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童話と民話創作

1 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:13:20 ID:P0z/XqwA
日本、海外を問わず

2 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:36:39 ID:7MbEu2zG
昔々或る処に、的な?

3 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:37:17 ID:E0r6xhCk
とっぴんぱらりのぷぅ

4 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 21:40:27 ID:oUqteo8D
桃太郎はわしが育てた

5 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 22:47:57 ID:Ym5KPWSz
昔GGGの偉い坊さんが 恋を忘れた哀れなアジョ中に
痺れるような香りいっぱいの はじけるような飲み物を
教えてあげました
やがて心ウキウキ とても不思議このムード
やがてアジョ中叫び上げ
「あ〜〜! あ〜〜! あべし!!」

教訓 知らない人を信じちゃ駄目

6 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 22:49:08 ID:E0r6xhCk
意味がわからないw

7 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 23:56:09 ID:bJRdXZM0
一旦age

8 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 00:48:59 ID:OtDCNH1k
昔々のことじゃ。
静岡に加藤智大という貧しいプロレタリアート男がおってな、自分を認めない世間を恨んでおったそうじゃ。
智大は工場労働者として寮とは名ばかりの蛸壺に閉じ込められ、何の楽しみも無いうちにおったんじゃ。
そんな智大はついに気がふれてな、平成二十年六月のある白昼に、サングラスの鬼に変身してしもうた。
そして車を借りて家を飛び出し、東京へ向かったそうじゃ。
あとは「こらえてつかあさい!」と泣き叫ぶ秋葉原の衆を次々と撥ねては斬り殺して行ったそうな。
わずかの間に秋葉原は血の海、死体の山で阿鼻叫喚とはまさしくこのこと。きょうてぇのう・・・
歩行者天国を襲うのは仙台の阿呆ばかりと思うとったが、きょうてぇのう。

                 ||    ::::::::::::::::::::::::::::::
                 ||       :::::::::::::::::::
   ∧_∧        ||   ∧ ∧   :::::::::::
   ( ´Д`)      i    (・д・) ∧∧::::::::::
  /::: Y i     ,-C- 、( y  (゚Д゚ ) ::::::::
 /:::: >   |    /____ヽ (___、|_y∩∩ ::::
 |::::: "   ゝ   ヽ__ノ   (__(Д` ) ::
 \:::::__  )//    // っ⊂L∧ ∧
                   ∧ ∧ (  ;;;;;;)

9 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 12:57:15 ID:9QhV1m8t
童話はともかく民話は創作するようなもんでもないと思うけど……

10 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 10:27:25 ID:ioPq9SjU
気にするでない

11 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 16:59:54 ID:16T9+ZTz
童話のオマージュとか二次創作もここに投下するの?

12 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 19:52:08 ID:bLh1Czis
そうなんじゃない?よくわかんね

13 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 01:27:50 ID:qUCIfvdF
人もいないようだし好き勝手すればいいんじゃね?

14 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 14:54:16 ID:5vcUnzEE
昔々、ある所に、おじいさんとおじいさんが住んでいました。

毎日、おじいさんは山へ柴刈りに、おじいさんは川へ洗濯へ行ってました。

ある日、おじいさんが洗濯をしていると、川の上流からおじいさんが、

ドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。

おじいさんが家におじいさんを持ち帰り、包丁でまっぷたつにすると、

中から元気なおじいさんが飛び出してきました


>>13
好き勝手やってみた


15 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 15:00:22 ID:TpPhVGJP
ふむ、おじいさん祭りだな
続きが気になる感じだ

16 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 15:26:17 ID:mqgEIijy
桃から生まれたおじいさん、竹から生まれたおじいさん、裏の畑でおじいさんが啼く

17 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 20:48:59 ID:LGd8aGGJ
大きくなったおじいさんはおじいさんとおじいさんとおじいさんを連れておじいさん退治に行きました

カオスw

18 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 21:49:23 ID:vEClXlw4
むかしむかし、とおいとおい異国の地に、立派なお城がありました。
そこには領主様と、綺麗な奥様がすんでいました。
領主様はハルトシュラーといい、まわりではしらない人がいない、立派なおかたです。
ハルトシュラーは何不自由ない暮らしをおくっていたのですが、
たったひとつ、たったひとつだけ悩みがありました。

「どうして私には、子宝にめぐまれないのだろう?」

奥様とはたいへん仲がよろしかったのですが、子供ができなかったのです。
いろんな方法をためしたのですが、いっこうにききめがありません。
ほとほと困り果てたハルトシュラーは、おふれをだしました。

「だれでもいい。ききめがあった者にはほうびをやる」

おふれをだしてからしばらくすると、ひとりの男がやってきました。
男はまっくろな衣に身をつつんで、たいそう気味がわるかったのですが
ハルトシュラーは威厳をくずさずにたずねました。

「おまえにはできるのか?」

「もちろんでございます。効果がなければ、いかようにしてくださってもかまいません」

そういうと男は、赤い袋と青い袋をさしだしました。
なかには、なにやら薬草がはいっています。

「男子がほしければ赤を、女子がほしければ青の薬草を奥様にのませください」

ハルトシュラーはさっそくためしてみることにしました。

「男の子がいいかな、女の子がいいかな。そうだ、ふたつともためしてみよう」

ハルトシュラーは赤と青の袋をふたつとも奥様にのませました。
するとどうでしょう。
一年がすぎると女の子が、それから二年がすぎると男の子がうまれました。
ハルトシュラーはたいそうよろこび、
女の子にはジークリンデ、男の子にはジークフリードとなづけました。

「そうだ、あの者にほうびをやらないとな」

ハルトシュラーは男をよびだそうとしたのですが、もう国には姿がみつかりませんでした。

「ほうびも貰わずにたちさるとは、欲がないのか、それともききめがなかった時のことを
 おそれてにげだしたのか」

兵士たちにめいじて、ゆくえをさがさせたのですがみつけることはできませんでした。
それから年月がたち、二人のこどもはすくすくと成長しました。
ジークリンデは、大人たちにまじって狩りにでかける元気な子に、
ジークフリードは、絵や本をこのむ大人しい子にそだちました。

「うんうん、これで性格が逆ならさらに良かったが、そこまでは贅沢すぎるな」

ハルトシュラーは待ちに待ったこどもたちを、たいそうよくかわいがりました。

19 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 21:50:35 ID:vEClXlw4
そんなある日のこと、今度は奥様が病にたおれました。
ハルトシュラーはとてもとてもかなしみ、いっしょになって看病しました。
いろいろな薬や祈祷をためしたのですが、ききめがありません。
おふれもだしたのですが、よい知恵をもっているものはあらわれませんでした。

「ああ、どうしよう。このままでは妻がたいへんなことになってしまう」

こまっているハルトシュラーに、ジークリンデはいいました。

「お父様、黒い男をさがしてはどうかしら。男ならなにかしってるかもしれないわ」

「黒い男。ああ、あの男か。むすめよ、わたしもさがさせたのだが、
 あの男はいまでもみつからないのだよ」

「兵士たちは給金分しかはたらかないから、きっとさがし方がわるいのよ。
 わたしがさがしだしてきて首根っこをつかまえてくるわ」

ハルトシュラーはそれをきいてびっくりしました。

「ああ、むすめよ。せっかくさずかった我が子を、わたしはきけんな目にあわせたくないのだ」

「お父様、かわいい子には旅をさせよときいたことがあります。
それに、親孝行をするのはこどものつとめです」

ハルトシュラーはなんとかジークリンデをなだめようとしましたが、
ジークリンデは頑としてきこうとしません。
しかたなく、背負い袋にぎゅうぎゅうと物をつめこんでむすめをおくりだしました。
家来をいっしょにつかわせたかったのですが、ジークリンデはそれもことわりました。

「お父様、むだな出費はおさえるのがけいえいしゃのつとめです」

小さいくせに、なかなかこまっしゃくれたことをいいかえします。
ハルトシュラーは、むすめのうしろ姿をいつまでもみおくっていました。

ジークリンデは、ひとりでお城の外にでることができてよろこびました。
外にでようとすると、めしつかいがあとをついてくるからです。
でも今はだれもいません。こごとをいうものもいません。
みしらぬ場所にいけるのは、とても興味がわきます。
でもでも、目的をわすれる事はもちろんありません。

「ほうびをもらわずにたちさるなんて、いいどきょうね。
 お父様を恩知らずとののしりたいのかしら」

20 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 21:52:30 ID:vEClXlw4
しばらく道をすすんでいましたが、ジークリンデはふと、あしをとめました。

「あんなことをいったけどやっぱりひとりじゃ、なにかとふべんね。
 小間使いはひとりくらい、いたほうがいいかもね」

そうおもうとさっとお城にひきかえしました。
お城ではジークフリードが枕を抱いてねています。
その首根っこをつかんで背負い袋にいれると、はやばやとお城をあとにしました。

目がさめると、ジークフリードはびっくりしました。
ふかふかのベッドから、ごわごわの袋のなかにいたのです。
あたまをだしてまわりをよくみると、姉が鼻歌をうたいながらパンを食べています。

「お姉ちゃん、どうして僕はここにいるの?」

「グッモーニン、ブラザー。よろこべ、貴君をわが軍の雑役兵に任命する」

「ええ、どういうこと? 僕そんなのやだよ」

「麦は日が照るからこそよく実る。弟よ、これはお父様のたっての願いなの。
 獅子はわが子を千尋の谷に突き落とすという。これも大人になるための試練なの」

「父上が? 本当に?」

「あなたは本ばっかりよんで、世間をしらないわ。じっさいに自分の目でみることも
 たいせつなことではないのかしら」

「うん、うん、それもそうだね、僕がんばる」

「そうね、いっしょに頑張りましょう。そしてお母様を元気にしましょう」

「そうだね、お姉ちゃん」

こうして、ふたりの旅がはじまりました。
いっぽうそのころ、ハルトシュラーはジークフリードの部屋にあった手紙をみて
おどろきました。

―――やっぱりひとりじゃきけんなので弟をつれていきます
     治すほうほうは、私たちがきっとみつけてみせます
                 しんぱいしないでください 

                       愛するお父様へ
                            ジークリンデ―――

ハルトシュラーはこれをみて、たおれてしまいました。
かわいそうに、ハルトシュラーは妻といっしょにねこんでしまいました。

21 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 21:55:16 ID:vEClXlw4
童話というか、ファンタジーっぽいもの
続きは出来次第投下する、予定
童話とファンタジーって、なんか近いものあるよね

22 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 23:41:59 ID:LGd8aGGJ
姉ちゃんいいキャラしてるぜwww

23 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 23:54:19 ID:mqgEIijy
>>18-21
GJですだ、旦那
ホビットの冒険とかもろ童話として書かれてるしねー

24 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 00:12:45 ID:44qENJQ5
すげーうまいなぁ
引き込まれるわぁ

25 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 00:52:49 ID:Jfnh2pB5
面白いなー!
勇ましいお姫様って大好きだ。
弟くんもいい感じ。

続き楽しみにして升

26 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 10:48:29 ID:ikp0FCZk
閣下なにやってんスかwww

27 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 15:57:56 ID:sUHY4xFD
ずんずん、ずんずんとジークリンデはさきに歩いていきます。
ジークフリードは、そんな姉にききました。

「お姉ちゃん、ところで、どこへいけばいいか知ってるの?」

「さあ? このまま歩けばそのうちどこかにつくんじゃないの?」

ジークフリードは、目の前がまっくらになりましたが、そこは男の子です。
たおれそうになるのをがまんして、ジークリンデにいいました。

「あてずっぽうじゃだめだよ、お姉ちゃん。だれか、知ってる人をさがそうよ」

「その知ってる人ってどこにいるの?」

そんなことをはなしながら道を歩いていくと、ひとつの街がみえました。
人がたくさんいますので、なにか知ってる人もいるかもしれません。

「ちょうどよかったわ。あそこで、何かきいてみましょう」

ふたりは街にはいって、人がおおそうな場所をさがしました。
街の酒場では、いろんな人がたくさんいます。
たびびともいっぱい、います。

「ここなら、知ってる人がいるかもしれないわ」

「そうだね、お姉ちゃん」

さっそくふたりは、あたりの人にたずねることにしました。

「すいません、おききしたいのですが」

「なんだいボウズ、ここにはママのミルクはおいてないぜ」

どっとわらいごえがまきあがりました。
そのこえにおされて、ジークフリードはしょげかえります。
ジークリンデは、つかつかとあゆみよっていいました。

「わたしたち、ミルクはもう口にあわないわ。あまいコーヒーでもいただこうかしら」

「はいわかった、おじょうちゃん。コーヒーふたつだね」

ジークリンデは、ジークフリードの尻をたたきイスにすわらせます。
ふたりがすわって待ってると、酒場の主人が飲み物をもってきてくれました。

28 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 15:59:25 ID:sUHY4xFD
「こどもふたりで、こんな場所になんのようだい?」

酒場の主人はふたりにたずねました。

「わたしたち、人をさがしているの。病気を治すほうほうをさがしているの」

「そうかい、それはかんしんだね。でもそういう人はここにはいないな」

しゃべる酒場の主人の口に、ジークリンデは金貨をいちまいつっこみました。
主人は口のなかのものをみて、目をまるくします。

「これで口がかるくなったかしら?」

主人は、金貨とジークリンデをこうごにながめます。
がぶりと金貨をかじりました。
もちろんにせものではありません。
そんな主人のひたいに、ジークリンデは金貨をいちまいなげました。
ピシリとおとがして、主人はあたまをおさえます。

「これであたまがよくなったかしら?」

「ああ、ありがとう。おかげでおもいだしたよ、口もうまくまわりそうだ」

酒場の主人は、まどからみえる山にむかってゆびをさしました。

「あの山のてっぺんに、じいさんがすんでいるよ。その人なら、なにか知ってるかもしれないな」

「その人のふくは黒かったかしら?」

「さあ、そこまではよくおぼえてないな」

「ありがとう、それじゃあいってみるわね」

背負い袋をもってジークリンデは酒場をでようとしましたが、だれかがそでをひっぱります。
みると、ジークフリードがふくのはしをつかんでいます。

「どうしたの、ジーク?」

「お姉ちゃん、僕もうつかれたよ。きょうはここでやすもう」

ジークリンデは頬をはりたおして先をいそごうとおもいましたが
しばらくたちどまって、かんがえなおしました。
よくよく考えてみれば、その人がさがしている人なのかまだわかりません。
腹がへっては山をのぼることもむずかしいでしょう。

「わかったわ、ジーク。ひさしぶりに温かいスープでも食べましょう」

「うん、そうしよう。お姉ちゃん」

ふたりはここに泊まってやすむことにしました。
ひさびさのベッドと、あたたかい食事です。
ジークフリードはおなかがすいていたので、5はいもおかわりしました。
ジークリンデは2はいおかわりして、弟の皿からおかずをはんぶん横取りしました。
ジークリンデとジークフリードは、つぎの日の昼になるまでぐっすりとねむりました。

29 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 16:00:38 ID:sUHY4xFD
たっぷりとやすんだふたりは、山にのぼることにします。
お日さまがさんさんと照っていて、とてもいい天気です。
ジークリンデの足どりも、ついついかるくなります。
ジークフリードは、そんな姉のあとをやっとのことでついていきます。
やまのなかほどあたりで、ジークリンデが足をとめてやすむと、
ジークフリードはそのばでたおれてしまいました。

「はしたないわねジーク、そこはベッドじゃないわよ」

「お姉ちゃんこそ、よく床でねているじゃないか」

ねぞうのわるさを指摘され、ジークリンデはジークフリードの頭をたたいて
パンを弟の口のなかにつっこみました。

「これでも食べて、おとなしくしてなさい」

自分も袋からパンをとりだして、食事にすることにしました。
ふたりそろって石にすわり、けしきをながめます。
したをみると、街がちいさくみえます。
うえをみると、だんだんと霧がたちこめています。
街とくらべると少しさむいです。
ジークリンデは身震いしました。

「こんな場所にほんとうにいるのかしら。バカとケムリは高いところがすきっていうから、
 ちょっと不安だわ。ころげおちて目の前にあらわれればいいのに」

パンを食べおえたふたりは、さらに先をすすむことにしました。
霧はどんどんふかくなります。
山をのぼっていくふたりのすがたは、霧のなかへときえていきました。

30 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 16:05:23 ID:sUHY4xFD
>>18-21の続き

ガキの頃は、かこさとしの絵本とか好きだったぜ
あと定番のグリムとかアンデルセンとか

31 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 16:26:50 ID:iB9KTT5v
ジークリンデの手の早さが異常
ってか本当にちゃんと童話してるなw

32 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 16:35:01 ID:nejB6axV
ジークリンデさんパネェっす!

33 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 16:44:30 ID:AnBuPBiy
ジークフリードくんをよしよししてあげたい

34 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 16:48:17 ID:iB9KTT5v
ジークリンデには「いい性格」って言葉がよく似合うと思う

35 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 20:56:20 ID:u0C5eKp6
すげー面白いw
声出して笑った。

36 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 22:55:37 ID:/NiD7xOg
たくましいなw

37 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 23:02:44 ID:p6mGsOmV
転げ落ちて来いとかww
金貨の使い方なんかもうまいなー

38 名前: ◆69qW4CN98k :2009/01/26(月) 23:33:22 ID:UkB1bsl6
霧はどんどん濃くなって、なにも見えません。
はなれないように、ふたりは手をつなぎながら先へすすみます。

「お姉ちゃん、そこにいる?」

「ここにいるわよ、ジーク」

「お姉ちゃん、そこにいる?」

「ここにいるわよ、ジーク」

「お姉ちゃん、そこにいる?」

「あなたがつかんでるのはなにかしら、手をはなすわよ、ジーク」

ふたりが霧のなかをぬけると、ちいさな小屋をみつけました。
くるくると小屋のまわりをまわって見ますが、やっぱりちいさいです。

「こんなところに人がすんでるのかしら。山のてっぺんに、ブタ小屋があるとはおもえないし」

とりあえず、ノックをしてみる事にしました。
ガンガンガン、ガンガンガン。
するとどうでしょう、中からしわがれた声がかえってきました。

「あいてるよ、どうぞ」

その声をきいて、ふたりは中にはいることにします。
中にはいると、暖炉のまえに白い服をきたおじいさんがすわっていました。

「なんだ、ひとちがいじゃない」

その姿を見て、ジークリンデはため息をつきました。
おじいさんも、ため息をつきます。

「はいってくるなり、ひどいことばじゃな」

ふたりは無言でみつめあいます。
そのあいだを、ジークフリードがさえぎっていいました。

「とつぜんの訪問もうしわけありません。僕はジークフリード、そして姉のジークフリデ。
 知恵者とよばれるあなたに、知恵をかりにけわしい山をのぼりました。どうかよろしければ、
 僕たちにお教えねがえませんでしょうか」

そのことばをきいて、おじいさんは顔をゆるめました。

「まだちいさいのにかんしんな子じゃ。わしでよければ力になろう」

そういって手をのばし、イスにすわるようにうながしました。
ジークフリードは、にっこりとしてイスにすわりました。
ジークフリデは、ブッスリとして弟のあたまをたたきました。

「どうしたの、お姉ちゃん?」

「あなたのあたまに、アブがとまっていたのよ。あぶなかったわね」

39 名前: ◆69qW4CN98k :2009/01/26(月) 23:34:35 ID:UkB1bsl6
暖炉の火にあたり、イスに座りながら、
ふたりの話をきいて、おじいさんはうんうんとうなづきます。

「なるほど、母親の病をなおすためか、なるほどなるほど」

ジークフリードはききました。

「どうでしょうか、なおるでしょうか」

おじいさんはくびを横にふってこたえました。

「わしにはできんのう」

そのことばをきいてジークフリデはおこります。

「もったいぶって、そのたいど? ひっしに考えられるように、この家に火でもつけましょうか?」

「あわてるんじゃない、わしには無理じゃが、なおせる人物をさがすことはできる」

そういうと、奥からおおきな鏡をはこんできました。
その鏡はとてもおおきく、おじいさんとふたりの姿がまるまるとうつっています。
おじいさんはいいました。

「これはウツシミの鏡といってのう。問いかけさえすれば、それを解決できるものを
 うつしてくれるのじゃ」

おじいさんは杖をぐるぐるとまわしながらいいます。

「カガミよカガミ、ジークリンデとジークフリードの母親が病気でこまっとる。
 なおせる人物は、オマエにわかるかのう」

するとどうでしょう。
鏡の表面がゆらゆらとなみうち、ひとりの男をうつしだしました。
ジークリンデとジークフリードは、その姿をみておどろきました。
そうです、鏡には黒い服をきた男がうつしだされていたのです。
おじいさんは、鏡をみていいました。

「これが、おまえさんがたのお母さんをなおせる人物じゃのう」

「どこにいるの?」

ジークリンデは、右うでのそでをひっぱりながらたずねます。

「おねがいします、おしえてください」

ジークフリードは、左うでのそでをひっぱりながらたずねます。

40 名前: ◆69qW4CN98k :2009/01/26(月) 23:35:20 ID:UkB1bsl6
「わしにはわからんのう」

ふたりは肩をおとしました。
そのひょうしで、おじいさんのそでがやぶけてしまいました。

「そんなにおちこむな、ふたりとも。これをかしてやろう」

そういって、ふたりのまえに枯れ枝をさしだしました。

「これは枯れ木棒といってな、さがし物のほうがくをしめしてくれる品じゃ」

おじいさんは、枯れ枝をほうりなげてとなえます。

「枯れ木棒、枯れ木棒、黒い男はどこにいる」

枯れ木棒はくるくるとおちてきて、はしを一方にむけました。

「ほんとうかしら」

ジークリンデは、それをひろって自分もためしてみる事にしました。

「あいての姿をおもいうかべながら、ほうりなげなさい」

ジークリンデはおじいさんのいうとおり、姿をうかべながらほうりなげました。

「枯れ木棒、枯れ木棒、お父様はどこにいる」

するとどうでしょう。
枯れ木棒は、お城のほうがくにはしをむけました。

「なるほど、さっきのすがたをおもいうかべながらやればいいのね」

「これをおかりしていいんですか?」

ふたりのことばに、おじいさんはいいました。

「かしてあげるが、ひとつたのまれてくれんか。わしも、さいきんこしが痛くてのう。
 もし男がなおせるのなら、それもきいてきてほしいのじゃ」

「わかったわ、おじいさん」

ジークリンデとジークフリードはうなづきました。

おじいさんにお礼をいって、ふたりは山をおります。
ときどき枯れ木棒をほうりなげながら、ふたりは旅をつづけました。

「枯れ木棒、枯れ木棒、黒い男はどこにいる」

「ささぬとお前をへし折るぞ」

「枯れ木棒、枯れ木棒、黒い男はどこにいる」

「ささぬと火をつけ薪にする」

「枯れ木棒、枯れ木棒、黒い男はどこにいる」

「ささねばお前は用なしだ」

41 名前: ◆69qW4CN98k :2009/01/26(月) 23:36:27 ID:UkB1bsl6
>>27-29の続き

あと、トリップなんかつけてみる

42 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 23:58:07 ID:+eZaAHtB
なんだこの姉弟愛おしすぎるぞ馬鹿

43 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 00:54:39 ID:LOtE/cE1
途中で姉ちゃんの名前が変わったりしてる件

いちいち姉ちゃんの憎まれ口が小気味いいわー大好きだ

44 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 09:19:27 ID:I6KhqG1O
おかず横どりとかいちいちいいキャラだw

45 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 21:09:49 ID:jWmGSeiq
>>43
うわ、指摘ありがとう
次投下するときは、もっと見直してみる

46 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 02:51:28 ID:Kr5IS3kD
期待age
読み返してみたけどやっぱりいいなw

47 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 02:51:52 ID:Kr5IS3kD
age損ねた……だと?

48 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 03:25:45 ID:qctegLHE
投稿します。

49 名前:伍平の犬:2009/02/14(土) 03:26:13 ID:qctegLHE
昔、今の千葉県の小さな漁村に、伍平という漁師がおった。
伍平には病気の妻がおったが、子供を作ることが出来なかったため、
ハチという犬を息子のように大切にかわいがっていたのだった。

ある夏の日、不思議なもので、毎日毎日海が荒れ、漁に出れない日が続いた。
そのため、村人は食べるものが無くなり、いつしか草を食みながら、嵐が去るのを待っている日が続くのだった。
「おらぁ、もう我慢できへん。漁に行ってくるだ。」
たまりかねた伍平が妻に言った。
「なにを呆けたことを言ってるんじゃ。こんな嵐に舟を出したら、竜神様に飲み込まれて一巻の終わりじゃ。」
驚いた妻は伍平を止めようとしたが、病気の妻に食事をさせることのできない事に伍平は耐えられず、妻の制止を振り切り嵐の海に出てしまった。
そして、数日の日が絶った。
伍平は帰らなかった。

日に日に弱っていく妻の体を村人は心配し、懸命な看病を行ったが、五平を失った悲しさを、誰も癒すことが出来なかった。
「ハチや・・・私は先に・・・仏様にお会いに・・・行かないといけないようだよ・・・」
妻は、病気の床からハチに語りかけた。
「でも・・・心配いらないよ・・・きっと伍平は帰ってくる・・・お前のことを心配して帰ってくる・・・きっと・・・」
そう言って、永遠の眠りに付いたのだった。

次の日の朝、村人は騒音で目が覚めた。
岬の方で騒ぎがする。
なんだろうと行ってみると、ハチが海に向かって大声で吠え続けていたのだ。
まるで、「帰って来い、伍平よ、帰って来い」と言っているようだった。
ハチは吠え続けた。息が切れようと、声が枯れようと、喉から血が出ようと吠え続けた。
伍平の帰りを信じて、いつまでも、いつまでも吠え続けた。
ついに、ハチは口どころか心の臓まで裂けてしまった。
気の遠くなるハチの前に、旅の法師が現われ聞いた。
「村人に経緯は聞いた。お前は長い間、よくぞ亡き主を呼び戻すために努めた。
お前の努力を、仏様も見ておいでだ。
お前の功徳に免じて、お前に代わり海に呼びかけよう。」
法師がこういうと、風が強まり、まるで岬が吠えているかのように聞こえるようになったのだ。

それからというもの、この岬は犬吠岬と呼ばれるようになった。
法師の言葉どおり、夏の嵐の日には、まるでハチが伍平を呼ぶかのように、激しい鳴き声が木霊するのだった。

(了)

50 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 03:30:02 ID:Kr5IS3kD
いいねー
まさに民話って感じがするわー

51 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 04:39:06 ID:MXbvi4f4
こういう言い伝えがある岬本当にありそうだ

52 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 07:35:49 ID:AacZQknQ
おお、これは銚子犬吠岬の由緒を元にした作品!
なるほどだね、ちょっとした言い伝えをうまく民話化してくれておる

53 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 10:55:11 ID:VOISj3mt
旅の法師はお大師さまですね、わかります

54 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 16:30:23 ID:FJHetJ6V
昔むかし、遠い未来の星の果て。
おGさんとお_さんが住んでおりました。
おGさんは重力区にバンブースナッチへ、お_さんは情報禍に選択へ出かけました。
重力区はおGさんのサイコキネシスで常にヒッグス粒子の偏在率を過剰に高められており、
ロケットやデブリが針の山のようにそこ此処に突き刺さっています。
まるでその様が竹藪に見えることから、おGさんは重力区で資源を回収することを竹採り──バンブースナッチと呼んでいました。
おGさんが新規に拿捕したロケットをサーチコンソールで検索していると、何やら生体反応があります。
重力区は閉鎖宙域であり、民間の小船舶が操作ミスでもしない限り滅多に人が乗っていることありません。
「鬼が出るか蛇が出るか……探してみるとするか」

おGさんは生体反応があったロケットをさがしました。

騙された。
おGさんは思いました。
生体反応があったロケットは、ほんの10センチほどの直径で1メートルほどの長さのものでした。
おGさんは一応そのロケットを調べてみます。
10センチの筒についた3センチほどの覗き窓から、拍動を極端に押さえた鼠の心臓が時折動いているのがみえます。
生体反応発生装置です。
おGさんは苛立ちまぎれにそのロケットを蹴飛ばします。
ガツン!
するとどうでしょう。
ガスシリンジからプシューっと空気が漏れ、先のロケットがパカリと開きます。
その中には小さなカプセル様の物質がありました。
「ナノクラフター……かな」
おGさんはそのカプセルを手に取り、しげしげとながめます。
……ハニーに相談するか。
おGさんはお_さんの意見を聞くため、一度拠点に帰ることにしました。

55 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:40:04 ID:0ARkDgP/
続くの?
これ続くならすごい読みたいんだが

そしてお_さんのセンスに吹いたwww
バーって読ますなwww

56 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 00:59:40 ID:6QQaVIiS
おじーさんとおばーさんwwww

57 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 04:21:10 ID:TDBd2tm1
おじいさんとおばあさんをSFの宇宙ものにするとはw
しかも原作の重要な単語とSF用語との関連性がすごい
センスがギラギラ輝いてみえるぜ
続きがものすごく読みたい

58 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 14:26:21 ID:3EofpJfa
おGさんは拠点に帰りました。
おGさんの住む拠点は星のクレーター凹部の底面である永久暗部にあります。
マイナス170℃の寒さで安定しているため暖房設備さえ整えれば住居には適しています。
恒星の発散エネルギーが当たるクレーター外沿に熱回収装置と宇宙線発電機を設置しているため、
エネルギーも使い放題です。
拠点を覆うシェルター内にはいると、そこには日本庭園と、
平家建て瓦葺き土蔵付日本家屋が凜と佇んでいます。
おGさんの趣味です。
おGさんはお_さんに話しかけます。

「帰ったよハニー」
『お帰り、ダーリン。今重要な選択してるから、そのオモチャ(ナノクラフター)の件は後で聞くわ』

お_さんのテレパシーがおGさんの頭に直接言葉を送り込みます。
おGさんは、参ったな、といった風にフサフサした頭を掻きました。
ちなみにおGさんはメトセライズと呼ばれる遺伝子操作を受けており、
外見は20才程度の東洋人でありながら既に600歳を超えています。

『……うん。選択、終わったわ。早速その危険なオモチャを破壊しましょうか』

お_さんは剣呑な意思を伝達して来ます。
ちなみお_さんは情報生命体です。
身体を140年前に風邪と呼ばれる不治の病に冒されて以来、
お_さんは身体からの流浪者──ディアスポラと言う情報生命体として生きてきました。

「ま、待ってくれよハニー。何か面白い物かも知れないじゃないか、作動させてみようよ」
『ダーリン、私が何故死の病を患ったか覚えてる?』
「…………」

おGさんは言葉に詰まります。
お_さんが風邪を患ったのは他でもない、
おGさんが非無菌化畜獣の犬を拠点の中で飼ったからでした。

「分かったよ。コレ……捨てて来る」

サーチコンソールでナノクラフターを放逐するための脱出軌道を検索するおGさんは、
まるで拾った犬を捨ててくるように言われた子供のようです。
お_さんは、はぁ、とひとつ、量子の溜め息を吐いておGさんに言いました。

『はいはい、分かった、分かったわよ。私が悪かったわ。そのオモチャを作動させてみましょう』
「え?いいのかい?!」

おGさんは子供のように目を輝かせます。

『いいわよ。ただし、私が危険と判断した場合は破壊します』
「ああ、もちろんさハニー!リスクマネジメントは君に任せるよ!」

はてさて、ナノクラフターは何を生み出すのでしょうか。

59 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 14:30:41 ID:0ARkDgP/
最高だwww

60 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 14:34:08 ID:6QQaVIiS
おGさんとお ̄さんテラハイテクw

61 名前:携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/15(日) 15:07:28 ID:3EofpJfa
コテどおり携帯厨なので筆おっそいですが、続き書いたらまた投下します。

62 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 15:14:13 ID:0ARkDgP/
トリップで色々了解した
ゆっくり待つよ!!

63 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 16:11:14 ID:TDBd2tm1
風邪が死の病とはw
徹底的な無菌化をしていった結果そこまで抵抗力がなくなったのかな
そしてお_さん男前wお_さん格好いいよお_さん

了解ー。ゆっくり書いてってね!

64 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 18:52:50 ID:16eNSr1c
この民話、新しいwwww

65 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 04:10:17 ID:OExtATjf
面白いなー。
SF用語?とかよくわかんないけど雰囲気ちょうたのしい
続き楽しみにしてるよ!

66 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 05:45:27 ID:jitXaI65
まさか、ディアスポラをこのスレで聞くとはw
地の文が確かにそれっぽかったがw

67 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 06:01:25 ID:yZYz5ZjZ
ディアスポラはまさにそのままの題名のラノベがあったような

68 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:39:30 ID:y8rXpbxP
おGさんは拠点のクレーターから300キロほど離れた別のクレーターに向かいました。

拠点のクレーターよりも何十倍も大きなそのクレーターは、
実験用及び訓練用に設置した妨爆隔壁や、
バイオハザード防止のための光学式遺伝子撹乱光照射器、
高重力障壁などで厳重に隔離されていました。
お_さんが風邪を引いてしまったことを切っ掛けに未確認のリスクを伴う試みは、
皆この施設で行うようにしているのです。
この施設の中でならばウイルスが発生しようが100メガトン級の爆発が起ころうが漏れ出る心配はかけらもありません。
厚さ10メートルの隔壁と、AGCT塩基配列を一つ残らず分断する光と、
光子の速度も遅延するほど高い重力を加えられて薄暗く見える重力障壁が、
無機物有機物生物無生物を問わず通過を阻止します。

施設のラボでナノクラフターを解析していたお_さんが、遅れて到着したおGさんに話しかけます。
お_さんは高い身長をさらに強調するピンヒールを“無音で”鳴らし、
白衣に掛かる透き通るような金髪を肩の後ろにはけながら、
知的なシルバーフレーム眼鏡を、くい、とただしました。
青い瞳と血管が透けるほど薄く白い肌がお_さんの出身を窺わせます。
ディアスポラのお_さんが何故生身で居るかというと、
施設の機材を使ってディアスポライズ前の身体をホログラムで映写しているのです。

『ナノクラフターの解析が済んだわ』

施設の館内放送用スピーカーをジャックして発音して居るので、やけに音量が大きいです。

「え、もう終わっちゃったのかい?言ってくれれば僕も手伝ったのに」
『ダーリンがあんまりにも遅いからよ』
「ハニー、そりゃあ僕が遅いんじゃなくて君が早いんだよ」

情報生命体のお_さんには、無線、電信、電磁波、エーテル下通信、等々の、
ディアスポラならではの高速移動が可能です。
小さなカプセル状のナノクラフター程度ならば量子転送器が使えますが、
おGさんが跳ぶ場合はジョウント効果を使うことになり免許が必要です。
だからおGさんはバギーカーで移動したのです。
納得のいかない顔をしていたおGさんですが、お_さんのホログラムを見て、
思い出したように話題を変えます。

「ところでさ────」

おGさんは立体ホログラムプロジェクターに映写されたお_さんに軽く口付けしました。
同じくらいの身長なのに、お_さんがヒールを履いているから、
おGさんがちょっと背伸びしての口付けです。
あくまで映像なので感触はありません。

「────やっぱり君は綺麗だ」
『……御上手ね、ダーリン』

おGさんは喜々として微笑み、お_さんは呆れた風を装います。
二人が一緒に過ごすようになってもう随分経つと言うのに、いまだにお_さんは、
おGさんのイタズラっぽい好意の表現にドキドキしてしまうのです。
溢れる愛しさをドパミンやオキシトシンで説明するのは簡単ですが、お_さんは言い訳をしません。
愛は言及しがたい神秘であるべきなのです。


69 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 02:42:05 ID:y8rXpbxP
おGさんとお_さんはひとしきりしっぽり過ごしてから、ラボの中から実験場をモニターし始めました。

「いや〜楽しみだナー、何が出るかナー。ねーねー早くはやくー」
『子供かっ』

お_さんが遠隔操作するマニュピレーター付車両が実験場の中心まで走り、
ナノクラフターを用意した土のマウンドに埋め込みました。
カメラがズームしてクラフターが埋め込まれたマウンドをモニターに大写しにします。

『土中からマテリアルを抽出してオブジェクトを形成するみたい』
「へぇ、テラフォーミング用のマシンみたいな方式だね」

ズームされた画面上の土がにわかに粟立ちます。
ナノクラフターが原料となる土を感知して動き始めた証拠です。
ナノクラフターは一定数まで自己増殖をくり返した後、土中から原料を集めて目的の物体を生成します。
見る間に用意した土が減ってゆきました。

「……なんか反応鈍いね」
『土、足りなかったかも』

盛られていた土はほとんど無くなり、もはや敷設されたコンクリートが露出し始めています。
失敗かな……?と二人が心配し始めた時、変化がありました。

────ごぼっ

残った土の小山から、人の手が出て来たのです。

「は、ハニー。あれって」
『ホモサピエンスの手。見たところ女性のようね』
「ホモサピエンスって……人体錬成じゃないか?!」

おGさんはあわてて遺伝子攪乱光照射器と重力障壁のスイッチを切り、実験棟へ続く廊下へ駆け出しました。
お_さんはそのままモニターを観察し続けます。

土の山から生えていた手は、身体を引き連れて山から這い出しました。
一糸纏わぬうら若い女性です。
土埃まみれながら、長い黒髪とスラリとした手足がメリハリを持って伸び、
同性のお_さんから見ても称賛したくなるような美しい女性です。

「かはっ!げほっ!…………」

女性は口に入り込んだ土くれを吐きだして、意識を失ってしまいました。
土中のミネラルが足りなかったせいで貧血を起こしたのかもしれません。

「大丈夫?!しっかりして!」

画面の端からおGさんが現われ、女性を、自分の着ていたカエアン製フラショナールスーツで包んで、
横抱きにして連れて行きます。

緊急事態ですが、お_さんはずっと全然違うことを考えていました。
その内容は、浮気されたらどうしようとか、そういうどうでもよさそうなことでした。

70 名前:携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/18(水) 02:53:31 ID:y8rXpbxP
設定の部分部分はSFから引用してます。
今のところ引用したのは

・ディアスポラ
・メトセラの子ら
・カエアンの聖衣
・虎よ虎よ

あたりです。

71 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 04:19:47 ID:J4R41r4k

超常現象な部分と妙に現実的な部分のバランスがすげぇなwww

72 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 04:35:53 ID:8pIX/gYm
待ってましたー

美人か。おばーさん心配w
なんか可愛いね

73 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 05:56:51 ID:DsSjPDGK
>>69
・浮気されたらどうしよう
>>58
・私が危険と判断した場合は破壊

ガクブル

74 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 09:51:21 ID:41LjtUtn
人体錬成はやっぱり禁忌なのか?

75 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 22:07:57 ID:I9MN0EM/
かなり酷い


76 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 01:09:15 ID:QLyHrWvJ
これはすげえw

77 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/01(日) 19:10:54 ID:whixeECZ
ふたりが枯れ木棒をほうりなげながらすすんでいくと、おおきな湖がみえました。
湖の近くには、ちいさな小屋がありました。

「枯れ木棒、枯れ木棒、黒い男はどこにいる」

たおれた棒はぴったりと、その小屋にむかってたおれました。

「お姉ちゃん、きっと小屋の中に男はいるよ」

「そうね、ジーク。ここまで来るのにだいぶかかったわ。無駄足だったら小屋に
 火でもはなちましょう」

ジークリンデは小屋の戸をドンドンとたたきました。
カツカツと靴の音がしてひらきます。
あらわれたのは、上から下まで黒づくめの男でした。

「こどもがふたり、わたしに何のようかな」

ジークリンデとジークフリードはこたえます。

「わたしたち、お母さまの病をなおせる人をさがしているの」

「おじさん、なおしかたを知っていますか。それならおしえてください」

ふたりのことばに、男はうんうんとうなずきます。

「まだちいさいのに感心なこどもたちだ。わたしがちからになれるなら手をかそう。
 だが、わたしにもちからをかしてはくれないかね」

そのことばをきいて、ジークリンデはききました。

「こどもの手をかりるなんて、ほんとにたよりになるのかしら」

「わたしは薬をつくるのはとくいだが、そのほかの事はにがてでね」

男はわらいながら、湖をゆびさします。

「この湖のはんたい側に森があるんだが、そこに妖精たちがすんでいる。そいつらに
 わたしの馬がぬすまれてしまったのだ。どうかそいつをとりかえしてはくれないか。
 お礼に、お母さんはぜったいになおすと約束しよう」

「馬と人と、どっちがたいせつなのかしら」

ジークリンデは、かかとをふみならして舌打ちしました。
ジークフリードは、男にたずねます。

「どうして、僕たちなんですか」

「こどものほうが、やつらのあいてがしやすいだろう。大人があいてだと、あいつらは
 姿をみせようとはしないのだ」

ジークリンデは天をあおいでいいました。

「ああ、なんてことでしょう。馬をぬすまれるマヌケとは。そしてそのマヌケに
 たのまれて、使いにだされる私たちはなんて大マヌケなんでしょう。
 きっと馬も鹿もわからないで、とりかえしてくるのだわ。棒につまずいて湖にでも
 落としてやるのだわ。さっさといきましょう、ジーク」

ジークリンデはジークフリードの手をひっぱって小屋からでていきました。

78 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 19:12:42 ID:ZmwUqqkh
来た!ひさびさに俺のジークリンデ様来た!これで勝つる!

79 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/01(日) 19:13:33 ID:whixeECZ
小屋から出て、ふたりは言われたとおりに歩きました。
すると男のいったとおり、森のちかくまできました。
鳥の声や木々のざわめきが、中からきこえてきます。
そとからは妖精の姿はみえませんでした。

「やっぱり中に入るしかないのかしら。いくわよジーク」

「やっぱり入るの、お姉ちゃん」

「ここまで来てなにをいうの。あんたを置き去りにしてでも私はいくわよ」

ジークリンデは手をはなしてなかにはいっていきました。
あわててジークフリードはそのあとをおいかけます。

ふたりがずんずんと中へすすんでいくと、なにやら話し声がきこえてきました。
その声は、森の奥からきこえてきます。
みると、じぶんたちとおなじようなこどもたちが遊んでいます。
ジークリンデはガサガサと草むらをかきわけ、かれらのほうへむかいました。
こどもたちは、ジークリンデとジークフリードをみてわらいました。

「ニンゲンだ、ニンゲンがいるぞ」

「しかもこどもだ、めずらしい」

ジークリンデはいい返します。

「あんたたちも子供じゃないの」

こどもたちはわらながらいいました。

「オレタチ妖精、ニンゲン違う」

「妖精オレタチ、おまえらニンゲン」

そういって口々に囃し立てながら、ジークリンデとジークフリードの周りをはしります。
ジークリンデは、妖精たちにむかってたずねました。

「だったら話がはやいわ。あなたたち、馬をぬすんだことがあるでしょう。
 それをかえしなさい」

妖精たちはそれをきいてこたえました。

「馬だって? ああぬすんださ」

「でも今は、オレタチのもの」

「ただで返すわけには、いかないね」

「おふたりさん、馬のかわりに何くれる?」

ふたりの周りをくるくるとまわりながら、囃し立ててきます。

80 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/01(日) 19:14:30 ID:whixeECZ
ジークリンデは、腕をつきだしてこたえました。

「そうねぇ。あなたたちの顔面に、拳でもくれてやろうかしら」

つかつかと、妖精たちの前へとあゆみよります。

「おおこわい、痛いのはイヤだね。じゃあゲームで勝負といこう。おまえらが勝ったら
 馬を返してやろう。でも負けたらオレタチの召使いにでもなってもらおうか」

「ええ、いいわ。召使いにでも奴隷にでも、好きにするがいいわ。そのかわり、
 あたしたちが勝ったら、ちゃんと返してもらうわよ」

「ああ、いいとも。そっちこそ、あとでイヤとはいうなよ」

「もちろんよ。なんでもいいから、さっさとはじめなさい」

姉の言い分に、弟は顔が真っ青になりました。

「お姉ちゃん、そんな事言って大丈夫なの」

「大丈夫よ、ジーク。負けなければいいのよ」

しどろもどろになるジークフリードでしたが、周りはすでにやる気十分です。
ジークリンデとジークフリードは、馬をとりかえすため、妖精たちと勝負することになりました。

「で、いったい何の勝負をするの」

「あわてるな、まずは水切りでいこう」

そういってふたりについてくるよう、うながします。
ついていった先は、湖のほとりでした。
妖精は足元にある石ころをつかんでいいました。

「水面を石で切って、遠くまでいったほうの勝ちだ。さあ、だれがやる?」

「わたしがやるわ」

ジークリンデはつかつかと前に出てこたえました。
妖精はニヤニヤとわらいます。

「お嬢ちゃんが相手か。さてさて、どこまで飛ばせるのやら」

「ぐだぐだ言ってないで、さっさと始めるわよ」

「ああ、いいとも。勝負は三回、いちばん遠くまで飛ばした方の勝ちだ」

「わかったわ」

ジークリンデと妖精は、湖のほとりにたちました。
他の妖精とジークフリードは、それを遠巻きにながめています。

81 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/01(日) 19:16:20 ID:whixeECZ
大分間が開いたけど>>38-40の続き
なんていうか、待ってくれてた人本当にごめんなさい
一応完結できるようには頑張るつもり、です

82 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 19:21:29 ID:ZmwUqqkh
やや、続きが読めるだけでしあわせっす

83 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 19:29:00 ID:NBVr/wzb
投下乙

次は対妖精か
ゆっくり待ってるから頑張ってくれい

84 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 19:32:21 ID:ZmwUqqkh
だわだわ言ってると別のキャラにも見えてくるのだわww
でもジークリンデ様相変わらずの鬼畜っぷりステキー!
留守→じゃあ火を放つ
これだよねやっぱ

85 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 19:35:28 ID:j1oJ4lcK
ブレーキ的な役割なのに、壊れたダンプカー的なお姉さまを
ぜんぜん抑止できていないジークフリードきゅんがステキ

86 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 22:32:35 ID:jro5dovc
おお!ひさしぶりにジークリンデ様来た!
見事な台詞と論理がお流石ですお姉さま

87 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 05:07:38 ID:u+AFTNqd
いいねえいいねえ
知恵比べに力比べ!燃えてきた!!

88 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 10:43:47 ID:inYIyeAA
お姉ちゃん鬼畜すぎです

89 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/04(水) 23:20:10 ID:nfHX4ExH
妖精は足元にあった小さな石を拾い上げました。
ジークリンデは側にあった大きな大きな石をかかえ上げました。
自分の半分もある大きな石です。
それを見て妖精はわらいました。

「はっはっはっ、オマエ、水切りをやったことがないのか? おおきければいいって
 わけじゃないぞ?」

「あら、やってみなくちゃわからないわ」

そういってジークリンデは石を頭の上にかかえ上げました。

「まあオマエがそういなら仕方がない、いちにのさんで、いっしょに投げるぞ」

「わかったわ」

ジークリンデと妖精は、湖のまえへと立ちました。

「それじゃあいくぞ、イチ、ニの―――」

「さん!」

かけ声といっしょに、ジークリンデは持っていた石を妖精にむかってほうりなげました。
妖精は石にあたって、そのままいっしょに湖へと沈んでいきました。
とつぜんの出来事に、他の妖精たちとジークフリードはあっけにとられていましす。

「ジーク、どちらが飛んだかしら?」

ジークリンデの声に、ジークフリードははっとしました。

「相手は投げる前に落ちちゃったよ」

「そう、それじゃあもう一回といきましょう」

ジークリンデは足元にあった小石をひろいます。

「イチ、ニの、サン!」

湖に向かって投げると、石は水面を切っていきました。
そのままジークリンデは立ちつくしていましたが、しばらくするとジークフリードたちの
ほうに向きなおっていいました。

「どうやら相手は、恐れをなして水中に逃げたみたいね。この勝負、あたしの勝ちだわ」

その声を聞いて、木々がざあざあとざわめきます。
妖精たちは足をふみならして怒りました。

「ふざけるな、今のが勝負になるか!」

「そうだそうだ、きたないぞ!」

90 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/04(水) 23:20:57 ID:nfHX4ExH
怒る妖精たちにむかって、ジークリンデはすました顔でいいました。

「勝負をきめたのはあなたたちよ、でもルールは私の好きにさせてもらうわ」

それをきいて妖精たちはさらに大きく足をふみならします。

「とんでもないやつだ、とんでもないやつだ」

「きたないなさすがニンゲンきたない」

ジークフリードは妖精たちの剣幕に、さらに顔を青くさせました。
風にゆれる枯れ木のようにふらふらになっています。
ジークリンデは妖精たちにむかっていい放ちます。

「じゃあ今のはなしで、もう一度勝負といきましょう。今度はかくれんぼでどうかしら?
ルールはあなたたちが好きにきめていいわよ」

妖精たちは顔をみあわせました。

「よし、いいだろう。ただし、俺たちが勝ったらお前等をただじゃおかないぞ」

「ええいいわ、好きにしなさい」

その声を聞いて、妖精はいいました。

「ようし、今から俺たちがこの森に隠れるから、全員見つけ出してみろ」

「ええ、いいわ」

「オマエはダメだ、お前がさがせ!」

妖精はジークフリードに指をむけました。

「日が沈むまでに、お前一人でオレタチをさがして見ろ! いいな、わかったな」

そういうが早いか、ピョンピョンと飛び跳ねて、森の中へと隠れてしまいました。

あとには、ジークリンデとジークフリードがいるばかりです。

ジークフリードは泣きそうな声でいいました。

「お姉ちゃん、どうしよう。ボクかくれんぼなんてやったこと無いよ」

「本ばっかり読んでるからよ、ジーク」

姉はしれっとした顔で弟にいいました。

91 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/04(水) 23:21:40 ID:nfHX4ExH
「お姉ちゃん、落ち着いてる場合じゃないよ。日が暮れる前にはやく探さないと」

「あわてないでジーク」

そういってジークリンデは懐から火打石を取り出しました。

「私は探せないけど、手助けは出来るわ。いい、ジーク? 狐狩りは追うものじゃないの」

そういいながら火打石を打ち付けます。

「狐が追われたところを仕留めるの、それが作法よ」

枯れ柴に火がつき、またたくまに火が広がりはじめました。
やがてごうごうと、森中が燃えさかっていきます。
ジークリンデとジークフリードは湖の中へと逃げました。
やがて、お尻に火がついた妖精たちが湖へと走って逃げてきます。

「あっちっち」

「あっちっち」

ざぶんざぶんと、つぎつぎに湖の中へと飛び込んできます。
ジークリンデは妖精たちを指差していいました。

「妖精たち、見つけた」

妖精たちは、その声を聞いて青ざめました。
みんなブルブルとふるえています。

「ニンゲンとはなんて恐ろしい事をするんだ」

「おそろしいなさすがニンゲンおそろしい」

「馬を返すからどうか許してください」

妖精のひとりが、どこからか立派な馬をつれてきました。
おおきな身体に、足が六本もあります。

「これがお探しの馬です。返しますから、ひどい事はやめてください」

「あらあら、ご丁寧にどうもありがとう」

ジークリンデはジークフリードを馬に乗せて、手綱を握りました。
馬がひとなきすると、すごい勢いで駆けだしました。
あっというまに、湖の反対側へとつきました。

92 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/04(水) 23:22:39 ID:nfHX4ExH
黒い男は、ふたりと馬を見て、とてもよろこびました。

「おお、よく見つけてくれた。さすがだな」

そういって一緒に馬にまたがります。

「それでは私も約束を守るとしよう。君たちの家へと案内してくれないか」

「ええ、もちろんよ」

馬を走らせようとする姉を、弟がとめました。

「まって、お姉ちゃん。その前におじいさんの場所へいかないと」

「あらジーク、そんなの後でいいでしょ。お母様とどっちが大切なの」

ジークリンデは、そういって馬の腹にひと蹴りいれました。
馬はひとなきすると、すごい勢いで駆け出しました。
野をこえ、川をこえ、山をこえ、見慣れた城へと帰ってくることが出来ました。
ふたりが城の中へ入ると、母の横で父も寝込んでいました。

「まあなんて事、お父様も病気になってらしたなんて」

愛するむすめの声を聞いて、ハルトシュラーはベッドから飛び上がりました。

「おお、むすめよ! それにむすこよ! 大丈夫だ、私はいま治ったぞ。無事だったか二人とも」

「もちろんよお父様。それに、男をつれてきたわ」

黒い男はハルトシュラーにお辞儀をしました。

「おお、おお。おまえか、久しぶりだな」

「お久しぶりです、領主様。まさか、あの時のご子息達とは」

「再開の言葉はあとだ。妻を見てやってくれないか」

「もちろんですとも、失礼致します」

そういって黒い男は奥様の身体に触ります。
そして一つの瓶を取り出しました。

「これを三日三晩、食事に混ぜて食べれば良くなりましょう」

「おお、そうなのか!」

ハルトシュラーは飛び上がらんばかりに喜びました。

「妻が治れば万歳だ。これでむすこたちの性格が治れば万々歳だな」

「はて? それはどういうことでございましょうか?」

93 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/04(水) 23:23:46 ID:nfHX4ExH
黒い男は、ハルトシュラーに子供が生まれた時の話を聞かせてもらいました。

「なるほど、わかりました。どうやら一緒に飲ませたために薬が混ざったようですな」

「どういうことだ?」

「私が渡した赤の薬草は勇敢な男の子を、青の薬草はおしとやかな女の子を生み出す
 秘薬でございました」

「なんと、わたしのせいだったか」

ハルトシュラーは両手を上げて嘆息しました。
黒い男は懐から赤い袋と青い袋を取り出します。

「大丈夫でございます。もう一度お子様に薬を飲ませれば、勇敢なご子息と
 礼節を知るご息女となりましょう」

「何と、それはまことか!」

ハルトシュラーと黒い男がそうやって話をしていると、馬のいななきが聞こえました。
外に出てみると、ジークリンデが馬の手綱を握っています。

「ああ、むすめよどうしたのだ。もう旅には出なくていいのだぞ」

「お父様、話は聞かせてもらったわ」

ジークリンデはニッコリとほほえみます。

「わたしは今のわたしが気に入ってるの。ジークみたいに閉じこもるようになるのは
 性にあわないわ。もっともっと、世の中を見てみたいの」

ジークリンデは、城のみんなに手を振っていいました。

「じゃあね、お父様、お母様、ジーク、それにみんな! 世間を楽しんできたら
 またもどってくるわ!」

そういって馬にムチをいれ、どこか遠くにへと駆け出していきました。
可哀そうに、ハルトシュラーはまた倒れてしまいました。
ジークリンデがどこへ行ったのかは、誰もわかりません。
もし、あなたの街でお転婆なむすめさんをみかけたのなら、
それは、旅の途中のジークリンデなのかもしれません。

―――END

94 名前: ◆69qW4CN98k :2009/03/04(水) 23:24:47 ID:nfHX4ExH
>>77-80の続きで、これにて終わりです
童話ってムズイ

95 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 00:10:20 ID:qC5gnN3g
ジークリンデ汚い流石ジークリンデきたない
お姉さまの外道っぷり素敵っす
これ絶対薬のせいだけじゃねーよw

96 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 02:06:26 ID:hQaE7q1y
ジークリンデかっこええw

97 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 02:19:52 ID:hsgtkVl1
乙!
無茶苦茶楽しかったぜ!!

98 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 02:49:03 ID:3Me/Q/2D
( ゚∀゚)これは痛快!かっこええ!

99 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 03:32:13 ID:i+/04ORK
面白かった!姉ちゃん鬼畜だぜ!
解決法がほどよく突拍子なく強引で素敵だ。
欲を言えば弟くんが頭脳で活躍するところも見てみたかったかな。

ジークリンデの冒険、気が向いたら続編なんかも是非。

100 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 22:08:50 ID:MKE31IBa
最高! 面白かった。
ジークリンデ素敵すぎるwww

101 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 08:11:30 ID:ZOzAegSd
おGさんとお_さんを待ち望んでいるのは自分だけじゃないはず…!

102 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 19:16:44 ID:vAnkUXyL
漏れも待ってる!

103 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:54:24 ID:JsIRTmbx
俺も俺も!

104 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 08:11:32 ID:+39KY8x2
じゃあ俺も!

105 名前:携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/03/11(水) 23:49:24 ID:E2/0OCvL
じゃあ俺もやる!

106 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 23:51:40 ID:wxMb+YEX
うひゃっふう!

