創作発表板@wiki

温泉界へご招待 ~シオン・エスタルク~

最終更新:

mintsuku

- view
だれでも歓迎! 編集
Top > 【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】 >温泉界・温泉界へご招待 ~シオン・エスタルク~

温泉界へご招待 ~シオン・エスタルク~


「それは確かかシュヴァルツ?まあ貴様が催眠術を仕掛けて読んだのであればまず間違いあるまい。まずいことになったな…」

場所は件の大広間。朝霧とのやり取りを終えて戻ってきたシュヴァルツは残りの6人をこの大広間に集めて忍者軍団が2日後に総攻撃を仕掛けてくるという
情報を報告したのである。湯乃香たち7人の傷が癒えるのはどんなに早くても3日後。シオンの話では傷というのは人間が本来持っている自然治癒力で治すものであり
傷薬はそれを手助けしているに過ぎない。これ以上強力な薬を添付すれば身体に却って負担がかかってしまうのだとか。
忍者軍団の全兵力は未知数だがいずれにせよ手負いの7人を守りながらおそらくは数十人を数えるであろう忍者軍団を相手取り戦うのはいかな告死天使といえども
苦戦は必至であった。何より、7人を危険にさらすことになる。しかし、裏を返せば忍者軍団は現在その総攻撃のための準備に勤しんでいるはずである。ならば ―

「取るべき策は一つだ。奴らが総攻撃を仕掛けてくる前に我ら告死天使がこちらから出向き叩き潰すのみだ」

攻撃こそ最大の防御。総攻撃を仕掛けられる前にこちらから奇襲をしかけて忍者軍団を壊滅させようというのだ。
幸い、忍者軍団のアジトの場所もシュヴァルツの精神感応により特定できている。湯乃香に温泉界全域を把握できる大きさ6畳にもなる
地図を用意してもらう。現在地である大広間から南東南およそ5km地点に忍者軍団のアジトは構えられていた。
しかしそんな長い距離もこの地図の上ではほんの数センチでしかなく、この温泉界がいかに広大であるかを物語っていた。
その地図をもとに作戦会議を開始する。まず、敵のアジトの位置を地図上に書き記す。奇襲をかけるならば正面から8人全員が突入するのではなく、一人ずつ
別々の場所から侵入し、敵の戦力を分散し各個撃破してゆくのが理想だろうという結論に至った。
だが、もしもこの奇襲作戦が失敗すればいよいよ忍者軍団が総力をあげてこの温泉界を制圧にかかるだろう。そうなれば、いまだ手負いである湯乃香たちは
なすすべもない。しかし、ここで動かなければどのみち2日後に総攻撃を受け制圧されてしまう。ならばたとえこの策が諸刃の剣であろうとも、
今動くしかないのである。アリーヤが告死天使のメンバー全員を集めて円陣を組む。そして、任務にあたる際、事前に必ず行うという儀式を始めるのだった。

「悉く者の創造主たる我らの主よ、主の下僕たる我ら告死天使に主のご加護を与え給え。そしてこの戦を勝利に導き給え。神の御名に」

そしてついに作戦開始の時刻が迫ってきた。戦いの地へと赴く告死天使を温泉界メンバーを代表して湯乃香が餞別する。

「みんな絶対無事に帰ってきてね。みんなが帰ってきたらとっておきの温泉を用意してあげるからね」

そして、握手を交わしてゆく温泉界メンバーと告死天使たち。その中でも敬虔なキリスト教徒であるシオンは握手だけではなく一人ずつ抱擁とともに
彼らの頬に口づけた。天野翔太ら男性陣は彼女のキスに顔が真っ赤になっていた。
彼女がキリスト教を信仰するのには理由がある。彼女の父であるイスカリオテ・エスタルクが狂信的なまでにキリスト教を信仰し、
24年前に産まれた実の娘にキリスト教の聖地、エルサレムの歴史的地名である『シオン』の名をつけるほどであった。
そんな父親のもとで育てられた人間がキリスト教を信仰するのは自然の摂理である。ちなみに父は45歳といまだ存命だが親子関係は破綻してしまっている。
父・イスカリオテは告死天使の一員であるシオンを文字どおり神から遣わされた天使として絶対的に崇拝しているからだ。
シオンと顔を合わせようものなら彼は額を地につけて跪き顔を全く上げようとしないのだ。
シオンはこれについて、

