遠坂凛

【表記】宝石剣凛、凛
【俗称】
【種族】魔術師
【備考】地形補正:大空洞(宝石剣凛)
【切札】宝石剣、十年宝石

【設定】


【戦闘描写】



GJ:「Fate」のキャラクターについてお聞きします。
「魔術協会」の歴史において、衛宮士郎と遠坂凛の才能の高さ(と低さ)はそれぞれどのくらいのレベルなのでしょうか?

奈須:凛はホントに天才です。長ずれば、歴代の魔術協会の中でも百番以内に入るかと。
士郎は魔術師としては見習いの域を出ませんが、魔術使いとしてはスペシャリストの一人と数えられます。
最終的には“魔術殺し”衛宮切嗣の全盛期と同じくらいの評価を受けるかと。
単純な数値で表すと、シエル:100 凛:70~100 士郎:10(限定条件下なら40)といった感じでしょうか。

ここで紹介した凛は、「Fate」の凛とは別人。
かつての遠坂家当主・遠坂時臣が海外へ渡った際の落胤の血を引く一族なのだ。
だが、その性格や嗜好パターンはオリジナルの凛そのもの。
「もうひとりの凛」といえる存在なのである。

新納:もともと「エクストラ」の凛は、ある意味パラレルな凛だったんです。
電脳空間の中で凛のアバターを使っている凛に似た女の子……だったのですが
「そんなのハッキリしないので、凛は中身も『遠坂凛』にしましょう」
という奈須さんからの刺激的なご提案がありました。

れっきとした遠坂の一族であり、名前も「凛」。
その気性やパーソナリティも凛そのもので
「2030年に生きる、もうひとりの凛」とでもいうべき存在、という設定です。
あわせて遠坂家が1990年代に没落しているとか、
サラっとすごい設定も追記されていましたので、こちらも驚きました。

 通路には生命力が満ち溢れている。
 それがあまりにも生々しい。
 活気に満ち、生を謳歌しようとする誕生の空気。
 それは夥(おびただ)しいまでの“生気(オド)”であり、視覚化できるほど垂れ流される魔力(マナ)である。

「それはリンとシロウが決める事でしょう。
 確かに宝石剣を複製できればリンの勝ちよ。だからこそわたしも手を貸してあげた。けど、それはわたしの義務だから手を貸しただけ。決して貴女の方針に賛同したからじゃないわ」

「そうよ。士郎にはある物を複製してもらうわ。
 わたしたちじゃセイバーにもあの影にも敵わない。だからサーヴァントにとって代わる、サーヴァント以上の魔術行使―――霊体であるサーヴァントを打倒する概念(がいねん)武装(ぶそう)を作り上げなくちゃいけないのよ」
「概念武装――――(がいねんぶそう)? それって、決められた事柄を実行するっていう、固定化された魔術品の事、だっけ?」
「ええ。物理的な衝撃で相手を打倒するのではなく、概念―――魂魄(こんぱく)としての重みで相手を打倒する魂砕き(アウトブレイカー)。貴方にはその中でも特殊な、遠坂(うち)に伝わる短剣を投影してもらうわ」
「目標はセイバーの宝具に対抗できるだけの物を作ること。
 バーサーカーを倒したセイバーの宝具は見たでしょう?
 単純な火力で言えば、セイバーは他の追随を許さない。
 あの“黒い影”だってセイバーの宝具を受ければ跡形もないだろうし、わたしたちだってあんなものを振るわれたら防ぐ事も躱す事もできない。
 けど逆に言えば、急造ですぐに壊れる模造品でも、セイバーの宝具を上回る剣さえ作れれば、あとは戦い方次第ってわけ」

 影が浮き立つ。
 以前とは比べ物にならない魔力の固まり、サーヴァントの宝具に匹敵する“吸収の魔力”。
 それは一つだけに留まらず、次々と鎌首をもたげていく。
「渡さない。これはわたしの力です。姉さんにあげるものは、後悔と絶望だけ。
 それを――――ゆっくりと教えてあげます」
 湧き上がる影は四身。
 それは少女を守護する巨人のように、眼下のちっぽけな人間へと手を伸ばす。
「――――力の差を見せてあげますね、姉さん。
 今度は誰も助けに来ない。湖に落ちた虫みたいに、天(この)の杯(わたし)に溺れなさい」
 影の巨人が迫る。
 防ぐ事も躱す事もできぬ絶大な力が、遠坂凛を飲み込んだ。



 サーヴァントの“釘”は、容赦なく俺の目へ突き出され――――
 横合いから放たれた、無数の光弾の前に弾かれていた。
 鎖は今の光弾で切れ、どん、と容赦なく地面に尻餅をつく事になった。

 バーサーカーは暴風のように、傷ついたセイバーへと斬りかかり――――
 その背中に、幾条もの衝撃を受けていた。「―――Vier Stil Erschieung……!」
 いかなる魔術か、遠坂の呪文と共にバーサーカーの体が弾ける。
 迸(ほとばし)る魔力量から、バーサーカーに直撃しているのは大口径の拳銃に近い衝撃だろう。 

 黒い巨人は、悪夢のようなスピードでセイバーへと突進する。
「Gewich(重圧、)t, um zu (束縛、)Verdo(両極硝)ppelung――――!」
 黒曜石を中空にばらまく遠坂と、
 天空から飛来する無数の銀光。
 それを受けてなお、バーサーカーの突進は止まらない。「――――なんて」

 余裕に満ちた仕草で、キャスターは彼女に指を向ける。
 紡がれる魔術は『病風(アエロー)』。
 キャスターは詠唱など必要としない。
 神代に生きた魔女にとって、自身と世界を繋げる手順(じゅもん)など不要なのだ。
 キャスターは常として歯車(せかい)を回す神秘を帯びている。
 彼女にとって、魔術とはただ命じるもの。
 己が番犬に、ただ『襲え』と告げるに等しい。
「――――Ach(八番)t……!」
 それを、彼女は秘蔵の宝石で相殺する。
 悠長に呪文を詠唱している時間はなく、左手の魔術刻印による簡易詠唱ではキャスターの魔術に太刀打ちできない。
 魔術師としての技量は、それこそ天と地ほど離れている。
 その差を埋めるには、長年蓄えてきたモノを吐き出すしかない。
 魔術師の娘として生を受け、今まで貯めに貯めてきた十年分以上の魔力の結晶。
 代えのない十の宝石のうち、残る九つをこの場で使い切る覚悟で、彼女は戦いに臨んでいた。
 己が魔術を純粋な魔力で相殺されながらも、キャスターの微笑は崩れない。
 ほぼ無限に魔術を行使できるキャスターと、
 宝石という増幅器で対抗する彼女。
 彼女がどれほど宝石を所有しているかは知らぬが、所詮十や二十。
 その程度のモノで、キャスターが破れる道理など一分(いちぶ)もない。
「――――Sieb(七番)en……!」
 繰り出される電荷を、七つ目の宝石で相殺する。
 残る宝石は六つ。
 あと六回キャスターが呟くだけで、彼女の奥の手は底を突く。
 ……キャスターの言う通り、自分の身だけを守るのならば宝石は砕けない。
 キャスターの呪文に対して、おそらく三回は防ぎきってくれるだろう。
 ……だが、それは出来なかった。
 キャスターの魔術は、ひとたび発動すれば聖堂を覆う。
 マスターである葛木はキャスターによって護られているだろうが、彼だけは例外なのだ。
 もし彼女がキャスターの魔術を発動前に相殺しなければ、葛木宗一郎を引き留めている衛宮士郎が焼け死ぬ事になる。
 キャスターの指が動く。
「―――――――Sech(六番)s Ein Flu,ein (冬の河)Halt……!」
 それに、彼女は先手を取った。
 確かに受けてばかりでは、いずれ宝石を失い殺される。
 キャスターの魔術と彼女の宝石。
 そこに籠められた魔力が同等ならば、先手を取れば倒し得るという事だ――――!
「――――――」
 だが、キャスターの詠唱を上回る事などできない。
 呪文を使わず、宝石を解放するだけで魔術を成立させる遠坂凛も最速ならば、
 わずか一言で神秘を起こすキャスターも最速である。
 両者の戦いに“先手”などない。
 あるのはただ力による押し合いだけ。
 この押し合いに破れ、魔力が尽きた方が敗北する。
 ならば――――
「Fnf,D(五番、)rei,(三番、)Vie(四番)r……!
 Der Riese (終局、)und bren(炎の剣、)nt das(相乗) ein Ende――――!」
 もはや、純粋に押し通るだけ。
 立て続けに宝石を叩きつけ、キャスターの魔力を突破する――――! 解放した宝石は三つ。
 加えて虎の子の四番を用いて、禁呪である相乗さえ重ねた。
 それは彼女の限界を超えた魔術でもある。
『術者の許容量を上回る魔術は、決して使ってはならない』 そう彼に告げた彼女自身が、その禁を侵してまで放った一撃。
 キャスターが守りに入らなければ聖堂はおろか教会ごと崩壊するであろうそれを、
 紫の魔女は、事も無げに防ぎきった。
 ―――いや、相殺したどころの話ではない。
 キャスターは彼女の放った魔力、その全てを衣の中に飲み込んだ(・・・・・)のだ。
 ……あと幾つ宝石があろうと、今のが彼女の最大なのだ。
 それが通じない以上、百の宝石を重ねても、彼女の魔術ではキャスターに傷一つつけられない――――
「star(二番)k―――Gro z(強化)wei」
 解放する呪文はただ一言。
 遠坂はキャスターに許しを乞うようによろよろと前に進み、そんな遠坂に、キャスターは止(とど)めとも言える魔術を放った。
 ――――その、瞬間。
 遠坂は放たれた魔術を相殺した。
 遠坂は自ら業火に飛び込む。
 そのまま放たれた魔術を相殺し、目眩ましにしてキャスターへと跳びかかった。
 間合いを詰め、キャスターの胸に打ち込んだのは中国拳法でいうところの寸頸(すんけい)だ。
 パリン、という音。
 葛木と同じく拳を“強化”しているのか、遠坂の一撃は容易くキャスターの守りを貫通した。
 寸頸の直後、遠坂の体が沈んだ。
 両手を床に付け、キャスターの膝もとまで屈みこむ。
 格闘の心得などないキャスターには、それこそ消えたように見えた筈だ。
 そこへ、とんでもない足払いが入った。
 ザン、と体ごと回した旋脚は、キャスターの両足を断たんとばかりに炸裂する――――!
 足を払われ、背中から地面に倒れゆくキャスター。
 足払いの後、キャスターに背中を向けたまま立ち上がりかけ、回転する勢いのまま遠坂は肘をキャスターに叩き込み――――
 体の回転を止め、とんでもなく腰の入った正拳を炸裂させた――――!
 キャスターの体が吹き飛ぶ。
 遠坂の正拳突きをまともに受けたキャスターは、俺と同じように壁まで叩きつけられた。
 離れた距離。
 吹き飛ばした数メートルの間合いを詰める為、遠坂は地を蹴った。
 時間にして数秒もなかった攻防。
 俺が壁まで叩きつけられ、葛木と対峙した合間の、五秒にも満たない一瞬で勝負はついた。
 キャスターに抗う余力はない。
 遠坂はセイバーじみた速度でキャスターに詰め寄り、とどめの一撃を見舞う。
 魔術による数秒だけの“強化”。
 キャスターは遠坂に欺かれ、完全に敗北した。
 この戦いは遠坂の勝ちに終わった。
 ―――そう。
 この男の、怪物じみた運動能力さえなかったのなら。
 キャスターに走り込む遠坂が疾風だとしたら、それは、魔風のような速度だった。
 遠坂の足が止まる。
 壁によりかかるキャスターの前には、たった今、俺の目の前にいた葛木宗一郎の姿がある。
 遠坂の体が動く。
 死を直感して、咄嗟に顔を守って後ろに跳んだ瞬間、
 俺を吹き飛ばした右拳(くずき)の一撃が、遠坂の顔面を強打した。
 顔を両手でガードし、なお後ろに跳んでいたというのに、遠坂の体は大きく弾き飛ばされる。
 俺とは正反対の壁際まで弾かれた遠坂の両手は、骨折したようにだらりと下げられていた。


