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副長、帰還

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副長、帰還


「明けましておめでとうございます!!」
いつも通り朝起きて身支度を整えているとそんなことを言いながらコユキが突入してきた。
普段ならノックをするのにどうしたのだろうか。
「いやー、年が明けましたね」
「いや、明けてないだろ……」
「ちなみに作中時間は冬ですが特に年越し前だとか後だとか決めてないので作品内で年明けどうこう言うことはないでしょう」
「おい、どこ見て喋ってる。というか何を言っているんだ」
「そんなわけで今日は魔術師協会の副長が戻ってくるのですよ」
そっぽを向きながら誰かに向かって説明していたコユキが目線をこちらに戻す。
副長と言えば魔術師協会を実質束ねている人間だ。そんなことを亀が言っていた。
おそらくはソーニャとビゼン副隊長みたいな関係ということだ。
「どこかに仕事をされに行ってたのか?」
「そんなところですね。確か本州のほうまで行っていたはずですけど」
「海の向こう側じゃないか」
ここより北の地にある本州。どれぐらい離れているか知らないが船でちょっと行けばという距離ではないはずだ。
その海を渡り、仕事をしに行く魔術師。なんだか亀を見ていると魔術師という生き物はなかなかぐうたらな生き物に見えるが
あれが異質なだけだろうと改めて実感した。
だが待てよ。あのぐうたらな魔術師でも瞬間移動の魔法が使えたのだ。一流ならば海くらい越えられる……のか?
「というわけで面会しに行きますよ。確かお昼くらいには戻るはずなのでそのくらいに」
「ははは。さすがに長旅から帰ってきたんだからすぐには面会出来ないだろう。本人も疲れているだろうし」

「それではお部屋のほうに案内します」
「えっ」
時は過ぎてお昼頃。昼食を取った後、協会本部の受付にコユキが面会をしたいと申し出ると呆気なく承諾された。
受付をしていた女性が振り向き、首をかしげる。
「どうかなさいましたか?」
「えーっと、副長は長旅で疲れているのでは?」
「この程度で疲れているようでしたら既に死んでいるのでご心配要りません」
女性がにこりと微笑む。言っていることはかなり恐ろしい。
やはり移送呪文なのだろうか。それとも船旅というのは噂に聞くほどひどいものではないのか?
かつて父がよく言っていた。
『いいか、シカ。将来もしも海を渡ることがあったら船だけは覚悟しておいたほうがいいぞ』
床に玉を置けば常に右往左往し、ちょっと陽を浴びようと外に出たら海水を浴びる。
そんな地獄を船旅では体験できると父は力説していた。
それ以来ソーニャにとって船旅はこの世に存在する地獄の一つとなったのだ。
「副長。ソーニャ隊長とコユキ様をお連れしました」
女性が控えめにノックをして、ドアを開ける。
まず目に入ったのは大量の書物。左右の壁ぎっしりに本が詰まっている。
亀の家もそうだったが魔術師というのは本を溜め込む癖でもあるのだろうか。
部屋の中央には机と優に三人は掛けられそうな椅子が二つ対面においてある。
さらに置くの窓際には一人で使うには大きすぎる机と男が立っていた。
男は持っていた書類を机の置き、笑みを浮かべながらソーニャたちの前まで早足で歩いてきた。
「初めまして。シカ・ソーニャさん。私が魔術師協会の副会長を務めるコクテン・ロゼッタです」
そう挨拶をして深々とお辞儀をする。
身長はソーニャより少し高い。眼鏡を掛けており、髪は茶色く少々長めのようだ。
髪の若々しさとは相対的に肌は白く、刻まれた皺からは補佐官と同じ、もしくはそれ以上の年齢と見られる。
ソーニャも名乗り、同じように挨拶をする。
「長旅から帰還したばかりなのに申し訳ない。やはり日を改めるべきでしたね」
「とんでもありません。どちらにしろこの後、もう一人お客様が来ますからね。
 ぜひとも同席して私の話を聞いていただきたいのです」
「お話、ですか?」
ドアが再びノックされ、先ほどの受付の女性がもう一人の来訪者の名を告げる。
「さてと聞かせてもらおうか。本州の戦況を」
そこには魔術師協会会長の亀が立っていた。



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