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「Chenge The world」  第十二話

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第12話 ザ・マーシナリーズ その1




青年ウィルフレドと謎の女性エーリスが合流してから3日がたった。クマ師との謁見も滞りなく進み、住人の解放を約束させた。
さて、獣人5人組と姉弟に依頼したこととは「3日後の正午に町の中心の大広場に集まるよう町の住人全員に伝える」
という内容だった。姉弟も獣人5人組もよくやってくれたようで、広場にはこの街の住人の大半が集まっていた。
住人達はこれから何が起こるのか気が気でないようで、ざわざわと騒がしい。たとえて言うなら全校集会の開始前といったところか。
そんな様子を広場の入り口付近でうかがっていた8人。その8人にあの5人組と姉弟が近付いてきた。
3日後の正午にその広場の入り口付近にいるから声をかけてくれと竜崎が頼んでいたのだった。5人組のリーダー格の男が口を開く。

「よお、約束どおりこの街の住人全員集めたぜ。とはいっても俺らが近付いたとたんに逃げ出そうとするもんだから苦労したけどよ。
 でも、そちらのお嬢ちゃんと坊やはうまいことやったみてえだな。蛇の道は蛇とはよく言ったもんだな。ハハハ」
使い方違いやすぜ、アニキ。という子分の突っ込みに対してその頭をはたくアニキ。こうしてみるとただの漫才コンビにしか見えない。
蛇の道は蛇というのは、同類のすることはその方面のものにはすぐにわかるという意味だ。それにしてもこんな言葉を知っているあたり
獣人は意外と頭もいいのかもしれない。と思った一同。続いて姉弟の姉が口を開く。やはり獣人が怖いのか、口調が震えている。
「いえ、そうでもないですよ…この街の人たち、基本的に他人のことには無関心ですから…話を聞いてもくれない人たちが結構いて…苦労しました。ね、ゆう…」
『ゆう』と呼ばれた15歳程度の少年は姉の問いかけに、「うん、姉さん」と無表情で答えるだけだった。可愛げのない子供だとウィルは心の中で思った。
「よお、ところでお嬢ちゃんと坊や、名前は?俺はガーランド。んで、こいつらが右からアルフ、キャスパー、ベントナー、ジェイソンだ。よろしくな」
名前を聞く際に自ら名乗るとは獣人にも紳士的な一面もあるのだということを一同は感心した。姉弟も友好的にふるまう獣人たちに心を動かされたのか、自己紹介するのだった。
「柊霞(ひいらぎ かすみ)と申します。最初はそれはそれは最悪な形での出会いでしたけどこうしてみなさんとお近づきになれてうれしく思います…」
と律儀に頭を下げ、微笑みを浮かべる少女。その姿に5人組の心にズキューン! と来るものがあった。おもわずにやけてしまったのは、キャスパーだった。あわててそれを隠す。
「…俺は柊広樹(ひいらぎ ひろき)。獣人なんてみんなクズみたいな連中だって思ってたけどあんたたちは違うようで俺もその認識は少し改めるよ。これからよろしく」
そして握手を交わす5人組と姉弟だった。その顔に企みや恨み、ねたみといった負の感情は、ない。ただ、相容れない存在であるはずの人間と獣人がこうして握手しているということは
両種族にとって記念すべき日になったのは確かだった。それを知っているのは当事者の5人組と姉弟、そしてこの8人だけではあるが。
「んで、住人は集めたぜ。これからどうすんだよ。こいつらけしかけて救済委員会に反乱でも起こすつもりかい?だったら俺たちも混ぜてくれよ?こいつら集めたって時点で片棒を担いだわけだしよ」
それに同調する残りの4人。その提案に驚く一同。しかし5秒ほど間をおき姉弟もそれに同調するのだった。竜崎が5人組と姉弟にそれぞれ言う。
「ガーランドさん、あなたがたは獣人ですつまりあなたがたは反乱ではなく世界救済委員会を裏切るということになりますがそれでよろしいですか?霞さんと広樹さんは…まあ覚悟の上なのでしょうね」
その竜崎の言葉を聞き、うなずく姉弟。一方5人組はそれを笑い、ガーランドは竜崎たちに高らかとこう宣言するのであった。
「問題ないね。俺らはもともと俺達5人だけで今まで生きてきたんだぜ?世界救済委員会を滅ぼして人間たちとうまくやれる世の中をつくれねぇかななんて考えてた矢先にあんたたちが現れた、
 天の導きと思ったね。あんたたちならできるだろうと思ったもんだからあんたらについていこうって思っただけだよ。裏切りなどはじめから覚悟の上だよ」
ガーランドのその言葉を聞き、竜崎は満足そうにうなずいたのだった。そして右手を彼らに差出して言うのだった。
「それではあなたたち7人はただ今から私たち8人と運命共同体ですこれから私たちは世界救済委員会に反乱をおこしますが、あなたたち7人を表の指導者としてこの住人たちを指導していただきたいのです。


私たちが異世界からきたと話したところで彼らは信じはしないでしょうし、それでしたらあなたがたがトップに立ったほうが
彼らもついてくるでしょうし。なぜ起こそうなどと思ったと問われれば世界救済委員会に嫌気がさしたとでも言えばいいでしょうし、事実そうですから」
なるほど、とうなずく一同。こうすることで余計な集めたのは彼らなのだから自分たちが指導者と言えば余計な混乱は回避できる。しかし、すぐにキャスパーが当たり前の疑問を口にする。
「でもさ、あんたたちはどうすんのさ?もとはと言えばあんたらが反乱起こすって言いだしたんだろ?俺達よりもあんたらのほうが適役なんじゃね?この広場で演説だけアニキがやってあとはあんたらが実質指導するほうが効率いいだろ」
キャスパーのその言葉にも一理あると思った竜崎を除く一同。しかし竜崎は首を横に振り、静かに言うのだった。

「いえこの反乱はあくまでもあなたたちの手で起こす必要があるのです私たちはいずれもとの世界へと帰りますということはこの世界からいなくなるということですその時世界救済委員会に代わってこの国を治めるのは…あなたたちです」
といい、7人を指さすのだった。自分たちが救済委員会亡きあとこの国を治めるといわれ、顔を見合わせる7人。そんな7人の気持ちを汲んでか知らずか、竜崎は再び7人に言うのだった。
「ではこれからあなたたちにやってもらうことはそのための第一歩です。今から彼らの前に出て演説をしていただきましょうその役割はリーダーのガーランドさんが適任でしょう。私たちはここで見ておりますので
 皆さん、よろしくお願いいたします」
急に演説をしろと言われても当然そんなことしたことがない。それどころか今まで大衆の前に立ったことすらないのだ。動揺するのは必然だった。とはいえしなければ始まらない。7人は大衆の前へと姿を現す。
その刹那、騒がしかった住人達がとたんに静かになる。自分たちの恐怖の対象である獣人たちが現れたのだから当然と言えば当然だが。そして、ゆっくりと口を開くガーランド。

「あー、住人のみんな集まってくれてありがとう。えー、今回みんなに集まってもらったのはほかでもない。えー、みんなも知ってるとは思うけど俺達獣人たちのみんなに対する支配は目に余る。獣人の俺が言うのもなんだけど。
 そこで俺とここにいる6人で革命を起こそうと思ったわけだよ。でも俺らだけじゃ無理難題。そこでみんなにも手伝ってもらいたいんだ。やることは簡単だ。この街の店という店から武器になりそうなものを手当たり次第にかき集めて
 みんなで救済委員会の圧政に苦しむ他の町へと進むわけだ。ここから一番近いトルベルアの町がいいな。さあ、みんな今の暮らしを変えたくないかい?自由な日々をつかみたくはないかい?なら剣をとり戦おうぜ! 
 今から俺らが始めるのは反乱なんかじゃねぇ!俺たちとみんなが五分五分の対等関係で向き合えるその時をつかむための闘争だ!今のおれの言葉を信じるかどうかはみんなの自由だ。だけど今の生活を変えたいと思うのなら、
 俺らに付いてきてほしい。俺からはこんだけだ。あとはみんな次第だよ」

そしてガーランドの演説は終わった。最初はたどたどしかったが途中から友人に話すような感覚ですいすいしゃべっていた。もともとしゃべるのは好きだったのだろう。
そして巻き起こったのは、大歓声だった。まさかこれほどまで支持を得られるとは予想だにしていなかった一同は驚きを隠せなかった。ここでガーランドがダメを押した。
「声援をありがとう。その様子だと俺たちに賛同してくれたと受け取っていいのかな。じゃあまずは武器を集めてこよう。すべてはそこからだ」
そして30分ほどたち、広場には住人すべてが一つずつ手にとってもまだ有り余るほどの武器が集まった。クワやカマ、ナタといった農具から、刀、槍、サーベル、そしてチェーンソーなどたくさんの武器が集まった。
それをみてまさかこんなものまであるとは思わなかった革命軍首脳部は驚いた。だが、すぐに満足そうな顔を見せるメンバー。
「よく集めてくれた。さて、時は満ちた。今こそ…ゲームの始まりだ!俺達の自由と平等を取り戻すためのな!」
そして再び大歓声。その様子を傍らでうかがっていた8人は満足そうにほほ笑むのだった。



第12話 ザ・マーシナリーズ~その2 完





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