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夕飯時の住宅とエプロンの女子高生

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夕飯時の住宅とエプロンの女子高生


森の木々が色を変え、秋色に染まっていく。
農園は相変わらず拡大中で余った野菜は他の町村との物々交換に使うことになった。
鳥に手紙を持たせて飛ばしてから数日後。私の知っている限りでは二年振りにこの領土に人が入った。
港町の人間たちで日持ちのする魚の干物などを持ってきてくれた。小川で魚が取れないこともないが
やはり海の幸は別物だ。干物とは言え、久しぶりに食べる魚はなかなかおいしかった。
ここで取れた野菜も好評らしく、最近では連日人が出入りするような状況になっている。
とは言っても実際に取引するのは私以外の人間だ。
私にはどれがどのくらいの量で交換だとかそういう細かいことはわからないので専ら収穫専門だ。
なので外部の人間と接触することもない。特にする必要もないと思っている。
今日も他の人間は商人の相手をしているの黙々と収穫作業を行う。
この区間が終われば今収穫できるものはとりあえず終わりだ。
もうすぐ収穫の秋が終わり、冬が来る。

「それでまだ大本はわからないのか」
「調査中だ」
ほかほかと湯気を立てている白米に角煮を乗せて頬張る。
さらにわかめの味噌汁をいただく。
「この料理おいしいな……。あっちでも作れないものか」
「私はこの環境で普通に食事を出来るお前の神経を疑う」
今回の対象は普通の家に住む普通の女子高生だった。
二階建ての家屋のドアを得物でこじ開けると包丁が飛んできたのでそれを避けて首を落とした。
その後、ハルトシュラーを呼んだところでいいにおいがしたのでつられてみると
火のかかったままの煮物と味噌汁を発見。ご飯が炊けていたようなので食事をすることにした。
死体はここからでは見えないしにおいがあるわけでもないのでどうということはない。
ただちょっと動いたら首なしの死体と首が転がっているだけだ。
「大本がわからないのはいいとしよう。だったらもうちょっと楽しめる相手だといいのだが」
「あちらも我々に気づいてから強めの固体を選ぶようにはしているようだが
 たまにこういう戦闘能力を持たない個体も混ざる。仕方のないことだ」
「こういうのが相手なら一晩で何人でも相手出来るし連戦というのは出来ないのか?」
「お前たちの地道な活動のおかげで個体数は徐々に減ってきている。
 その証拠に今回の呼び出しは久しぶりだっただろ?」
確かにそうだ。
毎回一季節に一回くらい呼び出されていたが夏は結局呼び出しがなかった。
それゆえにまだかまだかと楽しみにしてたらこれである。とんだ期待はずれだ。
いっそのことあっちの世界の北の軍が盛り返せば魔物と遊べるのだがそれも叶いそうにない。

「だから今後もだんだんと呼び出しの間隔が長くなるぞ」
「えっ、どのくらいになるんだ」
「具体的には言えない。年二回とか一回になるんじゃないかと予測はしているが」
愕然とした。ただでさえ少ないと思っていた討伐がさらに少なくなる。
私はこれから何を目的として生きればいいのだ。農家にでも転職すべきなのか。
体を鍛えて技を磨いても生かす場所がなければ何の意味もないじゃないか。
そこで私は閃いた。
「寄生されている個体が少ないということだよな?」
「その通りだ」
「じゃあ寄生してない奴と戦わせろ」
「あん?」
「他の世界には色々と無限桃花に限らずとも剣士なりなんなりがいるんだろ?
 そいつらと戦わせてくれ」
「そもそも私がお前を呼び出しているのはあくまでも寄生退治のためなんだが」
「お前だっていざ戦闘になったときに私が長い間戦ってなかったせいで負けたら困るだろ」
ハルトシュラーは明らかにうんざりした表情でため息をついた。
私は勝った事を確信した。
「あー、わかった。わかった。善処しよう」
「ああ、頼むぞ」
薄茶色になった卵を半分に割る。
ふわっとした湯気が立つ。これをご飯に乗っけて食べる。
味が染み込んでいて黄身がほくほくしている。白米もうまい。
玄関のほうで音がした後、悲鳴が聞こえた。
女子高生がこんな家を一人で持っているわけがないし誰か同居人がいることはわかっていた。
そもそも食器が二人分用意されていた時点で対象がじきに帰宅する相手と食事するのは明白だ。
だが私はまだ角煮を食べきっていない。あの肉は私を誘惑して放さない。
そのまま食事を続行しながら考えていると帰宅した本人が現れた。
対象よりも年下に見えるしいわゆる無限彼方というやつだろう。
「おかえりなさい」
挨拶をしてみるが唇をわなわなと震わせるだけで返事はなかった。
味噌汁を飲み干して、おかわりしようか悩んでいると近くの椅子に座り俯いた。
「あなた、誰」
「異世界の白騎士だ」
彼女は無言で立ち上がり、台所に近づく。下の戸棚を開けて包丁を取り出した。
「あなたが姉さんを殺したの?」
「その通りだ」
私は最後の一欠けらの豚肉とご飯を口に運び、ゆっくりと咀嚼して飲み込んだ後、箸を置いて手を合わせる。
じつにうまかった。コユキに作ってもらえないだろうか。しかしあっちで豚肉は手に入るのだろうか。
さてと、次は目の前のモノをどうにかしないといけない。
「忠告だ。おとなしくしていろ」
「自分の……姉貴を……殺されて何もするなと言うの?」
「死にたければ動け」
食器を重ねて流し台へ運ぶ。これをやらないとコユキにガミガミ言われる。
以前はこういう習慣がなかったので癖が出来るまで結構怒られた。
両手を食器で塞いだ状態で彼女の横に立つ。
包丁を持った手が動いた。それが到達するよりも早く得物で手首を切り落す。
「動くなと言ったな」
食器を置きながら得物だけを動かし首を撥ねる。
噴出した血が味噌汁の入った鍋に降り注ぐ。角煮は蓋をしていたので無事だ。
「無駄な殺生はしないんじゃなかったのか?」
一部始終を見ていたハルトシュラーが机の上に座る。
私は彼女と向き合い、流しに寄りかかる。
「相手が攻撃してくるなら躊躇わないさ」
「食事せずに帰れば彼女は死なずに済んだ」
「そうだな。だがそれは彼女の帰宅が後五分遅ければと同じ結果だ。
 運が悪かった。それだけの話だ」
ハルトシュラーは納得したのか、言葉を返さず私を転送した。
転がる彼女の虚ろな目が私をじっと見つめていた。



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