「一年」、「鍵」、「森」①
525 名前:お題:一年と鍵と森:2008/12/16(火) 21:49:18 ID:cLyIBbJB
『その男をつなぐ鍵』
『その男をつなぐ鍵』
私はこの深い森の中で、ただ一人、鍵を作る仕事をしている。
街からずいぶん離れたこの場所に、客など来ることはめったになかったのだが、
ある朝、疲れきった顔の青年が私を訪ねてきた。
街からずいぶん離れたこの場所に、客など来ることはめったになかったのだが、
ある朝、疲れきった顔の青年が私を訪ねてきた。
「こんにちは。ホフマンさんですね?」
「ああ、私を訪ねてくるものがあるとは。驚いたな」
「ああ、私を訪ねてくるものがあるとは。驚いたな」
青年は礼儀正しく挨拶をしてからイスに腰掛けた。
「ご謙遜を。下の街ではあなたはわりと有名なんですよ」
私はため息まじりにそんな事があるわけないと、答える。
「ご謙遜を。下の街ではあなたはわりと有名なんですよ」
私はため息まじりにそんな事があるわけないと、答える。
「この小屋を見つけるのに一年かかりました。まったくひどい森です」
「私は気に入っているんだがね。何か困ったことでもありましたかな?」
「ええ、なんでも随分長い間鍵を作っていらっしゃるとか」
「そうさ、今じゃあもう趣味みたいになっちまってるがな」
「私は気に入っているんだがね。何か困ったことでもありましたかな?」
「ええ、なんでも随分長い間鍵を作っていらっしゃるとか」
「そうさ、今じゃあもう趣味みたいになっちまってるがな」
青年は一度目線を落とし、そして思いつめた顔で私に言った。
「あなたを脱獄容疑で逮捕します」
ああ、まいったな。また手錠が増えちまった。