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「Chenge The world」  第十一話

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第11話 男と獣と人間と。その4




カノンと美伽が広場に到着して10分が経った頃、残りの2組も広場に到着したのだった。淳子と先生は何やら険しそうな
表情で、セフィロス・竜崎は何か悔しそうというか、後悔しているといった表情がカノン・美伽の両名から見て取れた。
が、なぜ残りの2組がそんな表情をしているのかはここでは置いておこう。まずは各々が手に入れた情報を統合して一つに
まとめることが先決だというのが2人の共通意見だった。とすればまずは口を開かないことには始まらない。カノンが初めて口を開くのだった。


「おかえりなさいみなさん。苦労したとは思いますが役に立ちそうな情報は手に入りましたでしょうか?僕たちは手に入れましたけど」
と言ってさしたる苦労もなくこの街の住人から手に入れた情報を残りの4人に披露するカノンと美伽。軍事部が介入していないという事実に驚く4人。
残りの2組も自分たちの手に入れた情報を披露する。セフィロス・竜崎ペアに関しては姉弟を助けて誘いを断ったという事実は伏せておいた。
これで各ペアの収穫の公開は終わった。あとはこの情報をもとにこれからの自分たちの行動を決定するだけだが…ここで問題が生じたのだった。
各ペアが手に入れた情報を統合すると…つまりこうだ。

この街にほかにあと10の町があり。いまからおよそ30年ほど前までは人間たちが平和に暮らしていた。そこに人間たちの森林伐採で
住処を追われた獣人たちがやってきて、この街に移住を始めた。人間たちに恨みのあった獣人たちは人間たちを襲うようになり、
身体能力で優れていた獣人たちはこの11の町の人間たちを征服。以来、世界救済委員会という組織を結成し人間たちを下僕として
支配するようになり、11の町を獣貴12師という獣人たちの長が治め(各町の政治方針は獣貴12師一人一人に委託され他のメンバーの介入は許されない)
それに逆らえば軍事部に粛清されるが、この「ヴァンゲリオ」という街を治める「クマ師」は穏健派であり軍事部の介入を許さないという政治方針を掲げているために
軍事部はこの街に進駐できずにいて、結果的に軍事部が進駐している他の町に比べると人間は暮らしやすい街なのだということだが、
問題というのはこの6人の考え方の違いが発端によるものだった。


淳子は、人間たちを圧政から解放する、そのためには世界救済委員会の殲滅が必須だという主張を展開したが竜崎がそれに猛反対を示したのだった。
竜崎は、そもそも獣人がこの街に移住してきたのは人間たちの身勝手な森林伐採のせい、それを棚に上げて獣人だけに罰を加えるのは理不尽極まりないと主張した。
「それは確かに事実ね。でもだからといって獣人たちが人間を苦しめてもいいという理由にはならないわ。苦しんでいる人々を見殺しにしろっていうの?」
「あなたの言うことにも一理ありますでも人間たちを救う方法が獣人たちの殲滅というのは短絡的すぎます。もっと別のやり方があるはずです」
「竜崎さんあなたは人、ここでは獣人か、を信じすぎるようね。私は元の世界で何人も平気で人を殺せる薄汚い人間を見てきた。そいつらは根本が腐敗してるから
 治らない。治らないならこれ以上の被害を防ぐために駆逐するしかない。この街の獣人たちもそう、憎悪に駆られ人間たちを苦しめ自分たちを苦しめてきたのは人間だから
 自分達が人間を苦しめても誰にもそれを咎めることはできない、たとえ神にも。そう錯覚してる。そんな連中は排除するしかないのよ!わからないの?」
「残念ですがわかりません。どんな人にも、過ちをやり直すチャンスがあるはずです。それを奪う権利はあなたにも、そして私にもありません」

淳子はまだ何か言いたそうな表情をしていたが、観念したような表情をみせ、竜崎に言うのだった。
「わかった。じゃあ聞くけれど獣人の殲滅以外で人間たちを救うって言ってたわよね?その具体的な方法を聞かせてくれない?」
淳子の問いかけは至極当然のものだった。自分の考えを否定したのだから当然自分の考えを述べるべき。
そう思った残りの4人も竜崎に目を向ける。全員の視線が竜崎に集まる。だが竜崎はかすかにも動じることはなく、宣言するのだった。

「やることは簡単です。まずこの街の市長、クマ師に謁見し自分たちがここに来た経緯を話します。その後、相手の気持ちを考えた上で
 この街の人間の解放を約束させます。口約束ではなく、書面の上できちんと。そしてこの約束を反故にした場合、容赦なくあなたの頸を
 はねると脅しをかけておけばまあ破られることはないでしょう。誰だって死ぬのは嫌ですし、幸いこちらにはそれをすぐに実行してくれる
 方もいらっしゃいますから」
そしてセフィロスのほうを向く竜崎。セフィロスは別に何も言い返すこともなく、「フッ…」と鼻で笑うだけだった。
「そして?その約束を取り付けたら次はどうするの?まさかそれでおしまいなんてことにはならないと思うけれど」

