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エクストラオイル(略)のちょっとした続き

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エクストラオイル(略)のちょっとした続き

 はさみさんがダウンして、暫く後の事です。

「まぁ……何はともあれ、丁子油は手に入ったな」
「色々なものを犠牲にしましたけどね……」

 何だかやつれた様子で呟く師匠と弟子です。
 あの後。
 記憶さんは、無事に丁子油を手に入れてきました。
 はぢめてのおつかい、コンプリートです。
 しかし……その為によもや、あのような……いえ、ここではやめておきましょう。
 いつか誰かが、その辺りのエピソードを詳しく語ってくれる筈です。

「では早速、油を塗ってやるとしようか。」
「そうですね師匠。とっても辛そうです」
「うぅ……忝いです」
「それは言わない約束だ。ほれ、私の掌に乗るがいい」

 ぐったりとした様子のはさみさんは、いわれるがままハルトシュラーさんの掌の中に収まりました。
 その表情は苦悶に曇り、じっとりと湿った額には柔らかな前髪がはりついています。
 陶磁人形のような白い手が、乱れた服の襟元を固く掴んでふるふると小さく震えました。

「フフッ、怖がらなくて良い。もっと力を抜け?」

 言って、丁子油を少量だけ鋏の根元辺りにたらします。

「あ、はい……んっ!」
「冷たかったか? すぐに楽になるからな」

 苦しいのかくすぐったいのか、眉をしかめて身をよじるはさみさんです。
 その動きに、燕尾服の長い裾が大きくはだけました。
 ハルトシュラーさんは刃で指を傷つけぬよう気をつけながら、油が満遍なく渡るよう懐紙で伸ばしてゆきます。

「い、息を、吹きかけないで下さ、んんっ!」
「む? あぁこれはすまなかった。刀剣鑑賞の作法だったな」

 言って、ハルトシュラーさんは白いレースのハンカチを取り出すと、それを畳んで口に咥えました。

「……お手数をお掛けします」

 申し訳なさそうに俯くはさみさん。
 ハルトシュラーさんは、構わない、と言う様に首を振ります。
 その拍子に肩に掛かっていた御髪がさらりとこぼれ、それは銀色のカーテンのように二人の顔を覆い隠すのでした……。

「…………」

 あれれ? 倉刀の様子が少しおかしいです。

「あの……こんなの、僕には無理ですよぅ……」

 おやまあ。
 なんと情けない。

「か~っ、お前はそれでも男か!」
「で、でもぅ……」

 管理人が倉刀を叱ります。勿論、彼はその間も視線は放してません。
 萎れた様にもじもじと目を逸らしている倉刀ですが、時々気になるように二人を窺います。
 ハルトシュラ-さんも、久しく出会えた名刀のさわり心地にご満悦の様子。まだまだはさみさんを解放する気はなさそうです。
 あぁ、何だかとっても気持ちが良さそうですね。指の動きに合わせて小さく可愛い声を漏らしています。
 それはとっても平和な、箱庭屋敷でのひとときなのでした。

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