107 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 05:01:07 ID:5oh4MR97
某Y県に伝わる民話だ。
暇潰しに読んで欲しい。

昔、農耕技術が未発達だった頃。
生産力の低い農村では、農業は天候にかなり左右された。
まあ、今でもそれは変わらない事なんだけど。
で、だ。
特に日照りになると尋常じゃない被害が作物に出るから、
水源の確保は各農村にとって重要な事案だったわけだ。
川を水源とする村では干ばつの際、
水門の管理を巡って上流と下流の村とで殺し合いさえ起きた。
それも頻繁に。
まあ、そんなわけで各村が水源の確保を巡ってあちこちでしのぎを削っていた頃。
ここからが本題ね。

ある山の麓に村があった。
何の変哲も無いただの村。
で、この村の水源は山から流れてくる川なんだが、
その山中にももう一つ村があった。
山の村と麓の村。
両村の間には交流がほとんど無く、相互不干渉でやってきていた。
水源が豊富で天候の如何に関わらず決して尽きることが無かったからだ。
まあ、利害に絡んだ問題が起きなかったのでお互い平和に共存していたんだが。
ある時、その一帯を治める領主が変わった。
戦かなにかで土地を治める大名が今までと違う殿様になったんだな。
で、このお殿様が内政改革に積極的な人で、各村の石高調査や地領計測を行ったんだ。
まず、新しい領地の実情を把握し
支配する上での留意点や改善が必要な箇所を知ろうとした、と。
それで、その例の山の麓の村にも大名配下の役人が来て測量を行ったんだが。
麓の村の測量を終えるとそのまま帰ろうとしたんで、慌てて村人が引きとめた。
「あの山の中にも村があるが、そっちの測量はしなくていいのか?」と。

続く。

108 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 05:04:27 ID:5oh4MR97
↑スマン、誤爆だ。
オカ板のスレと間違えた。

109 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 11:00:48 ID:nczxPm6q
何…だと…?
つ、続けろ!頼むから続けてくれえ!!

110 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 14:05:44 ID:B75d3X3v
続き気になる

111 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:44:17 ID:5oh4MR97
え〜と、オチが着かないのも気持ち悪いだろうし、続きを書くと。

役人が調査に向かった所、そもそも山の中に村なんか無かった。
それどころか山中には道らしい道も無く、
人が暮らしていた形跡はおろか、
およそ文明的な物が何一つとして存在していなかったんだ。
で、調査の際判明した事として、
1.前領主時代の記録にも山中の村に関する記述は無いという事。
2.山の地質が岩を中心とした硬質な物で、土が少なく開墾・居住に全く不向きである事。
3.麓の村で水源として利用している川の源流には正体不明の祠が建っていた事。

大体こんな感じの事が解ったわけなんだ。
で、解ったから何がどう、という事も無いんだけど。
調査を終えて間も無く、村の水源だったその川が枯れた。
役人も村人も治水整備や井戸掘り等の手は尽くしたが、洩れなく効果が無かった。
源流にある祠が何か関係しているのかもしれないと思った村人が
お供え物をしたり修繕を行ったりしたがこれも無意味。
結局水源を失ってその村は滅びた。
村人は離散し、まあそれぞれに生き延びる努力をしたんだろうな。
役人はわけがわからないと首を捻り、で、この話は終わり。
明治になってこの話に興味を抱いた民俗学者だかが
件の山に入ってみたんだが、祠は確認できなかった。
消化不良な話で悪いけど、この話は本当にこれで終わり。
スレ荒らしてスマン。

112 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 13:20:29 ID:r+LE1hUN
不思議な話だ…
こういうのも面白いな。ひょっとしてポーの一族でも住んでたのかもね

113 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 19:36:26 ID:+QAovBxA
おもろいなw


114 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 03:32:25 ID:tg0SYPcV
↑みたいな民話の紹介もありなの?

だったら一つ。

狩人が真冬の森の中で迷って難儀していた。
幸いにも吹雪いてはいなかったが、降雪は続いており日も暮れかけていた。
一夜を安全に越す為に狩人は雪濠を掘ろうとしたが
道具の持ち合わせが無く雪濠設置は諦めざるを得なかった。
冷気に体温・体力を奪われ、時間の経過と共に視界も利かなくなっていく。
焦りに駆られ、大声を出し、闇雲に四方へ走り回るも状況は悪化するばかり。
天を仰ぎ神に救いを求めながら森の中を彷徨っていると、突然開けた場所に出た。
そこには見事な一本の大木が聳え立っており、
大木には野営にも丁度良い大きな洞があった。
これぞ天の助けよと、狩人は洞の中に入って夜を越す準備を行った。
湿ってしまった衣類を脱ぎ、洞の中の出っ張りに引っ掛けて干した。
靴の中に獣皮を詰めて、湿気を抜いた。
足の指、手の指を念入りにほぐし、温めた。
いずれも凍傷を防ぐ為。
木の中なので火は焚けなかったが、
予備の衣類やマントを羽織り十分な暖をとってその日狩人は眠った。
手持ちの食料が無く空腹ではあったが、疲労と安心感が狩人に深い眠りを与えてくれた。
そして翌朝。

狩人が目を覚ますと外は快晴。
雪も止み、開けた視界と十分な体力を持って何とか町まで辿り着けそうだった。
荷をまとめ、乾かしていた衣類を身に着けようとして手に取ると
干しておいた靴下の中に何か入っている。
中を探ると食用の木の実が溢れんばかりに詰まっていた。
狩人は、ここに到り自分を助けてくれた何者かの存在を悟り、
超自然的なその何かに対し畏敬と感謝から祈りを捧げた。
無事森を抜け、町へ帰った狩人。
彼は自分を救ってくれた何かに対して感謝を伝える為に
春になってから大木のあった開豁地を探しに森を探索した。
しかし、以後彼が天寿を全うするまで二度と
あの大木のあった場所を見つけられなかったという。

同地域には遭難者が同様の体験をし、九死に一生を得る話が多々ある。
北欧はフィンランド、トゥルク辺りの民話ね。
サンタクロースの靴下プレゼントはこの話も原形じゃないかって言われてる。
有名なようで無名な民話だから紹介してみた。

115 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:10:04 ID:9C4KuusK
へーおもしろい、知らなかったからちょっぴり為になったよー

116 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 03:10:11 ID:s6bJOQr3
こういう話好き

117 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 14:15:19 ID:v75ouSvp
なんというか、トトロ乙といいたくなる不思議な話だな……

118 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 23:39:38 ID:piFg63+f
この流れなら…オレも一本民話を紹介したい。

春秋時代の中国内陸部、とある寒村の話だ。
当時は戦や天災で荒れ果てた時代で、あちこちに親や家を失くした孤児が溢れかえっていた。
そうした孤児の一人、ある少女の物語。

労働力を必要とする農村に里子として引き取られたその少女は
容姿の美しさから人目を惹き、やがて春を鬻がされるようになる。
昔だから当然、今みたいな人権意識とかは無くて、
少女は奴隷同然の生活を強いられていた訳だ。
親や家を失い、おまけに売春を強要される毎日。
やがて少女は心を閉ざしていき、人と話せなくなる。
代わりに鳥獣や草木、虫たちと心を通わせるようになった少女は
空いている時間は常に野山を散策するようになった。
傷付くだけの毎日と、傷付けるだけの周囲の大人たち。
野に出て気ままに歩いている時だけは、
そうした辛い日々を忘れる事が出来たのだろう。

だがある日、少女は聞いてしまう。
里親が人買いと、自分を郭に売る商談をしているのを。
近在の村にもその美貌が知れた少女は、
都市の遊郭に商売女として売られる事になってしまったのだ。
遊郭では遊女が逃げ出さないよう足の腱を断ってしまうと聞いた事がある。
今よりもっと自由の無い、辛い毎日が待っているに違いない。
それに何より、野山を自由に歩き回れない生活なんて、あまりにも嫌だ。
そんなわけで少女は身一つでその場から逃げ出した。
逃げるとは言っても子供の脚。
そう遠くまでは行けるわけが無い。
いつも歩いていた山の中に逃げ隠れていた少女は
すぐに追っ手に見つかってしまう。
追っ手の腕が乱暴に自分に向かって伸ばされる。
里親が、怒りに歪んだ表情でその背後に立っている。
絶望し、この世の全てに諦めを抱いた少女はふと最後に天を見上げた。

頭上には、何時の世も変わらずに輝き続ける満天の星と月。
その日の月は満月だった。
それを見た少女は突然追っ手の腕を振り払うと、背後にあった池に向かって駆け出した。
湧き水の流れが溜まってできた山中の浅い池。
身を投げたとて恐らく死ぬ事など出来ないだろう。
だが、少女には聞こえていた。
自分を呼ぶ月の声が。
池の水面に映った丸い月。
その光の中に、月の都の輪郭が映っていた。
慌てて追っ手と里親が追いすがるが間に合わない。
少女が池に飛び込むと、不思議と水飛沫は上がらず、水面はさざめく事もなかった。
追っ手と里親が池を泥で濁しながらくまなく探したが、
少女はおろかその衣類の切れ端すら見つけることが出来なかったという。
そして波立った水面が静寂を取り戻したとき、池に映る月に都市の輪郭は無くなっていた。
残された者たちは、少女は月天に迎えられたのだろうと話したそうな。

昔の中国は「天」を基準とした倫理観・宗教観を持っていた。
天は天上から万事を見通し、人の世の行いに賞罰を与える。
天災・天恵・天罰。
そして その中の稀な事例に「天に呼ばれる」というものがある。
周囲を助け、人々に慕われていた青年が街中で、
「空に呼ばれている気がする」と呟いた瞬間に忽然と姿を消した話や
病床で寝たきりだった堅臣が見舞い客の前で、
「天よ、今日でしたか」と言うと突然消失してしまう話など、まあそんな類い。

おGさんとお_さんの人、早く帰ってきてくれないかなぁ。

119 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 01:55:27 ID:iABWM07I
うおーなんか全部面白いなー
こういう話大好物だ

120 名前:創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 17:58:48 ID:mkE60e1p
こんなスレ、誰も見んわ・・・

121 名前:創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 20:53:57 ID:DT6JJdvD
そうでもないぞよ

122 名前:創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 23:23:14 ID:Y4CaQrfD
>>120
>>121
「民話」と「見んわ」を掛けたんだろ
にしても投下無いな……
ちょくちょくチェックはしてるんだがな

123 名前:百万と一回死んだ猫:2009/06/19(金) 02:43:44 ID:S8wTSli4
一匹の虎猫が居た。
この街の野良猫を取り仕切る野良猫の王にして、
15歳もの高齢に関わらずいまだ負けなしの最強の武王。
きたない毛並みは数えきれない戦いで擦り切れ、ところどころはげちょろけているし、
耳は欠けて尻尾は半ばで折れ、片方の目は白く濁っている。
王に何故そうも強いのか聞いたことがある。
「俺はただ、死ぬのが怖くないだけだ」
そういってはぐらかすばかりで、秘訣なんて何も教えてはくれなかった。
王は犬すら仕留めたことがある。
キョウケンビョウとやらに掛かって錯乱した野良犬が、
子育て中の母猫と子猫を五、六匹噛み殺したことがあった。
白い母猫と、ミックスの子猫がミンチになって転がっているのを見て、王は叫んだ。
「探せ!人よりも早く探し出せ!」
保健所に見つかれば、犬はすぐにぶっ殺されるから、それより早く探せと王は言った。
そして犬の目撃情報が入った途端、王は虎みたいに駆け出した。
追いかけるなんてとても無理だった。
俺が犬の目撃情報があった山沿いの道路に着いたら、もう血だらけの王しか立っていなかった。
犬は、顎を王に噛み割られ、下顎がぐちゃぐちゃになって、喉から大量に血を流して死んで居た。
王は、犬の喉肉と王自身の前歯4本を吐き出して平然として居た。
「白猫だけはやっちゃならない。白猫だけは」
王が白猫に拘る理由も聞いてみたけど、やはり教えてはくれなかった。
王はあんなにも強いのに、子を成そうとはしなかった。
「俺はもう死んだ。百万回目のあの時、あいつと一緒に、完全に死んだんだ。
死んでるんだから、命なんか惜しくないし、子も欲しくなんかない」
なんだかわからないけど、王は本当に命が大事ではないようだった。
そんな偉大な王も、彼が17の時に保健所とやらに連れて行かれた。
きっと彼なら人間だって殺せただろうに、寄り合いのNo.2だった俺に王の座を明け渡すために、自ら捕まってしまった。
王の退役を、寄り合いの皆で悲しんだ。
隣り街やら遠方やら、王に守られて来た猫が数千も集まって、夜中に保健所を取り囲んでにゃあにゃあと泣いた。
哀悼の四面楚歌は、人間が俺たちを網を持って追いかけ回し始めるまで続いた。
俺が王になってしばらくして、妾が俺の子を孕んだ。
俺は前王の影響か、白猫を娶っていた。
俺は黒、妾は白。
毛並みから考えて、虎猫など生まれるはずもないのに、生まれた子には虎猫が混じって居た。
前王そっくりの毛色だった。
一年もすると本当に前王そっくりの、立派な猫になった。
その奇妙な子が独り立ちする段になって、寄り合いから発つときにこんな事を言った。
「王よ、お前は王に相応しい。百万回死んだ俺が言うんだ、間違いない」
虎の毛並みのその子は、二度と寄り合いに戻っては来なかった。




124 名前:創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 14:09:14 ID:ygxRDY0+
うおお?
これはいい童話なのかもしれないけど、原作の良い所を壊してる部分もあるし…
どう反応していいか迷うな(´・ω・`) でも乙

125 名前:かちかち山:2009/06/30(火) 02:47:17 ID:bbZSwuq/
「お爺さん、悪い狸はわたしが泉に沈めて殺しました。カタキを討ちました」
「おお、おお、ありがとう、ありがとうなぁ、兎どん」
ウサギは得意になってお爺さんに報告し、狸が如何に惨めに死んだか説明しました。
「わたしが泥船を薦めてやったら、あの強突く張りはホイホイ騙されました。魚が沢山積
めるって吹聴してやったんですよ。そうして、いざ船が沈んだら、あの下衆野郎、助けて
くれ、なんて言いやがったんです。頭を押さえ付けて沈めてやりました」
お爺さんは頷きます。
「そうかい、そうかい。狸も、さぞ苦しかったろうね」
兎どんはお婆さんの墓に手を合わせながら、お爺さんに言います。
「お爺さん、あんな修羅のような鬼畜に同情なんぞしてはいけません」
「そうかい、そうかい。そうだね、あいつには同情の余地なんかありゃあしないね。兎ど
ん、狸をとっちめて腹が減ったろう、飯にしようか」
兎どんは腹ぺこだったので、跳ねるように家に入りました。
「おやっ!お爺さん、大丈夫ですか!?」
家の中には、お爺さんが突っ伏して倒れて居ました。
お爺さんを抱き起こすと、顔が真っ黒に焼けて、鼻も口も無くなっていました。
お爺さんは顔を黒焦げになるまで焼かれて死んでいました。
お爺さんを抱き起こした兎どんの背後で、ぴしゃり、と雨戸がしまります。
兎どんが慌てて雨戸に飛び付くと、外からつっかい棒が掛かって居て、少ししか開きません。
雨戸の隙間からは、顔中に真っ白な毛を生やしたお爺さんが見えました。
それは、お爺さんに化けた狐だったのです。
「お前が殺した狸はな、親を此所ん家の婆あにぶっ殺されたんだ。狸汁のためにな。だか
らあの狸は、婆あが憎くて仕方なかった。殺られたら殺り返す。当然の事さ」
狐は台所からくすねたらしい油を撒き散らし、袂から、巾着に入った火打ち石を取り出しました。
兎どんは慌てて叫びます。
「や、やめてくれ!“殺られたら殺り返す”んだろう?!なら、わたしは正しい事を、当
然の事をしただけじゃあないか!?」
狐はそれを聞いて、くすくすと笑いました。
「命乞いかい?ははは、狸に聞かせてやりたいねえ。だが、駄目だ。助けてはやらないよ」
兎どんは赤い目をぎょろぎょろさせて、力一杯雨戸やら壁やらを蹴飛ばします。
家のあちこちは頑なに兎どんを跳ねっ返し、木張りの床に叩き付けました。
狐は火打ち石で、カチッ、カチッ、と快音をたてながら、懐かしむように言います。
「狸と俺は、長い付き合いだったんだ。朋友か盟友か、はたまた悪友か。そんなこたぁど
うでもいいが……俺と狸は知り合いだった。そして俺は、奴が死んで大層悲しかった。だ
から、俺にも“殺られたら殺り返す”権利があると思わないかい?」
兎どんは半狂乱で叫びます。
「わたしは正しい事を、正義を貫いたんだ!!!」
狐は諦めたように、ひとつ大きな溜め息をつきました。
「そういえば“修羅のような鬼畜”に、同情は要らんのだったな」
カチーン。
狐の火打ち石が、一際大きく鳴りひびきました。



