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夢世界と案内人

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夢世界と案内人


「こんばんわ」
見た目は銀髪の少女だ。黒くて装飾の多い服を着ている。
椅子に座っているものの背丈だっておそらくコユキぐらいしかないのではなかろうか。
どこからどう取っても少女のはずだ。
「別に危害を加える気はない。座ったらどうだ?」
その言葉には人を従わせるだけの力を持っていた。言われたとおり傍にあった椅子に座る。
丸い机を挟んで少女と対峙する。
優雅に器の飲み物を飲んでいる。隙だらけだ。やろうと思えば切り裂ける。
なのに叶う気がしない。想像しても切り裂けたという結果に辿りつけない。
「創作物としての限界だ」
「なに?」
「今のお前が私を傷を付けることは出来まい。
 他の無限桃花よりも可能性は高いがそれだけの話だ。
 だが今はその話はいい。お前に大事な話があるのだ」
器を机に置く。彼女の瞳が私を見つめる。
その髪と同じく銀色の瞳。まるでどこかの絵画に描かれたような美しい顔立ち。
「訓練相手が欲しいそうだな」
なぜそれを知っているのかは問わない。おそらく彼女は私のことは全て知っている。
だから私も全てを知っている前提で話す。
「ああ。今となっては町はああなってしまったが私はあそこに魔物を住まわせる気はない。
 とは言ってもそう襲撃があるわけじゃないからどうしても実戦経験が少なくてね」
「町も守りたいと」
「まあさっき言ったとおりだ。私があそこを守る義務はもうないがな」
「うむ。一石二鳥と言うものだ。実は言うとお前の町……いや、お前の世界に危機が迫っててね」
「世界に……危機?」
「そうだ。どうもやっかいな奴らが出てきたらしくてね。お前にはそれを退治してもらう」
「どんなやつらなんだ」
「寄生だ」

そもそもの始まりは亀が持ってきた魔術書だった。
「魔法使いというのはひねくれ者が多い」
「知っている」
「……そうか。これを覚えているかい?」
そう言って亀が私に差し出したのは古びた一冊の本。
「これは……確か隊商で買った魔術書の偽書?」
「そうだ。素人が見れば魔術書。ちょっと目利きが出来れば偽書。
 だがこれの正体は偽書に見せかけた魔術書だ」
「偽物に見せかけた魔術書? また面倒な……」
亀は本を開いてぺらぺらと捲る。
「暗号で書かれた魔術書なんだよ。おそらく自分の暗号を解く力がある魔法使いになら
 自分の研究の成果を教えてもいいと思ったのだろう」
本物の魔術書というのは大別すると一般普及している教科書のような誰にでもわかるものと
個人が書いた自分の研究や知識を記した一品物の二種類が存在する。
魔法使いというのは自らの研究結果をみなに知らせたがる。
しかし一方でそれを誰にでも利用されることを好まない。便乗はされたくないということだ。
故に大々的に発表する人は少なく、大抵の魔法使いが研究結果を書き記した後
その本をひっそりと世間へと放流するそうだ。
今は戦争中だし重要な発見をしたら世間に発表するのが一般となってはいるが
それでもこっそりと放流している魔法使いは後を絶たない。
と亀が饒舌に語ってくれた。
「で、亀はそれを解読できるのか?」
「解読したから呼んだんだよ。と言ってもあの夜が来る前には解読してたんだけど
 教えようと思ったらあんなことがあって本もどっか行っちゃって……」
そう説明しながら瓦礫を並び替えて石で何かの陣を作っている。
「これに記されているのは陣形呪文。意味は召喚。不用意に呼ぶのはちょっと危ないけど
 まぁ周りには誰も居ないしいざとなったらお願いね」
「おい待て。召喚した奴はちゃんと制御出来るんじゃないのか」
「たまに出来ないのとかいるからさ。それじゃあ行くよ」
亀が陣の中心に立ち、片手で本を支え、もう片手を前に突き出す。
止める間も無く陣形が強烈な光を放ち、視界が戻ったときには先ほどと同じ光景しかなかった。
失敗したのかなと亀が頭を書きながら本を捲っているのを見て、胸をなでおろしたのだ。
よもや夢の中でこんなことになろうとはその時は思いもしなかった。

「寄生と一言で言っても様々なものがいるが……今回発見されたのは生物であればなんにでも寄生するものだ。
 人は当然として他の動物、後は森全体に寄生しているものもいた。
 その寄生は周りに自分の縄張りを拡大させながら生命を養分にして育ち、ある程度成長すると大変なことになる。と思う」
「思うなのか」
「なにぶん発見したのは本当に最近でね。その寄生の生態もよくはわかっていない。
 ただどのタイミングだかわからないがどうやら世界を超越して種を撒くという厄介な力を持っている」
「たいみんぐ……?」
聞きなれない言葉を耳して、聞き返してしまった。確か西洋の言葉であんな言葉があった気がするがよくは覚えていない。
「……ちょっと頭出して」
素直に頭を彼女に向かって突き出す。ぷすっと何か鋭いもので刺された。
その瞬間、頭の中を何か大きな流れが駆け巡った。頭を引っ込めて、手で撫でてみるものの傷はない。
「な、何をやった」
「情報を注ぎ込んだ。これでだいぶ言葉の意味もわかるようになったはずだ。
 さっきの話の続きとなるが問題となるのはこの世界を超えて種を撒くということだ」
「いや、やっぱり言っている意味がわからない。世界を超えるというのはどういうことだ」
「そうだな。お前の今住んでいる世界というのはどこかの図書館に入っている本の一冊だとしよう。
 本同士、つまり世界同士は隣接しているもののその中身にまで干渉することはないのだ。
 だがこの寄生はどうやら本の中身を食らい、成長すると違う本棚の本に飛びついてしまうのだ」
「そしてまた取り付いた本の中身を食うと。まるで紙魚だな」
以前本を食らう虫がいるというのは亀から聞いたことがある。
忌々しいとは言っていたがそんな本の食らいつくすような虫ではないそうだ。
「私はその寄生を君にお前に対峙してほしいんだ」
「なるほど。この世界に飛んでくる前にそれを駆除してほしいと。
 確かに守ることも出来るし、退治をすればいい訓練になるかもしれないな」
「その通りだ。引き受けてくれるな?」
「どうせ夢の中だしな。いいだろう。引き受けよう」
「そうか。では早速現地に行くぞ」
彼女は残っていた紅茶を全て飲み干し、カップをソーサーに戻した。
コツンという音と共に急速に闇が広がり、私を回りの空間ごと包み込んだ。
それにしても変わった夢だ。夢魔とかいう妖怪がいると聞いたしこいつもそれの一種に違いない。
「ああ、そういえば名乗ってなかったな」
闇の向こうで先ほどの彼女の声が聞える。
すぐそこから聞えるのに手を伸ばしても掴めない。
「私の名前はハルトシュラーだ。好きなように呼べばいい」



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