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正義の定義 ~英雄/十二使徒~ 第1話 2/2




~廃退都市/とある自治体拠点~

 「それじゃ、私はお偉いさんとお話してくるから、皆はここで待っててね」
 そう言って、冴島は自治体の建物の中へと消えていく。今回の目的は周囲の自治体の連携強化の為の話し合い。あまり他と関わりを持たない自治体同士のパイプ役となることで機関との連携も取りやすくなる。消極的な地方組織をまとめるのに一役買っているという訳だ。
 「ふえぇ!しっかりにんをこなしたまえ」
 「うふふ…かわいいからお姉さん頑張っちゃうぞ☆」
 HR-500に激励され、やる気を見せる冴島。仮にも古参のメンバーが新入りに偉そうに遣われるのは少々複雑な気がしないでもない。でも、幼女だと許される、不思議!
 「じゃ、私達はこの子に機関活動教えないとだねぇー」
 「じゃあ、えっと…組織の勧誘でもしよっかっ…」
 白石の提案に陰伊が乗る。なんだか怪しい宗教勧誘に間違われそうだ。
 「え○ばのしょうにんーふぇふぇ」
 そうして、白石と陰伊の二人は十二番目を連れて何処かへと行ってしまう。残ったのは裳杖と陣だけであった。
 「…やれやれ、困ったな…何をしよう」
 「……………」
 「……………」
 (何も話さないなら人の事を凝視しないで欲しい)
 裳杖は何も話さないのにじっと見つめてくる陣を気色悪いなと思いながら、どこか休める場所を探すことにした。

―――

 前世紀の幻。夢の跡。朽ち果てた建物が立ち並び、気配はすれど、人の影はなし。灰くさい焦げた匂いが辺りに蔓延している。
かつては人々で溢れかえっていたであろう事を思わせる娯楽施設の数々が、余計に町の寂れを物語っていた。廃墟は不安を増長する。
廃退した、今にも壊れそうな雰囲気が町全体に漂う。活気がないのは寂しいものだ。
例の討伐から幾数年、復興を遂げた都市もあるようだが、やはりこういった手付かずの無法地帯は未だ数多く存在する。
白石達は町を徘徊していたが人に全く会うことが無い。その事からも町の崩壊の酷さが伺えた。
 「全然人が居ねーべさぁ」
 白石は溜息混じりにボソリと呟く。人が居なければ勧誘も何もない。
 「ふぇ!あやしいしゅうきょうかんゆうできないー」
 なんて十二番目が叫ぶ。「再生機関は怪しい宗教団体じゃないよ?」と陰伊が説明するも、十二番目は
 「でもここまで人と会わないとぉー…逆に笑っちゃうよねぇ」
 とはいえ、する事など特に無いので町を徘徊する他無い。仕方なく歩いていると…突然十二番目の様子がおかしくなった。
 「ふえぇ…ふえぇぇ!!」
 「!?…どうしたの?」
 「こどものひめいがふえぇ!!ちかくのもりでふえぇぇぇ!!」
 「悲鳴!?」
 説明するより先に足が動く。どこかへと走り出してしまう十二番目を白石と陰伊が追う。十二番目はどんどん町の外れへと駆けて行く。
青々とした木々が視界にちらつき始めたところで子供の悲鳴が聞こえ始める。事を理解した二人は目を合わせ、うんと頷くとより一層足を速めるのだった。急がなくては、危険にさらされている人がいる。


 「ふぇ!みつけた!」
 「!!」
 森の奥。悲鳴のした場所に駆けつけてみると少女が一人、4mはあるのではないかという二足歩行の狼型異形に今にも襲われそうになっている。
考えるより間などなく、事は一刻を争った。白石と陰伊は懐から黒い箱…オープンデバイス(いわゆる武装展開に必要なアレ)を取り出す。
 「システム『白虎』…解凍開始!!」ヘ-゙ンベンベンベ-ンヘ-゙ン
 「英雄『大陰』…で、で出ますっ!!」

 放り投げたデバイスは発光し、二人の体を包む。光に気がついた狼の異形が振り向くとそこには…強固な武装に身を包んだ二人の英雄がいた。

 「そこまでだべさ!狼たん!」
 白石は主要武器である左手の鉤爪を異形に向ける。
 「第八英雄、陰伊 三…あなたに恨みはありませんが…倒させていただきます!!」
 陰伊は得物の双剣をちらつかせる。柄の上下から伸びる鋭い刃に異形が映る。
 「ぎゃおぉぉぉぉぉぉおお!!」
 二人に気づいた狼の異形は矛先を英雄二人に変える。武器を構える二人。互いに間合いを徐々に詰め…、睨み合いの末、先に飛び掛ったのは異形の方だった。巨体が宙を舞う。互いの得物を強く握り締め二人はそれを迎えうつ。
 「グアァ!!」
 ギィン!!
 「おっと、血気盛んだねぇ狼たん!!」
 狸の異形は黒光りする爪を振り下ろし、白石は鉤爪でそれを受けた。火花散り、傷ひとつ付かないその爪の頑丈さが少々厄介か。
 頃合を見て後方へと飛び退く白石。替るように異形に斬りかかる陰伊。瞬速の刃が敵を捉えた。
 「ギャオァァァァ!?」
 刃が異形の腕を斬り。少しの間を開けておびただしい量の黒く獣臭い血が異形の腕噴から出する。
 「グ…オガァァァッ!!!」
 だが異形は全く怯まない。尚も向かってくる。やむを得ないと白石は右腕のデバイスに手をかけた。
 「痛いだろうけど、恨みっこなしだべさ!!」
 『"バースト""クロウ"』
 何やらコードを入力する白石。機械音が鳴り、鉤爪に変化が現れる。刃先が震える。どうやら鉤爪は微振動を起こしているようだ。

 "説明しよう!!英雄達は腕に装着されている入力デバイスを駆使して様々な攻撃法を用いる事ができるらしい。機械音前半部が効果、後半部が作用する対象を表している!ロマンあふれるギミックである!解説終わり。"

 痺れを切らした異形は負傷した腕とは逆の手で襲いかかった。早く重い一撃、白井に到達する寸前で陰伊の刃がそれを遮る。
 『"ガード""セイバー"』
 キイィン!
 「大丈夫!?幸ちゃん!?」
 「あんがと陰伊ちゃん!それじゃあ…いくよ!!!」
 振動する鉤爪を振り切り異形の懐へと飛び込む白石。異形が反応する間もなく爪撃を叩き込み、息つく暇もなく、白石は異形をこれでもかと蹴り飛ばした。
 「そりゃ!どうだ!おもいしったかぁー!」
 「…まだ倒れないの…?」
 白石の攻撃は確実に命中していた。その証に異形の胸には痛々しい爪の跡が残っている。皮膚は裂け、肉は抉れ、濁流のように血液が滴る。
だが異形は膝を曲げようとはしない。白濁した唾液を口から吹きながらも懸命に二人を睨みつける。鬼気迫る異形の気迫に、少し後ずさってしまう二人。
 「どうして…?何があの異形をそこまで…」
 「なんかわからないけど…辛いよ…なんでだろ…倒さないといけないのにっ…!」
 陰伊は双剣を落としてしまいそうになるが「陰伊ちゃん!」と、白石の呼び声にはっと我を取り戻し剣を握り直す。
そう、ここで逃がしてしまったらまた誰かに危害が及ぶかもしれない…尤も、ここまで負傷しているのであれば、そのうち勝手にくたばるかもしれないが…そんな極限状態の異形が何をするかわかったものではない。
 殺す以外の選択肢は…"二人の中には"なかった。

 「これで決めよう!」『"ゲール""クロウ"』
 「うん…」『"ブレイカー""ダブルセイバー"』
 「ガ…ガァァァァ…ッ!!」
 「また、来世で……、さようなら!!」
 風のように異形の前を過ぎ去る白石。若干の時差で無数の切り傷が異形の体中に刻みつけられる。
 「ごめんね…!!」
 金色に輝く刃が仁王立ちしている異形を斬りつける。踊るように一閃、くるりと回り二撃、最後は腰を入れた振り下ろしが異形を切り倒した。
 「があぁ…あ…ぁ…」


 ドシャ…

 「あのね、いちごを摘みに来てたらね、いきなりがおぉって現れてね、怖かったよおおおっ!!」
 「よーしよし…怖かったねぇ…」
 「なんであの異形は…あんなに必死になって…?」
 何とか狼の異形を撃退した二人。襲われていた子供に事情を聞き、町へと帰るように注意した。
 「ありがとーお姉ちゃん達ー」
 町へと駆けて行く少女を見送りながらも、陰伊は何かに引っかかっていた。勿論、先程の異形の事である。何度斬りつけても退こうとしない異常なまでの意思。あの異形の様は普通では無かった。
 「ふぇ!いけいいっぴきとうばつふぇ!ほうこくふぇ!」
 十二番目が機関本部へと情報を送信する。ネットワーク機能も充実しているようだ。
 「ほぇー、そういう情報をすぐ送れるのは便利だねぇ…ん?陰伊ちゃんどうしたの?」
 「あのね…なにか聞こえない…?」
 耳をすます。吹いてた風が徐々に収まり、木々のざわめく音が小さくなり…ふと聞こえてきたのは…動物の声?

 「こっちだよ!」
 「ああ、待ってよぉ~」

 「これは…?」
 「ギャオー、ギャオー」
 「犬…?いやこれは…」
 「もしかして…」
 微かな声を頼りに辿り着いた場所にいたのは…子犬と見間違える程小さな…狼の異形だった。その小さな体からわかるようにまだ生まれたての子供といったところか。
 「ふぇ!さきほどのいぎょーのこどもですねこれはふぇ!」
 「やっぱり…そうなんだ…」
 陰伊はうすうす感づいていたのかもしれない。先の異形は何かを守っているような素振りを見せていた。その行動の理由がこれ…あの異形は、彼らの母親だったのだ。
 「あの子は子供たちを守るために…きっと、巣に近づいたから襲ってきたんだろうね…」
 陰伊はそう推測した。「だろうねぇ…」と白石も同意する。
 「だったら…殺す必要なんて…無かったんじゃないかな…」
 「どうだろ…?」
 「…?」
 十二番目は話の内容がよく理解出来なかった。敵を倒して万々歳ではないかと思った。にもかかわらず二人は落ちた表情をしている。
 「お墓…作ってあげようか…」
 「まぁ…これくらいの気遣いは…」
 その時、微かに二人の後ろの茂みが揺れる。
 「ギャオオォォォォォォ!!」
 「!?」
 「危な…」


 バシュン!

 「!?」
 一瞬であった。後ろの茂みから先程倒したはずの異形が襲いかかってきた…がしかし、それはコンマ一秒を待たずして討ち取られる。
 「……」
 「な…何…今の?」
 赤褐色の光線が異形の眉間を打ち抜く。今度こそ狼の異形は絶命した。何が起きたか、どういう事なのかあまりに急すぎて頭がついていかなかったが、光線の飛んできた方向に十二番目がいることは確かだった。
 「あなたが…やったの?」
 「ふえぇ…なんかてからかってに…」
 陰伊が十二番目に聞くと、彼女は不思議そうにそう呟いた。
 「…ふう…何はともあれ、無事でよかったべさ~…」



 「こんなもんかなぁ~…」
 狼の異形を土に埋め、申し訳程度に木の枝を挿す。簡易的なお墓だ。罪の意識はあるのだろう…二人は作ったお墓の前で手を合わせる。
 「…この子達、どうしようか…」
 「ふぇぇ…いけいはやっつけないと…おこられるう…」
 「でも…」

 「何をやっているんだ…全く」

 心底呆れたと言わんばかりの男の声。いつの間にか白石達の後ろに立っている白髪の少年…声の正体は裳杖だった。
 「ひゃあ!裳杖くん驚かさないでよ~…」
 「気づかない方が悪い…それより、その異形…早く殺さないのか?」
 裳杖の言葉にぴくりと反応する陰伊。
 「この子達には…生まれたばかりのこの子達には、罪はないよっ…」
 「成長したら、いずれ人を襲い喰らうでしょう。そうなる前に殺しておいた方がいいんだ」
 冷たく言い放つ裳杖に、陰伊はぐっと拳を握り締める。
 「そうならないかもしれない…っ!」
 陰伊は反論にならない反論をする。先程の異形を倒してしまった罪の意識からか、それともよっぽどお人好しなのか…彼女から強い思いが感じられる。
 「…甘いよ」
 「えっ…?」
 「いいか、陰伊さん。俺達は何だ?英雄だろう?英雄とは多くを助けるものだ。一人でも多くの人々を救わなくちゃいけないんだ…あなたのやっていることは…危険を増長させる行為以外の何物でも無い!」
 「うっ…」

 「ふぇ…なんかけんかがはじまったんですけど」
 「ちょっと、言い過ぎ…じゃないかぁ~?」
 その様子を見ていた白石が心配するも、裳杖は厳しい口調でこう言い放つ。
 「うるさい!外野は黙っていてくれ!…なぁ、正義って何かわかるか?誰かを守ることだ…だがそれは裏を返せば、誰かを守る為に相手を倒すって事だ…この意味がわかるか?」

 「何かを守るって事は、他の誰かを犠牲にするって事なんだよ!」

 半ば強引に捲くし立てる裳杖。訪れる沈黙。静寂が場を支配する。
 重い空気の中、陰伊が口を開いた。

 「それでも私は…人間も…この子達も…どちらも守りたい!」
 陰伊答え。それはあまりに甘いものだった。
 「…はぁ、陰伊さん…そんなご都合主義が成り立つと思うか?今は良いかもしれない…でもいずれ絶対に破錠する。綺麗事ならいくらでも言える。
あなたのその安っぽい正義のせいで誰かが死んだらどうする?守りきれなくちゃ意味が無いんだ…後悔する時が必ず来る」
 「もし…この子達が人を襲うようになったら私がこの子達を始末する…だから今は…裳杖君…!」
 本来、異形の見逃しなんてものは機関的に許されてはいない。言わば違法行為を見逃して欲しいと頼みこんでいるのだ。裳杖は基本、機関のルールは守る人間だ…しかし、陰伊のあまりの必死さに…頷かずにはいられなかった。
 「わかった…好きにしてくれ…俺はもう知らん…」
 「ありがと…ありがとう…裳杖君…」

 かくして、異形の子供たちはそのままにして陰伊達はその場から立ち去ることになった…

 「じゃあね…」
 「ピギャー!」






 …ようであった…が。






 「だめじゃないか…異形はみぃんな…殺さなくっちゃ…」





 「ピギャ?…ギャオー!!」
 「…あ、でも…この異形…殺したらあの子…悲しむかなぁ…?」
 「じゃあ…優しく…痛みも感じる間もなく…綺麗に殺してあげれば…大丈夫だ…はは…は…」
 「ピギャ…ッ!!」


―――


 「どうだったかな…?はじめての機関活動は?」
 十二番目に冴島はそう尋ねる。十二番目はうれしそうに
 「そとにでるのもきょうがはじめて!なにもかもがはじめてでたのしかった!ふぇ!」
 …と答えた。
 色々あったが、何とか無事事を終えれたようである。むしろこれくらい粗つなくこなせぬようでは困るのだが。
 「そいえば、名前…どしよっか~?」
 「あ…そうだったね…」
 そんな事を話しあう陰伊と白石。
 「ふぇ?ふえぇぇぇぇぇぇ!!」
 そんな時、突然奇声を上げる十二番目何事かと彼女が指さす先を見てみると…
 「…太陽…」
 先程まで雲に覆われていた空が今は快晴、透き通るような青空が空一面に広がる。
 「晴れたんだ…」
 「ふえ。くうきがおいしいくなったきがする」
 「ん?空気…くうき…くう…空たん!!」
 「え?」
 なにか閃いた!…と言わなくとも白石の顔がそれを物語る。何を?それはもちろん…
 「名前!君の名前は空(くう)!空たん!」
 「わたしのなまえ…ふえぇ…」
 「えぇ、それはないとおもうなっ…」
 「…じゃあ陰伊ちゃんはなんだったらいいのさぁー」
 「えっと…ジャスティスクリムゾンスコイトビッチry」
 「長いよぉ」
 「…ひとついいですか?」
 「何?」

 「 ぶ っ ち ゃ け セ ン ス ひ ど す ぎ ワ ロ タ 」

 名前は『トエル』になったそうです。


 こうして新たな仲間が加わった我らが再生機関!!果たして国家復興を成し遂げることは出来るのか!未知なる敵とまだ見ぬ驚異!次の話は書かれるのか!?
幼女とロボとか安直な組み合わせじゃないかというツッコミはエロ画像にまみれたHDDの中にでもぶち込んどけ!
なにはともあれ次回へ続くッ!!駄文御免ッ!!





おまけ

陰伊「で、名前どっちがいいの?」
12「ええ…えっと…ふえぇ…」
白石「そのふえぇふえぇいうのやめなさいって言ってるでしょうッ!」
12「ふえぇぇぇぇっ!もうどうにでもしてエェェ…」
裳杖「何やってんだお前ら…」
陰伊「あ、裳杖くん」
白石「いやね、この子の名前を決めていたところだべさ」
裳杖「十二番目…12…Twelve…トゥエルブ…トエルブ…」
裳杖「トエルだな」
12(ホワイトストーンとおなじはっそうワロタ)
陰伊「絶対ロイヤルボヘミヤンジェットソンの方がいいと思うなっ」
12「なんかさっきとちがいますし」
白石「くーちゃんで良いべさ、呼びやすいし」
12「ふえ!よびやすさだけできめるとはあさはかなり!」
12「もうトエルでいいよ!いちばんましだし!ふぇ!」


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