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満月前夜 触手戦

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満月前夜 触手戦


噴水広場はいつもよりかは静かであるが人通りはある。
当然のことながら広場の一角に縄を引いてれば公衆の面前に晒されることになる。
「なぁ、亀。やめないか?」
「何を呼ぼうかな……。あんなのやこんなのや……」
だめだ、この魔女聞いちゃいない。分厚い本を楽しそうに捲っている。
すでに言わなきゃ良かったと後悔しているがもうどうしようもなさそうだ。
縄を引き終わり場所を確保して、再び亀に声をかける。
「準備できたぞ……。って聞えないよな」
「え? ああ。じゃあやろうか」
「亀、やめないか?」
「ちょっと待って魔法陣書くから」
「聞けよ!」
「そうだね。ちょっと強いの呼ぶから武器持っててもいいや」
この魔女は何に対して受け答えしているのだろうか。甚だ疑問だ。
もしかしたらソーニャの知らないだけで近くに見えない誰かがいるのかもしれない。
ちなみにコユキは悲しそうな目でソーニャを見送ったのでここには亀とソーニャと数人の野次馬しかいない。
「書けたから呼ぶよ。正面に立って」
亀に指示されて亀の対面に立つ。亀の足元にはよくわからない絵が描かれている。魔法陣は何度見ても子どもの落書きにしか見えない。
円の縁に立ち、本を捲りながらぶつぶつと呟いている。
亀の足元から円の線が静かに光り始める。線を伝い、円を描き模様をなぞる。
ばたんと亀が本を閉じた。同時に円の光が失われていく。何も変化は無い。失敗したか?
と、思いきや円の中心あたりから何か液体が出てきた。
獲物を長い剣に変え、両手で持つ。
何かが飛び出てきたのを切り落とす。どうやら細長い触手が出てきたようだ。
液体の勢いが増すにつれて、触手の数が増えてくる。体に触られる前に切り落とす。
一際水の勢いが増したと同時に中心から水を滴らせながら、大きな触手が現れた。
先ほどまでの雑魚とは比べ物にならない。ソーニャが両手で抱え込めないほど太い。そもそも抱え込まないが。
触手は先っぽのほうに首がついているかのように曲げてこちらを見ている。露出している口には意外なことに歯が無い。
つまり獲物を丸呑みするという摂取方法を持つということだ。あのぬめぬめに食われたらと思うと死にたくなる。というか死ぬ。
よくみると太いやつにだけ頭というべきか口というべきかわからぬ場所に赤い塊が付いている。
先ほどから切り落としている触手は切っても切っても先から再生していくのできりが無い。
おそらく元を倒さなければ延々と再生してくるのだろう。ならばあれを狙ってみるのも手だ。
だが問題としては太い触手の頭はソーニャ二人分ほど上に部分にあり、届かない。
前に出て、向かってくる触手を切り進む。届かないならば切り落としてしまおう。
剣の間合いに入り、横に切る。が、剣は太い触手を切り落とすどころか表面を浅く切り込むだけだった
想像以上に堅いことがわかり、剣を抜こうとするがしっかりと挟まって抜けない。
小さな触手が剣に群がっていき、このままでは獲物を捨てることになる。
そのとき、背筋に冷たく、なおかつどろどろとした何かが滴り落ちた。
獲物の刃を引っ込め、その分逆側に出す。そのまま手や足に伸びてきた触手を切り払い、大きく距離をとる。
さきほどまでソーニャがいたところの頭上には大きな触手が首をもたげていた。
おそらくあのまま触手でソーニャを押さえ込み、捕食しようとしたのだ。奴の口から垂れる涎が背中に入ったのだろう。
急速にお風呂が恋しくなってきた。しかし今は目の前のそれを仕留めねばならぬ。いいや、殺さねばならぬ。
大きな触手が緩慢な動きで再び頭を元の高さへと戻す。切り落とすのがだめならばどうにかして頭を下ろさなければいけない。
わざと捕食されかけるという手もあるが生理的に無理だ。
そもそもきっちりと鎧を着て、さらに下に服を着てるのに背中に涎が落ちた時点でこいつは何かしらのよからぬ力を持っているに違いはない。
一応手の届く範囲で背中に手を伸ばしてみる。強い酸性の液体ではないようだ。涎に見せかけて実は服の裾から触手が入っていた?
ぞっとする。あれに一度捕まえればわずかな隙間に触手が入りこみ、ソーニャを捕獲するだろう。
もっと単純に。やり方は簡単に。あれを仕留める方法。

獲物が左手の中で細い棒状に変わっていく。それは弧を作り、端をさらに細い線が渡る。
右手には同じく細長い先端が尖っているものに作り変え、左手の武器に添え、線を引く。
かつて父に教えてもらった獲物。剣術が苦手だった父はソーニャにこの技術を遺していった。
右手から放たれた白い矢は空を切り、赤い塊を打ち抜く。
触手が断末魔をあげるかのように大きくしなり、そして地に伏し、動かなくなった。
やがて触手が霧のように崩れ、そこには白い矢が一本だけ残った。ソーニャがそれに手を向けると矢は吸い寄せされるようにその手に戻る。
今までは形を変えて攻撃するのがこれの使い方だったので手元から話すということをしたことがなかった。
弓矢に変化させて使う。思いつきそうでなぜかしなかった攻撃方法。これは他にも応用できる技術かもしれない。
いつの間にか集まっていた見物客に頭を下げ、残念そうにしている亀の頭を思いっきりぶん殴った後
ソーニャは明日に備え、宿に早足で戻った。決して背中が気持ち悪かったわけではない。



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