「この街の人人間すべてをこの広場に集めます。そして私たちが指導者となり、『反乱軍』を組織させます。
 名前はそうですね…「世界救済委員会」に対抗して「世界革命委員会」なんていうのはどうでしょうか。
 武器はこの街のあらゆる店からかき集めます。幸い店はすべて人間たちが経営しているようですから獣人たちにも
 すぐには気づかれません。そして準備が整ったら行動開始。この街を拠点として、圧政に苦しむ他の町へと一気に攻め込みます。
 もちろん道中には軍事部が鎮圧してくるでしょう。しかし救済委員会は全体の6割。そのうち軍事部はだいたい6割程度でしょう。
 その6割を10の町へと分けて派遣しているのですから当然各町に進駐している部隊の数は必然的に少なくなります。それに対して
 ひとつの町のすべての人間を集めた反乱軍が攻め込んだらどうなるでしょうか?個々の能力は高くとも数では圧倒的に不利。
 我々は勝利を勝ち取ることができるでしょう。そして解放した街の人間たちも反乱軍として参加させれば…
 さて、この一連の流れをそれぞれの町で繰り返せば…どうなると思いますか?」

街が解放されるたびに増え続ける反乱軍。対してそのたびに数を感じていく軍事部の兵隊たち。最終的には圧倒的戦力差の前に
世界救済委員会は屈することになるだろう。

「なるほどね…でもそううまくいくかしら。あなたも見てきたと思うけどこの街の人間たち獣人に対してすごく怯えてた。
 集まってくれると思う?私には到底そうは思えないのだけれど」
「大丈夫です。すでに根回しはしてあります。実は私たちは情報収集の傍ら獣人たちに襲われている姉弟を助けたのですが
 その時に命を助ける見返りとして獣人たち5人にあることをしておくように言っておきました。同時に姉弟にも」

つまり、こちらから働き掛けなくとも人間たちは向こうからこの広場に集まってくるというのだ。いったいどんな根回しをしたというのか。
その時、ある男が6人に対して声をかけてきた。見るとまだ美伽と同じくらいの年の青年とそれにつき従っているメイド姿の若い女性だった。
「先ほどから話を聞かせてもらっていた。聞けばこの街の人間を解放するっていうじゃないか?面白そうだから俺たちも混ぜてはくれないか?」
その目はからかっているという感じは微塵もなく、真剣そのものだった。そこで竜崎はその青年に名前となぜそう思ったかを尋ねるのだった。

「ああ、悪い。自己紹介がまだだったな。俺はウィルフレド。17歳。それでこっちは…」
「エーリスと申します。以後お見知りおきくださいませ。皆様」
「それであんたたちについていこうと思った理由だけど、俺は父親を連れ去った戦乙女に復讐するために旅をしてた。そしてとうとう復讐を
 果たしたと思ったら戦乙女は不死だと知り、さらにこのエーリスによって冥界に落とされたと思ったら…落ちた先は一面の砂漠。
 そして横を見るとひどく驚いた様子のエーリスがいた」
ウィルフレドによると、自分は戦乙女に復讐するために冥界の女王、ヘルと契約をしたのだが結果的に復讐は失敗に終わり、
契約を果たせなかった自分をエーリスは容赦なく冥界に落とそうとしたが、着いた先は…この異世界だったというわけだ。
冥界に落とそうとしたはずなのに自分もろともこんなパラレルワールドにいるのだからエーリスが驚くのも当然の話だ。

「それで、エーリスと一緒に再び今度は当てもない旅を続けることになったんだけれど、最初に就いた町がここだったというわけで
 この街をしばらく歩いていたらあんたたちが革命を起こすだとか話してたから当分の間あんたたちについていこうと思っただけさ」
「するとあなたたちが7人目と8人目になるわけね?」
嬉しそうな顔をしてそういう淳子。新たな仲間が加わったのだから当然と言えば当然か。
「おい、7人目と8人目ってなんの話だ?」

6人を代表して竜崎が自分たちもウィルフレドと同じくこの異世界を変えるために召喚されたということ、
10人全員集まり初めて自分たちを召喚した神が姿を現すということ、世界を変えるまでは元の世界に帰れない、
ということなどを話した。驚いた表情を見せるウィルフレド。

「あんたたちもこの世界に迷いこんだって言うわけか。わかった。この世界を変えるまで俺はあんたたちについていく。エーリスはどうする?」
「ウィルフレド様の御心のままにさせていただきます」
そして「フフフ…」とミステリアスな雰囲気を醸し出しながら笑うエーリス。その返事を聞き、ウィルフレドが言った。
「じゃあいっしょに来てくれると助かる。人数は多いほうがいい」
その一連のやり取りを終え、自己紹介をするメンバー。そうして世界を変えるために行動を開始するのだった。
といっても別段なにをするというわけでもなく、ただこの街の人間を待つだけなのだが。




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