「食事」、「150年後」、「地球儀」③
515 名前:お題:食事と150年後と地球儀:2008/12/15(月) 18:23:38 ID:vgV+QEwL
「兄さん、お久しぶりです!」
「やあ、よくきたな。お前とまたこうして食事ができるなんて、夢のようだ」
二人は笑い合いながら、豪華な大理石のテーブルに腰掛けた。
「兄さん、お久しぶりです!」
「やあ、よくきたな。お前とまたこうして食事ができるなんて、夢のようだ」
二人は笑い合いながら、豪華な大理石のテーブルに腰掛けた。
「僕も同感です、どうかあの時の私を許してください」
「おいおい、そんな言い方はよしてくれ、悪いのは私だったのだ」
「おいおい、そんな言い方はよしてくれ、悪いのは私だったのだ」
言葉遣いはよそよそしくも、お互いを気遣い合うそのやりとりは
この兄弟の絆の強さを物語っていた。
不意に弟が部屋の隅に転がる丸い物体を指差す。
この兄弟の絆の強さを物語っていた。
不意に弟が部屋の隅に転がる丸い物体を指差す。
「やや、あれは。あの時の」
「そうさ、お前が欲しがっていたのに、私が渡さなかったものだ」
頭ほどの大きさをもった球体は《地球儀》と乱暴に書きなぐられていた。
「そうさ、お前が欲しがっていたのに、私が渡さなかったものだ」
頭ほどの大きさをもった球体は《地球儀》と乱暴に書きなぐられていた。
「懐かしいですね」
「ああ、私もどうかしてた。まさかお前が出て行ってしまうとは思いもしなかったんだ」
「忘れましょう、兄さん。さあ食事を」
「ああ、私もどうかしてた。まさかお前が出て行ってしまうとは思いもしなかったんだ」
「忘れましょう、兄さん。さあ食事を」
兄が難しい顔で腕を組む。
「いいや、こんなものがあるからよくないのだ。存在するからこそ誰かが所有せねば
ならない。私とお前の間にこんなものは必要ない、共に壊そうではないか」
「なるほど、乾杯の代わりに派手にやるのも悪くないですね」
ならない。私とお前の間にこんなものは必要ない、共に壊そうではないか」
「なるほど、乾杯の代わりに派手にやるのも悪くないですね」
二人は大きなハンマーを一緒に握り、力を合わせて球体に振りおろした。
ぱかーんという大きな音が部屋にこだまする。
ぱかーんという大きな音が部屋にこだまする。
「150年ぶりですね、二人で力をあわせるのは」
「ああ、短かったような気もするが、その時間は私たちの絆をより深めたはずだ」
「素晴らしい兄に感謝します!」
「お詫びといっては何だが、お前にはこの《木星》をやろう、なかなか美しいぞ」
「ああ、短かったような気もするが、その時間は私たちの絆をより深めたはずだ」
「素晴らしい兄に感謝します!」
「お詫びといっては何だが、お前にはこの《木星》をやろう、なかなか美しいぞ」
こうして地球は滅亡した。
その上で生きていた人間の悩みなど、ちっぽけなものなのだ。
その上で生きていた人間の悩みなど、ちっぽけなものなのだ。
おわり