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ファースト・コンタクト

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ファースト・コンタクト

こんにちわ!ボクの名前はユキチと申します。
まだまだ未熟者ですが、こう見えてもスーパーヒーローの卵なんだ。

今日は健康診断で箱庭小学校に呼ばれてます、

「お医者様ですね?こちらです。」

橋本先生という女の先生がボクを案内してくれた。

(次の人で最後か。)
商店街の関係者も集まったとあって、想像していた以上に大仕事だったよ。

「息を大きくすって。」

聴診器を胸にあて肺の音を聞く。

「異常なし」と……。

「ユキチ先生もあの館の人なの?」
「そうだよ 。」
「お母さんがあの館は変な人が多いから近寄っちゃいませんって」

そういえば
あの館にはボクらの他にも多くの住人がいるらしいんだけど、
ライフサイクルが違うのか、
あるいは既に何か逆鱗に触れ、館八分に合わせれているのか
まだ他の住人と顔を合わせたことはないんだ。

「わざわざすみませんでした。」
橋本先生がニコリと笑う。
(人の笑顔っていうのは良いもんだよなぁ。)

「いえ、医者として当然の事をしたまでです。
 また何かあればいつでもどうぞ!!」

軽い足取りで夕暮れの箱庭館に戻ると、小さな女の子が食堂で料理をしている。
(管理人さんの娘さんかな。)
お手伝いなんて感心感心。
あんまり良い匂いはしないけど、何を作っているのだろう?
鍋ではグツグツと黒い物が煮込まれているんだ。

「わたしのなまえは、ゆゆるです。」
「初めましてボクはユキチといいます。」
「これは何を作ってるんだい?」
「たべますか?」

答えを聞く前にスープをお皿に注がれてしまったら、断れるわけないじゃないか。

「どうぞ」

このヘドロのようにヌメヌメしたスープ(らしきもの)を飲めと言うんだね。

(いや待てよ。)
料理は味が命じゃないか

「たべてくれないんですか?」

もしかしたら、
味に全精力を注ぎ込んで匂いのことまで、気が回らなかったのかもしれない。

「いただきます。」
両手を合わせてから、スプーンを握りスープを口に運ぶ。
恐る恐る飲み込んで、前言撤回をさせてほしい。

(これはひどい。)

「どうですか?」
(でも待てよ。)

率直な感想を述べて良いものなんだろうか。
こんな小さな女の子が、お父さんのお手伝いを一生懸命しているんだよ。
味なんかより、気持ちの問題なんじゃないだろうか。

仮にも正義のヒーローを目指すボクが、
少年少女の気持ちを傷つけてまで感想を述べたとして、
それが果たして良いことなのだろうか。
「どうですか?」

この純粋でピュアな瞳を見てごらん。
どこかのギャル風ダークヒーロー希望者(エレボス)と違って、こんなに綺麗な目をしてるじゃないか。

でも正義のヒーローとして嘘をつくことは許されないんだよね。

(どうしたら良いんだろう。)

こんなときのことは、ジライヤ先生にも教わっていないんだ。
(正解なんてあるんだろうか。)

どうする。考えるんだユキチ……。
お前はヒーローを目指すんだろう。
(こんなことは、これからいくらでもあるんだ。)
さぁゼミや授業で学んだその知識を思い出せ、思い出すんだ。

「個性的な味で好きな人は好きな味だよね。」
色々考えてみたんだけど、今のボクにはこれが精一杯。
きっとジライヤ先生や、アカカゲ先生ならもっと上手いこというんだろうけど……。

「ほんとですか。」
(ん?)

作った本人がもの凄く驚いてるってどういうことだ。
「おかわりもたくさんあるから食べてください。」

そのとき、フラっと眩暈がする。
なんだ急に力が抜けてきた。
「参考までに聞くけどこれって何が入ってるの?」
「きんぱつのおねえさんから、
 とってもきもちはよくなるスパイスをもらったのでいれてみました。」

な……なんだ……
力が…抜け……。

「教えてくれて、ありがとう。」
ここで倒れることは許されない。
自分の作った料理にそんなものが仕込まれていると知ったら、ショックを受けることだろう。

「あ……り…が…と…… 」

意識をしっかり持たなければ……。
針で秘孔を突いてみたけど駄目だ。

「あれ ユキチさんもうねるんですか?」
「う……、うん……。」

駄目だ。まだ寝ては駄目だ。
「おやすみなさ~い。」

薄れゆく意識の中、ボクは彼女を見送った。

終わり

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