126 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/02(木) 14:28:04 ID:sG140OXx
>>125
おもろい。

127 名前:兎と亀:2009/07/03(金) 03:08:03 ID:gRUmbhYc
 駆けっこに勝った亀は言いました。
「この結果は宜しくない。もう一度競争しましょう。そして兎さん、次は貴方が必ず勝っ
てください」
 悔しがって居た兎は、亀の提案を聞いてキョトンとしてしまいます。
「もう一度競争だって?君が勝ったのに、なんだってそんな事を提案するんだい?一度負
けた今、次こそ俺は、一切の慢心も不覚も捨てて、注意深く全力で優勝を目指すぜ。次に
君が勝てる見込みは万に一つだってない。しかも、君はそれを分かって居るらしい」
 亀はのんびりした顔で答えました。
「確かに私は損をするでしょうが、それでいいのです。もしこの結果を最後に競争を終え
たなら、これは私と貴方の問題では無く、亀と兎、ひいてはこの結果を聞いた者達にとっ
て、良くない影響を与え兼ねないのです。どうか、貴方は貴方の天賦で、私を負かして欲
しいのです」
 兎は口寂しさに食んで居た草を吐き捨て、亀に返事をしました。
「なんだかよく分からないけど、森の韋駄天の名誉挽回に機会を与えてくれるなら、俺は
全力で頑張るよ」
 兎と亀は改めて駆けっこをしました。
 兎はびゅんびゅんと飛び跳ね、亀が完走するまでに、開始地点と終着地点を何十周も往
復して見せました。その力量差は、先の亀の勝利を、やはり単なる偶然だったのだと、見
る者に深く印象づけました。
「いやはや、やはり兎さんこそ森の韋駄天ですね。私が駆けっこで勝つなんて、不自然の
極みだったのです」
「当たり前さ。俺が本気で走れば、ともすれば犬や猫よりも早いのだから、亀なんかに負
けるはずがない」
 亀は、負けたのに満足そうに頷き、兎の大勝利を讃えました。
「兎さん、次は他の勝負をしましょう。素潜りをやりましょう」
「素潜りだって?俺に1厘の勝ち目もないじゃあないか」
 亀はにっこりと微笑みます。
「ええ、貴方は私に競ることもまま成らないうちに負けてしまうでしょう。物事には適材
適所、生き物には天賦の才、そういうものが必ず在ります。残酷なそれらは、努力や根気
では覆りません。私は、運が重なって偶然に報われる努力なんかより、しっかりと自分を
見つめて、諦める部分は諦め、自らに他人に優る部分を見つけ、それを伸ばした者が報わ
れるのが、世界の本当の理であると信じています」
 黙って聞いていた兎が口を開きました。
「つまりは、“名誉挽回の機会をやったんだから、引換にこっちにも見せ場を作れ”って
こったな?」
 亀はカラカラと笑います。
「ははは。ええ、ええ、そういう事です。私に惨敗してください。ははは」
「しょうがねぇなあ」
 亀は素潜りの勝負で、兎に大勝利を納めましたとさ。
めでたしめでたし

128 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 03:45:37 ID:vhKBMEDI
なんて爽やかな兎と亀

129 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 02:45:06 ID:R+fApUCj
 シンデレラは言いました。
「私には、舞闘会に着てゆく衣装も無いわ」
「ふふふ、あたしが用意してやるよ」
 枯木の様に節くれた老婆が、軋むような動きでローブの合わせを開きました。
 老婆の肩から、リチウム二次イオン電池のカートリッジが沢山納められたストラップに
繋がれ、棺桶ほどもある長大なロングレンジ放電銃がぶら下がって居ました。
「まぁ、なんてすごい!」
 驚嘆するシンデレラにお婆さんは言います。
「驚いたかい?驚いたろう?露西亜の私企業と提携して開発した新兵器なんだがね。レー
ザー光が空気中の分子をイオン化し電気の誘導を可能にするのさ。スプリガンという漫画
やメタルギアソリッドというゲームでそのアイデアが示唆されていたんだが、2009年アリ
ゾナ大学のポリンキン博士が分子を突き抜けるレーザー光の論文を発表し、その実現が早
まったんだ。プリウスの第三世代の生産ラインにニッケル水素二次電池が再度採用された
のは、リチウム電池をこの兵器へ転用する計画が極秘裏に進められたからなのさ」
シンデレラは驚きました。
「最低価格205万円は兵器産業の副産物だった…?」
「いいや、パフォーマンスだったのさ。トヨタ方式で量産が進められて居るとはいえ、ま
だこいつはほとんど出回って居ない。これがあれば、あんたは注目の的だよ。さぁ、行く
のかい?行かないのかい?」
 シンデレラは手を差し出し、言いました。
「灰は灰に、塵は塵に……私がことごとく灰にしてやるわ」
 お婆さんは樫の瘤みたいに顔を歪めて破顔一笑し、シンデレラに放電銃を渡しました。
「それでこそ“シンデレラ(灰被り)”!トール(雷神)の加護の在らん事を!」
 シンデレラは50キロもの重さがある放電銃のストラップに腕を通し、素早く構えて見せ
ました。
「雑巾掛けに使う水の入ったバケツより、ずっと軽いわ。きっと屈辱の重さだったのね。
それに比べて、なんて軽やかなんでしょう!」
 お婆さんが銃のマニュアルを渡しながら言います。
「人間工学に基づいて設計されて居るからね」
 シンデレラは撃ち方とカートリッジの換装だけ読取り、また銃を構えました。
「軽いのは、きっと“誇り”の羽根が生えてるからだわ」
 低く唸るような音を発ててレーザー光が放たれ、遠くの樹に合わせられます。
 シンデレラがトリガーを引くと、青と紫の色相勾配を描いて雷撃が砲口から伸び、樹を
一瞬で焼き払ってしまいました。方々に伸びる紫電の分肢はまるで樹の根のようで、銃が
樹を焼き払ったというより、樹の魂を吸い出して一瞬で枯死させたようにすら見えました。
「私、舞闘会に行きます」
 シンデレラは颯爽と、お婆さんが用意したインサイトに乗り込みました。


続かない

130 名前:シンデレラ:2009/07/05(日) 02:48:28 ID:R+fApUCj
題名書き忘れた

131 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 03:20:03 ID:J6P8bnkK
こらwwwwwww

132 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 03:29:07 ID:nW4wgG4O
( つ∀;)シンデレラよかったねぇよかったねぇ

133 名前:やぶ:2009/07/08(水) 22:43:23 ID:7eAKj8AQ
フランダースの犬?

「…見てごらんパトラッシュ、ルーベンスだよ。」

ネロは放火の濡れ衣を着せられて村を追われ、吹雪の中をさ迷い続けました。
そして偶然にも大聖殿にたどり着き、画家を目指す自分にとってずっと夢だった、ルーベンスの絵を見ることが出来たのです。

「きっと、神様がくれたプレゼントだね。」

今日はクリスマスイブ、聖なる夜です。ネロは神に感謝の祈りを捧げると、自分を心配し、ずっと寄り添ってくれた愛犬パトラッシュを優しく撫でました。

「でも…、もう疲れたよ、パトラッシュ…。なんだか…、凄く眠いんだ…。」

ネロの手がゆっくりとパトラッシュから離れます。

「ワンッ!」

ずっと静かにしていたパトラッシュが吠えだしました。
それはまるで、この世から旅立とうとするネロを必死で呼び止めるかのように。

「…こんな聖夜になにかしら?」

その時です。
大聖堂の扉が開き、一人のシスターが顔を出しました。

必死に吠える犬の鳴き声を聞き、不審に思って扉を開けたのです。

「まあ、こんな夜に何て不憫な…。」

すっかり冷え切ったネロの小さな身体を抱き上げ、降り積もった雪を払いのけました。

「もう大丈夫。神の身許に逝くにはまだ早過ぎるわ。暖炉の火をまだ落とさなくて良かった。」

シスターは神に感謝の祈りを捧げると、羽織っていたコートでネロを優しく包みます。

「うふふ、みんなでたぁっぷりと暖めてあげるわね」

シスターの目が妖しく光り、その笑みを浮かべた口元をチロリと舐めました。

「ワ、ワン?」

「ああ、君もおいで。人の相手するより、あなたのような逞しいワンちゃんが好きなシスターもいるからね」

こうしてネロ少年とパトラッシュの、熱くて長い夜が始まりました。



134 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 01:51:03 ID:35mRaodA
おいw

135 名前:金の斧銀の斧木こりの恋:2009/07/09(木) 03:12:13 ID:35mRaodA
木こりは手を滑らせて、斧を泉に落としてしまいました。
するとどうでしょう。
泉の女神が金の斧と銀の斧を持って現れ、木こりに言ったのです。
「貴方が落としたのは金の斧ですか?銀の斧ですか?」
木こりはしばし黙ってしまいます。
泉の女神の柔らかにウェーブしたブロンド。
斧を持つ、滑らかで、暖かな赤みのさした指先。
水面にちょっとだけ浸された足の爪先。
木こりは一目で泉の女神に恋をしてしまいました。
「どうしました?」
女神が優しく問います。
木こりは胸の高鳴りのままに、正直に答えました。
「私が今落としたのは、金の斧でも銀の斧でもありません。私が落としたのは鉄の斧です」
女神はそれを聞いて微笑みます。
「貴方は正直者ですね」
女神の言葉を遮る様に木こりがまた口を開きます。
「そして、女神様。貴女が現れたせいで、またひとつ、泉の底に沈んでしまったものがあります」
「……はい?」
「私の心が、恋の泉に、深く深く落ち込んでしまいました。どうか、私とお付き合いして頂けませんか?」
「あら……まぁ」
女神は睫毛の長い大きな目をいっぱいに広げて驚きました。
「……貴方は、本当に正直者ですね」
女神は泉の水面から歩み出て、森の土を踏み締めました。
「森の土……懐かしい感触です。泉から出たのは何時ぶりかしら」
そうして木こりの手を、暖かな赤みのさした手で取り、こう言いました。
「宜しくお願いします……」
二人は末永く暮らしましたとさ。

136 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 23:17:19 ID:god8YT+s
ちょっと泉行って来る

137 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 03:50:17 ID:e2ndDhmf
 夜12時。
 桃太郎は犬井、猿田、鳥谷の三人を連れて鬼退治に出かけました。
「も、も、もも太郎さん。あ、あ、あ、アレ、分けてくれませんか」
 吃音の酷い猿田が桃太郎に何かをねだります。
「桃太郎さんのグランマが造るアレはマジ上質ッスからね。俺にも回してくださいよ」
 犬井が視点の定まらない目をギョロ付かせながら言いました。
 キャバクラの客引きをしていた兄ちゃんも、風俗の看板を持ったおっさんも、みんな桃
太郎達から離れて行きます。怖いし。
「……お前らがキビ団子ねだる姿はどうも誤解を招くきらいがあるんだが、まぁ人を見た
目で判断する社会にも多少ならず落ち度があるだろうと俺はなかんずく思っていたりする
からキビ団子に付いては配付しよう。並べ!いやしんぼ共め!」
「あざーっす!」
「あ、あ、ありがとう。桃太郎、さ、さん」
 話の長い桃太郎の前方にキビ団子を貰うため並んだ犬井と猿田を尻目に、鳥谷はずっと
携帯で誰かと話していました。
「おい鳥谷、お前はキビ団子要らないのか。俺のばあさんが黍の穂から育て刈り入れ脱穀
砕粉練り込みまでやったフルスクラッチのハンドメイドなおふくろの味だぜ。うまいぜ」
 鳥谷は携帯の通話口を押えて遠ざけ、桃太郎に返事をしました。
「仕事中の飲食は控えてますんで後で頂きます。それで今日の仕事なんですが、鬼怒川組
のヤカラが佐渡丁のクラブでインネン付けてるらしいです。どうしますか?」
 桃太郎は鳥谷に渡そうとして断られたキビ団子を持て余し気味に口に放り込み、くちゃ
くちゃ噛みながら言いました。
「討伐しなきゃな。あるいは征伐、成敗、排除、排斥……あと何があるっけ」
「ぶ、ぶ、“ぶっ殺す”とか」
 猿田の言葉に桃太郎は笑います。
「ははっ、猿田ちゃんセンスあるじゃない!そう、それで行こう。今から俺らが“ぶっ殺
す”。鳥谷、今すぐ向かうって言っといて」
 鳥谷は頷き、携帯に二言三言何かをいいました。
 彼らの鬼退治が、今日も始まりました。

138 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/12(日) 01:01:23 ID:eChKCb5L
やべえこれ危険なネタだwwww

139 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/12(日) 02:30:17 ID:ha4O/1Zg
「お、俺、う、う、裏口、押えておきます」
 クラブに着いて先ず動いたのは猿田でした。
「ようし、頼むぜ猿田ちゃん。店舗は“5階”で、非常口は鬼怒川組が押えてるらしいか
んな。トイレの窓辺りから入ってくれ」
 桃太郎に頷きを返すと、猿田はクラブの入っている雑居ビルと隣りのビルの谷間に消え
ました。五階のトイレの窓まで、壁を登って行く気なのです。
 桃太郎は次に犬井から報告を受けました。
「ケッ、胸糞のワリィ成金葉巻の臭いがしやがるっすよ。こんなクセェ銘柄を吸うのはあ
いつしか居ねぇ。浦に違いねぇっす」
 キビ団子を食べると嗅覚過敏になる犬井は、ビルのエレベーターに乗った時点でヤカラ
を特定しました。
「まぁた浦の野郎かよ、懲りないねアイツも。アイツって前にも俺らのヤサにカチコミか
けてブタ箱入ってなかったっけ?」
「ムカつく野郎だった事しか覚えてねっす」
 桃太郎は犬井の横面を力強くビンタしました。
「……痛いっす」
「俺は今鳥谷に聞いたんだよ馬鹿。お前の記憶力を当てにする程俺が馬鹿に見えるならそ
の腐った目玉抉り出して目玉の親父1分の1フィギアに詰め替えるぞ馬鹿。分かったら早
く俺の長ドス渡せ馬鹿」
 戦いを前に、桃太郎はヒドくたかぶっていました。
『桃太郎さん、落ち着いてください。Take it easy』
 桃太郎が耳に付けたイヤカムに鳥谷の声が響きます。
『管理室のモニターを確保しました。こちらから全体の状況を把握して指揮します』
「わかった」
 桃太郎は犬井から長ドスを受けとりました。
 エレベーターの階を表す数字が5を表示し、音も無く扉が開きました。
 戦いの始まりです。

140 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/15(水) 18:16:05 ID:DA1EeJmB
地の文のですます調が、いい意味でアンバランスすぎて笑えるwww

141 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/17(金) 22:36:21 ID:mQ4X2oxq
だからこれ危険過ぎだろwww

142 名前:創る名無しに見る名無し:2009/07/23(木) 11:37:04 ID:7k+6ZpjO
これはひどいwwwww

143 名前:創る名無しに見る名無し:2009/08/24(月) 02:18:18 ID:u5v5Vsxt
ある国に三人の貴族の兄弟がいました。
早くに親を亡くした三人は厳しい叔父の下で育てられました。
ある日三人に、お城で開かれる舞踏会の招待状が届きました。
お姫様の婿とりのためです。三人は叔父と連れ立ってお城へ向かいました。
その途中に、一人の老婆が倒れています。
彼女を助けるため、次男はそこに残りました。
他の三人の姿が見えなくなると老婆はキャピキャピギャルになりました。
老婆は良い人の手助けをする魔女だったのです。
魔法の力で一足先に城についた次男はそこでお姫様に出会いました。
行き遅れな年齢のお姫様と次男は互いにに一目惚れし情報交換をします。
お姫様は次男の顔面に向けてガラスの靴を投げつけました。
「明日迎えに行ってやるからなくさないようにしなさい!」
お姫様は新ジャンルツンヒートでした。
さて、実はお姫様になんか興味のない長男はお城の庭を歩いていました。
薔薇を手に取ろうとするととても美しい女性(CV田中敦子)が現れました。
彼女は城の庭師の娘でお姫様の友人だそうです。
年増趣味な長男はたちまち彼女に恋をし、
結婚を前提としたお付き合いを申し出ました。


144 名前:創る名無しに見る名無し:2009/08/24(月) 02:28:39 ID:u5v5Vsxt
庭師の娘は思わず頷いてしまいました。
セクシーな彼女ですが男性とのお付き合いはしたことがなく、
つい勢いに流されてしまったのです。
目の前で大喜びする彼が可愛く見えて、娘はなんだか幸せになりました。
舞踏会はお姫様が相手を選んだので終わりました。
翌日、お姫様は裸足で町を歩きながら、叫びます。
「早く昨日渡したガラスの靴持ってきなさいよ!」
次男は慌ててお姫様に靴を渡しに行きました。
「よし! 今日からあんたがアタシの婿!」
お姫様が宣言すると同時に魔女が来て彼らを祝福しました。
するとまだ50前の王様が魔女に声をかけます。
「そこのカワイコちゃん。三食昼寝付きで俺様のお嫁さんにならない?」
「なるー!」
町は騒然とします。物のついでと長男も叔父に庭師の娘を紹介します。
「やあやあ何とめでたいことだろう。みんなおめでとう」
三男が驚いて声を上げました。
そんな彼の下に一羽の鳩が舞い降りてきます。
鳩は針が刺さっていて苦しそうです。三男は針を抜きました。
するとそこには可愛らしい少女が立っています。
とてもめでたい席で祝いの言葉を述べた人が針を抜いたので
呪いがとけた、と彼女は言いました。
皆幸せになったとさ。

145 名前:創る名無しに見る名無し:2009/08/24(月) 19:31:55 ID:oFCUrTAj
なんだかよく分からないけどハッピーエンドで良かった良かった

146 名前:創る名無しに見る名無し:2009/08/24(月) 20:28:10 ID:fP4QQEnf
なんだか物凄い勢いで登場人物がハッピーエンドになる話だw
勢いが好きだw

147 名前:創る名無しに見る名無し:2009/09/03(木) 15:33:07 ID:jLDIwPkY
いやあ
ハッピーエンドはめでたいなあ

148 名前:創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 21:47:42 ID:x+K0VHhC
鳥類連合と統合獣軍による戦闘は、月日の流れと共に激しさを増していった
殺戮と憎悪、流血と報復の連鎖は止む事を知らず、戦いに身を置く者からは既に理性が失われて久しかった

由来さえ定かではないこの戦いが始まってから幾年月
永きに渡る戦いはいつしか統合獣軍の優勢へと傾いていた
繁殖力と個々の適応力とに長けた獣達は、鳥類連合の拠点を次々と包囲・陥落させていった
陥とされた拠点では親鳥達が殺され、雛たちが喰われ、無数の卵が容赦なく割られた

鳥類連合の敗北は時間の問題となりつつあり、統合獣軍では連合殲滅のとどめとなる一大攻勢が計画された
一方、窮地に立たされた連合の残存勢力は、現状打開の為に中立勢力へ同盟としての参戦を緊急に要請する

統合獣軍・鳥類連合のいずれにも与さず、静観を続けていた蝙蝠属にも連合からの使者が訪れた

149 名前:創る名無しに見る名無し:2009/10/15(木) 22:05:42 ID:x+K0VHhC
鳥類が敗北を重ね、その数を減じる事で自然界の植生が狂っていく
天敵の消えた昆虫が歯止めをなくして異常繁殖し、一部の植物は受粉や種子の移動が行えず、森や草原が徐々にその姿を変えていく

勝利を重ね続けてきた統合獣軍はその基幹となる草食派が植生の変化により減じていった事で緩やかに衰えていく
草食派を主食としてきた肉食派もまた、その影響で数が減っていくが原因が鳥類の減少である事には目が行かず、最終攻勢が決行されようとする

蝙蝠属は自然界の均衡を維持する為に、憎悪の連鎖を断ち切り争いを止める道を模索する
両軍と通じ、情報操作や後方の撹乱を行い相互の戦力比が同等となるように工作を行う

最終的に両軍が講和を結ぶ際、憎しみのぶつけ所として「両軍にとっての裏切り者」という汚名すら甘んじて受ける蝙蝠属

かくして、戦火は終局を迎えた


要約すると大体こんな感じの物語をパロで考えてみたけど、細かい設定を考えてる内に原形を失ったので放棄
初稿のプロットをカキコしてみた(途中、蝙蝠属内部の分裂や主戦派との対立&演説シーンがあったりするけどカット)

150 名前:創る名無しに見る名無し:2009/10/31(土) 15:16:19 ID:yeq3bg6T
乙!
その童話を読んだことがあるけど、こうして真面目に書かれるとまったくの別物に見えるwww
コウモリいい奴だ

151 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/08(日) 01:47:37 ID:6aeUv1wb
童話の寓意をあえてひねくれた解釈で組み立て直してみるのって楽しいよね

152 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 23:13:04 ID:GoQR9n53
面白そうなので投下します。ジャンルは、創作日本童話?

○医者と千年狐○

昔々あるところに心優しい医者がいました。

ある日、医者が森へ薬草を取りに出かけると、一匹の狐が怪我をして倒れていました。
その狐は豊かな銀色の毛を持ち、柔らかそうな尻尾をなびかせています。
医者はその姿を見て、はっ としました。
その狐は”尻尾を煎じて飲むと千年生きられる”と言い伝えられている、千年狐だったのです。
狐は怯えました。医者に尻尾を取られてしまう、と思ったからです。
しかし医者は狐に向かってこう言いました。

「だいじょうぶだよ、尻尾は取らないから、お前さんの怪我を治させておくれ。」

医者は狐を抱きかかえて自分の家へと連れて帰りました。
狐は最初、警戒していたようでしたが、
医者の優しい心に触れるうちに、だんだんと医者に惹かれて行くのでした。

153 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 23:17:59 ID:GoQR9n53
しかしそのうち、医者が千年狐を介抱していることを聞きつけた村人たちが
千年狐の尻尾を手に入れようと、医者の家を訪れるようになりました。
狐は心配そうに医者を見つめます。

「だいじょうぶだよ、何も怖いこと無いからね。」

医者は優しく狐を撫でました。
狐はすっかり医者に懐いていたのでした。

154 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 23:20:55 ID:GoQR9n53
そんなある日、医者の家に千年狐がいることを聞きつた盗賊たちが、
何と医者の家を襲いにやってきたのです。
医者と狐は命からがら盗賊達から逃げ切りましたが、医者は腕に傷を負ってしまいました。
狐はぼろぼろと泣きました。医者は困ったように笑います。

「だいじょうぶだよ、このくらい、すぐ治るさ。」

医者は優しく狐を撫でました。
医者もすっかり狐のことを気に入っていたのです。

155 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 23:24:16 ID:GoQR9n53
次の日、森の中の木のした、医者は木漏れ日に起こされました。
ふと、隣りへと目をやると狐がいません。
代わりにそこには、あの銀色の柔らかそうな尻尾が落ちていました。

その濡れた尻尾は、朝陽を反射してきらきらと静かに輝いていました。

156 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/17(火) 23:51:27 ID:GoQR9n53

それから幾年も過ぎた後のお話です。

とある村に銀色の髪をした男がやってきました。
男はとても腕の良い医者でした。
村人達はそんな医者を快く受け入れ、後の世も男を医者の神様として崇めました。
その村では今でも医者の銅像が静かに村を見守っています。

その銅像の腕には、尾のない狐が大事そうに抱えられているのだそうです。
いつまでもいつまでも、二人は幸せそうに微笑んでいるのでした。


医者と千年狐 〜終〜

何年か前に、絵本を作ろうとして考えたお話でした。
童話の文章って難しいですね(^∀^;お粗末さまでした。

157 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/18(水) 00:02:09 ID:J32mA7Is
こういうのいいなあ
童話にしかない安心感がある

158 名前:創る名無しに見る名無し:2009/11/21(土) 10:33:07 ID:lacB/bjE
おお、ものすごい童話っぽい感じ!
短い話なのに、医者の優しさや狐の心情が痛いほど伝わってくる。

GJでした、また何か思いついたら是非投下してくだされ!

159 名前:塔の神話:2009/12/13(日) 14:31:48 ID:upJJKPSa
塔が建てられました
来るべき災厄に備えて

塔の学者は予測しました
洪水の規模と期間とを

塔には物資が蓄えられました
水が引くまで塔で暮らす人々が生き延びられるだけの物資が

愚かなる民どもは塔を指差して嘲笑しました
洪水など来るものか、この地は内陸、河川も浅く緩やかだ、と

天を突くかの如く、高くそびえた塔は愚かなる民どもの神経を逆撫でました
愚かなる民どもは激昂して叫びます

天は神の住まう地、そこに到るかの如き高き建造物は、やがて神の怒りに触れて崩れ去るだろう、と

そして来る日、災厄は起こりました
止むことの無い長い雨、溢れ増え続ける水

地は水に満たされ、都市は洗い流され、多くの生き物がその流れに呑み込まれました
塔を指差して笑った民たちも流されました

全てが流れ去り、雨が止んだとき、塔だけが地上に残りました
塔を建て、その中に暮らした人々は塔を解体し、その建材を持って四方へと散らばりました

東西南北、それぞれの地で新たに人の数を増やすため
かつて塔に用いられた建材は新たな街を興すのに使われました

かくして、地上から塔は消えました

愚かなる民どもの中にも生き延びた者たちがいました
彼らはかつて塔のあった地に何者も住まわず、何者も残らなかった事から言いました

やはり塔は神の怒りに触れたのだ
見ろ、奴らは一人も生き延びちゃいない

神に選ばれし民である、我々だけが生き延びたのだ、と


昔々のお話でした

160 名前:塔の神話:2009/12/13(日) 14:46:38 ID:upJJKPSa
生き延びた愚かなる民どもは、選ばれし民である自分たちにふさわしい定住地を求めて彷徨いました
約束の地、神に選ばれし民に与えられるという楽園があると信じていたのです

しかし、豊かなる土壌や水源を有する地は既に塔の民たちによって開発された後でした
残った土地は荒地か砂漠のみ

かくして愚かなる民どもは流浪の民族になりました
そして、略奪と殺戮を繰り返すようになります

愚かなる民どもは世界中から嫌われました
彼らは各地で迫害され、罪に対する裁きを受けたのです

愚かなる民どもは言いました
これはきっと神が我らに与えた試練なのだ、と

我らに石を投げる者どもはやがて我らに屈するだろう
神が正当なる裁きを奴らに与え、この地の全てを我らに与えてくださるのだ

愚かなる民どもはこうして、迫害されながらも自らが選ばれし民なのだと信じ続けました
そして、時に他の人々から土地を奪い、時に他の人々から財産を奪い、時に他の人々から多くの命を奪いました


今へと連なる、昔々のお話でした

161 名前:創る名無しに見る名無し:2009/12/15(火) 21:05:09 ID:mOpaCPHZ
うまいな、バベルの塔の別解釈か?

