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温泉界へご招待 ~暗黒の日曜日~

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mintsuku

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温泉界へご招待 ~暗黒の日曜日~


忍者軍団の再度侵攻に備えて負傷した湯乃香たち7人の治療に当たるシオンを除いた告死天使の7人は今も厳重に部屋の周囲を警戒していた。
大部隊で攻めてこられたときに一人きりでは対抗できない可能性があるとして
2人組を3組作ることになったのだがそうすると一人あまりが出る。こういう警戒任務の場合グループは多いほうがいいのもまた事実。
そこで、一人余るそのグループには協議の結果シュヴァルツが当たることになった。彼の武器は催眠術・幻術でありこれはたとえ大人数が相手でも通じるからである。
しかし、この世界は湯乃香以外にはどういった構図になっているのかわからない。これでは適切な警備が行えないということで、湯乃香にこのあたり一帯の
地図を書いてもらい、それをもとに警備する地区の割り当てや作戦を検討することになった。単独行動を取るシュヴァルツが万が一危機に陥った時に
ほかのグループがすぐに合流できるように位置関係は明確にしておかなければならない。
さて、残りのグループはくじ引きの結果、クラウス・フィオペア、ベルクト・アリーヤペア、セオドール・アスナペアとなった。
そして、いざ任務開始となった時にリーダーのアリーヤがシュヴァルツにくぎを刺す。

「いいかシュヴァルツ。我らの中で誰よりも冷静沈着な貴様なら心配無用かも知れんが大人数の敵と遭遇したらすぐに撤退して我らに合流しろ。いいな」
「わかっておりますよアリーヤさん。私だってこの短い命をそう簡単に散らすつもりはありませんし、何よりヒカリ様が待っておられますのでね」

そうして任務は開始された。告死天使として任務に就くのは実に2年ぶり、貴族たちを粛清して以来であった。
故に、7人は全員黒装束を身に纏っている。万が一戦闘状態に突入してしまった時にも備え先に紹介した各々の武器も装備している。
こうして7人は先ほど決めた配置の通りに警備に就くことになった。一方その頃、忍者軍団長老より特命を受けたくノ一、朝霧はというと…
すでに湯乃香たちの部屋の天井にて黙々と下の様子を窺っていた。

「暁たちを追い返した告死天使とかいう集団はどうやら警邏にでているようね…ここで降りて奴らを抹殺するのもありだけど今回の任務は偵察…」

そうして朝霧は足音を全く立てずに天井を移動する。天井にところどころ備え付けられた通風口から下の様子を注意深く確認する。
湯乃香たちが傷をいやす大広間を中心としてまず扉の前にクラウスとフィオ。そこからその40畳の大きな部屋の周りを残りの3組が巡回するという
警備体制だった。それを10分ほど覗き込み把握する朝霧。そして、シュヴァルツがその通風口の真下にひとり来た時、彼は巡回のコースを外れて
どこか違う場所へ向かった。ここで朝霧はひらめく。今回の任務は偵察だが、一人くらい殺しても問題はないだろう。自分は最強の忍者なのだから。
私に狙われたことを神に恨みなさい、と朝霧は通風口を降りシュヴァルツの後をつける。彼に気付かれないように慎重かつ速く歩き、その距離をどんどん縮めていく。
そしてついに刀の間合いに入るまで近づき、鞘から刀を引き抜き背後から切りかかった。朝霧の狙いではこのまま一撃のもとに首を落としているはずであった。
しかし…シュヴァルツの首を切り落とすはずの刃は果たしてその彼の左中指・薬指・親指に挟まれ抑えられていた。
さらに朝霧を挑発するように人差し指と小指を立てて左手を狐の顔に見立てる。唖然とする朝霧にシュヴァルツは冷徹に言った。

「先ほどの赤装束といいあなたといいどうやら忍者は卑劣である必要があるようですね…その手の方たちには私も容赦なく行かせていただくを得ないのですが?」
「…いつから気付いていたの?」
「最初からです。だからこそあなたをおびき寄せるために一人こうして別行動を取ったのですよ」
「大した自信ね…だけどこう見えても私、結構強いのよ。素手であるあなたに勝ち目があると思う?」
「ご心配なく。私の武器はこれですから」

と言って彼は何かそうたとえるならば蛇の鳴き声のように言語とも思われない言葉を囁いた。すると突然朝霧の全身から力が抜け、その場にしゃがみ込んでしまう。
それでも刀の柄から両手を離さずにいる姿は健気である。しかしなお蛇の囁きをやめないシュヴァルツの前についに倒れこんでしまう。
朝霧から刀を奪いその刀で彼女を殺すかと思われたが、彼は左手で刀を持ち右手をパチン!と鳴らす。その刹那、朝霧の閉じられた瞼が開く。
なにが起きたかもわからぬまま朝霧は目の前の大男を見やる。

「さて、わかっていただけましたでしょうか。私の武器を」
「…なぜ私を殺さなかったの?情けをかけたつもり?」
「あなたの精神に潜入したときに読ませていただきました。あなたには産まれたばかりのお子さんがいらっしゃいますね。だからですよ」

と、シュヴァルツは左手の刀を柄の部分を朝霧に向ける。困惑する朝霧にシュヴァルツはただ一言言うのだった。

「あなたの物でしょう。お返しいたしますよ。あなたとはまた会うことになるでしょうから自己紹介をしておきましょう。シュヴァルツ・ゾンダークと申します」
「…朝霧よ。朝に出る霧のように姿がつかめないような忍者になって欲しいという思いを込めて私の両親は名付けたみたい。よろしく…とは言えないわね」
「それならば私の名の由来もお教えしましょう。異国の言葉で暗黒の日曜日という意味です。『シュヴァルツ』が暗黒で、『ゾンダーク』が日曜日」

そして、朝霧はシュヴァルツから刀を受け取る。このまま今度こそ切りかかるという考えも一瞬だけ脳裏をよぎったが、すぐに立ち消えた。
自分と自分の子供のことを考えてその命を奪わなかった、そんな優しさを持つ男を殺すのはあまりにも忍びないし、何より背後から切りかかって
殺せなかった相手を正面からどう殺せと言うのか。刀を鞘におさめ、朝霧はその場を走り去った。その後ろ姿を眺め、シュヴァルツは思う。
―私もまだまだ甘いですね。2日後には忍者軍団が総攻撃をかけてくるというのに実力という点でその頂点にいる方を逃がすなんて。
そう、シュヴァルツが先の催眠術で読んだのは彼女に子供がいるということだけではない。2日後に忍者軍団が総攻撃を仕掛けるという情報も一緒に読んだのである。
湯乃香たちの傷が治るのは早くても3日後。さて、どうしたものかとシュヴァルツはみんなの元へと戻るのだった。


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