創作発表板@wiki

「Chenge The world」  第十話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
第10話 男と獣と人間と。





砂漠のど真ん中で目覚めた一同は再び砂漠を歩き出したが、やはり街は見えてこない。
せめてあと何kmあるのかそれが知りたかった。

「うへぇ…歩いても歩いても全然街なんて見えてこないじゃん…この世界では飲まず食わずでも生活できるみたいだけど、こう砂漠ばかりじゃ気がめいるって」
「うん、確かにそうですね…砂漠なんて初めてですから…何もない死の世界、という表現もできますね。もっともそこで生活している人もいるのでしょうけど」
ぼやく美伽とカノン。そんな二人を淳子がなだめる。
「ぼやかないぼやかない二人とも。大変なのはみんなおんなじなんだから。ゴールのないマラソンなんてあると思う?それと同じよ。がんばって歩こう」

「は~い…」疲れた表情で返事する美加と、無言で微笑みを返すカノン。
満足げにうなずく淳子。そしてまた歩き続ける。空は今日も曇天模様だ。
このままだと本当に気がめいってしまいそうだった。そこで一同は何か雑談しながら歩くことにした。そうすれば少しでも道のりが短く感じられる。
他愛もない話を繰り広げ、笑いあいながら歩く一同。その姿はとても楽しそうだった。一種のコミュニティと呼べるだろう。
そしてついに一同が待ち焦がれた瞬間は訪れる。地平線の向こう、街のようなものが見えてきた。
砂漠だから蜃気楼なんてことも考えられるが、この空模様でそれはない。



歓喜乱舞し、6人はその街に向けて向けて走り出した、のはいいが砂漠のため走破性が悪質で途中何度も転び、
さらに竜崎の走る姿はとても滑稽だったため、みんな笑ってしまいなかなか前へと進めなかった。
ようやくその街の入り口にたどり着いたときにはセフィロスを除いた全員の息が切れていた。
呼吸を整え、街の看板を確認する。

『ウェルカム トゥ ヴァンゲリオシティ!(ようこそヴァンゲリオの街へ!)』と書かれていた。
がなぜかひどくかすれて読むのも一苦労だった。上条先生が口を開いた。

「ようやく着いたみたいですね…闇人さんたちの町と比べるとずいぶん大きいですが…人通りはずいぶん少ないですね、街の端だからでしょうか?」
「それはわからん。とにかく一度町の中へとはいって情報収集をするのが先決だ」と、セフィロス。
うなずく残りの五人。そして町中へと歩を進めた。

途中、元の世界でいうホームレスのような人たちと何度か出くわしたが、聞こうとしても何かに怯えたように走り去っていってしまった。
しかし一つわかったことがある。
「なぜ私たちを見たとたん逃げ出すのかはわかりませんただこの世界にも人間が存在するということが今わかりましたそれがわかっただけでも大きな進展です」

そして10分ほど歩いただろうか、町の中心部らしき場所へとたどり着いた。
人通りも入り口付近と比較してずいぶん多くなっている。ここで淳子が残りの5人に提案した。

「ねえみんな。私たち6人もいるんだし、情報収集するんだったら3グループ2人位に別れてやったほうが効率的だと思うんだけど。どう思う?」
「あたしは賛成。早く元の世界に帰りたいしさ。でもその分け方はどうするのさ淳子さん。あたしはやっぱ先生と一緒がいいな」
その要望に首を横に振り、答える淳子。「これよ」といって取り出したのは、6本のくじだった。
「この6本のくじに1、2、3の番号が2本ずつ振ってある。その番号でグループを分けるわ。それじゃ準備はいい?」
頷き、一斉にくじを引く6人。

その結果、淳子・上条先生、セフィロス・竜崎、カノン・美加、という結果になった。
よくよく考えたらこの3ペアはろくに言葉を交わしていなかった

「それじゃ一時間後にこの場所で落ちあいましょ。じゃあみんな、情報収集よろしくお願いね」
そして各々散らばる各ペア。2度手間にならないようきちんと方向は分けてある。
さて、まずは淳子と上条先生のペアだったが、結構気が合い、いろいろなことを話しながら歩いて行った。
お互いの趣味だとか、仕事についてだとか、他愛ない話だったが。

「ところで上条先生、美加ちゃんはずいぶんあなたのことを好きなようだけど、
なにかあったのかしら?私はあんなふうに誰かのことを好きになったことがないから…彼女のことを羨ましく思ってるのだけど」

「ええ、秋山さんが孤児院で育ったのは青木さんも聞いた通りだと思いますが、
実は私もあの孤児院で育ったんです。彼女が入ってきたとき私は10歳でした。だから私はいま…27歳っていうことになりますね。
私の年齢はさておいて、成長した私はその孤児院で子供たちの世話をする仕事に就きました。
自分を育ててくれた孤児院に恩返しをしたかったんです。これは私が20歳の時です。そこで私は秋山さんのお世話を任されたんです。
当時の彼女は周りの子から仲間はずれにされててとても心がすさんでいて誰にも心を開いてなかったんです。
私も最初は苦労しました…ジュースを顔に浴びせられたりして…それでも私はあきらめずに彼女と向き合い続けました。
そしてそれから1年がたってようやく心を開いてくれて…以来人が変ったように明るくふるまって今に至るというわけです。
だから秋山さん、私をあんなに慕ってくれるんでしょうね」

「上条先生という母親の存在…それが彼女を救ったというわけね。母親…か」
なぜかひどく悲しげな表情になる淳子。それに気づいたものの、触れないほうがいいと判断した上条先生。
「ああ、ごめんなさい。感傷に浸っちゃったみたいね。あなたのことが知れてよかったわ。さて、そろそろ情報収集始めないと遅れるわよ」



そして歩き、一軒の店へと入る2人。店員を発見し、話しかける淳子。
「あの、すいません。この街のほかに街はありますか?」「はい…ありますけど…あと10か所…でもなぜそんな誰もが知ってることを今更聞くんですか…?」
これまでのいきさつを話す淳子。
「この世界を…変える…ですか…無理ですよ…獣人たちが支配してるって言うのに…たった10人で何ができるって言うんですか…」と絶望の表情で答える店員。淳子が問い詰める。獣人とは何かを。


「獣人はこの街を含む11の街を支配していて、
それぞれの街には『獣貴12師』と呼ばれる獣人たちの長が君臨していてそれぞれの町を支配しているんです。
獣人たちは僕たち人間よりもいろいろな面で優れているから僕らのことを『下僕』として支配するようになりました。
これが30年くらい前の話です。それまでは獣人なんていなかったんですよ…いきなりどこかからやってきたんです。
もちろん当時は僕ら人間も抵抗しました。けれど『世界救済委員会』という武装組織によって瞬く間に鎮圧されてしまいました。
以来人間たちはずっと肩身の狭い思いをしてきたんですよ。30年もの間…」

「わかったわ。いろいろ教えてくれてありがとう。
私たちが彼らに持ち寄る情報はこれね。そして次の目標も決まり。『世界救済委員会』の殲滅および人間たちの解放」
驚きの表情を見せる店員。そんな店員に微笑みを返す2人。



そして2人はその店を後にし、あの広場へと向かうのであった。





.

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー