……いや、追ってくる、という表現は正確ではあるまい。
この赤い髪から逃れる事はできない。
秋葉に見られる、という事ですでに絡みついているモノだ。かわすとか避けるとか、そういった行為をイメージするのは間違っている。
有れば有るのだし、無ければ無いだけの話。
肌に触れている空気のように、赤い髪はすでにこちらに絡みついている。
故に、あの攻撃から逃れる事はできない。
出来る事があるとすれば、それは―――秋葉がこちらから何かを奪う前に、そのパイプライン……赤い髪を切断するしかない。
秋葉が直接対象の姿を見ている時は、奪うという行為そのものは一瞬だろう。
だが対象が視界に不鮮明な場合、奪う行為に若干のタイムラグが存在する。その間、何かを決定的に奪われる前に、なんとか赤い髪を切って致命傷を避けている.
……おそらく、それは正しい。
秋葉の能力は瞳に見えている映像の鮮明さに比例する。
今が深夜で建物の中だから、俺を捕えようとする熱気の動きが遅い。
これが日中で光があるのなら、秋葉の視線と熱気の速度はほぼ同一になるだろう。
そうなればいくら視えていても切り殺す事で防ぐ、なんて事さえ間に合わない。
最終更新:2011年06月17日 04:47