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壊乱Ⅲ

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壊乱Ⅲ


「全く本当に素晴しい力だ。この力さえあれば神すらも超えられるのではないかと錯覚してしまう」
攻撃の機会を伺うもののファウストに隙はあっても横にいるドラゴンに睨まれている。
逆にドラゴンが不意に攻撃してこないか警戒しないといけないほどだ。
「かつて栄華を迎えた文明を一瞬にして滅亡させた隕石。その欠片ですらこれほどの魔力を秘めている。
 我々人間の作る魔術品とは比べ物にならん。純正たる魔力の塊だ。素晴しい。素晴しい!」
興奮してるのか隕石を掲げたりくるくる回ったりしている。
ファウストはロゼッタよりも歳を取っているように見える。
魔術師というのはいくつになっても子どもの心を忘れない生き物に違いない。
「おそらく北の地にあるのはこれの本体。おそらく発掘してしまったのだろう。
 これの本体となれば世界の理すらも覆せるに違いない。素晴しいとは思わぬかね?」
「思わないな。そんなものを覆してお前は何を求めるんだ」
相手のご機嫌など取る必要はない。ソーニャはファウストの問いかけに挑発気味に返す。
ファウストは気にしていないらしく低く笑いながら答える。
「力。真理。理。果て。魔術師の知識欲に終わりは無い。
 知るたびに新たな事柄を知りたくなる。ただそれだけだ。さて」
話を区切る。どうやら雑談は終わりのようだ。
「貴様一人に対してこちらはドラゴンが二体に我輩。勝機はゼロに等しい。
 さらに貴様が万が一勝ったとしてもこの惨状では町の復興も難しかろう。
 それでもまだ絶望に負けず我輩に剣を向けるのか?」
最終通告に等しい言葉。ファウストからしてみればソーニャの選択肢は二つ。
おとなしく死ぬか抗って死ぬか。
でもなぜだろうか。あの塊が降ってきて町が滅びたと言われたときから不思議な気持ちが沸いて来る。
「……そうだな。これだけ派手に壊されては物資不足云々言われている現状では復興は難しい。
 つまり私はもう町のために戦う必要もないというわけだ」
「ふむ。我輩は貴様が諦めなければ希望がとでものたまうかと予測していたのだが」
「残念ながらそんなに楽観的ではないさ。今まで経験したどんな状況よりも最悪で死に近いんだからな」
ソーニャは微笑みを浮かべる。
「しかし気分は不思議なくらい落ち着いている。まるで澄んだ青空のようだ」
空を見上げると燃える塊の灯りの先で夜空に星が輝いているのが見える。
町は滅びたというのになぜこれだけ落ち着いていられるのか。
相手の気分次第ではすぐさま死ぬこの状況でなぜ穏やかに笑っていられるのか。
「死を前にして達観したか」
「肩の荷が下りたと言ったほうがいいな。なんだかんだで半年ほどしか団長、いや、団長もどきをやってないが
 どうにも私の性に合わなかったようだ。やはり私は自分で考え自分で動くほうがいい」
獲物を使いやすい長さの剣に変える。
もう守るものはない。背負うものもない。好きなように出来る。
「マゴロクは殺し合いに必要なのは純粋無垢な殺意と言っていたが私からしてみれば必要なのは
 どのような状況下においても殺し合いを楽しむことが出来る心構えじゃないのかな」
赤いドラゴンはこちらに体を向けている。老いたドラゴンは瓦礫を漁っている。トドメでも刺すつもりなのだろう。
ファウストは一応ソーニャの攻撃を警戒しているのか獲物を延ばしても届かない距離にいる。弓であれば届きはするが撃たせてはくれまい。
ならば相手をするのはまずは目の前のドラゴンとしよう。



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