創作発表板@wiki

満月の時。狼戦

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
Top > 創発発のキャラクター総合 > 白亜記 > 満月の時。狼戦

満月の時。狼戦


「降参するならよぉ、楽に殺してやるぜ?」
その狼は笑いながらそう言った。
二本足で動くだけではなく人語を解する程度には知能も高い個体というわけか。
「俺様の二発で立ってるのもやっとなんだろう? 人間」
そうは言われたものの最初の二発は防御できたおかげか思ったよりも痛くはない。
叩きつけられた痛みも徐々に和らいできた。
「お前が……長か」
獲物を剣に変え、支えにしてみる。
なんとなく「すごい死に掛けです」な雰囲気を出して、情報でも出してくれないかと考えたのだ。
「ちげぇよ。まぁ冥土の土産に教えてやるよ。今、この町の正門を攻めているのが俺様の二人の兄貴で
 片方が長だ。んで、他のところから攻めてるのが姉貴。これだけ広ければ戦力も分散せざるを得ないし
 この三点にこちらの戦力全てをつぎ込んで侵入するってわけよ。
 くっくっく。さすが兄貴の考えた作戦だ。他の兄弟も今頃人間どもを血祭りに上げているころだろう。
 俺様もこうして初陣で作戦成功したし一族の狼として一目置かれるようになるぜ」
「兄弟……。お前のように二本足で立ってるやつらのことか。四人兄弟の末っ子というわけだな」
「ああ、その通りだ。俺様ぐらいに進化する魔物なんて早々いねぇからな」
なるほど。どうやら今回の戦闘で狼たちは本当に全勢力をつぎ込んでいるようだ。
そして上位に当たる狼は四匹しかいない。これ以上の加勢は来ないと見ていいだろう。
初陣ということで舞い上がっている上に他の同じ服装をした兵士とは明らかに違うソーニャを仕留めたと
勘違いして奴の気分は今、有頂天に達しているに違いない。
いや、そうでなくてもべらべら喋りそうだ。所詮獣程度の知能か。
「さてと、人間。そろそろ終いにしてやるよ。お前結構地位が高いんだろ?
 知ってるぜ。人間は地位の高さを服だとか装備で示しているんだろ?」
「ご明察どおり私はこの町の兵士団の団長だ」
「団長? お前が? まじかよやっべ。所謂長だろ? 俺様すげぇ評価あがるじゃん。やっべ」
本当にやばいのはお前の頭だ。
舞い上がっている狼に気づかれないように懐から銃をそっと取り出す。
安全装置を外し、指を掛ける。うまくいけば一撃だ。必ずその機会が来る。
狼が耳を立てる。他の兵士の援軍だ。意識がソーニャから他に移る。
一気に取り出し、引き金を引いた。
その一瞬で狼はこちらに反応はしていた。
だが、避けることは出来ずに着弾と同時に頭を大きく後ろに仰け反らせる。
血が出ていない。銃を捨て、大きく間合いを詰め、横凪に振るう。
狼はこちらを見ずに後方に飛びのき、それをかわした。
口に銃弾をくわえている。素晴しい動体視力だ。
唾を吐くように銃弾を捨て、こちらを睨みつける。
「惜しかったな。もう終わりだ、人間。八つ裂きにしてやるよ」
屈むような姿勢の後、こちらに向かって飛んでくる。
早いが一直線。剣を盾に変えて、棘を生やし防御する。
雪が積もっているせいでふんばりが効きづらい。後ろに倒れないようにうまく体勢を立て直す。
狼の拳から血が流れているがやつはそれを気にも留めず、再び同じ攻撃をしてくる。
雪で重くなる足を動かしそれをかわす。背面を見せた狼の背中に飛び掛る。
が、それを感知したのか大きく前に跳び、再びかわされてしまう。
これではいたちごっこだ。体力が消耗する前に仕留めなければ。
数歩後ろに下がり、先ほど吐き捨てていた銃弾を探してみるが見当たらない。
再び屈む姿勢。今度は迎え撃つ。
獲物を半月の刃に大きく伸ばす。そして飛んできたと同時に振り下ろした。
雪が赤く染まる。振り向くと狼は右腕を押さえている。
しかし流れる血は止まらず、顔も苦痛に歪んでいた。獲物を長剣に変え、ぎりぎりの間合いから斬りかかる。
狼はそれを負傷している右腕で防御する。切っ先が腕を切り裂き、さらに一歩前に踏み出て、振り上げる。
重い感触と共に右腕が宙を舞う。大きな悲鳴を上げる。尻餅を付いて、切断面を抑えている。
なんという弱さか。今まで大怪我をしなかったせいなのか、自らが完全に優位に立っている傲慢が崩れたせいなのか。
たった一撃でこれほど勝負を分けることになるとは思わなかった。
ソーニャが剣を振りかぶる。体を震わせながらこちらを見た狼の目には恐怖と苦痛の色しかなかった。
狼の首が雪に落ちる頃、遠くから兵士の声が聞えてきた。



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー