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修繕

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修繕


決闘から三日後。
ソーニャは噴水広場で修繕工事を行っていた。
あの日、ソーニャの攻撃により派手に壊れた床を直すためだ。
左手は包帯ぐるぐる巻きにされた上、動かさないように添え木までされている。
当然と言えば当然の結果だ。決闘終了後に病院へと搬送されたソーニャはそのまま手術が行われた。
通常の医療技術に加え、魔法による治癒を重ねたおかげで左手は全治一ヶ月程度で済んだ。
魔女が言うには本来ならば全治まで戻すことも可能だが人間が痛みに鈍感になるのは困るので
必ず最後は人間本来の自己治癒に頼らせるそうだ。ソーニャの場合はそれに戒めの意味もある。
獲物を器用に使い、切り出された石をはめて行く。昨日より続いた作業もその日のお昼には半分ほどまで終了した。
昼休憩を取るために噴水の縁に腰を下ろし、昼食のために用意してきた弁当を取り出す。
ちなみにこの作業はずっとソーニャ一人でやっている。一人でやれと言われた。
「隊長初仕事が自分の後処理なんて間が抜けているというかなんというか……」
パンを頬張りながらごちる。今日の昼食は泊まっている宿からいただいたものだ。
あっと言う間に弁当箱が空になる。美味であった。
食休みをした後、作業を続けるかと思っていると見覚えのある影が走ってきた。
「ソーニャさん、作業は順調みたいですね」
走ってきたコユキは広場を眺めながら言う。
「明日中には終わる、はずだ。コユキが手伝ってくれればもっと早く終わるのだが」
「先生に釘刺されてるので無理です」
即答されてしまった。物は試しではあったがちょっと悲しくなる。
「えっとですね。今日は雨が降るそうなので傘を持ってきました。
 作業は雨が降ったら中断していいそうです。道具は本部に置いて構いません。
 あと今日は満月なので宿ではなく先生の家に直接向かってください」
「何かするのか?」
受け取った傘を弁当の入っていた鞄に仕舞いながら尋ねる。
「満月は魔物が活発になるじゃないですか。
 さすがに今日はソーニャさんは見学ですが先生のところでどんなことをするのか覚えてきてください」
「本部ではなく?」
「先生の家です。魔物が出現したときに現場へ早く行けますからね」
前回は見せてもらってはいないが何か乗り物でもあるのだろうか。
しかし魔物が満月になると活発になるというのは初めて聞いた。
思い返してみれば村でも魔物の襲撃があるのは月齢が満ちてきた頃だった……気がする。
「それでは伝言は以上です。私は他に任務があるのでこれにて」
コユキは敬礼をして、そのまま走っていった。満月の日だし彼女もやることが多いのだろう。
ソーニャは膝を叩いて立ち上がり、作業の続きに取り掛かることにした。
作業は思ったより順調に進み、全工程の八割ほど終えたところで雨がぱらつきはじめた。
言われたとおり、本部へと道具を持っていこうとすると本部から何人かの人間が飛び出してきた。
「アネゴ! 持って行きますよ!」
「怪我のところ濡れたら大変ですから早く傘を!」
「弁当箱とか宿のほうへ持って行きますよ!」
「あ、ああ。ありがとう」
決闘後から隊員たちのソーニャに対する態度はこんな感じになった。
怪我の功名というものだろうか。態度の急変っぷりにむしろソーニャが慣れていないぐらいだ。
特に姉御という呼び名。目の前にいる男たちはどうみてもソーニャより年上だ。
最初に呼ばれたときに反論したが年齢より心意気が大事らしい。
荷物を隊員たちに任せたソーニャは魔女の家へと向かった。
もうすぐ太陽が沈み、夜となる。



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