創作発表板@wiki

戦況

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

戦況


「これが現在の日本の地図です」
ロゼッタが地図を机に広げる。弧状に並んだ四つの島と本州から南へ向かったところに島がもう一つ書かれている。
かつては日本と呼ばれていた国は主に北海道、本州、四国、九州と小さな島々で形成されていた。
今となっては国という形はないが便宜上そう呼んでいることが多い。
そして隕石の衝突によって生まれたこの島は日本の近くにあることから地図では一緒に書かれていることが多いそうだ。
地図にはこの島がかつてここにあったという諸島から小笠原と記載されている。
こうやって島の大きさを他と比べてみるのは初めてだがどうやら四国と同程度の大きさはあるようだ。
「現存している拠点は東北、東京、京都、香川、福岡の五つです。特に東北拠点は激戦地となっています」
向かい側の席に座ったロゼッタが地図上を指でなぞりながら説明をする。
その隣には亀が、ソーニャの隣にはコユキが座っており共に地図を見ながら頷いている。
「北の国の勢力は北海道を制圧後、南下。東北拠点の制圧を始めています。戦地を直接見たわけではないですが
 聞いた話だけを総合するともって三ヶ月、と言ったところです。
 制圧後はさらに南下を繰り返し、東京拠点が制圧された後はおそらくここに到達するでしょう」
よどむことなく淡々と話している。だがその内容はこの地が戦場となる日を指し示しているのだ。
今までは魔物だのなんだのの相手だったが北の国の勢力となるとおそらくは魔族がやってくる。
そうなればこの島などひとたまりもない。
「十五年か。結構もったもんだけどね」
亀がそう言いながら背もたれに体を倒す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。何か手はないのか?」
「ソーニャさん。相手はこの十五年間で一度も優勢に立つことができなかった国ですよ?
 侵略の遅れたこの地域でもこの有様なのに他のところなんてもっとひどいでしょう」
コユキも同じく体を背もたれに預け、天井を仰ぎ見る。
「でも今まで侵略が遅れた理由があるんだろう」
「奴らはどうも海が苦手のようでしてね。このあたりのような島国は手が出しづらかったのでしょう。
 加えて近くの北の国と地続きになっている地域は戦争が始まった直後辺りに消し飛ばしましたからね」
「消し飛ばした?」
「ええ。大陸からの渡航を恐れた日本の魔術師が魔法で一昼夜のうちに海へと変えてしまったんですよ。
 そのおかげで大陸からさらに孤立することになったので侵略も今まで遅れたのでしょう」
地図を改めて眺める。そこには日本の島しか書かれていない。
だがもしかしたらかつての地図にはここのどこかに島が書かれていたのかもしれない。
「先日、有志による北の国の進入計画が実行されましたが成功率は低めでしょうね」
そう言いながらロゼッタはいつの間にか置かれていた赤い飲み物を飲む。
確か紅茶と呼ばれている飲み物だ。だがそれはとりあえず置いておく。
ソーニャは今まで北の国の勢力などというのは遠い世界のものだと思っていた。
いつかは対峙するかもしれない。だがそれはずっと先の未来。そんな考えを抱いていたのだ。
だが現実ではその脅威が目の前にまで迫っていたのだ。
そしてそれを知らないのは自分くらいで他の人間は現状に諦めている。
いくら外の世界に無知であるとは言ってもこの意識の差はどうにも納得出来ない。
「私は想像以上に平和ボケしていたのかもしれない……」
「今更だなぁ」
亀は呆れ顔でそんなことを言い、紅茶をすすっている。
「何も悪いことばかりじゃないですよ。少しでも我々の生存率を高めるための種はまかれています。
 いずれも一発逆転が狙えるほどのものではないでしょうけど仮に成功すれば現状維持程度は出来るかもしれません」
「成功しても現状維持なのか……」
「現在の劣勢から維持に持っていけるだけでも十分な成果です。
 いや、でもあの計画が成功すればもしかしたら優勢にも……」
ロゼッタが意味ありげなことを呟き、考え込む。
しかし先ほど話した内容と他の二人の反応を見る限り、状況が絶望的に見える。
「あの計画って東京拠点のアレ?」
亀はその計画を知っているらしいがその口調には既に諦めの色が出ている。
ロゼッタは亀に頷いて答えた。
「ええ。東京拠点で研究されているアンドロイド計画です」



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー