葛木宗一郎

【表記】葛木
【俗称】
【種族】人間
【備考】キャスターの強化
【切札】

【設定】

キャスターのマスターだが、魔術師でもなんでもない一般人。
葛木の格闘スキルはキャスターに授けられた物ではなく、あくまで葛木自身の能力である。
月姫で言うところの七夜と似たような集団の一員であったらしい。

きのこ「アニメ版では全身に強化がかかっています」
御大「ちなみに、ライダーの結界で葛木先生が動けたのもキャスターの助けあっての話」

Q.言峰、バゼット、葛木、“メルブラ”の都古や軋間紅摩の中で、魔術、武器を使わない純粋な肉弾戦で戦ったらトップ3は誰になりますか?
A.軋間は存在自体が神秘の類になってしまうので除外。
本人にその気がなくても薬物検査にひっかかる選手みたいなもんです。
このメンツなら純粋に強いのはバゼット。
一戦だけ&闇討ち上等、という限定なら葛木。
言峰が十年若ければバゼットさんよりトータルで強い。

Q. もしもバゼットと葛木が肉弾戦を行うとしたら、どちらが勝ちますか?
A. 初戦なら葛木がやや有利。
2回戦目があるとしたらバゼットがほぼ完勝といったところでしょうか。
手の内を知られていないのならセイバーさえ撃退できる葛木ですが、バゼットも人間が考え、鍛え上げてきた格闘術のエキスパートです。
才能重視のサーヴァントたちより早く葛木の“蛇”に対応できる可能性があります。
ただ、葛木先生が一般人だからって甘くみてしまうこともあり、あっさりバゼットも倒されるかもしれません。

【戦闘描写】


 キャスターの魔術は、ひとたび発動すれば聖堂を覆う。
 マスターである葛木はキャスターによって護られているだろうが、彼だけは例外なのだ。
 もし彼女がキャスターの魔術を発動前に相殺しなければ、葛木宗一郎を引き留めている衛宮士郎が焼け死ぬ事になる。

