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青の魔法工房

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青の魔法工房


満月まで残り二日。
今日も空は灰色に覆われている。この様子では本当に月は満ちているのかもわからない。
ソーニャは相変わらず地図を片手に町を歩いていた。最初は綺麗だった地図も今は書き込みだらけになっている。
この町にある十二の塔。それぞれ時計と同じように配置されている。
町の玄関口となる正門があるのは十二時の方向でそちらが大体北方向であると非常にわかりやすい。
大体二時から中央辺りを通り、九時方向に川が流れている。町の主な水源はここから取られているようだ。
三時から八時までは森と隣接しており、五時の近くには避難場所となる大聖堂が立っている。
こうやって見るとこの町は恐ろしく広い。壁沿いにぐるりと歩いたらどれだけの時間がかかるだろうか。
襲撃はどの方向からも来る可能性はある。姿を隠しながら忍び寄れる森に隣接している塔では他のところよりも防御が厚くなっている。
昨日行った時はどうみても兵士は一人だったし手薄のように見えたがいざとなると壁が発火するそうだ。
最初聞いたとき何を言っているかわからなかったが、壁に魔方陣が仕込まれており誰かが手順を踏むと壁が燃え始めるそうだ。
森が焼けるのではないかとかそもそも兵士も燃えてしまうのではないかと疑問をぶつけたが長老会議で
町に侵入されるよりはいいのではないかという結論に達したらしい。恐ろしい話だ。
他にも魔法の知識が無くても使える魔法道具などが多く用意されている。
亀曰く『投げつけるだけで周囲の動植物が死に絶える魔法を内臓した爆弾もあるし』とのこと。
壁が燃える以上はそういう類があってもおかしくない。魔法というのは本当に恐ろしいものだ。
そういえばこの町にあると言う魔法工房にソーニャは未だに訪ねたことが無い。
なにやら聞いた話によると魔法工房は全部で三つあり、それぞれが競い合っているとかなんとか。
しかし『ファウストの狂乱』の大量殺害などの理由により魔法使いの減少。
三つを維持するよりも統合したほうがいいのではないかという話が持ち上がっている。
魔法工房の歴史は町の誕生とも関係しており、歴史を重んじる(らしい)魔術師にとってはどうしても残したいものだそうだ。
地図を指でなぞり、ここから一番近い魔法工房を探す。ここからはそう遠くは無い。
とりあえず行ってみて見学させてもらおう。そうソーニャは考え、工房へと向かった。

そこそこ大きな通りの突き当たりに目的地の魔法工房は立っていた。
工房の名前はそれぞれ色で呼ばれており、ここは青の魔法工房という名前のようだ。
魔法道具の販売も兼ねているため規模は大きく、また事故の際の防止のためか他の建物が隣接していない。
そのため工房近くはちょっとした広場になっており、青の広場と呼ばれている。
店は繁盛しているらしく、買い物客と思しき人間でごった返していた。
軒先に並んでいる商品を眺める。通りに設置されている街灯の縮小版のようなものから
どうみてもただの木の杖にしか見えないものまで種類は多岐に渡る。
人の流れに従いながら店内を歩く。その多くは用途がよくわからない道具だ。
「ありがとーございましたー」
店員の声が聞えた。ずいぶんと若い、いや幼い声だ。魔法使いに年齢は関係ないのだろうか。
姿を確認しようと会計の場所へと近づく。買い物客らしき子どもがいるのは見えるが大人の姿は見えない。
気づけば会計までたどり着いていた。子どもがこちらに気づく。
「いらっしゃいませー……あれ、えーっともしかしてシカ・ソーニャさんですか?」
「ああ、そうだけど……君は?」
髪は茶色く、少々長い幼女。服が大きすぎるためか手が半分服に隠れている。
見た目の割には言葉が割りとしっかりしている。
この町で会った覚えはなかったが向こうはソーニャのことを知っているようだ。
「あ、すみません。初めまして、コト・ロゼッタって言います」
「副会長の親戚なのかな」
「いえ、娘です」
その後、店内にソーニャの驚いた声が響いたのは言うまでも無い。



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