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悪魔編

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mintsuku

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序章 7つの大罪




7つの大罪。現世の中世以降の魔術書の多くはこの7つの大罪のそれぞれに悪魔を割り当てている。
傲慢を司るルシフェル、嫉妬を司るベルゼブブ、憤怒を司るサタン、怠惰を司るアスタロト、強欲を司るマモン、大食を司るモロク、色欲を司るアスモデウス。
これも人間の勝手なイメージかと思いきやあながちそうではない。なんとこの通りなのである。というのも500年ほど前の中世ヨーロッパの時代、
ファウスト博士と契約した大悪魔・メフィストフェレスが現世に召喚されたときにこの魔術書を読む機会があり、『人間風情にしてはなかなか面白いものを書く』と
気に入り、契約満了時にそれを魔界に持って帰ったのだ。悪魔は現世から何かを持ち帰ってきたときに必ずそれを全ての悪魔の頂点、
サタンの目に入れなくてはならないという決まりがあり、メフィストフェレスもその例に漏れず魔術書をサタンの目にかけた。
すると、大魔王サタンもメフィストフェレスと同様にそれを気に入り、この7つの大罪にそれぞれあてがわれている悪魔により一種の議会のようなものを作り
悪魔たちにとっての地獄の在り方や今後の政治(?)方針などを決定しようといいだしたのであった。それまではサタンによる実質的な独裁政権であったが
何万年もの時を経てそれが少々面倒になってきていたのだ。自分を含めた7人の悪魔でいろいろ話し合えばこれまでよりもさらに地獄は悪魔たちにとって暮らしやすく
なるだろうと考えたのである。ただ、この地獄は悪魔たちのものだけではない。閻魔陛下を頂点とした鬼たちと共存しているのだ。
互いに我々こそが地獄の覇者だといがみ合い壮絶な死闘を繰り広げた時代も過去にはあったが、今では和平し共存の道を歩んでいるのだ。
その過程で悪魔たちはサタンを、鬼たちは閻魔陛下をそれぞれ頂点とし、それぞれが決めた法をもとにこの地獄を営んでいくことになったのである。
つまり、悪魔が決めたルールは悪魔にしか適用されず、その逆もまた然りということだ。
こうして、地獄は戦史以来悪魔と鬼は大した衝突もなくそれなりに仲良くやってきて、今に至る。
さて、今日は金曜日、『大罪議会』が開かれる日であった。なぜ金曜日であるかと言うと、イエス・キリストがゴルゴタの丘に磔にされたのが金曜日だからである。
大魔王サタンが悪魔神殿・パンデモニウム内部の会議室へと入ると、そこには他の6悪魔のほかに書記を務めるリリス、メフィストフェレス、バエル、ベルフェゴール、
さらには全ての亡者たちを支配する冥府の女王・ヘルがすでに円卓のテーブルへとついていた。その円卓を時計にあてはめ、12時の位置に議長のサタン、
1時にルシフェル、2時にリリス、3時にベルゼブブ、4時にアスタロト、5時にメフィストフェレス、6時にヘル、7時にモロク、8時にアスモデウス、
9時にバエル、10時にマモン、11時にベルフェゴール、である。
サタンが議長席へと就き、ついに第23465回大罪議会は開かれた。

「さて諸君、早速だが今日の議題である『鬼たちとのさらなる交流の強化』について
 話し合いたい。意見のあるものはどんどん発言せよ」

サタンがいい終わると同時に彼の隣のルシフェルが挙手をする。彼の名はラテン語で『光をもたらすもの』を意味しておりその姿は12枚の翼をもった天使の姿を取る。

「鬼たちの間では閻魔陛下の影響からか最近現世のアニメや漫画の文化が浸透しつつあるみたいだよ。ボクたちもこれにならってみたらいいんじゃない?」

そのルシフェルの言葉にすかさず反論したのはベルゼブブであった。彼はサタン、ルシフェルに次ぐ地位をもつ最高位の悪魔であり、その姿は
羽根に髑髏を浮かばせた巨大な蠅と人とを融合させたような姿である。

「いくら鬼たちの間で流行っているとはいえ、私たちがそれを迎合する必要はあるまい。それよりも私たちの文化を鬼たちにアピールしてゆくことが肝要かと」
「なるほどね、キミの意見にも一理ありだよベルゼブブ。じゃあ鬼たちにアピールするボクたちの文化ってたとえば?」
「私たちは鬼とは違い現世の人間の召喚によって呼び出される。呼び出した人間たちは私たちの力を駆使して様々な魔法を使う。これだ」
「ケッケッケ。黒魔術って訳かい?いまどきそんなしみったれた文化流行るわけねえだろ」

口をはさんだのは地獄の大侯爵アスタロトだった。地獄の竜にまたがり右手にマムシを握る極めて醜悪な天使の姿をした悪魔である。

「俺様たちの文化っつったらやっぱこれだろうがよ」

と言ってアスタロトは竜の皮でできたカバンからある物を取りだした。それは、瓶に入った透明の液体であった。
酒である。彼は現世の古今東西あらゆる酒を収集しているのだ。そんな彼の一番のお気に入りはフランス・ブルゴーニュ産の『ロマネ・コンティ』である。
だが、陽の光の届かない地獄では原料であるぶどうの生産などできるはずもなく、故に彼は現世から盗み出してきているのだ。

「酒もいいが…やはり食文化こそが最も崇高な文化だろう。悪魔である俺たちには食事は嗜好でしかないが、だからこそ、だ」

次に発言したのはアスモデウス。彼の姿は魔人牛とヤギの頭を持ち、その中央の魔人の頭には金色の王冠が輝いている。脚はガチョウのようであり、
尻尾は蛇となっている。そして手には三角旗と穂先から毒が滴る槍を持っているのだ。
現世のこれまた古今東西のあらゆる国の食文化を取り入れ、毎日3度の食事を何よりの楽しみとしている。そんな彼の大好物は、かっぱ巻きという、
キュウリを酢飯と海苔で巻いた寿司の一種である。口の中に入れた瞬間酢飯の柔らかさとキュウリの食感が奏でるハーモニーの虜になったそうだ。
と、ここで議長サタンが鉄槌で円卓を叩き、場を静めさせる。

「文明に優劣はあれど文化に優劣はない。あらゆる文化も尊重されてしかるべきである。よって、我らの立場としては諸君らが提案した
 文化の全てを悪魔の文化として鬼たちにアピールしていきたい。賛成する者は挙手せよ」

彼の言葉に手を挙げたのは、全員であった。満場一致で可決となり、これらの文化は鬼たちにアピールされてゆくこととなる。しかしもともとは
人間たちの文化だったものだ。それを悪魔が改変すると果たしてどんなものになることやら…

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