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死者たちの夜Ⅱ

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死者たちの夜Ⅱ


普段事務仕事ばかりしている姿しか見ないコユキだが短剣を持つ姿は様になっている。
というか腰の帯剣が綺麗なのは使わないせいなのか。外せよ。
「俺様との勝負の邪魔しやがって……。おい! 狼ども! やっちまえ!」
それを合図に周りを囲んでいた狼が一斉に飛び掛ってくる。
剣を長めにし、飛んでくる狼と走ってくる狼を纏めて払うように振るう。
が、さすがに四方は守れない。その死角にコユキが立ち、短剣で急所だけを狙う。
打ち合わせしたわけでもないのにお互いを自然に庇い合うことが出来る。以心伝心というものか。
しかし数が多く、応援でも来ているのかなかなか減らない。
「これじゃあきりがないな」
「ならいいものがあります。ちょっと待っててください」
コユキはしゃがんで短剣を左手で二本持ち、右手で腰につけた小物入れを漁り始めた。
それを見て襲い掛かってきた狼をその場で一周し、まとめて払う。
コユキは何かを取り出し、地面に叩きつけた。同時に白い煙が出てきた。
煙幕かと思ったが嗅いだと同時に違うものだとわかった。
「くさっ!」
思わず叫んでしまうほど臭い。何をどうすればこう……ひたすら臭い。
人間でも鼻をなくしたくなるほどの匂いだ。これを嗅覚が鋭い生物が嗅いだらどうなるか。
先ほどまで威勢のよかった狼が棒立ちになったかと思ったらそのまま倒れて光になった。
中には短い悲鳴を上げたり、その場から逃げようとして倒れるやつもいる。
匂いだけで死んでしまうなんてかわいそうな死に様だ。
「ぎゃあああああああああ!!」
目の前にいる上位の狼も例外ではなく、鼻を押さえながら地面を転がっている。
「獲物を追尾出来る様に調合された道具です。本来は相手に当てて使うんですけどね」
「冗談じゃねぇよ!! こんなの当てられた日には森が腐るぞ!!」
どうにか立ち上がった狼が鼻声で反論する。しかしすぐに膝を付いて、倒れてしまう。
「殺してくれ……。こんな匂いで死ぬなんてイヤだ……」
前回戦ったときのことを思い出す。初陣だと勇んで出て、想像以上の痛みに油断し殺されて
地獄から蘇れば、鼻がひんまがるほど臭い平気にやられ、切られることなく死んでいく。
きっとこの狼は呪われた星の下に生まれてきたに違いない。
気づけば涙を流しながら痙攣をしている。敵とは言えど見るに耐えない。
静かに剣を振り上げ、別れの言葉もなく振り下ろした。

来た道を戻り、大聖堂へ向かう。どうやら思ったよりも離れていたようだ。
結果的に見ればそれはいい行動だったが無意識だったのは問題だ。
大聖堂には既にかなりの数の兵士が集合している。緊急時はここに来いというのが鉄則となっているからだ。
「お前ら生きてたか!」
その中でも一際目立つビゼンがこっちにやってきた。見れば鎧に血が付いている。
ソーニャの視線に気づいたのか、服の裾で拭く。
「ああ、さっき上位の狼に会って仕留めてきたんだ。これは返り血」
「そうか。よかった。私もさっき上位を一体討伐してきた」
「ま、考えるまでもなく前回襲ってきた四体全員が復活しているはずだ。
 しかも何百だかわかりきれねぇぐらいの部下を連れてだ」
空を見上げる。魔法陣はまだ展開されている。まだ亀とロゼッタが阻止しきれていないということだ。
「方角的から見るとおそらく俺らが倒したのは正門以外の二体だ。
 雑魚だってそう倒しちゃいない。町中だから亀の呪文だって使えない」
「不利な状況……というわけか」
「あいつらが今どんな状況だかわかればいいんだが……」
「わかりますよ」
避難していた民衆のほうから声がかかった。振り向くと見覚えのある女性と子どもが立っていた。
「あなたたちは確かロゼッタの……」
「夫がお世話になっています」
女性はにっこりと笑う。そうだ。彼女はロゼッタの奥さんで横にいる子どもは……。
「今、使い魔を出して捜索に当たっていますけど父も亀も見当たりませんね」
いつだったかソーニャに魔法の説明をしてくれたコトだ。
あの時、確か使い魔もどきの道具を見せてもらったが彼女に魔術師ゆえにそれが必要ない。
おそらくここにはまだ魔術師が何人かいるはずだ。彼らにも手伝ってもらえば全体を把握できる。
ソーニャたちは早速避難した魔術師を集めることにした。



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