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壊乱Ⅴ

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壊乱Ⅴ


勢いが余ってそのままファウストに体当たりする。石から離れていく。
獲物を伸ばして石へと伸ばす。あと少しで届く。体の落ちる速度が急激に速くなる。
「貴様はよくやった。だが我輩が石がなくとも魔術師の長になれる程度の実力があったことを忘れるな」
ソーニャに比べてファウストは不自然に落ちるのがゆっくりだ。重力を変えられた。
獲物の先を方向を変え、ファウストの足へと巻きつける。
引っ張るのではなく長さを短くして先ほどと同じように勢いをつけようとした。
しかしそれに気づいたファウストは巻きついた獲物を解くのではなく、自らの片足を魔法で切り落とした。
「勝利のためなら足の一本くらいくれてやるわ!」
この高さから落ちればさすがにまずい。呪文が中断されたと言っても下では水が渦巻いている。
千切れた足を獲物に取り込む。肉や血はうまく排出させて骨だけを抽出し、狙いを定める。
石へと伸ばしていた手に骨の欠片が突き刺さる。さらに石に当ててファウストから離す。
ファウストが突き刺さった骨をすぐに取り除き、再び石へと近づいていく。
獲物を伸ばすにしても避けられてしまう。周りに乗れそうな場所もない。このまま行けば落ちるだけだ。
狙いを定める。残っている骨の欠片は多くは無い。石を撃っても壊すことは出来ない。
全ての弾を二つに分け、まずは一発ファウストに目掛けて撃つ。防御呪文を張ればその分時間だけは稼げる。
ファウストと違って通常の重力で落下している石はどんどん差が開くはずだ。
こうなったら石を落とすしかない。そう考えていた。
飛んでくる弾を見たファウストは防御呪文を張らず、そのまま手を伸ばし続けた。
例え弾が自らの体に刺さっても石を手に入れる。手に入れさえすれば癒すことが出来る。
そうわかっていても実行できるようなものじゃない。だがそれを躊躇うことなくファウストは実行した。
そして伸ばしていた右手の手首に刃物状になっていた弾が刺さった。
素直に防御すればよかったものの刺さった弾は手首を切り落とすことが出来なくても使用不可能にする程度の威力はある。
切り落とせなかったのは残念だが残った弾から考えてもこれが限界だ。
石の少し手前、丁度さっき右手の手首があったぐらいの場所を狙い撃つ。
右手で掴めなくなった以上は左手を伸ばす。予想通り躊躇いなく伸ばした。が、場所が少しずれ指を切り落とす。
右手は使えず、左手の指は切り落とした。とはいってもまだ左手の掌に乗せて呪文ぐらいは使える。
だがあの手で物を追いかけて掴むのは難しいだろう。
ソーニャの役目はここまでだ。あとは間近に迫った水面に身を落とし、渦に飲まれよう。
憤怒の表情を浮かべるファウストの先にある空で何かが見える。塊だろうか。しかし呪文は途切れて久しい。
塊より小さいそれがファウストに激突したところでソーニャは水に飲まれた。
呪文が途切れているにも関らず残っている激流。泳げば少しは、と思ったがとんでもない。
あっという間に流れに飲まれ、一緒に飲まれている瓦礫や何かの破片が肌を切り裂く。
このままなぶり殺しにされるのかと考えていると体を誰かに抱きかかえられて水から引き上げられた。
酸素を求めて呼吸を繰り返す。短い時間ではあったが酸素は多量に消費している。
「大丈夫ですか」
「ああ……なんとか生きているようだ……」
呼吸が落ち着き冷静になってみるとどうやら空中に浮いているようだ。
誰かが脇から体を持っていてくれている。しかし先ほどの声に聞き覚えはない。
「本来であればこの戦いも阻止出来たはずなのに。申し訳ない」
「いや、まぁそれはいい。それよりも石とファウストは」
「魔術師は先ほど駆逐しました。石も同時に消滅したようです」
ファウストの付属品ということで消滅したようだ。とりあえずは一安心。
ふわふわと漂いながら水に飲まれていない瓦礫の上へ運ばれる。
そこで初めて周りを見渡すことが出来た。
未だに燃えている場所が多々あるらしく明るい場所があり、それのおかげで遠くまで見渡せる。
そう。建物が密集していたはずなのに遠くまで見えるのだ。かなりの部分が瓦礫の山になっている。
今までこの町の住人、先祖たちが築いてきたものはこの一夜で全て消滅したということだ。
「改めてみると本当に滅びたんだな。町は」

「いえ、滅びてません。それを阻止するために私は東京からやってきたのです」
東京という言葉に反応してその人を見る。
見たことも無い妙な服を着ている。一般の服というよりも自衛団の制服に似ている。
髪はソーニャより少し長いくらいで色はその瞳と同じく灰色をしていた。
何よりも気になったのはその頭部についてるものだ。人工物のようなものがくっついている。
そして腰の部分にも同じような車輪の形をしたそれが両側に浮いていた。
「東京からこの地に派遣されたアンドロイドの仮名ヘッセと申します」
「私は……いや、自己紹介の前に人命救助と消火活動かな」
「了解しました」



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