 踏み込む速度、大地に落とした足捌き、横一文字に振り抜いた剣に是非はない。
 彼女の視えない剣は敵マスターを一閃した。
 最高の機を窺っての奇襲である。
 横一線になぎ払った必殺の一撃。
 高速で切り払われるソレを、男は片足の膝と肘で、挟み込むように止めていたのだ。
 セイバーの体が流れる。
 止められた剣を全力で引き戻そうとする。
 その瞬間。
 彼女の後頭部に、正体不明の衝撃が炸裂した。
 この間合い、お互い肌を合わせる距離で、後頭部を殴られた……?
 正体が掴めないまま回避する。
 こめかみを掠っていく“何か”。
 それが何らかの魔術によって“強化”された拳であると看破し、セイバーは跳んだ。
 長柄の武器を持つ以上、素手の相手に対して接近戦(クロスレンジ)では不利だ。
 セイバーは自身の間合い、剣を生かす一足一刀の間合(ショートレンジ)いまで後退する。
 無論、体は敵を見据えたまま。
 敵にとって有利な間合いを離そうというのだ。
 当然逃がすまいと追ってくる敵を迎え撃つのが定石である。
 が、敵は追ってはこなかった。
 キャスターのマスター、狙われれば倒されるしかないその男は、その場に踏み留まったまま、彼女の鳩尾(みぞおち)を貫いていた。
 貫いたのは衝撃だけだ。
 攻撃は鎧に阻まれ、その衝撃だけを伝えてくる。
 続く衝撃。
 的確に急所だけを狙ってくるソレは、紛れもなく、人の拳そのものだった。
 息を呑む暇が彼女にあったか。
 巌(いわお)じみたあの指が衝撃の正体だと理解した時、勝敗は決していた。
 繰り出される拳の雨。
 神鉄で作られたかのような強度と重さをもって、男の拳はセイバーをつるべ撃つ。
 それを、どう表現すればいいのか。
 鞭のようにしなる腕は、しかしあくまで直角に変動する。
 放たれる速度が閃光ならば、そこから更に変化する二の腕は鬼神の業か。
 視認する事さえ困難な一撃は、悉く急所のみを標的とする。
 反撃など許されない。
 剣を振るう腕さえ狙われ、その一撃(いたみ)は鎧を通して心髄にまで届いていた。
 攻撃は常に外から内に。
 大きく周りこむ腕は肘を支点に軌道を変え、あらぬ方向からセイバーを打ちのめす。
 鈍重で鋭利。
 即死性はなく、だが死に至る毒を帯びた突起物。
 それがこの攻撃の全てだった。
 拳は躱せないものの、威力はそう大きくない。
 だが―――受ける度に、痛みで意識が停止する。
 その僅かな隙をつき、根こそぎ意識を刈り取ろうと後頭部に食いつく一撃は、死の鎌を連想させた。
 それを直感だけで回避する。
 ―――腕や胸を狙う一撃はいい。
 だが頭――――後頭部を打たれては倒される。
 それ故、セイバーはその一撃にだけ神経を集中する。
 剣を素手で止める怪人。
 初体験とも言える奇怪な攻撃方法を前にして、彼女が頼りにするものは己が直感だけだった。
「―――よく躱す。未だ混乱しているというのにな」
「―――なるほど。眼がいいのではなく、勘がいいという事か」
 繰り出される一撃は何が違ったのか。
 確実に致命傷を避けていたセイバーは、その一撃を躱せなかった。
 意識が落ちる。
 後頭部に落ちた衝撃が脳を犯す。
 それでも両腕を上げた。
 男の攻撃では彼女の鎧を突破できない。
 ならば―――男が狙うのは、剥き出しである彼女の顔だ。
 セイバーは両腕をあげ、自らの顔を守る。
 抜けてくる衝撃。
 顔を覆った腕の合間を、敵の拳は容易(たやす)くすり抜けた。
 意識が遠のく。
“蛇”の胴体、左腕の肘が、セイバーの鎖骨へと叩き込まれる。
 それをわずかに後退して躱し、セイバーは剣を握りしめた。
 その先にある変化。
 肘先から変化し、左側面から後頭部を狙ってくる一撃に備えた。
 相手が意識を刈り獲(と)るというのなら獲らせる。
 だが、その直後に見返りとして両腕を切り落とそう、と彼女は両目を見開き、その変化に、愕然とした。
 肘を支点に、真上から垂直に落ちてくる。
 今まで円を描いていた軌道が、ここにきて線……!
 咄嗟に首をずらし、脳天に叩き落とされる一撃を回避する。
 肩口に落ちる衝撃。
 左肩は完全に破壊された、と敵を睨んだ瞬間、彼女の背筋は凍り付いた。
 ぐるん、と男の体が半身を引く。
 今まで一度も使われなかった右腕。
 常に彼女の喉の高さに位置されていたソレは、それこそ、砲弾のように放たれた。
 今まで線でしかなかった敵の攻撃は、ここにきて点だった。
 正面にいるセイバーに対して、一直線に放たれる打突の拳。
 その威力、針の穴ほども通す精密さを持つこの男なら、貫ける。
 溜めに溜めた渾身の一撃ならば、セイバーの喉を貫き骨を断ち、完膚無きまでに頭を飛ばすに容易すぎる――――!
 だがそれも不発。
 未来予知に近い直感を持つ彼女に奇襲は通じない。
 蛇の拳は彼女の首横を掠っていく。
 それを見届け、刃を返そうと踏み込もうとした瞬間。
 彼女の首の真横で、信じがたい音がした。
 蛇の牙が突き刺さる。
 セイバーの首を掠ったそれは、躱された瞬間、音をたてて彼女の首に指を食い込ませた。
 キャスターの魔力による補助か、敵の指はセイバーの首を容易く握り潰していく……!
 セイバーの剣が上がる。
 この一瞬、首を握り潰される前に敵の腕を断とうと剣が走る。
 だがそれは適わない。
 剣を振るうより速く、彼女の体そのものが剣のように振るわれる。
 ―――体が宙に浮く感覚。
 投手のようなオーバースイング。
 男はセイバーの首を捉えたまま、片腕で彼女を放り投げた。
 受け身など取れる筈がない。
 首の肉を削がれながら投げ飛ばされ、時速200キロのスピードでコンクリートの壁に叩きつけられ、
 彼女の体は、活動停止を余儀なくされた。
 セイバーの速攻から葛木の反撃。
 悪夢のような首打ちから、敵である俺たちでさえ見惚れるほど、見事すぎた一投まで。
 セイバーは動かない。
 首を掴まれたまま投げられ、背中から壁に激突した。
 首の傷はおそらく致命傷。
 加えて、トドメとばかりにあのスピードで壁に叩きつけられたのだ。
 ―――即死、という訳ではなさそうだが、動く事は出来まい。
 少なくとも、首の傷と全身の打撲が癒えるまでセイバーは地面に倒れたままだろう――――

 拳をキャスターの魔術で強化されているといっても、葛木は生身の人間にすぎない。
 それがまさか、格闘戦でサーヴァントを圧倒するなど誰が思おう。
 ヤツにとって脅威なのはセイバーではなく、遠距離攻撃を可能とする遠坂だ。
 魔術師の相手は魔術師にさせるのが確実なのだと、あいつは肌で感じ取っている。
 ―――魔術師と戦士の戦いは距離との戦いだ。
 いかに化け物じみた格闘技能をもっていようが、葛木に対魔力はない。
 故に、放てば勝てる。
 近づかれる前に一つでも呪文を編み上げられればこちらの勝ちだ。

 倒せないまでも、逃げる事に専念するなら遠坂に分がある。
 距離にして五メートル。
 あと一歩でも葛木が近づけば遠坂は即座に反応して、葛木の拳をやり過ごすだろう。
 木刀を握り直し、目前の葛木へと突進する。
 走り抜けざまに葛木に木刀を振るう。
 当然躱されるだろうが、その隙を、遠坂なら確実に狙い撃ってくれる筈……!
 葛木の脇をすり抜けながら木刀を一閃する。
 ―――問題にもならない。
 木刀は容易く粉砕され、返す拳は俺の左足を根元から(・・・・)吹き飛ばし(・・・・・)、
 わずか一瞬で、遠坂に踏み込んでいた。
 ―――時間が止まる。
 愕然としながら、それでも咄嗟に手のひらを葛木に向ける遠坂。
 その胸の中心に、ガン、と。
 あの、セイバーの首を貫こうとした右手が打たれていた。
 胸を打たれ、呼吸を止められる遠坂。
 そこへ、城壁を穿つ槌(つち)めいた一撃が、容赦なく顔面に食い込んだ。

 葛木の姿、その瞬きさえ見逃すまいと睨み付ける。
 ヤツが遠坂へ体を向けた瞬間、遠坂の前に割ってはいる。
 遠坂の事だ、咄嗟に左右に跳んで葛木を狙い撃ちにしてくれるだろ――――
 そんな余裕など、なかった。
 わずか一瞬。
 わずかに葛木の体がブレた、と思った瞬間、葛木は遠坂の目の前にいた。
 愕然としながら、それでも咄嗟に手のひらを葛木に向ける遠坂。
 その胸の中心に、ガン、と。
 あの、セイバーの首を貫こうとした右手が打たれていた。
 遠坂の時間が止まる。
 胸の中心を点穴され、呼吸を封じられた。
 それで終わりだ。
 息、呪文が口にできなければ、魔術師はその大部分の性能をカットされる。
 咄嗟に跳び退いたおかげか、胸への一撃は呼吸を奪うに留まった。
 だが次弾。
 後ろに跳んだといっても一メートル弱。
 そんな距離(モノ)、葛木にとっては逃げた事にすらならない――――!
 両者の間に割って入る。
 手にした木刀を盾に、遠坂を追撃する葛木と対峙する。
 一転して放たれる拳。
 見えない……!?
 こんなもの、どうやってセイバーは避け――――
 夢中で左側だけを守る。
 重い打撃音と、木刀の砕ける音。
 目前には次弾を放つ葛木の姿。
 強化された木刀は鉄と同じだ。
 それを一撃で叩き折るのなら、俺の体など何処を狙っても破壊できる。
 繰り出される葛木の拳を見る。
 それを防いでいる、他人事を観察する。
 両の手にはあいつの双剣がある。
 陽剣干将(ようけんかんしょう)、陰剣莫耶(おんけんばくや)。
 間合いが離れる。
 三十もの拳を弾いた双剣は、もはや耐えられぬとばかりに砕け散った。
 葛木の拳に負けたからじゃない。
 双剣はあくまで、剣を維持しきれない俺自身のイメージによって消滅した。

 セイバーが一方的に追い込まれたのは、葛木の技があまりに奇異だったからだ。
 俺では何度受けようが対応できないが、セイバーはすでに慣れてしまっている。
 戦法とは形がない事を極意とする。
 強力ではあるがあまりにも特殊な形の為、葛木の攻撃は見切られやすい。
 初見、故に必殺。
 芸術にまで磨き上げられた“技”と、
 極限にまで鍛え上げられた“業”の違いが、ここにある。

初めは只者ではないと感じたのですが、見れば見るほど一般人でした。断言できますが、彼はマスターではありません
いいえ、特別なものなど何も。ただ、彼の呼吸はあまりにも自然で、整いすぎていた。
……正直に言うと感心していたのです。先ほどの歩みもまったく無駄がなく、あれほどの使い手は私も見た事がない
セイバーは本気で感心しているようだ。
じゃあ葛木先生、戦えばすごく強いっていうのか?
肉体的な性能なら、士郎と同じぐらいではないでしょうか。実質的な戦闘は、やはり一般人と変わらないと思いますが
いいえ。あの人物にそれほどの才気は感じられません。
今までの話と矛盾するのですが、彼が正しい呼吸と歩法を身につけているのは、後天的な鍛練から来たものではないか、と
私も信じられないのですが、彼は魔術師でもないし血の匂いもしない。
ですがその、たまたま、日ごろの運動が彼に正しく作用しているだけのようなのです
教師として理想的な人物、という事です。彼のような人物は珍しくない。


 繰り出される拳を必死に捌く。
 葛木の拳は生きた“蛇”だ。紙一重で避けたところで、躱した瞬間に軌道を変えて食らいついてくる。
 セイバーはそれで深手を負った。
 なまじ紙一重で躱せるだけの反射神経を持っていたが故に、セイバーは葛木の“蛇”に食らいつかれた。
 が、こっちはそんな反射神経を持ち合わせていない。
 紙一重で躱す事なんて出来ないし、そもそも葛木の拳なんて見えていない。
 見えていないんだから、自分から防ぐ事など不可能だ。
 肩口。左の鎖骨に、葛木の拳が掠っていく。
 まるで玄翁(げんのう)だ。そのまま肩ごと左腕を砕き落とされたような感覚に、短剣を落しかける。
 踏みとどまって耐え、右の短剣で眉間に繰り出される拳を弾く。
 必死になって後退する。
 なりふり構わず後退する俺と、前進した事も気づかせないまま間合いを詰める葛木。
 次こそは耐えられない。
 ここまで数撃捌(さば)ききれた事さえ異常だ。
 葛木宗一郎は、前回の戦いをよく考慮していた。
 以前、遠坂を襲った葛木を俺は撃退できた。
 だから今回も、アーチャーの双剣さえ投影できれば防ぎきれると思っていた。
 それは逆に、アーチャーの剣がなければ話にならないという事でもある。
 葛木はそれを踏まえている。
 今回、葛木がまず仕掛けてきた事は、俺から双剣を奪うという事だったのだから。
 右の短剣が砕かれる。
 ―――キャスターの魔術によって強化されたヤツの拳は、わずか数合で俺の剣を破壊する。
 即座に短剣を複製する。
 無理な投影、即席の剣では高い完成度は望めない。
 結果として、数撃を受けきれた双剣は段々とその精度を落していく。
 無我夢中で葛木の蛇に短剣を合わせる。
 体は双剣に従うだけ。アーチャーの動きを真似る手足は、そもそも衛宮士郎という肉体の限界を超えている。
 剣を一つ作る度に、数少ない魔術回路が一つ消えていくような感覚。
 作れてあと二本。
 魔力の貯蔵が失われた時がこちらの終わりだ。
 だが、そもそも。
 あと二本使い切れる余裕など、この体のどこに―――
「え―――――――あ?」
 葛木の右拳。常に不動だったソレが、槍のように放たれたのだ。
 胸を肋(あばら)ごと貫こうとするその一撃を、双剣で受けた。
 瞬間、双剣は破壊され、衝撃はそのまま俺を吹き飛ばしたらしい。
 背中には硬い感触。
 ……五メートル近い距離を、弾き飛ばされた、のか。
 呼吸を再開しようとして、息が出来ない事に気が付いた。
 貫通した衝撃は心臓を麻痺させている。
 呼吸はおろか、手足さえ動かない。
 わずか数秒。
 心臓が活動を再開するまでのその空白に、
 幽鬼が迫る。
 あの男ならば、一秒の隙でさえ俺を仕留める。
 それがこの体たらくならば、六度殺しても余りある。

