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道中

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道中


最果ての地よりおよそ一週間ほど歩いたところに町がある。
ソーニャは知識としてはそれを知ってはいたがそこへ向かう機会などはなかった。
物資の運搬も行商人が執り行うし、それの護衛も専用の兵士が付く。
ソーニャにとっての遠出はせいぜい村の少しはずれにある森へ狩りに行く程度のことだ。
もちろんこのような長期間に渡り、村の外へ出たこともない。
村の高き塀に囲まれたその内部こそがソーニャにとっての全世界であり、それ以外は夢物語に過ぎなかったのだ。
そのためソーニャは期待していた。どのような未知の体験が待ち受けているのか。
しかし三日ほど過ぎたところでソーニャは一つの結論に達した。
「……思ったより普通だな」
それも当然である。なぜならソーニャは町へ向かう道を歩いているのだからだ。
その道は舗装されているわけでないにしろ、背の高い草木など無く見晴らしも良い。
少しあるけばちょっとした林があるがわざわざ逸れて行く必要もない。
散々『町の外には危険な魔物がいっぱいいるんだぞ』と脅されてきたがある程度賢いらしく焚き火がある限りは寄ってこない。
最初は期待に溢れていた物の今となっては萎んでしまった。
ソーニャは簡素な寝床を用意し、そこに横になって届けられた町の資料を読んでいた。
町にだってそれ相応の大きさの自衛団がいる。おそらくは村と比べ物にならないほどの大きさだ。
最近町に雌のドラゴンが襲来したことがあったそうだ。
ドラゴンというのは種類にもよるが繁殖期になると一所に留まることが多い。
その候補地として人里が狙われることが多いのだ。
なにせ町には守りの塀がある。外敵と言えばその辺をうろちょろ動く小賢しい人間のみ。少し薙げば死に絶える。
ついてに食料にもなるし一石二鳥。ドラゴンからしてみればそういうことになる。
だからこそ人にとって一番身近かつ強大な敵であるドラゴンの討伐は魔物進行以降大きな課題の一つに上げられる。
ちなみに言うとかつて村に降りたあのドラゴンは腹をすかせた老いぼれであったということがわかっている。
繁殖期のものに比べれば天と地……ほどでないにしろ大きな差がある。
町に襲来したというドラゴンはまさしく繁殖期でそれを討伐したというのだ。
おそらくその人員的損害の穴埋めにソーニャに白羽の矢が立ったというのが事の顛末だろう。
ソーニャは資料を鞄にしまい、眠りにつく。もうすぐ四日目の朝が来る。



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