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温泉会へご招待 ~『温泉界ヲ制圧セヨ!!』~

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温泉界へご招待 ~『温泉界ヲ制圧セヨ!!』~



「……ほらほら立つんだよ怜角!! まだ稽古は半分も終わっちゃいないよ!?」

ぐったりと土俵に伸びた怜角をその逞しい腕で掴み上げた慈仙洞嵐角は、再び容赦なく強烈な張り手を放つ。華奢な怜角の身体はまた木の葉のように舞い、ドサリと固い土俵に叩きつけられた。

「……も、もう……勘弁して下さい……」

初めて怜角が洩らしたか細い懇願に嵐角はその鋭い眼光をかすかに和らげる。地獄相撲横綱である彼女の『可愛がり』にここまで耐えた鬼は最近では珍しかった。

「……ま、まだ勤務があるんです……」

「ふん!! まともな相撲もとれないで獄卒気取りとは片腹痛いよ!!

仮にも地獄の鬼ともあろう者が相撲に興味が無い、などという事が有り得るのだろうか。かつての地獄の戦士たる獄卒たちはみな、男女を問わず亡者そっちのけで相撲道に邁進したものだ。
しかし名誉ある閻魔大帝杯の御前大会に出場する鬼さえ最近ではめっきり減り、地獄角界では文字通りの嵐角の『一人相撲』が続くようになって久しい。

「ふん、うまいこと言って、どうせ高瀬中尉といちゃいちゃするつもりなんだろ!? まったく最近の新人連中は……」

そして嵐角の常識では、鬼の恋愛などというものは相撲の稽古や博打のあとの酒盛りで、酔いつぶれた異性をズルズル物陰へ引きずり込むものと相場が決まっている。
相手の酔いが浅いときは金棒で頭をガツン。それが両者の雌雄を決する死闘に発展すればなお良し。食事だの映画だのとチャラチャラ遊び歩くのは断じて鬼として恥ずかしい行いだ。

「そりゃそりゃあ!!」

再び長い黒髪を振り乱して吹き飛ぶ怜角。嵐角は確かにこの若い女鬼、生意気にも自分が敬愛して止まぬ偉大な鬼『藤ノ大姐』から藤の字を賜った新人、千丈髪『藤ノ』怜角がいささか気に食わない。

だがわざわざ閻魔庁外宮まで出向き、武術指南と称してこの稽古場までむりやり怜角を引きずってきたのにはもうひとつ大事な目的があった。
それは嵐角に言わせれば獄卒隊の一大失態、例の『視姦獣』天野翔太を怜角たちが無様に取り逃がした事件の真相究明だった。

「……それはそうと怜角、そろそろ『視姦獣』の一件、あたしにも詳しく聞かせてくれないかねぇ?」

「あ……あの事件の詳細は殿……統括長官閣下直々の命令で他言無用となっております……」

もはや意識朦朧の怜角だったが、この質問には堅く唇を閉ざした。だが浅黒く精悍な顔に凄みのある笑みを浮かべた慈仙洞の守護鬼は、厳しい追及の手を緩めようとはしなかった。

「……ほほう、命令遵守とは感心だね。それじゃ褒美をあげなきゃいけないねぇ?」

強靭な二本の腕が怜角の両足首をがっちりと掴む。一瞬の後、怜角の目前には天地の逆転した世界があった。軽々と逆さ吊りにされた彼女は空しくもがいたが、全ての魔素を遮断する神聖な土俵の上、恐るべき黒髪の妖力も武器にはならない。

「……『股割り』って知ってるかい? あんたどうも四股踏むの下手だから、私が股を割っといてあげるよ……」

「ち、ちょっと待っ……」

抵抗する間もなく股関節を襲う激痛に、怜角はたまらず掠れた悲鳴を上げた。ほぼ水平に開いた脚の間から、メリメリと嫌な音さえ聴こえそうな馬鹿力だった。

「ひ、いいい……」

「……ほらほら、あたしは熊でも真っ二つに裂いちまうんだよ? 大事な股が裂けたらあんたも困るだろ?」

困る。確かに困る。こんな理不尽なしごきに屈するのは癪だったが、ようやく虎縞下着の噂が下火になってきたというのに、このままでは『グリモワール』に

【千丈髪藤ノ怜角】 地獄の鬼。下半身に関する滑稽な逸話を数多く持つ。

などと記載されてしまう。それに、慈仙洞嵐角は事実上の獄卒隊ナンバー3なのだ。あまり逆らうのはどう考えても賢明ではない。

「……い、言います言いますっ!! 誤爆霊天野翔太は異世界……『温泉界』という所に……」


「『温泉界』ねぇ……」

あれから可哀想な千丈髪怜角を引っ張ったり振り回したりして全てを白状させた嵐角だったが、どう考えても信じられぬ話だった。
しかし仮に怜角の話が真実なら、温泉界とやらで天野翔太を匿っているという全裸ロリごとき、嵐角には恐るるに足りぬ相手だ。
地獄界の婦女子を恐怖の底に陥れた『視姦獣』とその一味をひっ捕らえ、颯爽と凱旋する慈仙洞嵐角の姿。怜角から得た情報と自らの強力なテレポート能力があればその勇姿は容易く現実のものとなる……

「……よおし、一丁暴れてやるかね。チャナ、ちょっとおいで!!」

均整のとれた巨躯にサラシと褌を巻いた女鬼はニヤリと牙を向き、留守番を命じるためハスキーな大声で部下を呼びつけた。

続く?




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