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満月前夜、本部にて

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満月前夜、本部にて


満月の前日。
相変わらずの曇天が続いている。お昼時を過ぎた頃からは雪までちらほらと降り始めた。
前回は満月の襲撃に備えての用意などはしなかったが今回はどこか慌しい。
最もあの時は床の修繕をしていたので本部に入ること自体が少なかった。
北の国の侵攻が本土まで到達しているという情報は自衛団のみならず町の人間にも広まっているせいか
普段よりも町全体に活気がなく、表情にも影を落としている。
「そんな深刻になるものでもないと思うがね」
亀は欠伸をしながらいつも通り気だるそうに机に突っ伏している。
「しかし本土が侵攻されている現状では警戒したほうがいいだろう」
「ここは本土と海挟んでるしそもそも船を付けられる場所なんてほとんどないから
 仮に来ても最初に襲撃されるのは港町のほうだしな」
この島は海と面している部分が絶壁であることが多く、天然の要塞のような形になっている。
そのため唯一まともに船が着けられる場所は島の玄関口となるためそこにある港町が最初に襲撃される。
「そうか。つまり危険性で言えば港町のほうが高いわけか。そうなれば港町のほうにも
 少し人員を回して警備の強化を……」
「ソーニャさん。落ち着いてください。他のところまで気を回せるほど余裕はありませんよ」
横で武器の手入れをしていたコユキがソーニャに突っ込みを入れる。
やはり事前に襲撃が来ると知らされているとなんとなくソーニャも落ち着かない。
よく考えれば空から襲撃された場合は港町とは関係なく、ここも襲撃される可能性がある。
だがしかし本土への侵攻が遅かったと言うことは空からの襲撃はないということなのか?
でも魔物どもが船に揺られてやってくるというのもあまり想像がつかない。
「ソーニャ、おい、ソーニャ!」
「え、あ、すまない。ちょっと考えに没頭していた。なんだ?」
「……本番に弱い人間だろ」
図星である。村にいたころもよく本番近くなると落ち着きをなくし、失敗していた。
ソーニャがうぐぅと言葉にならないものを口から漏らして固まっていると亀はため息をついて首を振った。
「少し体を動かしていたほうが気が紛れるんじゃないか?」
「そう……だな。そっちのほうがいいな。うん」
「じゃあ早速ビゼンに連絡を」
「いや待て。何を考えているんだ。副隊長と手合わせしようものなら……」
「冗談だよ。あいつはお前と違って忙しい」
「うぐぅ……」
なんだか亀の暇を潰すのに弄ばれている気がする。
というか副隊長にしろロゼッタにしろ忙しそうに仕事をしているのに我々はこれでいいのだろうか。
こうしている間にもコユキは武器の手入れをしているのだ。いいはずがなかろう。
「よし、亀。なにか仕事をしよう。お互い一応組織の長なわけだし何かやったほうがいいだろ」
「実質的な長がビゼンとロゼッタにあるのは周知の事実だし別にさぼってても問題ないよ」
「いや、それはそれで別の問題があるな」
「仕方ないですね。ソーニャさんも銃の手入れします?」
コユキに一丁の銃と白い綿の付いた棒と布を渡される。
「これをですね。こうして……」
手馴れた捌きで銃を解体した後、ひとつひとつ綺麗に拭きまた戻す。白い綿は筒の中を拭くのに使うようだ。
お手本を見せてもらったので試そうとしてみるがうまくいかない。
「これは……想像以上に難しいな」
「私も覚えるのに苦労しました。一人で分解出来るようになるまでに一ヶ月かかりましたね」
「今覚えてどうこう出来るものでもないな……」
諦めて道具をコユキに返す。

「私の実験に付き合ってもらうことも出来るが死んだらまずいしな……」
「死ぬかもしれない実験なんて満月前日じゃなくてもお断りだ」
「大丈夫だよ。死ぬ前には止めると思うから。多分」
そういえばこの魔女と最初に会った時もよくわからないものを呼び出してコユキが悲惨な目に合っていたな。
ふと横を見るとコユキが少し震えている。可愛そうに。
「簡単な実験なら死ぬことはないし、あんたの鍛錬にもなるし、もしかしたら防衛に使えるかもしれないしで
 いいことづくめなんだけどどうかな」
「それは確かにいいな」
先ほどよりかコユキの震えが大きく早くなる。顔を覗くと目も虚ろだ。
「コユキ、大丈夫か?」
「ソーニャさん。だめです。汚されます。ひどいです。ねばねばの。粘液が」
「あれはちょっと強いやつだったね。今度はもっと弱いにしよう」
「そういう問題じゃないんです!!」
コユキが机を叩き立ち上がる。どこかで見たような光景だ。
「先生はいつも実験と言って私に触手うねうねの生き物と戦わせて! しかも素手で!」
「鍛錬だよ。剣持ったらあっさり殺しちゃうじゃない」
「だからって殴ってもぶよぶよしてて意味がないわ、掴もうにも場所がないし伸びるしねばねばだし。
 あんなのに素手で勝てるはずないでしょ!」
「ビゼンと副会長は素手で勝ったよ」
「鉄を素手で曲げたことがある人間と魔術師じゃないですか。私にそんな力はありません!」
「ということでソーニャも挑戦しない?」
「嫌だ」
どういうわけかもわからないしそもそもこの話を聞いて挑戦するのは対処法が思い浮かんだ人間か変態ぐらいだ。
当然ながらあの二人は前者に当たる。というか副会長の鉄を素手で曲げたという事実に驚きだ。
だから鉄骨折りなのか。
「ソーニャが戦わないなら自動的にコユキが戦うことになるけど仕方ないね」
「戦うことは決定事項なんですか! せめて武器をください!」
戦うことを拒否しないあたり、コユキは後者……いや、頭が上がらないのだろう。
しかしこのままではコユキが再び触手に蹂躙されることになる。
それは現場を見た人間からすればとても可愛そうだ。
「わかった。私が相手しよう」
「やる気になってくれて嬉しいよ」
「ああ、ソーニャさん……。自分の身かわいさにあなたを売ってしまう私をお許しください……」
「構わないけど……嫌な言い方しないでくれ」
「それじゃあ移動しようか」
「そうだな。ある程度の広さがあって汚しても問題のない部屋となると……」
「噴水広場」
「えっ」



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