 広大な空間は洞窟などではなく、荒涼とした大地そのものだ。
 直径にして優に二キロ。いや三キロはあるだろう。
 あの崖を登れば、視界に広がるのは巨大なクレーターの筈だ。

 影が浮き立つ。
 以前とは比べ物にならない魔力の固まり、サーヴァントの宝具に匹敵する“吸収の魔力”。
 湧き上がる影は四身。
 防ぐ事も躱す事もできぬ絶大な力が、遠坂凛を飲み込んだ。

 黒い波が迫る。
 遠坂凛というちっぽけな獲物を逃がすまいと両手を広げ、高波となって襲いかかる。
「Es lt fr(解放、)ei.Werkz(斬撃)g―――!」
 既に六体。
 際限なく涌き上がってくる黒身の呪いを、凛は一刀の元に両断していた。

 黒身の巨人は、その一体一体がサーヴァントの持つ宝具に匹敵する。
 巨人は遠坂凛にとって、一体だけであろうと逃れられない死の化身なのだ。
 それを、既に六体。
 しかも悉く一撃で消滅させ、遠坂凛は苦もなく崖を駆け上がりながら、
 七体目の影を、短剣の一振りでかき消していた。
「そんな筈――――
 Es erzh(声は遠くに)lt―――Mein (私の足は)Schatten (緑を覆う)nimmt Sie……!」
「しつこい……! Gebhr,Zweih(次、)aun(接続)der…………!」
 宝石の剣が光を放つ。
 無色だった刀身は七色に輝き、その中心から桁外れの魔力を提供し、
「Es lt fr(解放、)ei.EileSal(一斉射撃)ve――――!」
 大空洞を、眩いばかりの黄金で照らし上げる……!
 侵入を拒んでいた影たちを一掃し、遠坂凛は崖を上りきった。

 間桐桜の焦りか、それとも、彼女の背後に浮かぶモノが、主の危機を感じ取ったのか。
 遠坂凛という、取るに足らない人間一人に対して繰り出された魔力は、数値にして一億を越えていた。

 ――――宝石剣が一閃される。
 短剣はその軌跡通りに光を放ち、間桐桜を守る影を消滅させる。
 そればかりか、小エクスカリバーとも言うべき光と熱は内壁を削り、大空洞を震動させる。

「っ……!
 まだです、Es be(声は)fieh(遥かに)lt―――Mein Atem(私の檻は) schliet (世界を縮る)alles……!」
「Eine(接続、),Zwei(解放、),RandVer(大斬撃)schwinden――――!」

 凛の宝石剣は影を斬り払うだけではない。
 その余りある火力で、少しずつ大空洞を崩壊へと傾かせている。

 何物にも替えがたい魔法使いの遺産を、ぽーん、とキャッチボールのように投げて、
「――――Wel(事象)t、End(崩壊)e」
 大空洞は、一面の光に包まれた。
 爆散する。
 人の手では届かぬ奇跡を体現した宝石の剣は、崩壊の際において全ての影を打ち消していく。

 何か巨大な壁が出来たように、柱からの光が閉ざされる。
 ……湧き上がる黒い影。
 何処から現れたのか、巨人たちは牢獄のように迫ってくる。
「――――――――」
 逃げ場はない。
 巨人たちは溶け合い、津波となって俺を飲み込んだ。
 一瞬にして全身の感覚が消失する。

【能力概要】

  • 宝石剣
威力
射程
範囲
速度

【以上を踏まえた戦闘能力】


【総当り】
最終更新:2016年05月17日 01:33