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創発トーナメント準決勝戦 1

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hasamisan

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創発トーナメント準決勝戦 その1


第一戦

ワーワーワー

実況「ついに準決勝! 4強が勝ち残りました!」

ワーワーワー

実況「いったい誰が優勝の座を勝ち取る事が出来るのか!? まったく予想が出来ません!」

ワーワーワー


―――選手控え室

倉刀「師匠、そろそろ時間です」

ハルト「…………」

倉刀「師匠?」

ハルト「……広くなったな」

倉刀「は?」

ハルト「控え室の間、広くなったな」

倉刀「……はい。まこと、広うなり申した」

ハルト「手水鉢を」

倉刀「はっ」

………ス

倉刀「―――!」

ハルト「倉刀、いかがした」

倉刀「いえ……、見えました。師匠のお勝ちになる姿が」

カツカツコツ バタン

係員「ハルトシュラー様、出番です」

ハルト「承知した」


ワーワーワー

実況「どの選手も実力派! 各試合で己の力量を我々に見せつけてくれました!
 しかし! しかしです! 優勝はたった一人!」

ワーワーワー

実況「その狭き門をくぐり抜けるのは誰なのか!? 我々は今、歴史の1ページを
 刻む大舞台に今! 今、立ち会っているのです!」

ワーワーワー


―――別の選手控え室

アナウンサーが会場で実況をしている頃
加藤門下の料理人も会場周りの店々を奔走していた
買い求めていたのは、勝栗、打鮑、昆布、
これらは盃と合わせることで四方膳と呼ばれ
合戦に出陣する際に武将が食するものである

シャリ… モグモグ…

……コト

加藤「では……参りますか」

ギィッ……

料理人「若先生!」

料理人「若先生!」

料理人「御武運を!」

料理人「御武運を!」

闘技場へむかう廊下を歩む加藤を門弟達が迎える
加藤はこれに笑顔で答えた


実況「それでは準決勝第一試合! 西の方角!」

ドォン!

実況「創発の魔王! S・ハルトシュラー!」

観客「ウォォォォォンッ!」

実況「つづきまして東の方角!」

ドォン!

実況「Cook of the Pit! 加藤キューピー!」

観客「ウォォォォォンッ!」

実況「それでは試合開始です!」

S・ハルトシュラー VS 加藤キューピー


……ざし

……ざし

ハルト(異形の気配……うかつな技では打ち破れぬな)

加藤(キュムム……捌きがいがある獲物ですね)

倉刀「師匠……」
料理人「先生……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


――― 一方、救急医療室

唯人「う…ん……? ここは……?」

つかさ「よかった、気がついたのね唯人」

唯人「姉ちゃん? ……痛っ」

つかさ「まだ動いちゃ駄目よ、手当てはしてあるけど無理は駄目」

唯人「……ここは?」

つかさ「会場に設置され医療室よ。まったくあんな無理しちゃって」

唯人「…ゴメン、優勝できなくって」

つかさ「ま、アンタがこうやって生きてるだけでもOKって事よ」

ニコ

つかさ「それに、子猫ちゃん達も喜ぶだろうしね」

唯人「子猫ちゃん?」

唯人が視線をむけるとベッドに寄りかかるようにして楓と初音が眠っていた
どうやらあの衝撃の影響で自分の変身も解けているようだった

つかさ「自分たちのせいだって、わんわん泣いていたのよ。まったくモテる男は
 つらいわねー、両手に花ってやつかしら」

唯人「姉ちゃん……」

何か言おうとした唯人だったが、けたたましく開いたドアがそれを打ち消した

海瀬「椎名君!」

唯人「み、みやびさん!? ど、どうして?」

海瀬「怪我をしたって、つかささんから聞いたから……だいじょう―――」

大丈夫? と声をかけようとして海瀬 雅は言葉をつまらせた
唯人が寝ているベッドの傍らには知らない女の子が二人、泣きはらした顔で寝ている
しかも可愛らしい。雅はその二人と唯人を交互に見比べ、
つくろった笑顔で無理やり言葉を吐きだした

海瀬「あ、あの、わたしったら、じゃ、邪魔しちゃったみたいかなアハハ、
 そ、それじゃあ唯人君……末永くお幸せに!」

唯人「え、ちょっと雅さん、何の事? ちょっと、まっ―――」

バタン! タッタッタッ―――

海瀬が去った部屋を静寂が支配する
唯人は去っていたドアを見つめて、ポツリと呟いた

唯人「姉ちゃん……」
つかさ「モテる男は……辛いわね」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

実況「両者、闘技場で相手を見据えたままの構えから一歩も動かず!
 闘技場に緊張が走るーーーーーーーーッッッ!」

よし子「……相手の隙をうかがってるのか?」

スミス「イエス」

よし子「アンタ!?」

スミス「隣、いいかい」

ス……

スミス「共に一流、あたれば致命傷だろうさ。しかし相手も一流、
 自分の技を避けられ反撃を受けるかもしれない……迂闊には動けんさ」

メリー「それじゃあ二人ともあのままって訳?」

スミス「いや、これは試合。いずれは動かねばならんさ」
   (勝てよ……ダンナ)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

倉刀「師匠……」
美作「緊張するね、この空気」

霧崎「戦わぬお前等が緊張してどうする」

倉刀「あ、あなたはバンディット霧崎さん」

霧崎「わが盟友をくだしたハルト……負けてもらっては困る」

美作「でも相手も強そうだよ」

霧崎「無論、それが準決勝というもの。見ろ、そろそろ動くぞ」

加藤「キュムキュムキュム―――」

ドォンッ!

ハルト「!」

実況「加藤、大きく足を踏み鳴らしたぁ! 凄い! 闘技場が揺れる!」

加藤「キュムッ!」

ババッ

実況「体勢を崩したハルトに襲いかかったーーーーーッッ!」

倉刀「師匠!」

ハルト「……フ」

ゆら…ゆら……ゆらぁっ

パァンッ!

加藤「むぐっ!?」

ダァンッ!

実況「おお? これはーーーーッッ!? 飛びかかった加藤、次の瞬間には
 払われてダウンを奪われたーーーーーーーーーッッッ!」

観客「ワァーーーーーーーーーーーッッ!!」

ハルト「大木は強風に煽られなぎ倒されるが、柳は風を受け流し嵐を耐える……
 春斗魔神拳『空極流舞』、どこから攻めても無意味だ」

倉刀「おお!」
美作「さすが!」

ブシュゥッ!

倉刀「ああっ!?」

実況「おおっと! ハルト選手の右腕から出血ーーーーーーッ!」

スミス「撃壁背水掌……身が触れればそこから攻撃が可能、さすが旦那
 俺の技を盗みやがったねぇ」

にやり

加藤「あなたの間合いは、僕の間合いでもある」

ハルト「ほう……なるほど、やはり生半可な技は通用せぬな」

ざし

ハルト「……仕方なし。せめて奥義で葬ろうぞ」

実況「ハルト選手、右手を後ろ手に腰を落とし、深く構えたーーーーーッ!」

倉刀「……あれは! 打撃系必滅技『螺旋』!」

霧崎「し、知ってるのか倉刀!」

倉刀「……ええ」

…ゴクリ


―――冬季山中、迷い家

ヒュウゥゥゥゥゥ

ヴ~ ヴ~ ヴ~

巨熊「ヴ~ヴ~」

ハルト「これより春斗式防衛術打撃系必滅技、『螺旋』説明つかまつる」

柏木「はっ!」
倉刀「ははっ!」

―――右螺旋の構え BY 迷い家主人

ハルト「深く身を沈めるのは大地の反作用を得るためなり」

……すう

ハルト「大地の威力(ちから) これが螺旋の源なり」

大地力は拇指裏より足首 膝 内股 体幹へとひねりを加えつつ伝達!

