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死者たちの夜Ⅲ

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死者たちの夜Ⅲ


「死者蘇生の呪文の媒体だと思われるものは全部で五個。これのいずれかを破壊すれば呪文は停止する。
 術者のほうは……まだ見つからないのか?」
「はい。捜索に当たっていますがこの様子だと町中にいるかどうかも……」
町の地図の上にバツ印が五箇所書かれている。魔術師が使い魔で発見してくれたものだ。
陣の形から考えるとこれで全部らしい。が、まだ魔術の実行者が見つかっていない。
その上、展開されている魔術は一個ではないようだ。
「死者蘇生の呪文と魂の呼び集める呪文か……」
一つは魔法陣内の死者を蘇生させる呪文。この呪文は時間が経つにつれ、昔の死者を蘇らせていくようだ。
もう一つは一定周囲内の死者の魂を呼び集める呪文。
おそらくこの呪文のせいでぎりぎり魔法陣外であった狼たちも蘇っている。
魔術師たちが言うにはこの2つの呪文は別々に発動しているもので術者も違うそうだ。
つまり術者は二人。もしも死者蘇生の呪文の媒体が完全に肩代わりしているなら一人は確実にいる。
「その媒体が死者蘇生の媒体であるのは確実なのか?」
「ええ、陣の形でその辺はわかるので」
「媒体さえ破壊すれば死者の魂が集まったところで復活は出来ないからとりあえずは安心なのか」
「それまでに復活した死者は再度仕留めなければいけませんけどね」
先に止めなければいけないのは死者蘇生の呪文。つまり媒体の破壊なのだが……。
「相変わらず媒体の近くには上位の狼か」
呪文の媒体と思われる物……隊商の荷物の近くには上位の狼がいる。
狼がいないところには隊商の人間が媒体を破壊せずに待機している。
ソーニャは頭を振るい、考えを払う。今は余計なことを考えている場合ではない。
「私とビゼンで近くの媒体を破壊しに行く。誰か連絡用に使い魔を近くに飛ばしておいてくれ」
「わかりました」
ロゼッタの妻が頷く。さきほどから見ている様子でも彼女の実力は相当なもののようだ。
有難いことは有難いのだが……。
「しかしロゼッタ……副長の行方がまだわからないだろう。そっちの捜索に当たったほうがいいのではないか?」
亀とロゼッタはあれから行方がわかっていない。屋内に隠れていると使い魔だと見つけにくいらしいので
そうであってほしいのだが。
「大丈夫です。その程度で死ぬ人だったら結婚してませんから」
「……そうか。それじゃあよろしく頼むよ」

大聖堂の護衛を他の兵士に任せ、一番近くの媒体へと向かう。
大聖堂のある五時塔に一番近いのは三時塔と四時塔の間。幸運にもさほど離れていない。
一応遠距離から破壊できるように道具を持ってきたので場合によっては戦闘せずに破壊できる。
事前の捜索によれば上位の狼もいないはずなので普通に破壊してもさほど苦労はしないだろう。
人気のなくなった路地をビゼンと魚の形をした使い魔を引きつれ走る。
「そこの路地を右に曲がってください」
魚の案内に従い、狭い路地に入る。視界が狭くなったが上空から別の使い魔が見ているので
問題はない。路地を抜けると少し広めの通りに出る。この突き当たりにあるはずだ。
物陰に隠れながらこっそりと通りの奥を伺う。
「近くに隠れる場所でもあれば爆弾を投げ込むのだがな」
「あんまり近くに行くと相手に気づかれそうです」
ここからではあまりにも遠い。丁度風向きが突き当たりに吹いているし風に乗せて転がす……のも無理だろう。
「めんどくせぇな。正々堂々行こうぜ」
「相手が狼だけなら躊躇しないのだが……」
突き当たりで媒体を護衛しているのが狼だけではない。人間もいるのだ。それも死者ではなく生者。
つまり裏切り者だ。いや、元からこういう計画だったのだろう。会議で集まる要人を殺害する計画。
「相手が人間だろうか狼だろうか関係ねぇよ。そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
「し、しかし誰が計画を立てたか情報も聞き出さなきゃいけないし皆殺しにするのは」
「誰も皆殺しなんて言ってないだろ。ちょっと腕の二、三本切るだけだ」
「それより気づかれたみたいですよ」
そっと通りを見ると狼が近寄ってきている。姿も音も立ててないのになぜだ。
狼が立ち止まり、何か匂いを嗅いでいる。どうやら風がこちらの匂いを運んでいるようだ。
「見つかったなら仕方ないな」
ビゼンが物陰から飛び出していく。ソーニャもそれを慌てて追いかけた。



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