Main Story 久条 由樹
暗闇の中で激痛と共に目が覚めた、何が起こったのかも理解できない、 途端に怖くなった私が泣き出しそうになると、傍にいた父が私の頭を撫でてくれた。 その時、父と二人でハイキングに出かけていた私たち親子はトンネルの落盤事故に巻き込まれ、 車体は押し潰され救助を待つ状態だったのだ。
時折ミシミシを音をたて車体が歪んでゆくのが分かる、 支えていた父は苦しい顔を見せないよう痛みを噛み潰すように耐えて笑っていた。 しばらくして救助隊が到着し私は助かった、父も助かったのだと思っていた。 車体と瓦礫に間に挟まれ、半身が潰れていたなどとは夢にも思わなかった。 私はその日の夜一生分泣いた。
その日から私は良い子になった、父が命を賭けて私を守ってくれたから立派な人間にならなくてはと責任を感じた。 でもなれなかった、いくら頑張っても成績も運動も並、これといった特技も何もない、志も半ばで諦めかけていた。 あの日、ショーウインドーでAglaと出会うまでは……。 「きっと、私にはやらなきゃいけないことがあるんだ」
少女はあの日の暗闇を振り払うように歩き出した。