創作発表板@wiki

「餅」、「くしゃみ」、「年越し」

最終更新:

konta

- view
だれでも歓迎! 編集

「餅」、「くしゃみ」、「年越し」




580 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 23:33:31 ID:o4GiBi/1
超絶出オチながら、投下します。


「……っく、ヒッ、ふぁ、あーはらいてェ、アハハハハ!! は、腹、痛ッ……、ふふはは」
ここは賽の河原。もちをのどにつまらせ子供の時分に死んだ俺は石を積むこと幾星霜、
その度ごとに鬼に邪魔をされる毎日だった。いつものように走って逃げながら、
呟いた言葉――「来年こそは、石を積みきってやる」――が、鬼の笑いのツボに
クリティカルヒットしたらしい。
震え出す体。歪んだ容貌。鬼の異変に気づいたのは俺だけじゃなかった。たくさんの
子供達がいぶかしり、やがて状況を把握する。
すなわち……「来年の話をすれば、鬼が笑う」。
いやちょっと待って欲しい、冷静に考えて欲しい。それはただの故事成語というか
諺ではないのか? 遠い未来の話をするなんて採らぬ狸の皮算用、ちゃんちゃら
可笑しいって意味じゃあ無いのか? いやしかし鬼は笑っている。来年の事を
言えば言うほど、鬼は笑っている。
「花火大会するぞー!」
「ええと、えっと……バレンタインにチョコゲットするぞー!」
「お、お前らやめッ、ヒヒ、く、……っははは!! はぁ、はぁ、あ゛ー……ぶぇっくしょい」
大きなくしゃみ。過呼吸でふらつくのか、しゃがみこんでねっころがって大爆笑していた鬼が、
「ぶはー」と酔っぱらいみたいな声をあげた。
「はー……完敗だよ。ックショイ。そうなんだよなあ、この時期はコレが辛いんだわ」
「あの、なんでこの時期、なんですか?」
おずおずと、女の子が鬼に話しかけた。鬼はあぐらをかきながら「あぁ?」と
彼女を睨む。こえー。だがそのまさしく鬼の形相も、思い出し笑いでもしたのか
ニヤニヤと綻ぶ。それもそれで怖ぇー。
「いや、あのな、鬼にとって来年トークは、……フフフ、わりぃ思い出し笑い、がフヒ、
ひひ、……来年トークは弱いんだよぉ。年越しとか近づくとよ、どうしたって来年の話、
するだろ、ふ、ハァックシュン! あ゛ー……。あーハナ垂れて来た……で、その時
生者も亡者も言うだろ、『鬼が笑うぞ』ってさ、ックシュ。ウワサされるたびにコレだよ」
花粉症かいッ!! ツッコミは怖いから口にしない。そして、俺達はきっと同じことを
考えている――今の内に、積めるんじゃないだろうか? 来年の話題を二、三
思い浮かべながら、俺はそっとあとじさりをした。


終わり。




名前:
コメント:


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー