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Mad Nugget 第八話

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 「Mad Nugget」 第八話

 撥ねられたバーバラガは、俯せに砂に埋もれた。並みのパイロットなら気絶する所だが、ニーデスも突撃隊員。
バーバラガの左腕を立て、重い機体を起こし、遠方横を通り抜け様としたクラフト浮遊の陸戦型ガンダムに向かって、
右手の連装ビームキャノンを放つ。

 ドドォッ!!

 赤い2本のビームの内、1本が陸戦型ガンダムを貫き、弾き転がした。
 ニーデスは即座に、ハロルドとダグラスに通信を入れる。

「済みません! 1機、突破されました!」
「油断したな? 抜かれた奴の事は気にするな! 後続を許すなよ!」
「了解です! 特別大佐!」

 ハロルドの指示を受け、機体を起き上がらせて再び弾幕を張るニーデス。ディゴッグ集団を潜り抜けて来た機体を
次々と墜とし、2機目は突破させない。

 問題は濃い紫色の鎧を纏ったガンダム。他の賞金稼ぎのガンダムとは明らかに性能が違う。その正体に気付いた
ダグラスは、ハロルドに声を掛けた。

「ハル! あの機体はV2V3V5ディフェンダーガンダム、火星軍のMSだ」
「軍? しかし、1機しか居ないが?」
「案外、お前さんみたいな奴だったりして」
「……となると、相当な腕前だな!」

 冗談半分のハロルドに、ダグラスは笑って応える。

「ああ、手強い相手に違いない。逃げるとしよう」

 バウは下半身を90度回転させてブーストエンジンで低空飛行を始め、ヴァンダルジアから遠ざかる様に敵機を
誘き寄せた。ダグラスは思惑通りにディフェンダーガンダムが付いて来たのを確認すると、速度を上げて一定の
距離、約200mを保つ。

 ハロルドはバウの上半身を敵機に向けた状態で、ダグラスに話し掛けた。

「適当な所で振り切ろうぜ」
「それは無理だ。あのタイプのガンダムは単機で大気圏離脱出来る」
「うへぇ……バーバラガに当たり勝つ、硬い奴を倒せってのか……」

 文句を言いながら、ハロルドはビームライフルを構える。狙いを付けて、1発! 黄金色のビームが走る!
 直後、ダグラスがアドバイスする。

「多分、ビームは効かない」

 バシィッ!

 彼の言う通り、ガンダムの前面でビームは分散し、半球状のIフィールドバリアが浮き上がった。猛進するガンダムは
全く怯む様子が無い。

「そういう事は早く言えっての!」

 ハロルドはビームライフルをシールド裏に収め、代わりにジャイアント・バズーカを取り出して、右肩に担ぐ。

「ダグ、衝撃注意!!」

 ズドォンッ!!

 凄まじい衝撃で、ぐら付くバウの機体。上半身と下半身の絶妙な姿勢制御で転倒を避ける。

 バウ・ワウのジャイアント・バズーカは無反動バズーカとは違い、衝撃緩和機構を備えていない。ロケット弾は炸薬で
射出した後に加速する型で、バズーカと言うよりロケットランチャーに近い。それは扱い易さ引き換えに、初速と加速と
爆発で絶大な破壊力を生み出す必殺兵器!

 しかし、発射直後にガンダムの両腰脇から1対のノズルが伸び、Iフィールドが淡い赤紫色の光を帯びて輝き始めた。
 ロケット弾は輝くIフィールドに破壊されて爆発を起こし、炎と煙を巻き上げる。
 煙幕を掻き分けて姿を現したガンダムは無傷。ハロルドは目を見張った。

「ビームシールド!?」
「ヴェスバーのビームをIフィールドで固めている! 出力を調整してバリアシールドの強度を変えられるのか!」

 冷静に分析するダグラスだったが、ディフェンダーガンダムにダメージを与える術は思い浮かばなかった。
 後からヴァンダルジアに追い着く為には、余り離れ過ぎても都合が悪い。何とかしてガンダムを倒さなくては、火星に
置き去りにされてしまう……。

 ディフェンダーガンダムのコクピット内モニターは、前方のバウを映し出していた。

「賞金稼ぎ共の大移動に、何事かと後を追ってみれば……まさか連合軍のエースとは!」

 朱色のパイロットスーツに身を包み、ディフェンダーガンダムを駆る男性は、火星軍でも1、2を争う腕利きパイロット、
マーウォルス・ザンザストン大尉。事前に軍上層部から下されたアマゾニス進入禁止命令を忘れた訳では無かったが、
賞金稼ぎの動きを無視出来なかった。

「上の連中が隠したがっていたのは、奴か? 理由は知らんが、見付けてしまった物は仕方が無い」

 残念そうな口振りとは裏腹に、バウ・ワウを発見した彼の心は躍っていた。
 50ミリオン、魔王退治の名声……。“一生涯に何度も無い好機を逃せるか”と問われたならば、答えは“否”。
 先に受けた2度の攻撃で、敵の攻撃能力は見切っていた。“耐えられる”……即ち、“墜とせる”という確信!

「所詮は地球の連中が付けた名よ……。何が魔王か! 反撃だ! 行けぇい!」

 ディフェンダーガンダムが両腕を前方のバウに向かって突き出すと、その肘から先が外れ、粒子を噴き出しながら
真っ直ぐに飛行する!

 ハロルドは飛来する2つの物体に目を凝らした。

「ダグ、ミサイル来るぞ! 2発……待て、違う! これはガンダムの腕だ!」

 ハロルドの声を聞いたダグラスは、バウの機体を左右に振り、レーダーでアームの軌道を確認する。2本のアームは
バウの細かい動きにも反応し、進路を微修正して来る。

「自動追尾式! ハル、撃ち落とせるか?」
「やってやらぁな!」

 ズドォ、ズゥン!

 ハロルドはダグラスの問い掛けに応えると同時に、ジャイアント・バズーカを2連射した。バウは2度の衝撃で体勢を
大きく崩し、赤砂を吹き飛ばして地表ギリギリを掠める。

「これでどうよ!」

 ドン、ドォン!

 ハロルドの声と同時に、ロケット弾は飛来する2本のアームに狙い違わず命中し、大爆発を起こした。
 その様を目にしたマーウォルスは驚いた表情をしたが、それは一瞬の事で、直ぐに余裕を含んだ笑みに戻る。
 
「バズーカを連射するとは予想外だったが、曲芸に過ぎん。攻撃力の不足を補える物では無い。“20%減”だ」

 爆発後、広がる煙幕と、ひらひらと舞い散る残骸。見事にアームを撃ち落とし、得意満面のハロルドだったが、
ダグラスは気を緩めなかった。

「来るぞ! 本命だ!」

 煙の中から出現したのは、ディフェンダーガンダムの下半身!
 ハロルドは顔を顰める。

「嫌な思い出が蘇るぜ……」

 突撃隊が地球へ降下し、本格的に重力下での戦いを繰り広げ始めた頃、地球連邦軍がコロニー連合軍への迎撃に
用いた、量産型V7ガンダムによる一斉特攻。雨霰と降り掛かるリムの前に、連合軍は後退を余儀なくされ、それが
連邦軍反攻の切っ掛けとなった。
 ハロルドは過去の怨みを込めた瞳でボトムリムを睨み付け、ジャイアント・バズーカの砲口を向ける。

「木端微塵にしてくれるっ!」

 ズドッ、ドォン!! ガッ、ガアァン!!

 機体を大きく揺らしながら、再び2連射。ボトムリムは一際大きな爆発を起こし、砕け散った。

「“30%減”……」

 立ち込める黒煙を潜り、マーウォルスは不気味に呟く。ガンダムは両腕と下半身を失ったが、それは余計なウェイトを
取り去ったに過ぎない。

「機体重量“50%”。V.S.B.R.シールドスタンバイ。ドライブ全開」

 ディフェンダーガンダムは速度を上げて煙幕を突っ切り、バウ・ワウに迫る!

「手足を飛ばして、終いは突撃か! ハハッ、こいつは面白い!」
「ハル、笑い事じゃない!! 早く撃ち墜とせっ!!」

 向かい来るディフェンダーガンダムを嘲笑うハロルドに対して、ダグラスは焦る。
 ハロルドは笑い止み、不思議そうに問い掛けた。

「そう慌てるなよ。どうしたってんだ?」
「“V2ガンダム”!! “光の翼”だよ!!」

 デイフェンダーガンダムのドライブから飛散する粒子が、淡い赤紫色に輝いて翼を成す。
 ダグラスの叫びに応えるかの様に、ディフェンダーガンダムは全長100mに及ぶ光の翼を広げて見せた。
 光の翼は見る間に収束して、Iフィールドで形成されたヴェスバーのビームシールドと一体化し、完全な鎧となる!

「なっ、何だぁ!?」
「何でも良い! 迎撃だ!」
「りょ、了解!」

 ズドッ、ドッ、ドォン!

 バウはジャイアント・バズーカを3連射したが、全てビームの壁に阻まれた。最初に命中させた時とは違い、速度を
落とさせる事すら出来ない。これで全8発の通常弾を撃ち尽くし、次は拡散弾を込める!

 バズゥッ、ズゥン!!

 発射された2発のロケット弾は、ビームシールド接触後に破裂し、小さな弾丸を飛び散らせたが、焼け石に水。悉く
オレンジ色の炎を上げながら高熱に溶かされ、辛うじて機体に命中した物もアーマーに弾かれる。
 ディフェンダーガンダムは更に加速し、バウとの距離を狭めて行く。ハロルドは苦し紛れにバズーカを投げ付け、
ダグラスに言った。

「ダグ!! 急上昇だっ!!」
「解っている!!」

 応えるダグラスの声も自然と荒くなる。バズーカはビームシールドに弾かれ、虚しく砂に埋もれた。
 上空に逃れ様とするバウの後を追い、ディフェンダーガンダムは纏っていた光の翼を再び広げる!

「逃がすかっ……あ?」

 ディフェンダーガンダムが上昇を始めたと同時に、マーウォルスは信じられない物を見た。
 バウの上半身が、急上昇する下半身から外れ、コロッと落ちたのだ。どちらを追うか迷った“一瞬”が命取りとなった。
 ディフェンダーガンダムの真下に潜り込んだバウの上半身は、シールド裏から取り出したショットランサーを右腰に
構えている!

「隙有りっ! 打ち上げ花火だ! 玉屋ぁ!!」

 シュゴォオオッ!!

 ランスが飛び出し、空を裂く! 

「道化が! 小癪な真似を!」

 マーウォルスはドライブを弱め、光の翼を消して機体をバウの上半身に向けたが、遅かった。
 ランサーはビームシールドの弱所、機体底面側を貫いて、右腰のヴェスバーを爆破する!

「くっ、この程度で……うおっ!?」

 ガゴン!

 強がりを吐こうとしたマーウォルスだったが、同時に衝撃がコクピットを襲う。爆風で浮き上がったディフェンダー
ガンダムの背中を、分離したバウの下半身が蹴り下ろしたのだ。

「このオォッ!! 煩い奴等め!!」

 マーウォルスは地面に激突するのも構わず、光の翼を広げて、背面を薙ぎ払った。しかし、怒りに任せた攻撃など、
ダグラスの操縦するバウ・ナッターには掠りもしない。全開のドライブは天に背を向けた機体を地に叩き落とす!

 ディフェンダーガンダムは直後に光の翼を収め、機体を横に半回転させて天を仰いだ。ドライブが大量の砂を
吹き上げ、巨大なクレーターが出来上がる。地面への衝突を何とか避け、バウ・ナッターを追って視線を泳がせた
マーウォルスの目に飛び込んで来たのは、宙返りして急降下して来るバウ・アタッカー!

「全弾、持って行けぇっ!!」

 ドドドドドドォ!!

 ハロルドは両翼のミサイル計6発を撃ち込み、V字に急上昇する。
 襲い来るミサイルを防ぐ為、マーウォルスはビームシールドを展開させ様としたが、右腰のヴェスバーが壊れていて、
完全なシールドを形成出来ない!

「うおおおおおお!!」

 マーウォルスの雄叫びと同時に、大爆発がディフェンダーガンダムを呑み込んだ。
 ハロルドとダグラスは平行に飛行し、モニターの小窓にピックアップされた爆発の跡に目を遣る。

 砂煙が収まった後、クレーター中心のディフェンダーガンダムは、アーマーを破壊されながらも、原形を保っていた。
ハロルドは口笛を吹いて感心する。

「頑丈だな……」
「しかし、これで追っては来られないだろう。既にヴァンダルジアは宇宙に上がった。後は俺達が追い付くだけ……。
 所でハル、済まないが、ナッターのブーストエンジンは限界だ」
「了解。中将殿、ヴァンダルジアまで御送り致します」

 軽く冗談めかしたハロルドは、ナッターを上から抱える様にアタッカーに連結させ、機首を大空に向けた。
 そしてマニュアルアナウンスを始める。

「土星ロケットエンジン作動10秒前。衝撃注意」
「了解。ナッターは進路制御に努める」
「……5、4、3、2、1、ファイア!」

 ゴオオオオオオォ!!

 赤砂で濁った空に、轟音と共に白い炎を噴き、天高く昇る流星。
 賞金稼ぎのガンダムを全滅させた聖戦団員は、真昼の星を見上げ、揃って機体と共に敬礼する。
 バウ・ワウは火星の厚い大気圏を軽々と離脱し、ヴァンダルジアに帰艦した。

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