34 無題
「ほらよ」
華煉は板戸を開けると、ぶっきらぼうにそう言った。零は「ああ」と一言だけ言うと、中へと入っていった。
六畳程度の土間の部屋だった。大昔の日本風、といった質素な作りで、それこそ時代劇で見るような家だ。
奥にはちゃんと畳の部屋があるのだが、それにしても若い女が一人で住んでいるとは、到底考えられない。
「純血の直系だろ?えらい寂れた所に住んでるんだな」
零は振り返り、まだ入り口の所に立っている華煉に言った。
「別に不便はねーよ」
華煉の物言いはいちいちぶっきらぼうだ、と零は思う。
が、自分自身、突き放した様な物言いを指摘されることも多々あったため、それを棚に上げて
彼女にそう言うようなことはしない。まぁ華煉なら、別に言ったところで何か嫌に思うようなこともなさそうだが。
「危ない事も…まぁ他の奴らからしたら、あったっつってもいいのかの知んねーけど」
何が言いたいのかは、五行の力を持つ者同士、零は直ぐに理解できた。
「まぁ、華煉襲ったら殺されそうだ」
「そりゃ零もでしょーが」
華煉は男っぽい笑顔を浮かべ、家の中へと入ると、後ろ手に板戸を閉め奥へと進んでいく。
「茶ぐらいだすよ」
「ああ」
そういえば、と零は思う。
(友達いないし、こうやって人の家に上がるのって初めてかもな…)
華煉は板戸を開けると、ぶっきらぼうにそう言った。零は「ああ」と一言だけ言うと、中へと入っていった。
六畳程度の土間の部屋だった。大昔の日本風、といった質素な作りで、それこそ時代劇で見るような家だ。
奥にはちゃんと畳の部屋があるのだが、それにしても若い女が一人で住んでいるとは、到底考えられない。
「純血の直系だろ?えらい寂れた所に住んでるんだな」
零は振り返り、まだ入り口の所に立っている華煉に言った。
「別に不便はねーよ」
華煉の物言いはいちいちぶっきらぼうだ、と零は思う。
が、自分自身、突き放した様な物言いを指摘されることも多々あったため、それを棚に上げて
彼女にそう言うようなことはしない。まぁ華煉なら、別に言ったところで何か嫌に思うようなこともなさそうだが。
「危ない事も…まぁ他の奴らからしたら、あったっつってもいいのかの知んねーけど」
何が言いたいのかは、五行の力を持つ者同士、零は直ぐに理解できた。
「まぁ、華煉襲ったら殺されそうだ」
「そりゃ零もでしょーが」
華煉は男っぽい笑顔を浮かべ、家の中へと入ると、後ろ手に板戸を閉め奥へと進んでいく。
「茶ぐらいだすよ」
「ああ」
そういえば、と零は思う。
(友達いないし、こうやって人の家に上がるのって初めてかもな…)
二人は火のついてない囲炉裏を挟んで、向かいあって座っている。二人共足はだらしなく崩していた。
「で、妹さんの居場所まだわかんねーの?」
「ああ」
「おっさんは何か言ってたか?」
華煉の叔父の事だ。以前手合わせた時の事を、零は思い出した。
「…まぁ、な」
零は俯いた。その様子に、華煉は溜め息を一つ吐く。
「で、妹さんの居場所まだわかんねーの?」
「ああ」
「おっさんは何か言ってたか?」
華煉の叔父の事だ。以前手合わせた時の事を、零は思い出した。
「…まぁ、な」
零は俯いた。その様子に、華煉は溜め息を一つ吐く。
「奴は誰でも子供扱いするんだよ、いちいち気にしてたらたまったもんじゃない」
「奴って…」
上げた零の顔は、呆れたようだった。
「叔父だろ?そんな風に言っていいのか?」
「あんなのは奴で結構」
華煉は顔を顰めて目を横に向ける。彼女も彼にいいようにあしらわれているのだろう。
「…なぁ、聞いていいか?」
零には気になっていた事が一つあった。
「"鳳"って、華煉のモノなんじゃないのか?」
そのことか、と華煉は思う。叔父は純血の直系ではない。彼は華煉の母親の腹違いの弟なのだが
彼の母親は一般人。五行の者ですらない。そのため本来は、鳳の正統な後継者は華煉であるはずだ。
「…私にゃまだ早いんだってさ」
「早い?」
「お前はまだ弱いって言われた。つーか弱すぎふざけんなって…」
華煉は叔父にまだ勝てなかった。年の功か、本来の潜在能力は華煉の方が遥かに上、であるのに
焔群を使いこなせるのは叔父だけだった。やはり領域を使いこなすには、かなりの鍛錬が必要なのだろう。
零にしても、霜織を一応は使えるものの、完全に使いこなしているとは到底言えない。
華煉の叔父の前に膝をつく結果となるのも、無理はないだろう。
「弱いって…宝器持ってなかったら、領域はそんなたいして使えないだろ?
たしか領域って、宝器あってこそ使いこなせるようになるもんなはず。鍛えようがないんじゃないのか?」
「…素の状態で俺を倒せってさ」
華煉ははき捨てるように言った。苦虫を噛んだような顔で。
「はぁ?相手は宝器ありだろ?無理だろ、それは」
零がそう言うのも仕方がない。彼の力は、手合わせした零自身もよく知っている。
「…くっそー!あのおっさんマジでムカつく!ウッゼぇ!」
「あ、あの人の話はやめようか…?」
零は華煉の頭上に湯気が見えるような気がした。
「奴って…」
上げた零の顔は、呆れたようだった。
「叔父だろ?そんな風に言っていいのか?」
「あんなのは奴で結構」
華煉は顔を顰めて目を横に向ける。彼女も彼にいいようにあしらわれているのだろう。
「…なぁ、聞いていいか?」
零には気になっていた事が一つあった。
「"鳳"って、華煉のモノなんじゃないのか?」
そのことか、と華煉は思う。叔父は純血の直系ではない。彼は華煉の母親の腹違いの弟なのだが
彼の母親は一般人。五行の者ですらない。そのため本来は、鳳の正統な後継者は華煉であるはずだ。
「…私にゃまだ早いんだってさ」
「早い?」
「お前はまだ弱いって言われた。つーか弱すぎふざけんなって…」
華煉は叔父にまだ勝てなかった。年の功か、本来の潜在能力は華煉の方が遥かに上、であるのに
焔群を使いこなせるのは叔父だけだった。やはり領域を使いこなすには、かなりの鍛錬が必要なのだろう。
零にしても、霜織を一応は使えるものの、完全に使いこなしているとは到底言えない。
華煉の叔父の前に膝をつく結果となるのも、無理はないだろう。
「弱いって…宝器持ってなかったら、領域はそんなたいして使えないだろ?
たしか領域って、宝器あってこそ使いこなせるようになるもんなはず。鍛えようがないんじゃないのか?」
「…素の状態で俺を倒せってさ」
華煉ははき捨てるように言った。苦虫を噛んだような顔で。
「はぁ?相手は宝器ありだろ?無理だろ、それは」
零がそう言うのも仕方がない。彼の力は、手合わせした零自身もよく知っている。
「…くっそー!あのおっさんマジでムカつく!ウッゼぇ!」
「あ、あの人の話はやめようか…?」
零は華煉の頭上に湯気が見えるような気がした。