脱力した身体は水の如く威力を伝え

肩 肘 手首へとさらに幾重にもひねりを加える!

掌にたどり着いた頃には体内のひねりは臨界点に達し

大地力は爆発寸前の状態である!

シュバッ

弓を射るが如くひねりを解放!

ズン!!!

巨熊「ヴゥッ!!」

ハルト「掌を使用いたすは密着性を高め、威力を余すところ無く目標に浸透させるためなり」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

びよびゅるりら …がくん

ハルト「体格の例外なく果てるなり」

柏木・倉刀「……ッ」

ハルト「鋭!」

シュッ

ぶるん ぼぶる びちびちびち

倉刀「な、内臓が大蛇の如くのたうちまわっている!」

ハルト「目標は死んでも螺旋は生きているなり」

ぱちん

ハルト「各自存分に習得せい」

柏木・倉刀「了解しました!」


倉刀「あの技を魅せるというのか? 師匠は……本気だ」

霧崎「……ほう。して、奴はどうでる?」

ドドドドドドドドドドドド

加藤「キュムキュムキュム……」


   ./ ̄ ̄ ̄\
   |        ..|
   | (●) (●) .|      ……ニヤ
   ヽ.....:: ∀....:: ノ


実況「加藤、悠然と歩を進めるーーーーーーッッ!」

スミス「意に介さねえか……さすがだぜ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


   ./ ̄ ̄ ̄\    カツ…
   |        ..|
   | (●) (●) .|       コツ…
   ヽ.....:: ∀....:: ノ


実況「加藤、両腕をあげて構える! ボクシングスタイルゥ!」

カツ……コツ……ピタァ

実況「そしてハルトシュラーの目前でとまったぁ!」

ハルト「…………」

加藤「…………」

実況「睨みあってる! 睨みあっているーーーーッッ! すでにお互い、
 相手に拳が届く距離ーーーーーーーーッッ!!」

観客「ワァーーーーーーーーッッッ!」

スミス「つくづく……化け物だぜ」

ググ……

実況「おお!?」

ざわ… ざわ…

実況「こ、これは加藤選手! なんと、拳をかまえたまま敵に背をむけたーーーッッ!」

よし子「な、なんだありゃ?」

スミス「握力×体重×スピード……」

よし子「は?」

スミス「イコール破壊力だ、お嬢ちゃん」

よし子「あんた、何いってるんだ?」

スミス「スピードを出すためには拳を振りかぶらなきゃいけない、
 振りかぶったままいくとどうなる? 相手に背をむけてしまうのさ」

メリー「ガードががら空きになるんじゃ?」

スミス「ちっちっち、奴のストレートは……それより速いぜ、きっとな……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

倉刀(寒い……悪寒が走る……)

…ゴクリ

倉刀(この戦いは俺の知ってるどんな格闘技とも違う! だが目をそらしては駄目だ!
 師の戦いを見届けずとして、何の弟子ぞ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

乱立「ふん……」

主催「にらみ合いじゃな、お主はどうみる?」

乱立「決まってるぜ……強い奴が勝つ、それだけだ」

主催「そう、じゃな……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

料理人(若先生の拳打の軌道は曲線……目標までおよそ384cm……
 あの体勢から繰り出される一撃は、時速550kmの豪拳! 負けるはずがない!)

…ゴクリ

料理人(しかし…しかしだ、もし相手の方が速かったら?)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

倉刀(師匠……)

料理人(若先生……)

倉刀・料理人(勝ってください!)

加藤は、背中越しにハルトの存在を認識していた

およそ今までに戦った事のない好敵手!

強者のニオイを感じたとき! 加藤の身体はそれに対抗すべく肉体を変化させていく!

実況「またもや加藤の身体が変化していくーーーーーーッッ!」

これがキュムキュム・アームドフェノメノン(武装現象)!

加藤の身体は全身全て、これ武器也!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ハルト(またしても異形の構え……)

ハルトシュラーはこの光景を目にしても落ち着いていた……

対する加藤は心拍数増加! 体温上昇!

一方のハルトシュラーは日常とおなじ心拍数!

まったくの平常心也!

ハルト(……ただ、倒すのみ)

スゥ……

加藤「臨!」

ハルト「射!」

シュバ! シュバッ!

闘技場に閃光が二つ奔ったかのように観客は見えた!

次の瞬間! 闘技場に轟音が走った!

実況「加藤! ハルト選手の掌打によって吹っ飛ばされたーーーーーーッッッ!!!
 壁に叩きつけられるーーーーーーーーーッッッ!」

倉刀「おお!」

料理人「ああ!」

加藤「……ガフッ!」

ずるり……

実況「壁にそってゆっくりと崩れ落ちる! 終わったかコレはーーーーーーーッ!」

観客「ワァーーーーーーーーーッッ!」

料理人「せ、先生! 立ってください、先生ーーーーーーーッッ!」

ハルト「手ごたえは十分……ならば後は、爆ぜるのみ」

ピッ

実況「おおっと! ハルト選手、敬礼のポーズを取ったぁ! 余裕の構え!」

ハルト「これも試合、許せ……戦士に敬礼!」

ドドドドドドドドドドドドドド

ガ……

ガ……ハ……

ガハッ……ァ……

加藤(僕は……? ここは……?)

加藤(ああそうか、僕はハルトさんの一撃を受けて……)

ごぶっ

加藤(さすがハルトさん、天才だね……)

加藤(暗い……寒い……これが、死か……)

??(敵に一撃も与えずに逝くのか、加藤)

加藤(……誰?)

スレ立「無様よな、加藤」

加藤「その声は……スレ立て引き受け者!」

スレ立「我を屠った男がこの様では、我も浮かばれんな」

加藤「…………」

ボシュ

スレ立「天才、だと? だからどうした。他者がどうあれお前はお前、
 それがいかに強烈であろうともおまえ自身を支配する事はできない」

加藤「…………」

ボシュ ボシュ

スレ立「それがなんだ、泣き言を吐きおって」

加藤「…………」

ボシュ ボシュ ボシュ

加藤(この音は……なんだ? 灯り? あれは……厨房?)

ボシュッ ボシュッ

加藤「あれは……自分!?」

スレ立「そうだ、幼き頃のお前だ」

ボシュッ ボシュッ ボシュッ

スレ立「ヘキ拳の、敵にむかって伸ばした腕はミサイルの発射台だ。それに沿って
 手をすべらせれば、手は必ず敵にあたる。その説明を気に入った幼いお前は、
 一年間毎日厨房の片隅で、何度も何度も繰り返していたな」

加藤「ぐ……」

ザアァァァァァァァ……

加藤(―――雨が降っていた日も……)

ぱしゃん ぱしゃん

加藤(……夢中になってたっけ……でも、寒かったなぁ……)

ぱしゃん ぱしゃん

料理長「加藤、今日は崩拳を受けてみろ」

加藤(誰だっけ、この人は……)

料理長「雑誌の束を腹に、そうだ」

加藤(……そうだ、こんなことあったっけ)

ザアァァァァァァァ……

料理長「お前が何を学んでいるのか、また、お前がこれから敵にどういう痛みを
 与えるのか、おまえ自身で知っておくがいい」

ドン!

ザザザザ

どうだ加藤―――骨も肉もバラバラになるような痛苦だろう

―――これが内側から人間を粉々にする「崩拳」だ

スレ立「加藤、自分が肉体で受けた痛みは、自分だけのものだ。努力は確実に
 お前の身体に刻まれている、その痛みを思い出せ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ぴくり

ハルト「む?」

実況「おおっと!? 加藤選手、起き上がるか!?」

加藤(僕の身体が覚えてる、僕だけの痛み……)

ザアァァァァァァァ……

加藤(いてえなぁ……痛いっすよ、師父……)

……むくり

実況「加藤選手起き上がったーーーーーーーー!!!」

観客「ワァーーーーーーーーーッッ!」

スレ立「起きたか、加藤」

加藤「悪いな、スレ立て」

スレ立「礼は後だ、螺旋の衝撃がくるぞ」

加藤「―――!」

ドクンッ!

