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壊乱Ⅳ

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壊乱Ⅳ


地面を蹴って、体を低くし走る。ドラゴンが両前足を地面から離す。今度は両足で攻撃するつもりなのだろう。
剣を伸ばし地面に落ちた大きめの瓦礫を拾い、取り込む。先ほど刺した腹部の傷は癒えていない。
大砲と呼ばれる武器に形を変える。本来であればもっと大きいものではあるがこれ肩に乗っけて撃つ程度のものだ。
狙いなど定める必要もない。撃てば当たる。ドンと音がなると瓦礫の弾は腹部に直撃し、貫通はしないが穴を開けた。
唸り声を上げながら両前足を下ろす。体が元の位置に戻るとしたら丁度ここは腹部と胸部の境目くらいだろうか。
前に数歩出て、先ほどの大砲を地面に刺す。しゃがみ込み、天に向いている方を出来るだけ大きな円錐型の屋根へと変える。
影が出来、空気の壁と共に世界が揺れた。思わず体が地面から浮く。それと同時に頭上から夥しい量の血が降り注いだ。
ドラゴンが離れようとしているのかだんだんと腹部が離れていく。この好機をみすみす逃すはずが無い。
獲物を抜いて、開いたところに懐から爆弾を取り出し起動させ押し込む。さらに獲物で衝撃を与えないように押し上げるように
奥へと入れる。離れようとすると両側から強風が吹き、ドラゴンから離れていった。
どうやら飛んでいるようだ。これだけの巨体を飛ばすだけあって、羽ばたくだけでも思わず身構えるほどの風が吹く。
「ふむ。人間とは思えぬ豪胆さだ。だが無駄だ」
ファウストが石をドラゴンに掲げると腹部の傷はあっという間に癒えてしまった。だがこれも予想通りだ。
右手のほうで瓦礫を漁っているドラゴンに向かう。一番危険なのはファウストであるが攻撃が届かない以上は構う必要はない。
「我輩を無視するか。例えドラゴンを殺したところで敗北する未来は変えられないというのに」
その言葉を言い終えないうちにくもぐった爆音がした。ちらりと見ると赤いドラゴンに突っ込んであった爆弾が爆発したようだ。
赤い雨があたりを濡らすがそんなことはどうでもいい。音に反応して首を起こした老いたドラゴンがソーニャを発見した。
こいつに関しては小細工しなくていい。五年以上前のソーニャが一撃で殺した相手なのだから。
老いたドラゴンがこちらに向かって首を伸ばし咆えたける。押し寄せた音の壁と鼓膜を破りそうな衝撃に耐え、ドラゴンの横へ回り込む。
相手が怯むとでも思っていたのだろうか。一瞬、反応が遅れた。その結果、丁度伸ばしきっていた首はソーニャによって切断された。
光の粒子となって老いたドラゴンが消えていく。振り向けば赤いドラゴンもいなくなっていた。
「どうした? お得意の回復の呪文で治さなかったのか?」
「……我が呪文も万能はない。よもや体内から爆発するとはな」
つまるところある一定量の傷は瞬時には癒せないということだ。最も術者以外がいないのだから今更な情報だ。
しかし問題はここからだ。
先ほどドラゴンを殺した前後に瓦礫の山を見渡したが二人の姿は無い。ドラゴンも掘り起こした形跡がないし本当に死んでいるのだろうか。
相変わらずファウストは浮いているしやるとしたら先ほどの手持ち大砲を使うぐらいしかない。
だが相手には防御の魔法がある。大砲程度では貫通出来ないだろうし、おそらくは爆弾を近くで爆発させても平気で生き残るに違いない。
考えれば考えるほど積みの状況だ。
ファウストが黒い石を掲げた。それと同時に素早く瓦礫を拾い、大砲で打ち出す。
相変わらず見えない壁に当たって瓦礫は砕けた。だが邪魔が出来たようで再び石を掲げ始めた。
また瓦礫を飛ばす。今度はファウストの少し上を狙う。瓦礫は見えない壁に弾かれ、後ろへ飛んでいった。
「せっかくだから大呪文を唱えたいのだがさせてはくれないか」
先ほどの瓦礫が残した破片がファウストの頭上から零れ落ちる。思ったより壁は実体に近いようだ。
ならば。大砲を弓へと変える。しかし矢をわざとゆっくりつがえる。まともに撃てば今度は着弾すらさせてくれないだろう。
呪文によっては死ぬが仕方あるまい。
黒い石が青い光を放つ。同時に矢を撃つ。地面から水が沸いてきて渦を巻き始める。これなら大丈夫なはずだ。
矢は先ほどと同様に壁に阻まれた。が、そのまま落ちずにくっついている。さらに矢の後ろから細い紐を伸ばしている。
その紐ソーニャの手元の弓へとつなげてある。足元が水に濡れると同時に弓を持つ手が引っ張られ、矢の元へと風を切って進む。
ファウストがそれに気づいた。壁を解除した。矢が落ちる。しかしもう既に遅い。
勢いに任せて、ファウストに切りかかる。だが咄嗟に張られた防御で狙いがずれる。
右腕の二の腕を切り裂く。そして持っていた隕石を落とした。



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