 離れた距離。
 吹き飛ばした数メートルの間合いを詰める為、遠坂は地を蹴った。
 キャスターは動けず、あの様子では致命傷だろう。
 時間にして数秒もなかった攻防。
 俺が壁まで叩きつけられ、葛木と対峙した合間の、五秒にも満たない一瞬で勝負はついた。
 遠坂はセイバーじみた速度でキャスターに詰め寄り、とどめの一撃を見舞う。
 魔術による数秒だけの“強化”。
 遠坂は始めから、キャスターに格闘戦を仕掛けるつもりだったのだ。
 キャスターは遠坂に欺かれ、完全に敗北した。
 この戦いは遠坂の勝ちに終わった。
 この男の、怪物じみた運動能力さえなかったのなら。
 キャスターに走り込む遠坂が疾風だとしたら、それは、魔風のような速度だった。
 遠坂の足が止まる。
 壁によりかかるキャスターの前には、たった今、俺の目の前にいた葛木宗一郎の姿がある。
 遠坂の体が動く。
 死を直感して、咄嗟に顔を守って後ろに跳んだ瞬間、
 俺を吹き飛ばした右拳(くずき)の一撃が、遠坂の顔面を強打した。
 顔を両手でガードし、なお後ろに跳んでいたというのに、遠坂の体は大きく弾き飛ばされる。
 俺とは正反対の壁際まで弾かれた遠坂の両手は、骨折したようにだらりと下げられていた。
「勝機を逃したな。四度打ち込んで殺せなかったおまえの未熟だ」
 俺が葛木を止めていれば、遠坂はキャスターを倒しきっていただろう。
 千載一遇の奇襲は、俺の未熟さと、葛木宗一郎という男の卓越した格闘スキルの前に阻まれた――――

 遠坂の体が流れた。
 なんの前触れもなく、矢のような速さで階段へと走り出す。
 その背中に。
 遠坂が止まって見える速度で、痩身の影が追い付いていた。
 気が付けば五メートルの高さから、遠坂の真後ろに飛び降りていた。
 遠坂の後頭部に食らいつこうとした葛木の蛇(こぶし)によって、木刀は粉砕された。
 手にあるのは干将莫耶。
 複製されたアーチャーの宝具は、再度、葛木の拳を弾ききっていた。
 このままでは前回の繰り返しになると読んだのか、葛木はわずかに間合いを離す。
 葛木の拳を二回弾いただけで、左腕は潰された。
 もう一撃受けていれば肩の骨は外され、拳に殴られたというのに腕が千切れる、なんて奇怪な光景が展開されただろう。

 激突する拳と拳。
 静かに、しかし迅速に交差する二つの長身。
 組み手を行っている一方はあの、
 初戦だけ、という限定条件付きではあるが、素手でサーヴァントと渡り合える葛木宗一郎なのだ。
「む、ここまで!
 いやあまいった、寸止めとはいえ恐いものは恐いなあ、宗一郎殿」
「……御坊も強(したた)かだな。
 こちらは寸止めだが、そちらは寸止めも何もない。次からは襟を掴んだ時点で止める、というのはどうか」
「おはようございます、零観さん、葛木先生。
 ……で。今のは、その……組み手、ですか?」
「いや、その真似事かな。
 私は本気だが、宗一郎殿は寸前で止めてしまわれるのでな。組み手になるのは、さて、拙僧があと十年ほど修行した後であろう」
「けど葛木さん、凄いなあ。
 零くん、柔道で全国大会まで行ったコトもあるし、今も警察屋さんに指導員として招かれる腕前なんだけどなあ。ぜんっぜん歯が立ってなかったわ」
「うん、凄いだろう。
 宗一郎殿は只者ではない。これで年々腕が落ちているというのだから、当山にやってきた五年前に組み合っていたらどうなっていたか、いやはや」

 眉間、喉仏、心臓、背骨。
 そのいずれかを的確に、かつ瞬速で打ち抜く鉄の拳。
 一呼吸の内に三撃必殺。
 魔女の魔術によって強化された拳は鉄塊(てっかい)となって亡者の顔を吹き飛ばす。

【能力概要】


【以上を踏まえた戦闘能力】

士郎セイバーに勝つ事から、それ以下のステスキルかつ特筆すべき防御能力か特殊能力を持たない鯖相手にまで近距離有利が付くが
白兵戦闘能力以外が皆無なため、上位突破力と下位不安定が相殺されて真ん中辺りの位置
パーフェクトバゼットが追加されると、基本戦法の兼ね合いから宝具ぶっぱを使われなくなりランク爆上げの可能性を秘める

【総当り】
最終更新:2015年06月29日 05:38