく取り去ると、それを咥えたまま丘の上へと駆けていく。

「ゆっ!!まりさのぼうしをかえしてね!!ぼうしがないとゆっくりできないよ!!」

いくら訓練を受けた盲導ゆっくりとはいえ、帽子を失うことは怖い。その恐怖は克服できないのだ。
必死の形相で、盲導まりさは帽子を奪ったまりさを追いかける。

「ゆっへっへ!!まりさにおいつくわけないでしょ!!ばかなの!?」
「ゆっくりまってね!!まりさのぼうしをかえしてね!!ゆっくりとまってよおおおおお!!!」

下品に笑いながら丘を登るまりさ。それを追う盲導まりさの目には、大粒の涙が浮かんでいる。
両者とも体格がほぼ同じなので、一度開いた差を縮めるのは困難だ。
それでも盲導まりさは必死に追い縋り、少しずつ2匹の距離は狭まってきている。
盲導まりさの目に、一層力がこもった。

「ゆっ!!ゆっくりおこったよ!!まりさはぼうしをはなしてゆっくりしんでね!!」

あと一歩というところまで迫ったとき、盲導まりさは大きく飛び上がった。渾身の力を振り絞った体当たりである。
しかし、その体当たりはあっさり回避されてしまい、ぶるんと身体を震わせながら何もないところに着地した。

その隙を、このまりさは見逃さなかった。

「ゆっくりしつこいよ!!ゆっくりしね!!」

丘の上から、丘の下へと。盲導まりさを突き飛ばす。
上から下へ。ファンタジーの塊であるゆっくりも、物理の原則には逆らえない。
重力に引っ張られるまま、盲導まりさは坂をごろごろ下り始めた。

「ゆびあああああああああ!!!どまっでええぇええぇぇええええ!!!」
「ゆひゃひゃ!!ゆっくりしんでね!!まりさがゆっくりするからね!!」

ゆっくりは総じて転がりやすい体型なので、一度勢いがついたら止まらない。
盲導まりさが丘のふもとまで転がっていく様を、まりさはゲラゲラ笑いながら眺めている。
そして……


「いびゃっ!?」


運が悪いことに、盲導まりさは大木に正面衝突し……餡子を吐き出して、動かなくなった。


「ゆっへっへ!!まりさをゆっくりさせないのがいけないんだよ!!あのよでゆっくりこうかいしてね!!」

丘の上から本物が死ぬ様を見ていたまりさは、器用に舌を使って本物から奪った帽子を被った。



まりさは、玄関の前にやってきた。
扉の下にあるゆっくり専用の出入り口から、勢い良く家の中に飛び込む。

「ゆっくりかえってきたよ!!」
「あぁ、おかえり。かなり早かったね」

お兄さんは、奥の部屋のベッドに腰掛けていた。
まりさは彼の顔を見上げるが、お兄さんは目を閉じたまま開こうとしない。
どうやら、ぱちゅりーが言っていた事は本当らしい。これなら、自分は存分にゆっくり出来る。
そう確信したまりさに、お兄さんは問いかけた。

「さぁ、買ってきたものを出してくれるかな?」
「ゆ!?かってきたもの?なにそれ!!ゆっくりできるの!?」

浅はかな発言だった。ここは無理やりにでも、お兄さんの会話に合わせるべきだった。
それを思いつかないあたり、まりさの餡子脳はある意味とてもゆっくりしていた。

「ん?何言ってるんだ?さっき買い物を頼んだだろう?帰ってきたってことは、もう買い物を済ませたんじゃないのか?」
「ゆっ!?ゆゆゆ?………ゆっくりわすれちゃったよ!!」

このまりさ、別にお兄さんの話に合わせたわけではない。本当に忘れたと思っているのだ。
買い物を頼んだ?頼まれた覚えはない。でもお兄さんは頼んだといっている。
あれ?そうだっけ……そういえば頼まれような気もする―――という具合である。
本当は買い物など一度も頼まれてないのに、まりさの頭の中では頼まれた買い物を忘れてしまったということになっているのだ。

「おいおい、君らしくないなぁ。いつもならしっかり買い物してきてくれるのに」
「ゆゆゆ…ゆっくりごめんね!!それよりまりさをゆっくりさせてね!!」
「……え?」

お兄さんは、まりさの言葉を聞いて固まってしまった。
何かまずい事を言ってしまったのだろうか?と、まりさはちょっとだけ不安になった。
だが、偽者だと気づかれてしまったのではないか、という考えはそこにはない。
だって、この人間は目が見えないのだから。一生偽者だと気づかないまま、自分をゆっくりさせてくれる存在なのだから。
その思い込みが、まりさの思考を停止させていた。

「ゆゆ?どうしたの?ゆっくりさせてね!!まりさはゆっくりしたいよ!!」
「……しょうがないな。で、お前は何がしたいんだい?」

呆れたような声で、お兄さんはまりさに問いかける。
まりさはぱあっと嬉しそうな顔をして、明るい声で答えた。

「おかしがたべたいよ!!おかしをよういしてね!!」
「そうかそうか、でもお兄さんは何も見えないからお菓子を用意できないんだ。自分で取りに行ってくれるかな?」
「ゆっ!?し、しょうがないね!!ゆっくりじぶんでとりにいくよ!!」

お兄さんに指差された方向―――台所へ、まりさは跳ねていく。
台所が、人間の食料が保管されている場所だということは知っているが、自分の目的のものがどこにあるかはわからなかった。
来た道を引き返して、不機嫌そうにお兄さんを見上げるまりさ。

