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倉刀の敗戦処理大作戦の続き

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倉刀の敗戦処理大作戦の続き

 前回までのあらすじ。
 あれ? 記憶のやついねえじゃん。

「ていうか、本当にあれれ?
 え~と、でも今はさみさんが元気だってことは、おつかいは無事に終わったわけだよね?」

 えぇまあ。>>159で油が手に入ってるという事は、多分そういうことかと。

「ナレーションさん、おつかいの時にも地の文担当してたよね?」

 あの後、なんか有耶無耶になっちゃいましたけどね。
 オードリーネタも適当にやっただけなんで、ぶっちゃけ。

「……え? その後は?」

 わかんねえです。正直、付き合いきれなかったんで見棄てちゃいました。
 あいつ一体どうしたんでしょうねえ……。



「え? あの変な人なら、商店街に来たよ」

 そう証言したのは、商店街の八百屋の息子である原野菜斗君。
 この子も何だか久しぶりだねぇ。

「いやマジで。もうね、ぼく二度と出番が来ないのかと思ってたよ」
「それはごめん……。でも出番があったとしても碌な目に遭わないと思う」
「……それはそうかも」

 やたら肩を落っことす二人です。
 なにしろ主な被害者の言うことなんで非常に説得力がありますね。倉刀、哀れな。

「じゃなくて……。
 菜斗君、へげぞさんのその後の足取り、しらない?」

 近頃は子供相手のコミュニケーションスキルも上達した倉刀が、優しく問いかけます。
「ぼく、しらないよ」
「どんな些細な事でもいいよ? 一応同居人だからね、心配なんだ」
 しかし何といっても、箱庭の町では悪名轟く箱庭屋敷の住人です。初めは倉刀を警戒していた様子の少年でしたが、やがておずおずと口を開きました。

「ううん、やっぱりしらない……けど、多分」

 しかし、菜斗君の反応は意外なものでした。

「多分?」
「多分……あの人は」


「あの人は、『蟲隠し』に遭ったんだと思う」


「むし……かくし?」

 耳慣れぬ単語を反芻するように、倉刀は呟きます。
 菜斗君は迷信を面白がるように、けれども血の気の引いた青褪めた顔で続けます

「うん、そうだよ。
 この町で人がいなくなるのは昔から『蟲隠し』の仕業なんだ」
「……その『蟲隠し』ってのを、僕に詳しく教えてくれるかい?」

 剣呑な気配を感じ取った倉刀が静かに問いました。

「うん。
 『蟲隠し』ってのは、この町に伝わる迷信みたいなものなんだけどね? 時々突然に人がいなくなる事は、昔から本当にあるんだ。
 ……そういえば、最近も」
「人が……消えたっていうのかい?」

 倉刀が唾をゴクリと飲み込みます。
 人も疎らな商店街を、生暖かい風が吹き抜けました。

「うん。去年の秋頃の夜中、だったかな?
 ……いなくなってすぐはね、誰も気付かなかったんだ。
 数人が楽しく遊んでて、夜更けになっちゃったからお開きになった。
 みんながその事に気付いたのは翌朝さ」


『あれ? そういえばあいつは?』
『いわれてみれば、途中から見なくなったよな』
『呼んでみるか。おーい!』


「そいつの返事はなかった。
 でも、その内に誰かが……いなくなった彼の声だけが聞こえる事に気付いたんだ」


『俺はここだよ!』
『誰か気付いてくれ!』
『おーい!』


「変だ? 何かがおかしい? 誰もがそう思った。
 やがて『蟲隠し』の正体に気付いた一人が、いなくなった彼に手を差し伸べた!!」

 菜斗君は、そこで言葉を区切ります。
 倉刀は拳を固く握り締め、真剣な顔で聴き入っていました。

「そ、それで?」
「そう、それで」

 菜斗君は悲しそうに目を伏せました。

「その差し伸べた手のおかげで、いなくなった彼は戻ってくる事が出来た。
 でも……戻ってきた彼は、変わってしまったんだ……そう、




 見 る も お ぞ ま し い 、 串 の 姿 に ! ! ! 」




「ぎゃああああああああ!!!」

 きゃああああああああ!!!

[―{}@{}@{}-]「いやあああああああ!!!」



 …………。
 こんなオチ。
 まあ、世の中そんなもんです。


「というわけだから、夜中にあんま無茶すんなよってことで」
「な、なるほど……」

 倉刀はまだ胸を押さえてゼイゼイいってます。かっこ悪いねえ。

「って! それじゃ、へげぞさんは?」
「よくわからないけど、時空の歪みに巻き込まれたんじゃないかな?」
「時空の、歪み?」
「うん。『蟲隠し』が起きる時はねえ、必ずそれがカンソクされるって、ほとりせんせーが」

 あぁ……なるほどね。
 なんかわかっちゃった。

「もう話はおっけ? ぼく、これから遊びに行くんだけどなぁ」

 おかげさまで事情は概ね把握できました。
 もういいよ、ありがとね。

「はーい、んじゃね!」
「ちょ、ちょっと!? 僕はまだ全然全くこれっぽっちも話が飲み込めていないんですが!?」

 君も察しが悪いな。
 なに、簡単なことだよ倉刀君。
 1.へげぞ氏は蟲隠しにあった。これはわかるね?

「迷信の信頼性はともかくとして、そこはわかりますよ」

 2.1にもかかわらず、おつかいは無事完了している。
 ……要点はこれだけだ。
 この二つの矛盾を君はどう説明する? ヒントは時空の歪みだよ。

「……ちょっと、待って下さいよ。
 まさか、そんなSF的展開が……」

 ところで倉刀君、後ろを見たまえ。

「後ろって……………………ゎぉ」

 振り返った倉刀が目を向けた先。
 立ち並ぶごく一般的な商店に紛れ込むようにして、しかし不思議な存在感を放出する一つの看板があった。
 そしてその看板にはこう書かれている。


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