162 名前:創る名無しに見る名無し:2009/12/16(水) 02:11:55 ID:fuRtcxeS
塔の神話=(バベルの塔+ノアの大洪水)×反ユダヤ

と見た

163 名前:創る名無しに見る名無し:2009/12/25(金) 08:17:47 ID:/1C1jaJz
「アリとキリギリス」
昔々ある所にアリさんと キリギリスさんがいたそうな
アリさんは冬に備えて 無駄遣いをしないで
せっせと働き貯金をして 家を作っていました。

キリギリスさんは、そんな アリさんを横目に道楽やギャンブルに
お金をかけて 貯金もせず、家も作らないで遊んでいました。
そんな時に季節外れの雪が降り、アリさんは暖かい家の中に入りました。

キリギリスさんは、貯金もせず、家も作らないで 遊んでいたので、寒空の下
こう叫びました。

「僕がこうなったのは 国や会社が悪い。住む所や 食べる物をよこせ!」

キリギリスさんはアリさんの家に行き家の中に入れてと頼みましたが
アリさんは「どうして、道楽やパチンコ、携帯のパケ代などにお金を使って、
家を作るお金貯めないの?自業自得だよ!迷惑だから帰れ古事記が」と
塩を撒きながら怒鳴りました。

キリギリスさんは 借りていた部屋を追い出されホームレスになろうと
しています
アリさん達は楽しいクリスマスを迎えようとしています

そこへカマキリさんが現れ「あなたににもできる〜生活○護申請マニュアル 」
なる悪知恵本を渡しました
キリギリスさんはこれで優雅に暮らしました、
年金も払わず、貯金もしなかったのが返って幸いしたと感無量でした
キリギリスさんは言いました。
「やっぱり働かないって 良いことだったんだね」

一方アリさんは折から不況と物価高で貯えも底を尽き、ささやか年金で
青色吐息な生活に陥りました
日本は本当に素晴らしい国ですねぇ、めでたし、めでたしwww

164 名前:創る名無しに見る名無し:2009/12/26(土) 04:00:17 ID:FyJTk7tz
もし風刺の教科書があったら載ってそうな感じだ

165 名前:創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 18:26:40 ID:JcYBb8vH
アリはカビやコケ、あと砂糖なんかも食うけど基本的には肉食。
キリギリスがアリの巣に食い物ねだりに行くのは例えて言うなら
マンモスが原始人の住み家に食い物ねだりに行く様なもの。
マンモスは槍に、キリギリスは蟻酸にやられてめでたく食料に。

166 名前:創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 00:28:28 ID:zN12EEN0
街を見下ろす小高い丘の上にある牧場、そこが少年の仕事場だった。
彼は羊飼い、羊達が安全に牧草を食む事が出来るよう管理するのが彼の業務だ。

一見いかにも牧歌的で平和そうな印象を受ける職業であるが、実際には非常に高い技量を要求される危険な仕事であった。
まず大量の羊達が一匹でもはぐれないよう常に意識を配らねばならないし、
加えて牧草地に隣接する森林地帯からの肉食獣の侵入にも警戒しなければならない。
就業時間中は常に緊張を強いられ、絶えず神経を張り巡らせて羊達の安全を確保する。
天候の変化にも気を配り、雨が降り出す前にはもう牧舎の中に羊を追い終えていなければいけない。

これだけでも常人より遥かに強靭な意志の力と集中力、直感と経験を求められる内容である。
更には有事の際、その身に代えても羊達を牧場の柵の内側まで誘導する事も羊飼いたる少年の使命なのだ。
正に滅私奉公、もはや「仕事」の範疇を超えている。
未成年には過酷過ぎる労働条件であった。

しかし相棒の牧童犬と共に仕事に臨む少年は不満一つ漏らさずに、自らの仕事に誇りを持って当たっていた。
少年は孤児で、教会の口利きで羊飼いの仕事を斡旋されていた。
この時代に、身寄りの無い子供が仕事と暮らしの糧にありつけるだけでも幸せだと少年は思っていたのである。
街の共有財産である羊の管理を任されている事に人々からの信頼を感じて、それを励みとして頑張る事も出来た。
家庭の温もりも両親の愛情も少年には無かったが、夕暮れの街に燈る家々の灯りの一つ一つが彼にとっては家族だったのだ。
毎日仕事を終えた後、日の沈む街並みを丘の上から見渡すことが少年にとって一番の楽しみだった。

167 名前:創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 00:29:46 ID:zN12EEN0
少年の亡父は狩人で、亡母は占い師だった。
彼は両親の持つ優れた才能を一つずつ受け継ぎ、その仕事において発揮していた。
すなわち、在りし日の父親に教わった動物の習性や自然現象全般に関する知識と、母親譲りの鋭い感性・直感力である。

雲の動きや風の流れから天候の変化を知り、植物の生育状況や付近の動物のフンの形状・臭いなどから周辺の植生や肉食獣の活動周期を予測した。
また、超人的な直感力で予期せぬ狼の襲撃や山火事を未然に防いだ事もあるし、時として山賊の襲来や隣国の斥候までも知略で退けた事があった。
いずれも少年が手を打たなければ街全体が大きな被害を蒙ったかもしれない大規模な異変だった。
少年は羊飼いの仕事と共に、そうした異変や災厄から人知れず街の人々を守る事に密かな幸福と充実感を感じて暮らしていた。

ある年のこと。
折からの天候不順により、山の麓から森林地帯全体にかけて著しい植生の乱れが生じた。
北に行くほど動植物の栄養源となる各要素が貧弱となり、日を追う毎に動物達は森を南下してきた。
人里も例年より不作で、食糧事情は非常に厳しいものとなっていた。
冬を前に人々の苛立ちと不安は募り、街全体で互いを見張り合うように食料の保管に気を配っていた。
ピリピリとした嫌な空気が地域全体を覆っているのを少年は感じた。
少年は異変への対策の為、仕事の合間に森に分け入り、植生調査を経てある確信を得る。

168 名前:創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 00:31:54 ID:zN12EEN0
森の食糧不足により人里近くまで南下してきた動物達。
当初は牧童犬と共に知恵を尽くして対処してきた少年であったが、日を追うごとにその数は増し、一人と一匹では追い払えない規模になる。
少年は警鐘を打ち鳴らし、街の人々を集める事で動物の侵入を防ぐが、連日のように発せられる警鐘はやがて誰からも見向きされなくなる。
羊飼いが警鐘を発するタイミングは、獣達が森から出て来ないように事前にその五感で人間の気配を察知して引き返せるように
設定された絶妙のものであった為、街の住人には動物が視認出来ず、空警鐘と見做されるものであったからである。
少年に対する心象は日を追うごとに悪化し、中には公然と罵声を浴びせかける者まで現れた。
しかし、獣達がひとたび森を出てしまえばその勢いを止める事は容易ではなく、
直前で引き返させる現状のタイミングは最善の対処手段であった。

やがて、ついに警鐘を発しても誰一人駆けつけなくなった時、少年は自らを獣達の前に投げ出し、羊達と共に喰い殺される。
羊飼いが死力を尽くしてその日まで守り抜いた羊達は、牧草を安心して食む事が出来た為に丸々と肥え太り、獣達の胃袋を満足させた。

少年は最初からこうなる事を覚悟していた。
街の住人から嘘吐き呼ばわりされるのも計算の内だった。
どんなに人数を集めても、いつか獣達は防ぎきれない規模に膨らむ。
であれば、そうなった際に戦闘によって多数の犠牲が生じる事を防ぐ為にも、折を見て獣達の胃袋を満足させねばならない。

そして獣達もまた生きている。
数を頼みに対処できるうちに大規模な狩りを行う事も出来たであろうが、少年はあえて街には猟伐隊を要請しなかった。
今年の天候不順による植生の乱れは周辺全土の動物にとって致命的な規模のものだった。
狩り出して数を減らしてしまえば森から完全に姿を消してしまう獣も多数いただろう。
自然の中で生きている人間は、例え石造りの街に居を構えてもその恩恵に対する感謝と配慮を忘れてはならない。
亡き父からの教えをその身をもって実践した羊飼いであった。

勿論、管理対象である羊を全滅させるような真似もしてはいない。
獣に喰われる際に少年は自らを囮として獣達を柵の中に誘導する一方、牧童犬に命じて子羊や繁殖に必要な最低限のつがいを牧舎に避難させていた。
獣達の胃袋の具合と、羊達の生育状況、街の住人が駆けつけなくなるまでの忍耐の限界。
全てを計算し、見事に調整して見せた少年は誰からも称えられる事無く死んでいった。
それこそが彼の望みだったからだ。

人知れず街の人々を異変や災厄から守り抜くこと、生涯を通じて彼が誇りとしてきた密やかな楽しみ。
その聖域は穢される事無く、羊飼いは嘘吐きの代名詞「狼少年」として今日まで語り継がれている。

169 名前:創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 00:47:16 ID:cURTHgYL
乙!
誇りある生き方だなあ
保身を考えず自然の生態系の中に身を捧げた少年はきっと誇りを貫けて幸せだったんだろうけど
彼が生に執着したくなるような繋がりが街にあったらどうなったろうかと思うと少し哀しい
少年という守護者を失った街はどうなるのかとか考える俺はきっとヨゴレた大人だw

170 名前:創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 02:44:48 ID:zN12EEN0
即レスに驚いている、そしてありがとう。
最後の行に関しては完全に同意するけれど、その答えはこちらからは用意出来ない。
何故なら、この物語は
……と、言う夢を見たんだ。で締め括られる、この間みた夢の話だから。

その日は友人に強く勧められて求文史記という本を読んで、その影響がモロに夢に出た。
街外れに暮らし、人知れず異変を解決する狼少年の姿は、借りた本の中に登場した神職の少女と重なる部分が多い。
目覚めても鮮明に記憶に残る少年の数々の活躍を、忘れぬうちにと書き留めて、その日は会社に遅刻しそうになった。

羊飼いという仕事はキリスト教社会の中では賎民の職分である一方、神職にも通じる特殊な社会的敬意を払われていたという。
そして街と原野/森林の境目で暮らす少年の生活環境は、文明と神秘の境界という立地条件にもあった。
未発達な社会と科学、宗教を中心とした秩序。
石造りの都市が立ち並ぶ反面、未だに実しやかに信じられている妖精や悪魔といった不可思議な存在。
以前から関心のあった世界観と、借りた本の内容や雰囲気が符合した為にみたのだと思う。

夢ネタを、ロクに推敲もせずにメモのまま書き写してレスしたから、拙さを不愉快に感じる人もいるかもしれない。
と、言うか人がいないものだと思ったから書き込んだ、書き捨てるつもりで。
スレに住人がいて驚いている、そしてレスありがとう。

171 名前:創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 05:27:10 ID:cURTHgYL
この話のその後の話は読者がそれぞれ考えればいいものと思いますよー
羊飼いってそんな風に見られていたのか……勉強になります

172 名前:創る名無しに見る名無し:2010/05/19(水) 19:29:21 ID:sEAeK7pb
ふと思った事。桃太郎と金太郎を同列に語るのはおかしい。
桃太郎は犬・猿・雉を従えて鬼退治に行った。それに対し
金太郎は源頼光に従う四天王の一人として鬼退治に行った。
つまり金太郎の立場は犬・猿・雉と同列と言う事になる。

173 名前:創る名無しに見る名無し:2010/07/02(金) 18:14:39 ID:8RPkMwGL
【 アリ と キリギリス 】

アリさんたちは、春も夏も秋もずっと一生懸命働いていました。
キリギリスさんはその間、ずっと遊んでいました。

冬になりました。

食料無くなったキリギリスさんは、とってもおなかが空いてしまいました。
オマケに寒波襲来で寒くて寒くて。

キリギリスさんは、何か分けてもらおうとアリさんたちの家に行きました。

コンコンコン、とドア(童話なのでアリの巣にもドアがあるのだ)を叩くキリギリス。
外は吹雪、凍えてしまいそうな寒さです。おなかもぺこぺこのキリギリスさん。

がちゃ、とドアが開きました。

「やあ、キリギリスさん、どうしたんだい?」
アリさんたちは笑顔です。

「あの、ボクはおなかぺこぺこなんです。何か分けてくれませんか?」
キリギリスさんは、ひもじそうな声で言いました。

アリさんたちは困った顔をしました。
だって食料はアリさんたちだけの分が精一杯。
一年中働いてもせいぜいそれだけ溜め込むのがやっとなのです。
税金や年金、保険料その他でいっぱい吸い上げられてしまうのですが、それはまた別のお話し。

「いや、キリギリスさん。ボクたちもやっとなんだ。君に分けてあげる余裕はないんだよ」
アリさんは丁寧だが、はっきりと拒絶しました。

「そこを何とか! このままじゃボクは死んでしまう!」
キリギリスさんは血走った目で、必死に縋りつきます。

「でもねキリギリスさん、君はボクたちが一生懸命働いている間、遊んでたじゃないか。ちゃんと働けばよかったんだよ」
そう言ってドアを閉めようとします。

「待ってください! お願いします! お礼はしますから何か恵んでください!」
キリギリスさんはドアに縋り、必死に懇願します。

困ったアリさんたちは顔を見合わせました。
そしてなにやらゴニョゴニョと話し合いをしました。

数分経って、アリさんたちはキリギリスさんに向き直りました。
みんな満面の笑顔です。

「わかったよキリギリスさん。とりあえず中にお入り」
そう言ってアリさんたちは、寒さに震えるキリギリスさんを巣穴に迎え入れました…。


…その日の夜。

アリさんたちの晩餐のテーブルに並んだのは、あのキリギリスさんでした。
キリギリスさんの羽や足、あの美しい歌声を出す喉も丁寧に調理され、
アリさんたちはそれらを心ゆくまで味わいましたとさ。

めでたしめでたし。

174 名前:創る名無しに見る名無し:2010/07/02(金) 18:56:24 ID:JietMyck
エグイwwwエグイよwwww
でもこのエグさが原典っぽいww

175 名前:創る名無しに見る名無し:2010/07/02(金) 20:29:17 ID:cocPrBiI
リアル・アリとキリギリスw


176 名前:創る名無しに見る名無し:2010/07/13(火) 19:14:25 ID:lwv+MBAR
「裸の女王様」
むかしむかし、ある所に美人だけどとってもワガママな女王様がいました。
いつも女王様のワガママに振り回されっ放しの家来たちは、ある日仕立屋と
結託して女王様に一杯食わす事にしました。「バカには見えない世界一
美しいドレス」と女王様を騙し、大勢の国民の前を全裸で歩かせる事に
見事成功したのでした。しかし、その場にいる国民全員が「おぉ〜、何と
美しい!」と一斉に褒め称えた為、女王様のワガママは直らなかったのでした。

                     めでたし、めでたし。

177 名前:創る名無しに見る名無し:2010/07/16(金) 00:19:59 ID:sAlOSWxz
その国にいるのはエロ親父ばっかりかww


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