「おかしはどこなの?ゆっくりわからないよ!!」
「え?わからない?おいおい……今日の昼に教えたばかりだろう?」
「ゆ?ゆゆゆゆゆ……?」

どうやら、本物の盲導ゆっくりはお菓子の場所を教わっていたらしい。

「うーん、ここまでダメになるなんて……別の盲導ゆっくりに変えてもらおうかな」
「ゆ!?ゆっくりやめてね!!おかしのばしょをおもいだしたよ!!だからまりさをおいださないでね!?」

さすがの低脳饅頭も、お兄さんの言葉に込められた不穏な雰囲気は読み取れたようだ。
せっかくゆっくりできる環境を手に入れたのに、追い出されてしまっては全てが水の泡になってしまう。
まりさは咄嗟に取り繕って、再び台所へと向かった。

お兄さんにはああ言ったが、結局のところまりさはお菓子の場所が分からない。
自分の視界に入る小さな扉などは全て開き、中に潜り込んで漁り放題漁ったが……
見つかるのは缶詰やインスタント食品など、お菓子でないばかりか自力で封を開けることもできないものばかり。

結果として、まりさは頭上の戸棚に収まったお菓子を見つけることは出来なかった。
そこに戸棚があることすら、気づかなかった。

「まりさ?どうだ?お菓子は美味しいかい?」
「ゆ!?ゆ…ゆゆゆゆ、ゆっくりおいしいよ!!しあわせー♪」
「あぁ、それはよかった。あとで出かけるから、そのときまでゆっくりしてなさい」

隣の部屋からのお兄さんの呼びかけに、まりさは慌てて答えを返す。
もし、ここでお菓子が見つからなかったことを言えば、ここを追い出されてしまうかもしれない。
それだけは避けたかったまりさは、お菓子を見つけたフリをすることにした。

「ゆっくりするね!!………ゆぅん…」

そのあと、しらみつぶしに台所の中を探して回るが、結局お菓子は見つからなかった。



お兄さんに連れられて―――ではなく、お兄さんを連れて里の市場へと向かうまりさ。
まりさの頭には盲導ゆっくり用の紐が固定されており、その紐の端はお兄さんの左手が握っている。
最初、頭に巻きついた紐が窮屈で嫌がったまりさだったが、

「別のゆっくりに変えてもらおうかな……」

の一言であっさり受け入れることにした。
里の市場に到着する頃には、まりさは自らの頭を締め付ける紐の存在をすっかり忘れてしまっていた。

「えーと、まずは……八百屋だな。まりさ、いつもの八百屋に連れていってくれるかな?」
「ゆ?やおや?それってゆっくりできるの?」
「ん?忘れたのか?またかよ……今日はどうしちゃったんだ?」

本物の盲導ゆっくりなら、八百屋の場所を覚えているはず。
だが、当然ながらこのまりさは覚えていない。八百屋なんて言葉自体、初めて耳にしたものだ。

「ふぅ、しょうがないな。どこでもいいから、お野菜が売られてるお店に連れてってくれ」
「ゆっ!おやさいがあるところにいくんだね!!ゆっくりりかいしたよ!!」

まりさは視界を上のほうに保ったまま、大通りをぴょんぴょん跳ねて進み始めた。
紐を握った手を引かれて、お兄さんもそのあとをついていく。

「ゆっ!ゆっ!おやさい!おやさい!」

まりさは気づいていなかった。自分が野菜がどんなものなのかを知らない、という事に。
今まで人間の畑など襲った事がないまりさは、野生に存在する質素な雑草は知っていても、人間が作った野菜は見た事がないのだ。
当然ながら、八百屋は見つからない。あっても気づかない。3メートル離れたところにある八百屋の前を、躊躇いなく素通りする。
それどころか、まりさは市場の外へ……まったく見当違いの方向へ向かっていた。

「ゆっ!!ゆっくりみつからないよ!!」
「そんなはずはないさ。お野菜を売ってる店なんて、沢山あるよ」

そう、一般人向けに開かれた市場なのだから、野菜を売ってる店が目に入らないほうがおかしいのだ。
でも見つからない。まりさは、見つけられない。八百屋が分からない。野菜が分からない。
そしてとうとう人里から抜けてしまい、周りには建物も人も何もない……大きな木々に取り囲まれた場所まで来てしまった。

「ゆああぁぁぁぁぁああぁん!!!どおじでえぇええっぇえぇぇ!!!おやさいがみづがならいいいいいぃぃぃいぃ!!!」
「………はぁ」

お兄さんは大きなため息をつくと、まりさの頭に繋がった紐をくいっと引っ張った。

「もういい。帰ろう」
「ゆっ?おうちでゆっくりするの!?」

まりさの泣き顔が、一瞬で笑顔に変わった。
変なところを連れまわされたが、やっとおうちでゆっくりできる―――大方そんな風に考えているのだろう。

「そうだね。まりさも今日は調子が悪いみたいだし」
「ゆっ!?ゆ、ゆゆっゆゆ、ゆっくりごめんね!!まりさちょうしがわるいんだよ!!あしたはゆっくりできるから―――
「いいからいいから。気にしないで、今日はもう帰って休もう」

まりさは自分が捨てられてしまうのではないかと思い、大慌てで弁解するがお兄さんはそれを制した。
ここまでの道中ずっとしかめっ面だったお兄さんは、やさしい言葉と共にまりさに微笑みかける。
それを見て、まりさは確信した。




このバカな人間は、ずっと自分をゆっくりさせてくれる。




目が見えない。それだけじゃない。この人間はバカだ!
これだけ失敗を重ねても、自分が偽者だということに気づかない。
ゆっくりでも気づくのに、この人間は気づかない。バカなの?死ぬの?

(ゆっへっへ!!このにんげんはばかだね!!まりさはとてもゆっくりできるよ!!)

まりさは、これから未来永劫自分をゆっくりさせてくれるであろうお兄さんを連れて、来た道を戻っていった。






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最終更新:2009年01月07日 12:08
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