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旅立ち

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旅立ち


そして物語はさらに五年後から始まる。
シカ・ソーニャが十八歳のときのこと。風の噂によると世界の大部分は既に支配されたと言う。
あの惨劇以降何度か上級の魔物が来たもののソーニャの活躍により、危険は回避されていた。
誰もがソーニャこそが自衛団の団長になるべきだと言ったが本人はあまり乗る気にならず
結局副団長にすらならなかった。
「みんな期待してたのになんでならなかったんだ?」
ソーニャが拾われてから十五度目の冬。新団長選出が終わった後日のこと。
団長に選ばれた青年はソーニャにそう尋ねた。
ソーニャはしばしの間考えを巡らせた後、懐から一枚の手紙を出した。
「私は行ったことないが……。ここより南に向かった先に町がある。そこから手紙が来たんだ」
青年はそれを受け取り、読む。堅苦しい文章を噛み砕いて言うとこういうことだ。
『力を貸して欲しい』
「なるほど」
青年は納得がいった。青年はソーニャのことをよく知っている。あの日試験を受けるはずだった同期だからだ。
ソーニャは正義を強く信仰している。助けを乞われればそこに馳せ参じてしまう。
「行くんだな」
「正直すごく迷った。ここだって上級の魔物が来る。でも町は……その大きさ、人の密度ゆえにここより来るんだ。
 私の骨を埋める場所はここだと思っている。だけど今だけは、今だけは町を助けに行かなきゃいけないんだ」
「ああ、村のことは任せろ」
ソーニャと青年は曇天の下、共に誓い合う。
数週間後、ソーニャは村を出て、町へと向かった。
余談ではあるが青年はソーニャに好意を持っていたが、ソーニャはそんな気は毛頭なかった。



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