立ち上がった加藤に激しい嘔吐感がこみ上げる!
ハルトシュラーの放った螺旋の衝撃が体内を駆け巡り、
内臓もろとも飛び出さんとしてるのだった!
このままでは耐え切れずに水風船の如く身体が爆ぜよう!
加藤の脳裏に一瞬、アジョ中の姿がよぎった!

加藤「ぬぅん!」

パァンッ!

実況「加藤! 自らに強烈な掌打!」

加藤(胸部で行き場を無くしている螺旋の波動に、ベクトルを与える!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

加藤(掌打によって胸部から移動したエネルギーは、僕の腕へと行き先を変える!)

実況「加藤の左腕が異様に膨れ上がるーーーーーーーーーッッ!」

加藤「さらば左!」

パァン! ブシュウウウウウウウウウ!!!

実況「加藤の左腕が爆ぜたーーーーーーーーーッッ!」

加藤「成功だ!」

料理人「重症だ!」

ハルト「……我が一撃をこのようにかわすとは……だが腕を失ったのは大きいぞ」

加藤「左腕~~~?」

ニヤリ

加藤「キュムキュム、僕の腕は―――ここにある!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

加藤「うおおおおおおおおおおお!!!」

ズアッ!

ハルト「!」

加藤「キュム♪」

実況「な…なんと、何とーーーーーッッ! 左腕を失った加藤選手、
 傷口から新しい腕を生やしたーーーーーーーッッ!!」

観客「ワァーーーーーーーーーッッ!」

スミス「ヒュウ♪」

よし子「まじかよ……」

加藤(スレ立ての言葉がなかったら、僕はあのまま負けていた……)

クルッ

加藤「ありがとうスレ立―――」

―――シィー…ン

加藤(いない!?)

キョロ、キョロ……

加藤(今のは、夢? まさか……)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

加藤「ふ、ふふ……そうか、そうですよねぇ……」

キュムキュムキュムッ

実況「加藤、不気味に笑うーーーーーッッ!」

加藤「この身体には、スレ立ての…スミスからの…強敵(とも)から受けたモノがある……
 ハルトさんは天才、しかしこちらは3人、3対1……)

にやり

加藤「だったらイケるぜ!」

ダッ

実況「加藤、再びハルトにむかって近づくーーーーーッッ!」

ハルト「ほう……むかってくるか」

ニヤリ

ハルト「それでこそ一流!」

―――閑話休題

翠星石「やや?」

蒼星石「どうしたの?」

翠星石「いや、何か……翠星石がカウントされてないのはどういうことですって……」

蒼星石「はぁ?」


ズシャ!

倉刀「おお!?」

ズブズブズブ……

加藤「キュム…キュムッ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

実況「加藤、なんと! なんと自分の腹に腕を突き入れ肋骨を引き抜いたぁ!」

観客「ワァーーーーーーーーーッッ!」

加藤(拳の腕はそちらに分がある……ならば!)

グシガシゴシャ

実況「そのまま! そのまま握りつぶし何かを作っていくーーーーーッ!」

加藤「次は……剣でお相手所望いたす!」

スラァ―――

加藤「リブス・ブレード(別名・露骨な肋骨)!」

実況「加藤! 前試合と同じく二刀の剣を作ったぁ!」

加藤「違うねゴボゴボ間抜けが~~~~」

キュムン!

ガシュ!

実況「おおっと? 二刀の剣を更に合わせて……」

ズン!

加藤「僕の得物はここにある!」

実況「更に巨大な剣を作り上げたーーーーーーーッッ!」

観客「ワァーーーーーーーーーッッ!」

よし子「あれは……アンタを倒した……ッ!」

スミス「ああ、しいていうならドラゴン殺しっていうところだな」

ハルト(異形に異彩の剣……)

ハルト「……お相手いたそう」

バババババババババババッッッ!

実況「ハルト選手も先ほどの試合と同じく! 虚空に無数の武器を出現させた!」

美作「ゲートオブマヨイガ……」

倉刀「拳には拳で、剣には剣にてつかまつる……師匠はああいう御方だ」

スラァ―――

実況「そして! 一振りの日本刀を抜き取り構えたぁ!」

ハルト「……全力をもって」

加藤「光栄にござる!」

ブワァッ!

加藤「キュムキュム・アームドフェノメノン…ドラゴン・インストゥール!」

ドドドドドドドドドドドドドド

実況「加藤、剣を取り上げ咆哮! 闘技場が揺れるーーッッ!」

よし子「あ、あれは! アンタの……まさか!」

スミス「俺の技を……身体で覚えたってわけか……」

メリー「……どっちが妖怪か、解らないわね」

ドドドドドドドドドドドドドド

加藤は無明逆流れの体勢に入るべく、剣を両手で構え、大地に突き刺そうとした

ズブリ……

加藤「!」

―――柔い……

無明逆流れは大地に剣を突き刺し、ミサイルのように射出して相手に太刀を浴びせる技!

大地の威力(ちから)! 剣を突き立てるは大地の反作用を得る為なり!

しかし、修練によって育てし膂力と術方によって極限に高められた身体能力は
豆腐のようにやすやすと大地をつらぬいた!

これでは無明逆流れを放てぬ!

加藤「否!」

スラァ―――

加藤「キュムキュム……場所はあるよ……ここにあるよ!」

ズン! ズブリ!

ざわ……ざわ……

実況「な、なんとーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!
 加藤選手、自らの足に剣をつきたてたーーーーーーーーーッッッ!!!」

もはやスミスと試合をした頃の加藤ではない

突き刺した足で剣を踏ん張り、居合いの要領で太刀を抜き放つ

およそ一切の流派に聞いたこともない見たことも無い奇怪な構え

これぞ秘剣 無明逆流れ也!

料理人「ああ! あれこそは若先生必勝の構え!」
料理人「無明逆流れのお姿……」

ドドドドドドドドドドドドドド

ハルト「怪物め」

ざし……

実況「ハルト選手も構える! 巫女が刀を捧げるあの構え!」

ハルトも刀を水平に構え左手で刀身を抑えた

爪を立てるが如きの特殊な掴みと流れと呼ばれる特殊な刀法

左手の掴みはそれを極限にまで押さえ一気に解き放つ

その一閃、死線を駆ける星の如し!

何人たりともこの魔技から逃れる事は出来ない

これぞ春斗魔刃剣 流れ星也!

倉刀「ハルト主義は瞬殺無音……何も語らぬ、通じぬ!」

ゴクリ

倉刀(師匠……勝ってください……)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ハルトと加藤はお互いに、致命傷の一撃を与えられる死の間合いに位置していた
沈黙と緊迫の空気が二人を、闘技場を包んでいた……

観客は固唾をのんで二人を見守っていた
実況も中継する事を止めていた
声を発すれば、身動きすれば、それが切っ掛けとなり
勝敗が決すると思われたからだ

倉刀も料理人も同じ気持ちである
今、この場を支配しているのはハルトシュラーと加藤、
二人のみである

その二人は目の前の敵しか認識していなかった
観客や闘技場は意識してはいない
3立方平方メートルの小さな空間、
今、二人が対峙している事だけが世界である

ハルトシュラーと加藤も、観客達と同じく身動きせずに居た
隙をうかがっているのではない

己の秘剣を極限にまで高め、相手にむかって放つ
ただそれだけである

他に思慮の入る余地は無く、周りを視界に入れる必要も無い
真剣試合は只ひとつ、太刀を担ぎ、届くところまで近寄りて振り下ろす
ただそれだけである

先に当てるか当たるか
ただ、それだけである

音を失い、色を失い、二人は相手と対峙していた
そこには、達人同士の、無言の会話があった


そして、白刃が閃いた

……どぅ

加藤の倒れる音が、沈黙を破った
周りの者は、その音で現実へと戻された

闘技場に立ち尽くすハルトシュラーと、倒れている加藤
一方が立ち、一方が地に伏す、勝利の光景である

ハルトシュラーは水平にへと両腕を広げていた
上からの照明のが、朝日のように降り注いでいる

倉刀「おお!」

その光景を見て倉刀は拳を握り締め、喜んだ
師匠の秘剣が加藤を降し、地に伏せたのだ

観客「……前の試合と同じだ」
倉刀(前……同じ?)

ざわめく周囲の状況に混乱する倉刀
はっと、倉刀はもう一度師匠のほうへ首をむけた

……ごとり

ハルトシュラーの手から、刀が落ちた
放したのではない、力なく落ちたのだ
倉刀の目にはまるで動画のコマ送りのようにそれが見えた

倉刀「し……師匠?」

問いかける弟子にハルトは顔をむけ、にっこりと微笑んだ

ハルト「……凛々しうなったのう、倉刀」

ブシャァアアアアッ!!!

観客「おお!」

実況「ああーーーっと! ハルト選手の正中線から噴水のように血が飛び散るーーーーー!」

倉刀「し、師匠!?」

ハルト「……見事」

……どさ

実況「ダウン! ハルト選手ダーーーーーウン! 血を撒き散らせてダーーーーーウン!」

ドドドドドドドドドドドドド

加藤「……キュムッ」

実況「そして加藤選手起き上がったーーーーーー! ハルト選手動けない、身動きせず!
 決まったかこれはーーーーーーーーーーーッッ!

……ざわ……ざわ

加藤(ハルトさん、貴女は強かった。だが惜しむらくは孤独……)

ざし

実況「加藤選手、勝利を確信したのか、入り口へと歩いていく! ハルトシュラー動けない!
 動けない! ハルトシュラー立てないーーーーーーーーーーーッッッ!!!」

倉刀「……し、師匠? 師匠…? 師匠ーーーーーーーーーッッッ!!!」

加藤「だが僕には強敵(とも)という心強い味方がいたのさ……」

バッ!

ババッ!!

審判「勝負アリ!」
審判「勝負有りだ!」

ワーワーワー

実況「決着、決着ーーーーーーーーーッッ! 勝利! 加藤選手勝利ーーーーーーーッッ!
 決勝に勝ち進んだのは加藤! 加藤選手! 準決勝一試合! 勝負を制したのは加藤選手!
 加藤選手、決勝へと駒を進めましたーーーーーーーーーーッッッ!!!!」

観客「ウォォォォォォォォンンッッ!!!

料理人「若先生!」
料理人「若先生!」

料理人「お見事です!」

加藤「ありがとう、でも僕は勝ってないよ」

料理人「……は?」

加藤(スレ立て…それにスミス、強敵(とも)がいたからこそ戦えた……僕自身の勝利じゃあない)

……ちらり

加藤「ハルトさん、貴女もまさしく、強敵(とも)だった……」

ドドドドドドドドドドドドド

報せを受けて駆けつけた救護班 大沼官兵衛の見たものは
幽女の如き表情で血海の中に座する美作と
気道に詰まった血泡吸いださんとする倉刀

主の手から離れた日本刀は、地の上で照明の光を反射し
空しく虚空を睨んでいた


トーナメント準決勝 第一試合
S・ハルトシュラー VS 加藤キューピー

無明逆流れにより 加藤キューピー勝利


   to be continued……


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