「心の問題は私の医術ではどうにもならないな。シュヴァルツ君にでも治してもらおうか。無駄だろうがね」

と語っている。そんな親子関係に絶望しているシオンには憧れているものが一つある。聖ニコライ孤児院の子供たちである。
彼らはみな孤児ではあるがみな幸せそうに暮らしている。一か月に一度の定期検診に窺う時はいつも生き生きとした子供たちの顔を見ることができ
その様子にシオンの顔もおのずと綻ぶ。そして思うのだ。ゲオルグやイレアナたちという素晴らしい保護者にめぐり合うことができた彼らは本当に幸福だと。
それを証明するものの一つにこんなデータがある。子供たちの健康診断の結果だが、どの子の健康状態も極めて良好なのである。
もちろんたまには風邪をひきシオンの病院にゲオルグやイレアナに引き連れられてやってくる時もあるが、扁桃腺の状態と鼓動を確認し、
あとは風邪薬を処方するだけで1,2日安静にするだけで治るのである。診療も終わり、ゲオルグやイレアナと話す機会がたまにあり、その会話の中でシオンは
ゲオルグもまた孤児であることを知った。しかし、シオンはそんな彼にも一切同情や憐憫を覚えることはなかった。
歪んだ親に歪んだ教育を受けるよりは、孤児院で真っ当な教育や保護を受けるほうがよほどマシだとシオンは思っていたからだ。
彼らなら私のように暗い性格になることはない。告死天使のメンバーにたとえるならばフィオのように明るくその明るさはこのスラム、ひいては閉鎖都市全体を
照らして行ってくれることだろう。その希望の光の源を絶やしてはならないと、あの日、赤ちゃんをゲオルグ達に引き渡した後、告死天使8人だけで集まり
あることを提案したのである。様々な形で聖ニコライ孤児院を支援していくこと、そしてこのスラムが再び有事に巻き込まれた際には全力を挙げて
孤児院を守ること、である。この提案にアスナ、クラウス、セオドール、シュヴァルツ、フィオはすぐに賛同してくれたが、
アリーヤとベルクトは感情移入しすぎだと反論したが、アリーヤは13歳のときに親を殺され孤児になったところをケビンに引き取られ、
ベルクトは11歳の時に親に虐待を受けていたところをケビンに助けられた。そんな自らの過去を思い出し、アリーヤとベルクトも賛成に回るのだった。
具体的な方法として、シオンは子供たちの診察費の全額免除、アスナは自分のケーキショップ、『ブクリエ』のケーキを50%オフ、シュヴァルツは資金援助、
セオドールはブルー・スカイハイの無料ライブと様々な楽器を用いた無料音楽教室、フィオは自警団第一課課長として孤児院の警備、
クラウスはセフィリア、アリーヤ、ベルクトたちと劇を演じることが決まった。ゲオルグにこれらの案を持ちかけたところ、
そこまでしてもらう義理はないと断られたが、シオンたちの師であるケビンは生前聖ニコライ孤児院のことを気にかけていた。そこでシオンはこう切り返すのだった。

「実は今は亡き私たちの大恩人が生前あなたたちの孤児院のことを随分気にかけていたんだ。私たちはその遺志をついであなたたちを助けたいのだ」

シオンのこの言葉にゲオルグも折れ、この提案を飲んでくれた。そしてこれから先これらを実行するためにもこの戦い、絶対に負けられない。

「信頼しているよ。グランシェ、ルシェイメア」

シオン・エスタルク。絶対に負けられない彼女の戦いが、今始まる。


[[]]

+ タグ編集
  • タグ:
  • シェアードワールド
  • 温泉界

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー